花王エッセンシャル(2016) の解析3 しっとりツヤ髪コンディショナー処方解析編 | 化粧品犬が化粧品開発を模索するブログ

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パームアミノ・ラボ合同会社 imori@palmamino-labo.jp

化粧品犬です。

サンプルをもらったこともあり、8/6にリニューアルされた新エッセンシャル シャンプーとコンディショナーの解析をやっています。
サンプルをもらった経緯はこちらから。
2016.7.24今日は製品解析はお休みです。エッセンシャルシャンプーがリニューアルとのことです。
2016.8.5花王エッセンシャル(2016) の解析 しっとりツヤ髪シャンプー/コンディショナー1 サンプル編

今回は、しっとりツヤ髪コンディショナーの処方解析となります。
対になるシャンプー解析編はこちら。

では早速始めます。
しっとりツヤ髪シャンプーの解析編では、このシャンプーはアジエンスのシャンプーに似ていると書きました。
今回も、このコンディショナーはアジエンスのコンディショナーに似ているのかな?と言うのが処方を見る時のポイントになりますね。
そこで、アジエンスのコンディショナー、旧製品(2014年度品)、新製品(2016年度品)の3つの製品の裏面の処方を整理してみます。
原料の配合順は裏面のまま変えずに、機能毎にパート分けし、共通の成分についてはできる限り近づけて書いていますが、場合によって近くに書けない場合もあります。
こんな感じになりました。


さすがに、共通する成分の数は多くは無いのですが。
処方の骨格というかポイントになる成分は、やはりアジエンスと似ていますね。
まずコンディショニング剤のパートでは、アジエンスは花王得意のステアロキシプロピルジメチルアミンに、吸着力の強いカチオン界面活性剤であるであるベヘナミドプロピルジメチルアミンを併用する形ですね。ここは、エッセンシャルでは同様に吸着力の強いジアルキル(C12-18)ジモニウムクロリドに変更されています。ここの部分、メリットやメリットピュアンだとステアロキシプロピルジメチルアミンのみで、吸着力の強いものを併用するという処方にはなっていません。

また油剤のパートを見ると、エッセンシャルの売りのラノリンは、アジエンスにも配合されています。油剤のパートだけみると、アジエンスの簡易版がエッセンシャルのような感じですね。
特に、長い名前のヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチルが、3製品に共通ですね。この素材は名前は長いですが、ラノリンに類似の成分で、抱水性、コンディショニング性に優れた油剤です。

また油剤のパートをよく見ると、今回のアジエンスの新製品だけに、ポリシリコーン-28という原料が配合されています。
(何に分類するか難しいので、とりあえず油剤のパートに分類しています)
アジエンス公式の説明ページやブランドサイトにはまったく書いてありませんが、この原料が今回の製品コンセプトのハンドブローの効能成分のようです。よく調べると実は同じ花王のスタイリング剤リーゼに使われている成分でした。
効能としては、ドライヤーの熱に反応して、瞬時にスタイルを作るポリマーとのことです。
ただ、使われている商品は「リーゼらくらくまっすぐのばせるミスト」なので、完全にブラシで引っ張って伸ばすタイプなんですよ(^_^;)
つまりハンドブローの商品じゃないんです(^_^;)
そりゃあ、商品説明に出てこないわけですね。矛盾してしまう(^_^;)
まあ、ブラシで引っ張って伸ばす効能のある原料だけど、たまたま、ハンドブローにも向いていた・・・と、解釈しましょう(^_^;)

保湿剤のパート見ると、このパートもアジエンスとエッセンシャルは似ていますね。
特にこのパートにあるリンゴ酸は、普通はただのpH調整剤なんですが、リーゼの説明を見るとブローの熱から髪を守る「ヒートプロテクト成分」として機能するそうで。
今回の新エッセンシャルにだけ配合されてる成分ではないのですが(アジエンスにも配合されてるし)、これもハンドブローというコンセプトに対応する成分だと言えるでしょう。

以上まとめると
・アジエンスと似ている、簡易版アジエンス。
・ハンドブローがコンセプトだが、ブラシで引っ張って髪を伸ばす製品に配合されている効能成分が、同様に配合されている
・以外に真面目にブロー対応している

