ファシスト橋下知事、高校無償化対象除外、補助金カットの証拠つくりに朝鮮高校視察 | 朝鮮問題深掘りすると?

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初老の徳さんが考える朝鮮半島関係報道の歪み、評論家、報道人の勉強不足を叱咤し、ステレオタイプを斬る。

またまた予定稿を取り置きすることになりました。またもや橋下大阪府知事の言動について書かざるを得なくなったためです。


実は橋下大阪府知事が朝鮮高校を訪問しました。朝鮮高校が高校無償化の対象になりうるかどうか、大阪府の補助金受給資格があるかどうかを検討するためだといます。しかし、管理人にはそれはためにするための「証拠つくり」としか思えません。「朝鮮高校を無償化対照から除去するのは当然です。私は朝鮮高校を直接見てきました。授業内容も了解しています。その上での判断です」と。


彼らしい汚いやり方です。管理人は前回のブログで橋下知事「殿」について書きましたが、彼のキャラクターを知れば知るほどに、彼のずるさが分かり、彼を信用できなくなってくる自分に気づきます。


その証拠に彼が朝鮮高校を無償化対象にし、大阪府の補助金を受けるためには次のよう権を満たさなくてはならないと条件を出していることです。その条件とは①総連から寄付を受けない②総連の行事に学校幹部が参加しない③教室から故・金日成主席らの肖像画を外す④教科書から北朝鮮の指導者や国家体制を礼賛する表現を削除する、などです。彼らしい実にファシズム的要求です。


いちいち反論する必要もないのですが、こうした考えを持っている人間が事実上、決定権を持っているということから、それに彼自身が知らないでいる彼の無知を嗜める為にもいくつかの反論は必要でしょう。


まず①ですが、朝鮮高校が総連から寄付金を貰ったためしは一度もないことを彼は知らないようです。管理人の知る限りでは(確認も取ってあります。)寄付金は学父母や教育会(PTAとは少し違います)の理事さん、それに学区内の在日コリアン商工人らから募っています。もちろん総連の地域組織が一緒になって寄付金集めに動きますが、総連が寄付をしているわけではありません。


次に②ですが、これは彼が在日コリアンコミュニティーについてまったくムチであることから来る偏見のようです。学校運営において地域コミュニティーとの連携は極めて重要です。それは日本の私立校や公立校とて同じです。もともと子どもの教育は学校・家庭・地域社会が三位一体となって行うものです。


日本では学校を知識を与えるだけで人間教育は家庭に任されています。特に地域社会の与える影響は子どもの教育にとって敵対的でさえあります。子どもは学校で学んだことと地域社旗の実情との矛盾に常に苦しんでおり、なによりも学校での人間教育を無視した詰め込み教育は、実は地域社会が強制しているということを見てもそういえるでしょう。


朝鮮高校にとっても地域社会とのコミュニケーションは絶対に必要です。ところが在日コリアンは日本の地域社会に生きると同時に在日コリアンの地域社会で生きているのです。それは日本の差別構造が強要しているものでもあります。総連はその在日コリアン地域社会をいわば取りまとめている組織です。


実の所、在日コリアンの民族的権利は総連と言う地域コミュニティーの活動によって保たれているのであり、日本人社会のコミュ二ティー活動によって保たれているわけではありません。


もちろん沢山の支援を受けており、それが在日コリアンコミュニティーの存続を可能にしている主要な要因であり、従って在日コリアンの地域コミュニティーは進んで日本の地域社会との連携協力を必要としています。しかしそれでもやはり絶対的要素は在日コリアンコミュニティーとの連携にあるということは朝鮮高校が在日コリアンの学校であるということからも理解できるでしょう。


橋本知事の言っていることは朝鮮高校にとってもっとも必要な在日コリアンコミュニティーとの延を切れと言うことであって、仮にそうした場合、朝鮮高校は存在理由を失い日本の同化教育の場になってしまうでしょう。コリアンを教育する場ではなく、コリアンを日本人に作りかえる教育の場にです。


③つめですが、それは橋本知事が日本と朝鮮の現代史、特に在日コリアンによる民族学校の歴史をまったく知らないということの吐露でしかありません。


故・金日成主席の肖像画を掲げるのは、彼が何よりも日本の植民地下で民族解放のための武装闘争(ゲリラ戦)を展開し、ソ連の対日宣戦布告とともに協力して朝鮮に進行し民族解放を成し遂げた英雄だからです。朝鮮が解放されたことにより、在日コリアンは初めて「2級日本人」としてではなく、コリアンとして生きていく道を与えられたのです。


それに解放後の在日コリアンに対する日本政府の態度は引き続き極めて差別的なものでした。解放を迎えた朝鮮人たちは故郷に帰るという期待の中で、これまで教えることが出来なかったハングルと歴史、文化を子供たちに取り戻し与えることが急務だと考えたました。もちろん南と北の区別のようなことはありませんでした。


