• 02 Apr
    • お久しぶりです。桜なんぞが咲くとか咲かないとか、もうそんな季節ですね。俺は相変わらず忙しすぎてあ、そろそろ桜ね、そうねなどと思う程度です。一年なんて早いもんです。忙しいことは良いことだなどと一般には言われておりますが、最近そのことについて甚だ疑問に思っております。自ら望んで忙しいならばそれも良いでしょう、しかし、そうで無い場合は、要は自分の時間管理が出来ていないだけですので、これは問題です。俺の場合は残念ながら後者です。『望まぬ暇無し』なのであります。そうなってくると日々イライラ、イライラ、イライラ、と果てしないイライラ地獄に取り込まれ、色んなことが悪循環にはまりこんでいきます。そんなある日、さらに俺をイライラさせる事態が発生しました。俺は飲食店を営んでおります。辺鄙な場所の小さな小さな定食屋です。そのせいか、人繰りで大変難渋しております。さて先日、昼ごろに俺は出勤しました。すると店の奥から「すいません!指切っちゃいましたぁぁぁぁ」と加藤さんが駆けて来ました。加藤さんはアラサーでフリーターの女性である。大人しくて性格も良く、仕事もなかなかもってそつなくこなし、近年まれにみる当たりの人材なのである。ちなみに美人である。その加藤さんが人差し指を押さえ駆けてきて半泣きなのである。見ると指先からは血が滴っている。あらららら・・・・でも、まあ飲食店では良くあることである。最初のうちは皆、指なんか切ると気が動転して大騒ぎするのであるが、これが数か月もすると、黙って事務所に行き、切ったカ所に黙ってバンドエイドを貼って、そしてまた黙ってネギなんか刻み始めるのである。指を切るなんてことは、飲食店ではそれくらい日常茶飯事なのである。「血が・・・血が・・・止まんないんですぅぅぅ・・・」と加藤さんはうるんだ瞳で俺を見つめる。「あ、はいはい、とりあえず見せてもらえます?」と俺。「うっうううっ・・・」と嗚咽をもらしながら加藤さんが人差し指をギュッとつかんだ掌を開いていく。うん、はいはい、確かに深いけど、まあこれくらいなら俺だって年に2,3回はやっちゃう程度ではある。はっきり言って、軽傷の部類なのである。「じゃあ指の根っこにゴムを巻いて止血しますからね」と俺は輪ゴムを人差し指にグルグル巻いていく。簡単に血は止まった。後はバンドエイドを貼って、水に濡れないようにゴム手袋をすれば、まあ大丈夫なはずである。で、その日は何事も無く終了したのである。翌日、俺は加藤さんの指のことなんて、すっかり忘れてしまっていた。午後、店の電話が鳴った。「はい、ありがとうございます、〇〇食堂でございます」と俺。「あのう・・・加藤です・・・」蚊の鳴くような声である。「あ、はいはい、三村です、どうしました?」努めて明るく俺は言った。・・・嫌な予感しかしない。「あの・・・昨日病院行ったら、指を圧迫固定って言うんですか・・・何か包帯グルグルで止血されちゃって・・・・しばらくどうにもならない感じなんですけど・・・・」俺は心の中でため息である。ハアァァァ・・・・そりゃあ、そうだろ、病院行ったらそうなるだろうな!ていうか、あの程度で病院行くか?!まあ、基準は人それぞれだろうけど、あの程度では俺なら絶対に病院になんか行かない!賛否ございましょうが、あえて言います!医者なんて、基本、大げさなんだよ!俺なんかこれまで2回入院しろって言われたけど、しなかったもんね!それで、ちゃんと治ってるもんね!一度は、ピロリ菌という名前の可愛さとは裏腹の質の悪い、て言うか極悪極まりない菌により十二指腸潰瘍を発症。もう一度は、風邪をこじらせて扁桃腺が鬼のように腫れ、飲むも食うもほとんど出来なくなる迄に追い込まれるという最悪の事態。いずれの場合も薬のみで俺は治したんだよ!その俺が言う!医者は大げさ!「あのう・・・しばらく、ちょっと仕事行けそうにないんですけど・・・」と加藤さん。「・・・ああ、そうですか・・・どれくらいですか・・・?」ただでさえ、人員不足でにっちもさっちもいかない時に・・・「二週間位・・・ですかね・・・」「に、二週間ですか・・・そ、そうですか・・・分かりました・・・」かすり傷で二週間だとぉぉぉ!!!「すいません・・・」「分かりました、お大事にしてください」そもそも加藤さん、傷とか体の不調にめっぽう弱いのである。大したことないのにすぐに心が折れてしまうのである。二三日でなく、二週間・・・どう考えたって二週間もかかるわけがない!きっと医者だって二三日は養生してください、くらいのことは言ったとは思うけどね!かくして、人員不足により追い込まれていた俺は、更に更に追い込まれていくのである。

