花王 アジエンス(2016)ふんわり弾力タイプの解析3 コンディショナー処方解析編 | 化粧品犬が化粧品開発を模索するブログ

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大手会社の開発に勤務していましたが、好きな化粧品を好きなだけ追求するため円満退職。
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化粧品コンサルタントとして仕事も受けています。
パームアミノ・ラボ合同会社 imori@palmamino-labo.jp

化粧品犬です。

前々回から2016/9/10にリニューアルされたばかりの、花王さんのアジエンスシリーズについて解析しています。
アジエンスMEGURIでなくて、普通のアジエンスの方です。

この普通のアジエンスですが、シャンプー、コンディショナーは2シリーズあります。
しっとり仕上がるタイプと、ふんわり弾力タイプです。
この両方ともリニューアルされたのですが、中身・デザインだけで無く名称も一部変わっています。
今回取り上げる「ふんわり弾力タイプ」は、以前の「軽やかに仕上がるタイプ」に相当する物です。
詳しくは、概要編をご覧ください。
花王 アジエンス(2016)ふんわり弾力タイプの解析1 シャンプー・コンディショナー概要編
今回のアジエンスの解析は、2シリーズある内の、使用感の良いふんわり弾力タイプから始めてます。

この製品、今回は発売直後だからかもしれませんが、とっても安売りされているんですよ。
あまりコストダウンされると、中身への影響が心配になりますね。
シャンプーのほうは、その波に直撃されてます(^_^;)
しかし、コンディショナーの方は、幸いなことにその波は、避けられたようで。
2014年に発売された旧製品と比較しても、コストダウンの影響は、目立ちません。
影響は、無くは無いんですが、逆にコストをかけて改良されている点もある。
実は2014年の旧製品については、化粧品犬ブログでは深く扱ってなかったんです。

だって、出来が悪かったから(^_^;)
書いても、仕方ないというか。
でも、一応しっとりタイプの方は書いたんですが(^_^;)
以下のエントリーです。
花王 アジエンスシャンプーしっとり仕上がるタイプの解析 前編
花王 アジエンスシャンプーしっとり仕上がるタイプの解析 後編
花王 アジエンスコンディショナーしっとり仕上がるタイプの解析

前回特に、書きようがないな〜、と思わせたところが。
2014年の旧製品は、しっとりタイプも軽やかに仕上がるタイプ(現在のふんわり弾力タイプに相当)も、コンディショナーの処方は全く同じだったんですよ(^_^;)
シリ−ズが2つある場合、シャンプーの処方は同じだけど、コンディショナーの処方を変えて仕上がりを変えるという製品はあるけど、コンディショナーが同じって言うのはあまり見た事無い(^_^;)
それは、開発陣が手抜きしすぎでしょう(^_^;)
それとも、それいいとしたマーケティング(企画)が悪いのか?
まあ過去の事なので、もう糾弾しませんが。

今回のリニューアルされた製品では、少なくともこのふんわり弾力タイプは、それなりにちゃんと、手が入っています。
ふんわり弾力タイプは、ざっくり書くと以下のような製品です。
 ・コストダウンが効いたシャンプー+きちんと改良されたコンディショナー
使用感も最高では無いが、見るところもあり、結構使える製品です。
力も入っているんだなと思います。

ちなみに、もう一つのリニューアル製品である、しっとり保湿タイプは
 ・コストダウンが効いたシャンプー+旧製品をちょっと変えただけのコンディショナー
と言う製品なので、使用感にも見るところは無いし、全くお勧めできません。
(エントリーは一応作る予定です)

というわけで今回も、リニューアルでの変更点を中心に見ていきます。
いつもの様に、裏面の処方を整理します。
今回はまず、リニューアル前の製品(2014年品)の裏面表示も整理し、新製品(2016年品)と併記してみます。
原料の機能毎にパート分けし、パート内の表記順番は裏面のまま変えずに記入しています。また共通の成分についてはできる限り近づけて書いていますが、場合によって近くに書けない場合もあります。

こんな感じになりました。


ではパート毎に見て行きます。

まずワックスのパート。
ここは旧製品も新製品も原料自体は一般的な物で、とくに言う事はないのですが。
ちょっと変わったこととして、新製品の方の2種のワックスは、次のコンディショニング剤のパートにあるステアロキシプロピルトリモニウムクロリドと予め混合してある、プレミックス原料だということがありますね。これは毛王さん自身が色々な会社に外販している原料で有り、そういう化粧品原料なのです。ユーザーから見ると関係ない話ではありますが、アジエンスに使われたことで、このプレミックスは結構普及するかもしれまい、と思いました。