というところでしょうか。
昔から考えると、かなり良い使用感の製品です。

後は例によって、原料ごとにコメントを書いていきます。

ワックス
・ステアリルアルコール:ヘアコンディショナーやトリートメントによく使われるワックス成分(固形油脂)のひとつ。

コンディショニング剤
・ステアロキシプロピルジメチルアミン:ちょっと変わったリンス基剤。アミドアミン類と呼ばれる成分で有り、使用感の良いリンスを作るのは難しく、大部分の会社は使用を止めてしまったのですが、一部の会社はこの成分をを改良しながら使い続けている(その内の1社が花王)。ステアロキシプロピルジメチルアミン自体は、1社のみが生産している原料ではありませんが、参考としてミヨシ油脂さんのカタログを上げておきます。
http://www.miyoshi-yushi.co.jp/_userdata/yuka/palner_color.pdf
これによると、ステアロキシプロピルジメチルアミンは髪のまとまり感や、髪への吸着量が大幅にアップしてるみたいです。
・ジアルキル(C12-18)ジモニウムクロリド:二鎖型カチオンと言われるタイプのカチオン界面活性剤で、髪への吸着が強く、髪の保護作用を発揮しやすい原料です。

油剤
・ジメチコン:化粧品で最もよく使われている、普通のシリコン油
・ヒマワリ種子油:ヒマワリ種子油はオリーブ油に似た油で保湿感が高く、トコフェロール(ビタミンE)を豊富に含むことで知られている。元々は不飽和結合が二個あるため、オリーブ油に較べて安定性の悪い油であったが、近年では品種改良が進み、オリーブ油レベルの安定性に改良された製品も出回っている。
・ラノリン脂肪酸:羊から取られるラノリンを加水分解して得られる、脂肪酸混合物。エモリエント剤として機能する。
・ポリシリコーン-28:花王の説明によれば、「ドライヤーの熱に反応して、瞬時にスタイルを作るポリマー」とのこと。2015年発売の花王のスタイリング剤リーゼより採用されている(商品名:リーゼらくらくまっすぐのばせるミスト)。リーゼの商品説明では「ヒートプロテクト成分」と名づけられ、うねった髪をらくにキレイにのばせる「ブローサポート処方」の中核成分として、大きく扱われている。化学的な説明も(長いけど)書いておくと以下の通り。「本品はアミノプロピルジメチコン(*)とアセチルホモシステインのチオラクトンの反応によって得られるメルカプト変性ジメチコンを、ジメチルアクリルアミド及びt-ブチルアクリルアミドの混合物によって更に共重合した複合共重合体である。」
・ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル:この素材は名前は長いですが、ラノリン類似油剤の一種で、抱水性、コンディショニング性に優れた油剤です。
・(ビスイソブチルPEG-15/アモジメチコン)コポリマー:吸着力の高いアミノ変性シリコンとしっとり感の高いポリエーテル変性シリコンがブロック共重合した形の直鎖状のポリマーで、両者の性質を併せ持つ素材
・アモジメチコン;アミノ基をつけて毛髪への吸着力を高めたシリコン油。

粉体
配合無し

防腐剤
配合無し。ただし、保湿剤としてパート分けした、DPGやベンジルアルコールには抗菌力がある。

保湿剤、 増粘剤他
・DPG:汎用的な保湿剤。各種成分を溶かす能力も高い。やや抗菌性がある。
乳酸:pH調整剤乳酸。AHAの一種でも有り、pHによってはピーリング効果を示すこともある原料。
・リンゴ酸:一般的な化粧品ではpH調整剤として使われている。花王では、スタイリング剤のリーゼの中でヒートプロテクト成分として使われているため、特に説明は無いが、このエッセンシャルコンディショナーでも同じ機能素材として使われていると思われる。
・ヒドロキシエチルセルロース:よく使われる増粘剤。
・セテアレス-7、セテアレス-25:基本的な乳化剤。コンディショナーの寝る粘度を調整する。
・エタノール:エタノールです。過去には変性剤を加えた変性アルコールが使われていましたが(変性すると酒税が回避されて安くなった)、税制が変更されて変性アルコールが値上がりしたため、現在は変性アルコールは使われず、ただのエタノールを使うのが主流になっています。
・イソプロパノール:アルコールの一種だが、エタノールより強い臭いがあり、化粧品で使われる事は少ない。殺菌力もエタノールより強いが、安全性は同程度と言われている。トリートメント基剤となるカチオン活性剤の溶媒として使われている事が多い。
・ベンジルアルコール:若干の抗菌性を持つ成分。水と混合可能で、油溶性の成分を溶かしやすくする効果もある。