131冊目 「火夫」「変身」「流刑地にて」/フランツ・カフカ | ヘタな読書も数撃ちゃ当る

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ある日突然ブンガクに目覚めた無学なオッサンが、古今東西、名作から駄作まで一心不乱に濫読し一丁前に書評を書き評価までしちゃっているブログです

「火夫」「変身」「流刑地にて」フランツ・カフカ著・・・★★★★

「火夫」

この作品は「失踪者(アメリカ)」の第一章にあたるそうで既に読んでいるのだが、まったく気づかずに読んでました。(^^;;

あらすじは、主人公のカール・ロスマンス(16歳)が国許で女中に誘惑され、子供をつくってしまい、両親に船で一人アメリカへやらされる。船を下りる際傘を忘れ、船室に戻るが迷ってしまい、そこで火夫(機関士)に出会う。

火夫は仕事の処遇について船長に直談判に行くのだがカールも一緒に連れて行かれ騒動に巻き込まれてしまう。そこで偶然にも同乗していたカールの伯父(上院議員)に遭遇し火夫をほっぽらかしたまま下船してしまう。。。というお話。

なんじゃ、こりゃー?掴み所の無い、うなぎのような話。

そして、カフカは何故この作品を「失踪者」からわざわざ独立させたんだろうか?

何もかも、わからん。

それが又、おもろー。

 

 

「変身」

 

主人公(グレーゴル)がある朝不安な夢から目覚めると、虫に変わっていた。。。

この出だしから始まるこの作品は、カフカの作品で最も知られ、その奇想さから海外文学作品の中でも最も有名な一節だろう。

本作は虫になったグレーゴルとその家族の日常を描いているのだが、そもそも何故、グレーゴルは虫になってしまったのかも分からないし、その家族も驚くのは驚くのだが事実を受け入れつつ日常生活を送っていく。

カフカらしく不条理なのだが、「審判」や「城」のようなプロット自体は素直で、すんなり読める。

カフカの入門としては読みやすい作品だと思う。

しかし、この作品が暗示しているテーマはなかなか深い。

世界に対する自己疎外感を描いている。

 

 

「流刑地にて」

 

本作は村上春樹の「海辺のカフカ」で取り上げられていて興味をもっていた。

流刑地(荒涼としたすり鉢状の砂地)へ学術調査に来た旅行家に、将校が死刑に使われる機械の仕組みを説明し、囚人の死刑執行に立ち会わすのだが執行中に何故か囚人は無罪放免、将校自らがが死刑になるというまたまた不条理な話。

この死刑に使われる機械が奇妙なもので、その構成は”ベッド”、”製図屋”、”馬鍬(まぐわ)”、からなりベッドに処刑人がうつ伏せに寝て、判決文を製図屋が読み取って、馬鍬で体に判決を刻み込んでいくというものである。

この仕組みを将校が旅行家に得得と説明するのである。

この話の不条理な点は判決が将校一人の独断によるもので、裁判によるものではない。

罪も、夜中の2時に警護を怠り眠り込んで起こされ寝ぼけて喚き立てたという、死刑には値しないものである。

死刑が執行されるが急転直下、囚人は無罪放免、将校が自ら機械の下に入り串刺しになり死んでしまう。

かなりマニアックな話である。

 

 

「変身」を読みながら、ふと思った事ですがカフカの作品はどれも夢の中の出来事のような感じで、不条理なストーリーやプロットのハチャメチャな点など夢を描いているのであれば理解できると思いました。

 

夢といえばユングの心理学、夢分析がありますが、カフカも夢の出来事を描くことにより人間の深層心理に迫り、読者の心に共鳴する”何か”に触れていたのではないのでしょうか。。。

 

 

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