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  • 10 Feb
    • ウォーキングデッド

      最近、海外ドラマにドはまり中の私です。   「ウォーキングデッド」をご存じでしょうか?   これがね、もう面白いのなんのって!   ゾンビものなのですが、まあ、ゾンビものの伝統芸と申しましょうか、実はゾンビは脇役でそこに描かれているのは極限状態の人間たちの壮絶なドラマなのであります。   で、リックという主人公のおじさんが妻を寝取られたりなんだりしながらも、仲間たちと必死に生き抜いていくというお話なのであります。   ま、それはいいのです。   問題はね、このお話、なんてったって異常に長い!長すぎる!   ちなみに、シーズン5までツタヤの棚に並んでおります。   シーズン1が6話、シーズン2が13話、シーズン3が16話、それ以降のシーズンも16話前後、とそのボリュームたるや!   しかし、見始めた以上後には引けないのであります。   私は先日シーズン4まで気合で鑑賞、一気見いたしたのであります。   寝不足で頭フラフラな状態が1週間続きました。   さすがに仕事に支障を来すと思い、少々セーブしなければ、と思い始めたのでありますが・・・・   禁断症状・・・つ、続きが観たい・・・気になる・・・気になる、気になる、気になる、どうしたって気になるのであります!!   かくして私はシーズン5を手に入れるべく、夜中ツタヤに走りました。   シーズン5・・・シーズン5・・・シーズン5はと・・・は?えっ、うそぉー・・・   貸し出し中   マジか・・・   でも、観たい・・・くそぉー・・・でも、仕方ない・・・いかんともしがたい・・・力及ばず・・・   ため息をつきながら棚をボンヤリと眺めていたら、何かが私の目に飛び込んできました。   「アンダーザドーム」   聞いたことあるぞ、はて?   パッケージの裏の説明書きを読むとそこには、製作総指揮スティーブンキングの文字!   私のアイドルスティーブンキング!何と!   俄然借りるしかない!   し、しかし、長い、これも・・・   シーズン4まである。   いや、でも、スティーブンキングの文字を見てしまった以上、これは、か、借りるしかない。   勇気をふしぼり手を伸ばす私でありました。   で、観てみました。   いやーさすがだね、キング、やっぱりあんたはキングだよ!   面白い!   キング節炸裂!   ある日突然、町全体が透明な巨大なドームに覆われてしまい、誰も出られないし、誰も入ってこれないというその極限状態の中で数々の人間ドラマが繰り広げられるといったあらすじなのですが、これに超常現象が加わる辺りがキング節なのであります。   続きが気になるじゃねえか!   気になって仕方無いじゃないか!!   これはウォーキングデッドはひとまず置いておいて、アンダーザドームの続きを借りるしかない!   翌日私はツタヤに走りました。   アンダーザドームはと・・・えーと、この辺の棚に・・・・・   この辺の棚・・・だったよな・・・   はあ!?   な、な・・・   貸出中!!!   な、なんでだー   がっくりと肩を落とす私。   でも、ま、仕方ない、ここはウォーキングデッドシーズン5を・・・・   は・・・?   な、なんでだー!!!   これも貸し出し中。   嘘だろ・・・   その場に崩れ落ちる私。   やるせない怒りがフツフツと沸いてくるのであります。   さっきまでのワクワクを返してほしい。   そうです、誰も悪くありません。   そうですそうです、どうせ間の悪い私が悪いのです。   いつだって私は間が悪い。   ちくしょーーー   はぁぁぁぁぁ・・・   うー・・・   もう帰ろ・・・   とぼとぼと歩き出す私。   はっ   足を止める私。   足を止めたその先の棚に目は釘ずけになりました。   「ヒーローズ」   ああ、何てことだ   知ってるぞ、私はヒーローズを知っているぞ   数年前に加入していたケーブルテレビでシーズン1は観たことあるのです。   社会現象になるほどの面白ドラマであることを私は知っているのです。   シーズン4まである。   な、長いなあ・・・   この面白ドラマは見始めたら最後、絶対に途中では止められない。   かなりの覚悟が必要です。   しかし、棚に並んでいるのを見てしまった以上、もう後戻りはできないのです。   決断を私は迫られました。   ウォーキングデッドとアンダーザドーム、そこにヒーローズが加わってしまうのです。   大丈夫か?   私はこの果てしない海外ドラマの底なし沼におぼれてしまわないだろうか?   収集つかねえぞ・・・   しかし、ヒーローズの誘惑には勝てませんでした。   気づけば、私の手にはヒーローズが握られていました。   で、観ました。   やはり面白い、面白すぎる(泣)             追伸   私の海外ドラマの泥沼は現在進行形であります。   先日ウォーキングデッドのシーズン6がツタヤの新作の棚に並んでおりました。   もうすぐ、シーズン7が棚に並ぶそうです。   海の向こうではシーズン8の製作も決定したそうです。   ああ・・・   そして、ヒーローズリボーンが新作の棚に並んでいるのも見てしまいました。   ヒーローズが生まれかわってしまっております。   ああ・・・   アンダーザドームの続編の噂は幸か不幸かまだ耳に届いておりません。   アンダーザドームリターンとかマジやめてな・・・   とんでもないことに私は手を染めてしまったようです・・・       せ、せめて、グリーに手を出すのだけはやめておこう。                                            

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  • 10 May
    • 『ナパ』 その1

      さて、お久ぶりです。俺の家の近所にM屋がある。リーズナブルで腹ペコ男子の味方のあのM屋である。チェーン展開しているから、都市部在住ならばあなたの家の近所にも必ずあるはずである。さて、俺が仕事を終えるのがだいたい夜中。辺鄙なところに住んでいるから、そうすると、飲食店自体がすでに閉店してしまっているのである。開いているのは牛丼のS屋とかM屋なのである。選択肢がほとんど残っていないのである。ある日、俺はM屋に入った。奥からだるそうに従業員が出てきて、これまただるそうに食券を受け取り、何も言わず奥に消えていった。ちなみに俺は飲食店を営んでいる。だから、同業のよしみでクレームは言わないことにしている。髪の毛が入っていたって、料理が遅くったって何も言わない。従業員の名札をみると『ナパ』と書かれていた。どこの国の人だかも分からないのである。どの店も人員確保で苦労してるんだな、と思う。俺はスマホでニュースでも見て時間を潰すことにした。何となくニュースをスクロールしていく。仕事あがりだから俺は疲れ果てていて、ややこしい記事は読まず、どうでもいいゴシップ記事ばかりを選んで読んでいく。別に好きでもない芸能人の恋愛事情なんて普段ならどうでも良いのだけれど、こういう暇つぶしに読むにはもってこいである。ずい分時間が経ったように思う。時計を見るとすでに十分が経過していた。ちなみに客は俺のみである。店はBGM以外は静まり返っている。そろそろ俺のカルビを焼く音がしてもよさそうなものだが・・・さらに5分後、店の奥からジューという音が聞こえ始めた。やっとかよ・・・ナパたのむよ・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー…鉄板の上で肉を焼く音が聞こえてくる。ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー…ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー…ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー…ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー…ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー…ちょっ、ず、ずい分焼くねえ・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー…ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー…ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー…ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー…ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー…え?え?・・・まだ焼くの・・・?ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー…ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー…ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー…ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー…ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・嘘だろ・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー…ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー…ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー…ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー…ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジュー・・・ジューま、まじか・・・ナパ・・・そしてやっとジューという音が止まった。嫌な予感しかしない奥からだるそうにナパが料理を運んで来た。俺の前に何も言わず皿を置き、ナパはまた奥に引っ込んで行った。案の定、俺のカルビは焦げていた。しかも焦げているだけではない。異様に肉が黒いのだ。コ、コショウなのか・・・これは?恐らく通常の5倍くらいはかかっている。マジかぁ・・・一応肉を口に入れてみる。か、辛っ!ひどい・・・食えたもんじゃないさて、どうしたものか・・・絶対にクレームを言うべきレベルには達している。しかし、俺にはポリシーがある・・・困った・・・結局俺は、ほとんど食べないで店を出た。て言うか、食えるかぁ、あんなもん!もちろんクレームは言わなかった。ただただ、敗北感・・・かくして、俺とナパとの長い戦いが、静かに幕を開けたのである。続きは次回。

