『女の子ものがたり』 感情移入するには重い、ある時代のある地域でのひとつのスタンドバイミー | ketchup 36oz. on the table ~フードアナリストの小さな日記

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映画中心のブログだったのですけれど、突然トラックバック機能がなくなってしまって…。どうしたものかと思っていたのですが、とりあえずコチラはコチラで再開します。料理のこと、お酒のこと、レストランのこと…“FOOD”な話題を語っていきます。

『女の子ものがたり』


世の中、西原ブームである。しかし…彼女の持つ毒やダークな部分が本当に世間一般にまんべんなく受けいられるのだろうか。もしそうであるのだとしたら、“そんな妙に懐の深い今の世の中”を、僕は決して好きにはならないだろう。


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(C) 2009西原理恵子・小学館 / 「女の子ものがたり」製作委員会

渋谷・シネクイントでの初日舞台挨拶のチケットが手に入ったので、観に行ってきました。


深津絵里がいい。むかしからこんなにいい女優だったのだろうか。
高校時代の3人、そして小学校時代の子役たちの演技も、いい。

けれど、なんたって西原恵理子なのだから、
決して“すべての女の子を元気にする”爽やかな女子版スタンドバイミーに、なるわけがないのだ。

英題に“Your Story”とあるのは、一体どういうつもりなのだろう。
誰にも彼にもあてはまるなんてもんじゃない、これは西原理恵子のワールドなのだから。
誰もがそんな重たいものひきずって大人になっていくのだとは思えないから。

そこからもし、普遍的な、誰にもあてはまる、女の子全てが共感できる要素を感じ取ることができ、そしてそれが圧倒的に受け入れられていくのだとしたら、僕はこの西原理恵子の恐ろしいほどの才能と、世の中の人々の感性の前に、ひれ伏さざるを得ない。

ただの貧困ではない世界を容赦なく作者は描きつつ、それでも私はそちらとは違うのよ的なスタンスが透けて見えるところが、僕にはきわめて居心地の悪い感触となっていつまでも残っている。

“女の子の数だけ、シアワセの道がある”
これは、この映画につけられたコピーのひとつだ。

この映画を見た後に、このことばの意味を考えると、僕はたまらなく哀しくなる。

そりゃ、ひとそれぞれにそれぞれの道があり、人生がある。はあたりまえのことだ。
けれども、カタカナで書く“シアワセ”が、本当の幸せであるわけないじゃないか。

ライトに見せかけるのは、やめてくれ。
人生はカタカナなんかじゃ、表現できないものだから。


監督・脚本: 森岡利行
プロデューサー: 西口典子 / 菅野和佳奈
原作: 西原理恵子
主題歌: 持田香織
出演:深津絵里 大後寿々花 福士誠治 風吹ジュン 波瑠 高山侑子 森迫永依 板尾創路 奥貫薫 他


『女の子ものがたり』公式サイト

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