これに対し日本政府は朝鮮人、子供にも日本の学校に通いながら日本式の義務教育を受ける必要があると民族学校を閉鎖する強硬策に出ました。同化教育を強制しようとしたわけです。そして1948年『阪神教育闘争』が起こりました。朝鮮人学校をすべて閉鎖するようにとの命令が発せられ、数万人の在日コリアンが激しく抵抗した朝鮮学校弾圧の象徴的な事件でする。この中でキム・テイルという16歳の男子が、日本の警察の銃に撃たれて死亡する悲劇が起こったりもしました。


朝鮮半島が南北に分断した後、在日コリアン社会は大きく動揺しました。韓国の政権は一貫して在日コリアンに棄民政策=日本人への同化政策を押しつけてきました。管理人は韓国でのシンポジウムや日本で行われるシンポジウムに参加した韓国の学者らを大勢知っていますが、彼らも一様にこれを認めています。その後も日本政府の朝鮮学校弾圧は続き、朝鮮学校は閉鎖の危機という常態の中で苦しい道のりを越えていくほかありませんでした。


まさにそのときに北朝鮮から「教育援助費・奨学金」が送られてきました。これによって日本政府の弾圧の対象、差別の対象となってきた民族教育は発展の一路を歩みはじめたのです。それはイデオロギー的なものではなく民族的な同胞愛の発露でした。従って朝鮮学校側からすれば故・金日成主席は恩人でもあります。そうした民族的英雄であり、恩人である人物の肖像画を民族学校の教室に掲げるのはコリアンとしての民族的感情であり、今の現実の政治とはまったく関係のないことで、差別する側に立っている橋本知事がどうこう言える問題ではありません。


しかもそれを理由に、助成を中断し高校無償化対象から外すという判断は、極めてイデオロギー的なものです。「政治と教育を結びつけるべきではない」とは橋本知事の言葉です。強いものに擦り寄り、態度をすぐに豹変させるのが得意技の橋本知事であることは良く分かっているつもりですが、それでもこれはないでしょう。


④に移りましょう。それはあくまでも教育内容に関する問題です。朝鮮高校は日本の学校教育基本法の位置条項に含まれません。そして教材は日本の指導要綱に沿って独自で編纂しています。ですから「各種学校」となっています。この「各種学校」の教育内容について政治がどうこう言えるものではないでしょう。教育にまで政治が入ってくればどういうことがおきるかは、過去の日本の「教育勅語」が良く教えてくれています。


橋本知事の言っていることは「教育内容が自分の納得できるものであるならば…」と言うことのようですが、それは教育と言う言葉が持つ元来の普遍的要素を無視した言い分に過ぎません。では教育とは何かと言うことになると分厚い本になってしまうので立ち入りませんが、すくなくとも日本人は日本人として、コリアンはコリアンとして育てるということだと言う事は出来るでしょう。となると④の問題が、それを邪魔しているのかと言うことになりますが、決してそうはならないでしょう。学生は知識習得機械ではなく、しかも高校生ともなれば自ら選択権を行使することの出来る存在なのですから。


ましてや各国をどう教えるかは教える主体の権限に属するものであり(その意味で日の丸掲揚や君が代斉唱の強要は問題ありです)、政治が絡むことではありません。政治的姿勢を強要することはやはりファシズムへの道に繋がります。


つまり橋本知事の言っていることは教育から離れた政治的要求なのです。しかもそれを高校無償化や助成金受領資格を付与する条件として、あたかも馬の前にぶら下げた人参のように扱うという最悪のパターンなのです。

実際に彼は、「自由を求めるのか、府の公金を求めるのか。どちらかを選んで欲しい」と朝鮮高校側に二者択一の「決断」を迫ったと言います(朝日新聞3.13朝刊)。つまり自由と府の公金をトレードしろと言うことです。金で自由を押さえ込むということです。実に橋下知事らしい汚いやり方です。


この論理が同和行政やニート対策、労働行政に持ち込まれたらどういうことになるのでしょうか。金が欲しかったら自由を我慢しろと言うことで、権利なるものはどんどんと奪われて行くことになるでしょう。「パンを取るか自由を取るか」という二者択一の論理こそまさにファシズムです。これが884万人を代表する大阪府知事していることなのです。


もう一度強調したいと思います。橋本知事の朝鮮高校視察は、自分の判断に合理性をもたせるための「証拠作り」でしかないことは明白だということです。ここに彼のずるさ、悪賢さが現れています。そして「パンか自由か」と迫る姿にナチスの姿を見る思いです。「パンか自由か」ではなく「パンも自由も」なのです。


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