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  • 26 Jul
    • テンションみの君2

      皆さんお久しぶりです。さて、うろうろしてたら一年近く過ぎてしまいました。前回の続きです。十数年ぶりに俺の前に現れたみの君は、奇跡的な程に当時のままだった。こいつに限っては、年を取るという自然の摂理からは一人例外なのかと見まがう程であった。待ち合わせは川崎駅前、夏終盤。その日も昼間暑かった。「みの君、ぜんぜんかわんねぇなぁ」「いやいや、ミムラさんこそ変わんないですよ」などど一通り挨拶を済ませて、さて、と辺りを見まわした。ビアガーデンの看板が目にとまった。「あそこでどう?」と俺は言った。「あ、いいですねぇ、そこにしましょ」とみの君が笑顔で言った。ん?いや、どうってことは無いのだが、一瞬俺の目にひっかかってしまった。その日、みの君はTシャツを着ていた。胸の真ん中にはFuckと大書されていた。確か彼は、今日会社から直接この待ち合わせ場所に来たはずである。しかも、彼が勤める会社はそんな自由なイメージの会社ではない。Fuckと書かれたTシャツを着て会社に行ってたのか・・・ま、出社後制服に着替えて営業に出かけるはずだから、問題ないと言えば無いのだが。みの君らしいと言えば言える。いや、そんなことはどうでも良い。俺の目にひっかかったのは、もっと些細なことである。みの君のTシャツの襟ぐちから白いものが見えているのである。サロンパス的なものなのだが、明らかにサロンパスでは無い。ティッシュ?ちょっとグシャグシャな感じからすると、もう長時間それはそこにあるような感じである。いや、ティッシュでもない。もしティッシュだとしたら、何故そんなところにティッシュを挟んだまま彼は電車に揺られて来たのか?そんなもの気にする必要なんか全くないと言えばそうなのであるが・・・ビルのエレベーターに乗って俺たちはビアガーデンに出た。おおっ!と一瞬こちらがひるむくらいの可愛い店員さんに迎えられ、俺たちは席に案内された。相武紗季似。見回すと、店員のことごとくが可愛いのである。明らかに顔面接である。店長ナイスセンスである。デレデレしながら俺たちは注文をした。で、運ばれてきたビールをグビグビっと飲み、俺はとりあえず気になっていたことを言った。「みの君、Fuckってあんた」とTシャツを指差した。「ああ、これですか、いいでしょ、安かったんですよ」「あ、そう」「一枚だと3000円するんですけど、5枚買うと5枚で5000円なんですよ」「安っ!何でそんなに安いんだ?」「ああ、そのかわり同じデザインの奴しか選べないんですけどね」「え?!」「色違いなんですけどね」「え?色違いのFuck?」「そうです」「まじ?」「はい、マジです。だからこの夏は他にTシャツを買う必要が無くなったんですよ」「え、じゃあ毎日Fuck?」「はい、毎日Fuckです」「それで通勤してんの?」「はい、そうですけど」若造ならまだしもお前アラフォーだろ・・・Fuckって・・・いやいや、Fuckはどうでもいい。本題は、そのサロンパス的なやつだ。ビアガーデンは穏やかに夏の夜風が吹いている。とても気持ちいい。しかしね、気になって仕方がないのだ。サロンパス的な、ティッシュ的な何かが、風が吹くたびにヒラヒラとみの君の首もとで揺れているのである。それがどうしても気になるのである。気になって仕方がないのである。何その白いの?というそんな一言がタイミングを失って何となく言えないのである。会ってすぐに言えば何てことなかった気もする。病気なのか?怪我?何なんだ?気になる、いや、はっきり言って目障りだ。みの君は昔と変わらず饒舌で、今働いている会社のことやら、部下のことやらを途切れことなく話続けている。けど、悪いが、その話は俺の耳にはさっぱり入ってこない。もちろん原因は、奴の首もとで揺れているサロンパス的な何かだ。何なんだよそれ!お互いビールをお替りし、更に、運ばれてきたソーセージやらチャーハンやらを頬張る。ムムムッ俺は見逃さなかった。ビールを運んできた相武紗季の視線をである。相武紗季の視線は確実にみの君の首元を見ていたのである。な、紗季ちゃん、気になるよな!そりゃそうだよな紗季ちゃん。首もとに白い何だか分からないものをヒラヒラさせている奴のことが気にならない訳がないよな!俺は彼女の後姿を目で追いながらそう心の声で訴えた。一瞬だが相武沙季と俺は同じ思いを共有したのである。みの君は話し続ける。「仕事って何のためにやってるんですかね?」「あ、え?何が?」「ミムラさんはなんで起業したんですか?」「あ、ああ、まああまり深い意味は無いけどね、ま、なり行きかなあ」それは事実である。元来、俺は野望とかそういったものとは無縁な性格である。あれよあれよという間に状況がそろってしまい、それに追われるように起業したというのがホントのところなのである。だから、俺が言っていることに嘘はない。「なり行きですか?そんな感じで起業したんですか?」みの君の顔が険しくなった。うっ、何だ・・・どうやら、みの君の変なテンションは健在のようである。俺は危険を察知した。話を変えないとえらいことになりそうだ。「いや、ま、その話はね・・・長くなるからさ・・・今度ね・・・」「長くてもいいですよ」みの君の目は完全にすわってしまっている。まずい・・・今日は絡み酒のパターンだ。まずいぞ・・・まずいぞ・・・何とかごまかさなければ・・・ムムムッその時、追い詰められた俺の目に、サロンパス的なティッシュ的な何かが一瞬救世主のように見えてしまった。それだ!「と、ところで、みの君さ、その首の白いの何?」虚をつかれたようにみの君の目が泳いだ。「あ・・・ああ、これですか、これは気にしないで下さい」・・・・・終了である。いやいや、気になるよ!!その後、俺はみの君が気に入るような起業の顛末をねつ造することを強いられたのである。ま、つまり、あることないこと適当に話したってことですね、しかもみの君が気に入るように。で、緊張感漂うその夜は、結局サロンパス的なティッシュ的な何かの正体は不明のまま更けていったのである。ビアホールを後にし、下りのエレベータの中でみの君が言った。「ミムラさん、ずっと気になってたんですけど耳に何かついてますよ」「え?」俺は自分の耳を触った。「いや反対側の耳です」俺は逆側の耳を指で撫でた。掌にポロリと何かが落ちてきた。掌にはご飯粒が一つ。な、何故ご飯粒・・・「いつからついてた?」「いや、来た時からずっとついてましたよ」なぜ、言わない!何事も無かったかのように俺はポイとそれを投げ捨てた。そして言った。「じゃあ、まただね」俺たちは手を振ってそれぞれ帰路についた。何だか良く分からないけれど敗北感・・・俺は耳にご飯粒をつけたまま、みの君のサロンパス的なティッシュ的な何かをずっと気にしていたわけである。それと同じようにみの君も俺の耳のご飯粒がずっと気になっていたわけである。何なんだよ!結局、サロンパス的なティッシュ的な何かの正体は分からず仕舞いである。いまだに気になって仕方ない。。。おしまいね、言ったでしょ、ホントどうでもいい話でしょ。