次はコンディショニング剤のパート。
リニューアル前は、ステアロキシプロピルジメチルアミンとベヘナミドプロピルジメチルアミンの組み合わせですね。
顔の製品では、メリットなんかはステアロキシプロピルジメチルアミンだけなので、それに較べて強化してまるのだというスタンスです。しかし思ったより官能が出ない割に(たぶん)コストが高いため、最近の花王製品(例えばエッセンシャル)では、ステアロキシプロピルジメチルアミンとジアルキル(C12-18)ジモニウムクロリドの組み合わせになっています。
花王エッセンシャル(2016) の解析3 しっとりツヤ髪コンディショナー処方解析編
今回のアジエンスは、この最新のエッセンシャルの強化版と言う感じになっています。
エッセンシャルの
 ・ステアロキシプロピルジメチルアミンとジアルキル(C12-18)ジモニウムクロリドの組み合わせ
に、更に四級カチオンのステアロキシプロピルトリモニウムクロリドと、セトリモニウムクロリドを加えたのが今回のアジエンスですね。
花王さんが伝統的に使ってきた、メリットにもメインで入っているステアロキシプロピルジメチルアミンですが。
使いにくいはずなのに頑張るなあ・・・・と思っていましたが、やはり限界のようですね。この新アジエンスでは、かなり配合量が下がっています(^_^;)
花王さんは普通に人気のある四級カチオン(ベヘントリモニウムクロリド)を否定して、ステアロキシプロピルジメチルアミンを使い続けてきたわけで、どうするのかな・・・と思っていましたが、自社素材の四級カチオンのステアロキシプロピルトリモニウムクロリドに路線変更していく流れですかね。
次の辺りのメリットも、このステアロキシプロピルトリモニウムクロリドになるのかもしれません。

次は油剤のパート。
ここはコストダウンの影響が少しだけ見られます。
価格の高いアルガンオイルとつばき油といった天然植物油がなくなり、天然植物油ではありますが、価格の安いヒマワリ油に変更されています。
またビスメトキシプロピルアミドイソドコサンという合成油が追加されています。これ油自体は花王製品では、ヘアケア・スキンケア問わずよく使われている、エモリエント効果の高いオイルですね。アジエンスMEGURIにも使われています。
単純なコストダウンとは言えなくて、良いと思います。
あとは、アモジメチコンは種類が変更されていますが、その他の油(ラノリン脂肪酸、パルミチン酸イソプロピル、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル)は、継続配合です。かなり、コストダウンされたと思うのですが「、結構がんばるなあ。

次は防腐剤のパート。
リニューアル前からですが、防腐剤を使わず、抗菌性のあるベンジルアルコールだけで防腐してあるようです。素晴らしい戯10つです。

次は保湿剤のパート。
センチフォリアバラ水やレモングラスなど省かれた成分もあるのですが、新たにオタネニンジンエキスやハチミツなどが加わっているのでほぼ同等ですね。
下垂分解コンキオリンのようなタンパク成分が減らされず、逆に貸す分解シルクが加わっているので好印象です。
あとナフタレンスルホン酸Naは、結晶性のため髪の乾きを早くするという成分であると花王の製品では言われているのですが。新エッセンシャルに続いて、ここでも登場です。
髪の速乾性はうたっていないのですが(^_^;)
髪表面で結晶化して、髪を一本一本ばらばらにするのに効果があるらしいので、髪にふんわり感を出すのに効果があるのかな?と思いました。

以上ですね。
コストダウンにめげず、意外にしっかりとした改良をやっていて好感が持てます。
次の花王のコンディショナー製品の流れも、出来てきたように思います。

tだもう一つのしっとり保湿タイプがなあ(^_^;)
あちらも、もすこし頑張るべきだったと思うのですが・・・。

後は例によって、原料ごとにコメントを書いていきます。

ワックス
・セタノール:ヘアコンディショナーやトリートメントによく使われるワックス成分(固形油脂)のひとつ。
・ステアリルアルコール:ヘアコンディショナーやトリートメントによく使われるワックス成分(固形油脂)のひとつ。

コンディショニング剤
・ステアロキシプロピルトリモニウムクロリド:花王さんが販売している化粧品原料の1つで、一般的に使われている四級カチオンのステアルトリモニウムクロリドの改良型。最初からセタノールとステアリルアルコールと混合されて、コンディショナーのベースとして販売されている。使用感としてはカタログに寄れば、「乾燥後のまとまりがよい髪に仕上げるヘアーリンスベースです」とのこと。他の花王製品では、セグレタのコンディショナーに使用されています。
・セトリモニウムクロリド:一般的に使われているコンディショナー基剤で、四級カチオンと言われる成分の1つ。髪の柔軟化効果は油性感はやや低いが、すべり感は高い。
・ステアロキシプロピルジメチルアミン:ちょっと変わったリンス基剤。アミドアミン類と呼ばれる成分で有り、使用感の良いリンスを作るのは難しく、大部分の会社は使用を止めてしまったのですが、一部の会社はこの成分をを改良しながら使い続けている(その内の1社が花王)。ステアロキシプロピルジメチルアミン自体は、1社のみが生産している原料ではありませんが、参考としてミヨシ油脂さんのカタログを上げておきます。
http://www.miyoshi-yushi.co.jp/_userdata/yuka/palner_color.pdf
これによると、ステアロキシプロピルジメチルアミンは髪のまとまり感や、髪への吸着量が大幅にアップしてるみたいです。
・ジアルキル(C12-18)ジモニウムクロリド:二鎖型カチオンと言われるタイプのカチオン界面活性剤で、髪への吸着が強く、髪の保護作用を発揮しやすい原料です。