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  • 30 Sep
    • テンションみの君 その1

      皆さんお久しぶりです。近況報告です。ちなみにどうでも良い話です。えー、私、つい先日丸刈りにいたしました。男らしくさっぱり、ずっぱり1ミリなのでごいざいます。いわゆるおしゃれ坊主です。海老蔵ばりのおしゃれ坊主です。なかなかなのでございます。と言うのも、私最近禿げ散らかしてまいりまして、まあ、そのこと自体は気にもしていないのですが、こう、何と申し上げましょうか、簡単に言うとですね、うっとおしかったわけです、髪が。ならばいっそのこと、ということで、坊主頭になった次第です。でまあ、一人我が"おしゃれ坊主"を眺めては悦に入っておったわけです。そんな私の頭を見て当店のアルバイトの女の子が一言。「なんか、お坊さんみたいですね」「・・・・・・・・・・」台無しである・・・お坊さんね・・・・・・どうやら、おしゃれ坊主ではないようである・・・もちろん海老蔵でもないということになる。さて、本題です。先に言っておきますが、これもどうでも良い話です。忙しい方は、確実に時間の無駄に終わりますので読まない方が身のためです。マジですよ、俺はマジで言ってますからね!ここまで言ってもまだ、読み続けようとしているあなた、以後は自己責任ですからね!ホント、知りませんよ、金返せ!って言われても返しませんよ、マジで。さて先日、みの君に十数年ぶりに再会したのである。みの君と聞いてすぐに、ああ、あのバリ島のプロサーファーとムフフフッと思った方は間違いなくマニアです。復習の必要はございません。しかし、そうで無い方が大半だと思いますので、ここでみの君について少々説明しておきます。みの君と俺は新宿の喫茶店で、バイトしていた時に知り合った。大学生の頃である。ちなみに、ちょくちょくこのブログに登場する相棒も実はその喫茶店で知り合ったのである。だから、俺と相棒とみの君は若かりし頃のある時期、飽きる程毎日一緒に遊び歩いた仲なのである。ここら辺の話を始めるとだいぶややこしくなるので、今回は端折ります。バリ島 相棒(シーズン1) 相棒(シーズン2)上に相棒とみの君の登場回を貼り付けておきます。興味のある方はどうぞ。で、このみの君、なかなかのイケメンなのである。当然ながら、女にもてるのである。それが証拠に俺たちがバイトしている喫茶店に、当時通い詰めるみの君ファンもいた程であった。やがて、その中の一人とみの君は付き合い始めたのであるが、ここで彼の趣味の悪さが発揮されるのである。数人いた彼のファンの中には可愛い子もいたのである。なのに彼が選んだのは、蒼井優似の女の子なのであった。なぜよりによってそいつなんだ?蒼井優というワードに皆さん引っかかってはいけませんよ。そりゃあ、蒼井優は可愛いですよ。しかも、とびっきりね。しかし、蒼井優似の女はやばいのです。自称MEGUMI似の女、もしくは自称幸田來未似の女と同じくらいやばいのです。そんな女はだいたいとびっきりの不細工です。これは間違いありません。ええ、はいはい、もちろん偏見ですよ。そんな皆さんのブーイングは甘んじて受けましょう。だが、これはもう事実だからしょうがない。みの君が選んだ蒼井優もその例にもれずとびっきりの不細工だったのである。「彼女」、と言ってみの君に蒼井優を紹介された俺と相棒の顔は絶対に引きつっていたと思う。で、その後も彼が付き合う女付き合う女、ロクでもない女ばかりなのであった。ある時は、誰もがヤリマンだと認定する女と付き合っていたし、ある時は、何であそこまで皆に嫌われるのかという程性格が悪い女と付き合っていた。ここで、少々補足説明をしておく。蒼井優というところで  ???  と思った方、分かりますよ、あなたが言いたいことは。そもそも、そんな昔に蒼井優なんてデビューしとらんじゃないか!ということですよね?はい、それ、正解です。ホントのところは、蒼井優ではなく裕木奈江という女優さんのことであります。アラフォーあたりの方は、ああ、と納得していただけるのではないでしょうか。裕木奈江を現在の女優で、と考えると蒼井優が一番近いのではないでしょうか。当時、裕木奈江はアイドル女優として絶大なる人気を誇ったのであります。俺なんかも、世の中にこんな可愛い人がいるのか、と度胆を抜かれ何だかこう脇腹辺りをソワソワさせられたものです。で、ここでは今の人に裕木奈江なんて言っても分かんないよなあ、と思って蒼井優にしてみました。話を戻します。さて、みの君をみの君たらしめている特徴をもう一つ。それは、彼のテンションにある。基本的に彼のテンションは高い。何だかうっとおしいなぁ、と感じることも時折あったりする。というのも、彼の場合その上がり方が普通の人とはちょっと違うのである。ま、簡単に言うと急なのである。以前、俺と相棒がみの君が運転する車に乗った際のことである。運転を始めて2時間が過ぎた辺りから、みの君の様子がおかしくなり始めた。どうでも良いことでやたらヘラヘラ笑い始めたのである。どうやらみの君のギアがトップに入ってしまったようである。俺と相棒は互いに顔を見合わせた。車が横に揺れた。「みの君!!!!」「や、やめれぇ・・・!!!」俺と相棒は叫んだ。車は反対車線を逆走していた。みの君はヘラヘラ笑っている。向こうから車が走って来るのが見える。ぎゃぁぁぁぁ・・正面衝突・・・いかに田舎道とは言え、対向車はいる。俺と相棒の顔は青ざめた。ギュンとまた揺れて通常の車線に車は戻った。すれ違う車がクラクションを鳴らしながら通り過ぎて行った。「いやいやいやいや、、、何をしてくれてんだ?!」「アホかお前!!」俺と相棒の罵倒にみの君はただヘラヘラ笑っていた。その日、彼は逆走すること都合四回、工事現場の赤いパイロンを跳ね飛ばすこと一回、そのたびに俺と相棒から罵られたのである。そして、みの君はヘラヘラと笑い続けたのである。さて、今日はここまで。続きは次回。ちなみにマジどうでも良い話です。

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  • 18 Jul
    • ジュリエット

      うちの店の隣はスナックである。店名をジュリエットという。良いネーミングだと思う。毎夜、店の前にはかなりの数の自転車が停まっている。なかなか繁盛しているようである。さては、若い綺麗なホステスがたくさん居るに違いない、と皆さんお思いでしょう。しかし、残念ながらそうではありません。俺はジュリエットに出入りする女性陣で50歳を下まわる方を拝見したことがない。ちなみにその店のママ、つまりジュリエットは70歳を優に超えているのである。では何故、繁盛しているのだ?お客の年齢層が異常に高いことを考えるに、店に長年通う常連客が多いのではないかと思われるのである。しかるにジュリエットは若かりし日、おそらくとてつもない美人だったのではないだろうか?だから、未だに通い詰める常連客が存在する、という仮説でも立てない限りあの繁盛ぶりは全く理解出来ないのである。さて、本題に入る。先日、15時過ぎだったと思う。俺は、店の事務所で飯を食っていた。「た、大変です!!!」事務所にアルバイトの美和がパニック状態で駆け込んで来た。美和は高校一年生の時から俺の前職の職場でアルバイトをしていた女の子である。現在では、俺の店を手伝ってくれている。19歳である。ちなみに、美人である。「た、た、た、大変です!!!!」と美和。「何だ?どうした?」と俺。「ひ、ひ、ひ、人があああ・・・」「人が?どうした?」「お、落ちました!マンションの上から落ちて来たそうです!」「は?」「店の前です!」「は?」とにかく、店の外に出てみる。5,6人の人の輪が出来ている。その輪の中心に人が仰向けに倒れていた。げ、、、ま、マジか・・・口からどす黒い血が流れている。片方の足が変な方向に曲がってしまっている。かすかに胸が上下しているから生きてはいるようだ。あまりの光景に皆言葉を失っている。「きゅ、救急車は?」と俺は美和に訊いた。「さっき、通行人のおじさんが電話してました」と美和は言った。倒れている男の背中の辺りに徐々に血だまりが広がっていく。しかし、何をしてあげることも出来ない。ただ、救急車の到着を待つしかない状況であった。遅ぇな、救急車早く来いよと野次馬の一人がイライラしながら言った。同感である。異様な緊張感が漂う中、遠くからサイレンの音が聞こえてきた。来た野次馬の一人が言った。安堵のため息が皆の口からもれる。救急車が到着した。その後すぐに警察も到着した。ストレッチャーが運ばれてくる。数人の救急隊員が血まみれの男を取り囲む。治療が始まる。「落ちたんですよね?何階から落ちたんですか?見てた人は?」と救急隊員の一人が野次馬を見回す。すると、泣きながらおばちゃんが手を上げた。「見たときにはもうベランダの手すりにぶら下がってました・・・多分4階・・・いや、3階・・・・」「どっちですか?」と隊員。「・・・いや、分からないです・・・」おばちゃんは完全に気が動転してしまっていた。「落ち着いて思い出してみて下さい。それは3階ですか?4階ですか?」「・・・どっちだったかしら・・・3階・・・いや・・・分かりません・・・」「そうですか・・・」訊いてもダメだと判断した隊員は警官に向かって「何階の住人か分かったら連絡ください」と言った。しばらくの後、救急車は去って行った。道には黒い血だまりが残されていた。警察の現場検証が始まった。店の前には『KEEP OUT』と書かれた黄色いテープが張りめぐらされてしまった。一応営業中ではあったが、そんな状態では、お客さんが入って来ることなんか不可能である。事情が事情だから文句も言えずしばらくは静観していたのである。しかし、ものには限度がある。その状態のまま3時間が過ぎる頃にはさすがに言った。「申し訳ないですけど、もうちょっと、そのKEEP OUTを上手いこと張ってもらうと店にお客さんが入って来れるんですけど」「あ、ああ」と警官は辺りを見回しながら「そうですね、ちょっと待ってもらえますか」と言い、黄色いテープを張り直し始めた。そして、店にお客さんが入って来れるように通路を作ってくれた。その後もしばらくの間現場検証は続いた。何の必要があるのか俺にはさっぱり分からないが、警察犬まで出動していた。そのようにして、あわただしくその日は過ぎていった。午前0時、最後のお客さんを送り出してやっと店は閉店した。外に出てみると店の前には黒く血だまりの跡が残っていた。警官がうちの店からバケツやら水やらを借りて血だまりの後始末をやっていたようではあるが、結果は何も落ちてない。いいかげんなもんである。結局俺が、バケツとデッキブラシで血だまり跡をゴシゴシとこするはめになってしまったのである。決して、気持ちの良いものではない。ましてや夜中である。ビクビクしながら俺は手を動かしていた。ま、亡くなったかどうかも分からないのに何をビビッているのだ、て話だよね。ふふっ、と自分を笑い飛ばして俺は手を動かし続ける。「あら、ごくろうさま」不意に後ろから声をかけられて俺は腰を抜かしそうになった。ひっ・・・振り返ると、そこにはジュリエット(70歳)が立っていた。「あ、ああ、お疲れ様です」俺は引きつった顔でそれだけを言うのがやっとであった。このばばあ・・・「今日大変だったらしいわね、あなた訊いた?」とジュリエットは言った。「ああ、そうみたいですね」と俺。「男の人が、ここで刺されたらしいじゃない」は?「・・・え?そうなんですか・・・?」「うちのお客さんが刺されるところを見てたらしいわよ」何の話だ?誰も刺されてねえし、話がねじ曲がっちゃってるな「はあ・・・」と俺。「ホント、怖いわね」「はあ・・・」完全に俺は真実を言うタイミングを失ってしまった。「まだ、犯人は捕まってないていう話よ」「はあ・・・」「あなたも気をつけてね、じゃあおやすみなさい」とジュリエットは言いたいことを言って去って行った。て、ぜんぜん違うし!!こうやって、訳の分からん話が勝手に広まっていくのだな・・・ジュリエット恐るべし!