油剤
・ジメチコン:化粧品で最もよく使われている、普通のシリコン油
・ビスメトキシプロピルアミドイソドコサン:花王製品では、ヘアケア・スキンケア問わずよく使われている、エモリエント効果の高いオイル。化粧品犬は触ったことの無い原料なのですが、鎖長の長いイソドコサン二酸をメトキシプロピルアミンと縮合させて更に長くしてあるので、かなりべったりしたオイルだろうと思います。アジエンスMEGURIにも使われていますね。
・ヒマワリ種子油:ヒマワリ種子油はオリーブ油に似た油で保湿感が高く、トコフェロール(ビタミンE)を豊富に含むことで知られている。元々は不飽和結合が二個あるため、オリーブ油に較べて安定性の悪い油であったが、近年では品種改良が進み、オリーブ油レベルの安定性に改良された製品も出回っている。
・ラノリン脂肪酸:羊から取られるラノリンを加水分解して得られる、脂肪酸混合物。エモリエント剤として機能する。
・パルミチン酸イソプロピル:油性感が少なく、軽くて滑りの良いエステル油
・アモジメチコン;アミノ基をつけて毛髪への吸着力を高めたシリコン油。
・ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル:この素材は名前は長いですが、ラノリン類似油剤の一種で、抱水性、コンディショニング性に優れた油剤です。

保湿剤、 増粘剤他
・水:精製水のこと。化粧品では通常、イオン交換水が用いられている事が多い。
・DPG:汎用的な保湿剤。各種成分を溶かす能力も高い。やや抗菌性がある。ネットでは安全性について疑問の声もあるが、ほぼ誤解だと思われる。詳しくは以下のエントリーに書きました。
 牛乳石鹸 カウブランド 無添加シャンプー・トリートメントの解析 番外編 DPGの安全性
・リンゴ酸:一般的な化粧品ではpH調整剤として使われている。化粧品犬は報文等を見た事は無いが、花王ではスタイリング剤ブランドのリーゼにおいて、ブローの熱から髪を守る「ヒートプロテクト成分」としても使われている。
・乳酸:pH調整剤。AHAの一種でも有り、pHによってはピーリング効果を示すこともある原料。
・ザクロエキス:ざくろから得られるエキス。エラグ酸酒石酸、クエン酸や、カリウムなどミネラル文などが多く含まれている。また、女性ホルモン様作用や、コラーゲン分解酵素の抑制作用等の美容作用も多い。
・ハチミツ:化粧品用のハチミツですが、食用の物と同等です。80%は糖分で、果糖やブドウ糖が主成分であり、ショ糖や麦芽糖などを少量含んでいる。このほか10〜20%の水分と、微量のギ酸、乳酸、リンゴ酸とビタミンなどを含んでいます。化粧品としての主な用途は保湿剤です。
・加水分解コンキオリン:アコヤ貝貝殻または真珠から得られたタンパク質に酸やアルカリを加えて分解して、水に溶けるようにした、水溶性のタンパク質吸着性に優れた成分で、皮膚や髪につやとさっぱり空いた感触を与えます。
・オタネニンジン根エキス:薬用のオタネニンジンから得られたエキス。オタネニンジンは、別名を朝鮮人参、高麗人参とも言われ、古くから薬用として使われてきた植物です。代謝促進作用や血行促進作用があるので、化粧品では肌荒れ、小じわ、脱毛の改善の為に配合されることが多いです。
・加水分解シルク:絹タンパクを酸やアルカリで分解して水に溶けるようにした、水溶性のタンパク質。皮膚や毛髪に対する吸着性に優れた成分です。
・ナフタレンスルホン酸Na;結晶性のため髪の乾きを早くし、サラッとさせる成分。花王製品ではエッセンシャルにも配合されており、速乾性を高める役割を担っている。下記エントリー参照です。
花王エッセンシャル(2016) の解析6 さらさらスムース髪コンディショナー処方解析編
・PEG-45M:水に溶解させることで、若干の油性感を持たせる効果のある成分。
・セテアレス-7、セテアレス-25:基本的な乳化剤。コンディショナーの粘度を調整する。
・BG:汎用的な保湿剤。各種成分を溶かす能力も高い。やや抗菌性がある。
・ベンジルアルコール:若干の抗菌性を持つ、グリセリンやDPGに似た液状の成分。水と混合可能で、油溶性の成分を溶かしやすくする効果もある。浸透性が高いので、毛髪に他の成分を浸透させる力があり、その効果を生かして、ヘアマニキュアでは色素を髪に浸透させるために、よく使用されている成分です。
・エタノール:エタノールです。過去には変性剤を加えた変性アルコールが使われていましたが(変性すると酒税が回避されて安くなった)、税制が変更されて変性アルコールが値上がりしたため、現在は変性アルコールは使われず、ただのエタノールを使うのが主流になっています。
・カラメル;糖から作られた、天然の着色剤。