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  • 07 Jun
    • さて、ご無沙汰しております。ずい分更新の間隔が開いてしまいましたので、どうしたのだろう、と心配してくれていた方もいらっしゃることでしょう。ご安心下さい。私は元気です。多分。。。えーっと、先にことわっておきますが、今回は別に笑いどころはございません。あしからず。さて、先日、店の営業中、「K高校出身ですよね?」とお客さんに話かけられた。突然である。年の頃なら40前後だろうか。女性である。確かに俺はK高校出身である。「・・・はあ、そうですが・・・」と俺。「私もそうなんですよ」と女性。「え?」と俺。「私のこと分からないですよね?・・・実は同級生なんですよ」とその女性。「・・・・・・・・・・」えええっ!????誰だ?申し訳ないが、全く分からない。女性は続けて言った。「私も分からないんですよ」は?え?え?え?何を言っているのだこの人は・・・私も分からないだと!だったら俺はもっと分かんねえよ!「あのう、江川君て知ってます?私、江川君と小中高と一緒だったんです」と女性は言った。むむむっ、江川君・・・もちろん知ってますよ・・・「江川君なら俺も仲良くしていましたけど」「江川君から、ミムラ君がこの辺でお店を始めたって聞いて、あ、私この辺に住んでるんですけど、それで今日来てみたんです」「あ、ああ、そういうことですか、わざわざすいませんね、ありがとうございます」なるほどそういうことなら合点がいく「江川君から聞いて、ブログも読ませてもらいました」「・・・あ、ああ、そうですか・・・」このブログが読まれてしまったことに関しては少々複雑ではある。で、お互いにお互いのことをよく知らないから、その後話は弾みようもなく、挨拶もそこそこにお別れしたのである。とまあ、そんなことが先日あったわけです。店のアルバイトの女の子にその話をしたら、「それって、恋が始まるシチュエーションですね」とニヤニヤしながら言った。いや、始まんねえし俺のこといくつだと思ってるんだ?そもそも、その同級生は子供を連れていたしねしかし、思うわけです。不思議だなあ、と。二十数年前に同じ高校に通いながらも当時はお互いの存在さえ知らなかったわけです。それが、時間を経て、場所を宮崎から東京に変え、再会しているのですね。確かに、二十数年前に同じ空気を吸い、同じように時を過ごしていた人との再会。何だか遠い気持ちになってしまいました。人の縁って分からんもんですね。ま、今回はそんなお話でした。追伸あ、そう言えば名前訊くの忘れた

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  • 13 Feb
    • アホ対決

      さて、本日は当店でアルバイトしているおしりちゃんについて書こうかと思う。おしりちゃんは以前にもこのブログに登場しているので、先にそちらを読んでから読み進めていただけると、ありがたい限りです。おしりの事情(その1)   おしりの事情(その2)さて、読んでいただけたという前提で話を始めます。おしりちゃんは現在19歳である。おしりちゃんの人となりをざっくりと説明するならば、DQNという言葉が一番しっくりくると思う。で、このおしりちゃん、つい最近社員として勤めていたパチンコ屋を辞め、そこで知り合った2歳年上の男と同棲生活を始めたのである。しかもその男とは付き合って1か月かそこらでしかないらしい。なのに、もう同棲しているあたりが、俺のDQNという説明の正しさを証明していると思う。ま、DQNであるから、おしりちゃんは基本的にはクルクルパーである。例えば、まず、一回の説明で彼女が理解できたためしはない。彼女が呆けた顔の時は、確実に何も理解出来ていない時だ。俺はもう付き合いが長いから、おしりちゃんが理解できているかどうかはその呆けた顔で瞬時に判断できる。しかし、これが慣れない人だと、「はい、分かりました」というおしりちゃんの返事を真に受けてしまうのである。おしりちゃんは、分かってなくても”分かった”と言ってしまう悪癖があるのである。本人に言わせると「何回も説明してもらうのは申し訳ないじゃないですかぁ」ということになるらしい。俺に言わせてもらうなら”分かってないのに分かったって言う方が、もっと申し訳ない事態を招くことになる”と思うのだが?ま、基本的にそういう風にチャランポランであるから、当然のことながらその時々の上司からは散々怒られるのである。で、本人には全くそんな気はないのだが、うつむいて上司の話を聞くその態度は、おしりちゃん自身はあくまで殊勝なつもりであるらしいが、しかし、傍目にはふてくされているようにしか見えないのである。付き合いが長いと、その態度に悪気が無いことは分かるようになるのであるが、そうで無い人にとっては、火に油をそそぐ態度にしか見えないのである。ま、あれこれ説明したが、今回はおしりちゃんがDQNでクルクルパーだということをご理解いただければ十分です。そんなおしりちゃんと俺の本日の会話である。「ミムラさん(俺のこと)、ニョウドウってどこにありますか?」とおしりちゃんが真顔で俺に言った。「尿道?」何を言っているのだこいつは?「はい、あの醤油とかを移す時に入れるのに使うやつです」とおしりちゃんは真顔である。「尿道?」「はい、ニョウドウです」「お前、ニョウドウって、おしっこが通ってくるところだって分かって言っているのか?」と俺。「あれ?そうですね、ニョウドウってそうですよねぇ・・・あれぇ?・・・あの丸くて、先がニュッってなってるやつです・・・ほら・・・何でしたっけ?」勘の良い方ならお気づきでしょう。そうです、おしりちゃんが言っているのは漏斗(じょうご)のことなのです。ジョウゴとニョウドウ・・・似ていると言えば似ているのか・・・?それにしても漏斗と尿道を間違えるとは、ひどいものです。で、そんな最中、22時出勤のJDちあきが「おはようございます」と店に入ってきた。マニアの方はご存知かと思うが、このJDちあき、おしりちゃんの遥か上をいくクソ天然娘なのである。俺は漏斗を手に持って「これ何ていうか知ってるよな?おしりちゃんに教えてやってくれよ」とJDちあきに向かって言った。「へ?」とちあき。あ、こいつも知らねえな・・・「これをさ、あろうことかおしりちゃんがさ、ニョウドウって言うんだぜ、ありえねえだろ?」と俺。「あはははっ、ええ?!尿道って!そんなわけないじゃん!」とJDちあき。「な、そうだよな!だからさ、ちあき教えてやってくれよ」「・・・え、ニョウドウなわけ・・・ないじゃないですか・・・ねえ・・・あはははっ・・・」なるほどね、じゃあヒントをあげてみようかな。「ほら”じょ”?」と俺。「え?じょ?」とJDちあき。「そう、じょ?その後なんだ?」「えええ!じょ、ですよね?」「そう、じょ、だ」「じょ、じょ、ええ?じょ?」「初めが、じょ、で次が、う、と来れば?」「え?じょ、う・・・・じょう・・・じょう・・・ああっ分かった!じょうろ!!」違うわ!

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  • 16 Dec
    • JKちあき、あらためJDちあき、(ヒナ)

      先日から、JDちあき(ヒナ)が当店で働き始めた。体育大学に通う20歳の女の子である。ヒナというのは、コートネームであるらしい。あ、そうそう、言い忘れたが、JDちあきはバスケットボールの選手である。あれっ?!と思った方は、かなりの通です。そうです、そうです、このJDちあき、初登場ではないのです。実はこの女、俺が前職で勤めていた店でバイトしていたのである。しかも高校一年生から卒業するまでの三年の長きに渡ってである。そして、数々の天然エピソードで我々を笑いの坩堝にたたき込んでくれているのである。以前にも散々書いたが再度書いておく。例えばこうだ。深刻な顔でJK(当時)ちあきが俺に言った。「店長、『顔潰し』をお客さんがくれって言ってます」ん?「・・・顔潰し??何だそれ?」と俺。「いや、あたしも分からないですぅ」JKちあきは不安げに俺の顔を見ている。全くもって純真な子供の目である。『顔潰し』て、そんな恐ろしげなもの・・・何のことだ??顔潰し・・・顔潰し・・・かおつぶし・・・かおつぶし・・・かつ、、、むむむっ!?鰹節のことか!もしかして!!ま、一事が万事こんな感じである。基本的に物事に対する知識不足に加え、勘違い、言い間違いが多すぎるのである。そして、俺たちは毎回あっけにとられ、腹筋を破壊されていたのである。そんな日々もやがてJKちあきの高校卒業にともない終了し、我々は疎遠になっていったのである。ま、会ったとしても時折、駅や道端で偶然ばったりという程度である。大概そんな感じで皆俺の人生からフェイドアウトしていく。そんなもんだ。しかし、である。JKちあきは違った。後に、奴はまた天然独特の無神経さで俺の人生にドカドカと入り込んで来るのである。人の縁なんて、どこでどうなるか分かったもんじゃないですね。今の店を不動産屋に紹介されて、初めて見に行ったその帰り道である。猛スピードで向こうから走ってくる自転車と俺はすれ違った。ん?!キキィィィッというブレーキ音がした。俺も自転車のブレーキをかける。振り返るとJKちあき改め、JDちあきがそこにいた。久しぶりだなあなんて5分くらいだったと思うが、立ち話をしてその日はそのまま別れたのである。その時、良さげな物件が今日見つかったから恐らくそこで店をやる、という意味のことを俺は言った。で、そのまま、3ヶ月が過ぎた。ニョロニョロの夜逃げ事件(詳しくは事の顛末を読んで下さい)という予想だにしない事態はあったが、何とか無事、店はオープンした。俺と社員の山田(26歳、男)はフラフラになりながら働いていたのである。その矢先のことである。さてさて、ご記憶でしょうか?この山田、実にやっかいな男であることが一緒に働いてみて初めて判明したのである。仕事は、一生懸命にやっている。真面目だし、見どころもある。しかし、である。これはもう、本人の意思とは無関係なのであるが、多々、奴はトラブルに巻き込まれ、仕事に遅刻する、もしくは欠勤せざるを得ない状況に追い込まれることが頻発するのである。問題はその頻度である。つまり、普通の人ならば年に1回あるかないかのレベルの不幸が、奴の場合、月に2回の頻度でやって来てしまうのである。この半年の間に、交通事故に遭うこと3回。内一回は大腿部と左腕にヒビが入る重傷。内一回は意識を失い、救急車で運ばれるという事態。残りの一回は、後ろから来た車にひっかけられ、転倒、軽傷。といった具合である。その他にも、お父さんが事故に遭い重傷。お母さんが脳卒中で倒れる。財布を盗まれる。交通取締に引っかかりすぎて免停。十数年ぶりに会う約束をしていた幼馴染がその前日に事故死。実家の喫茶店が閉店。保証人になったことによる多額の借金。等々・・・・・ね、普通じゃないでしょ。もう、笑えない位、これでもかこれでもかって不幸が押し寄せて来るのである。そんな社員山田の不幸体質のおかげで、オープン間もないのに、俺は一週間ほぼ一人で店を営業せざるを得ない状況に追い込まれてしまったことがあった。他にもアルバイトの女の子が2人いたのであるが、その内の一人が時を同じくして心を病みリタイアしてしまっていたのが、更に俺を窮地に追い込んでいた。もちろん残った一人の女の子は、献身的に働いてくれたが、それにも限度がある。そもそも、その子だって学校に行かなければならないし、掛け持ちしているバイトだってある。そうそう無理も言えない。で、あまりに困り果てて、俺はツイッターで現状を嘆いてみたのである。すると、予想だにしないところから反応があった。限りなく疎遠になっていたJDちあきから連絡がきたのである。そして、急きょ手伝いに来てくれたのである。俺はJDちあきの粋な心意気にグッときたのである。いや、正直に書こう。俺は人知れず泣いた。そんなJDちあきが手伝いに来てくれている時の俺との会話である。「この間、道端で会った時、店をやるみたいなこと言ってたじゃないですか」とJDちあき。「ああ、言ったな」と俺。「あれって、冗談だと思ってました、まさかホントにやるなんてね、アハハッ」は?なぜ冗談?俺、けっこう真剣な顔して言ってたと思うけどな・・・しかし、百歩譲って俺が冗談で言っていたとしても、その冗談ぜんぜん面白くねえし!そして、現在、奴は俺の人生を土足で蹂躙中である。

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  • 30 Nov
    • 悪ふざけ

      最近のことをたまには書いてみようかと思います。お店を始めてはや半年になります。ありがたいことに縁のある方たちが、ちょくちょく店を訪ねてきてくれます。ここ一週間で高校の時の同級生が3人も来てくれました。定期的に連絡を取り合っていた友人達ではありません。いずれも、mixiやFacebookで改めてやりとりをするようになった友人たちです。以前ならば、用も無くメールを送ったり、電話したりということはなかなか出来ないものでした。それが、ソーシャルネットワークが普及するや、気軽に写真にコメントしたりできるわけです。『いいね』ボタンなんてものすごい発明ですよね。で、結果俺の周囲でもこのような事態になっているわけです。友人たちと二十数年ぶりに再会しちゃったりする事態が発生しているのである。ネット環境の発達のスピードたるや・・・すげえな。。。と思うわけです。『インターネットは空っぽの洞窟』なんて本が20年位前にベストセラーになっていたことを思い出します。インターネットとは何ぞや?何ができるのだ?そもそもパソコンというものは何をするための道具なのだ?なんて程度の知識レベルの人たちがゴロゴロいた時代の話です。かく言う俺もそんなレベルでした。て言うか、パソコンに触ったことすら無かったですね。で、そりゃ、『インターネットは空っぽの洞窟』って言われりゃ、やっぱりな、何かあやしいとは思ってたんだよ、インターネット、インターネットって皆言うけどさ・・・と新しいものに対する胡散臭さをズバリと代弁してくれているその本を世間の人たちはこぞって手に取ったのであります。ちなみに、俺も読みましたが内容は全く覚えていません。当時、現在のこのネットの活況ぶりをどれほどの人が想像できていたのでしょうか。さて、前置きが長くなりました。本題は全く違う話です。最近、うちの店にいたずらをする奴がいるのです。不特定多数の人を相手に商売していると、そういうことは別段珍しいことではありません。だからと言って、もちろん平気であるはずは無く、悪意のあるいたずらをされると、こちらも徐々に神経が参ってきます。例えば『営業中』の札をひっくり返したり、表に出してある黒板を裏返しにしたりというようなことです。いたずら自体は地味で、ちょっと微笑ましい感じすらします。しかし、やられている方はたまったもんじゃありません。札を『準備中』なんかにされてしまうと、現実問題、金銭的な実害が出てくるわけです。何とかして捕まえてやろうと思うわけです。で、頻繁に表に出て、黒板や営業中の札の無事を確かめるのです。最近分かってきたのは、15時~17時の間と22時~24時の間に犯行が行われるということです。多い時は、日に2回いたずらされます。現在すでに、5日連続で犯行は行われています。で、先日夜22時過ぎに俺は外に出ました。営業中の札に目を走らせます。すると、明らかに不審な男が札の前に立っていました。ムムムッ札は『営業中』のままです。正に今犯行が行われようとしていた気配がプンプンします。不審な男は、俺から目を逸らし下を向いたまま、さも、自分は今店に入ろうとしていただけですから、的オーラを放ちながら店内に入って行ったのででした。ムムムッ怪しい、怪しすぎる。。。しかし、証拠は何一つなく、ただ挙動がおかしいのと見た目が怪しいというだけなのであった。それが昨日。で、ちなみに本日、いたずらは行われていない。ということは、やはり、昨日の不審な男が犯人だったということか?さすがに、顔を見られて、かつ、明らかに俺から怪しまれているのだから身の危険を察知したということだろう。多分。。。このまま沈静化してくれることを願う次第です。あ、今、思い出した!そう言えば、前職の店も頭のおかしな奴にいたずらをされ続けたことがあった。長くなりそうですので、続きはまた今度どこかで。

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  • 26 Nov
    • さて、どうしたものか・・・

      最近ちょくちょく、ブログもう書かないんですか?なんてことを言われます。本人は書く気満々なのですが、ただ単純に時間が無くて書けないというのが正直なところです。ああ、書きたい!でも、書けない・・・ネタはたくさんあるのに書けない・・・書く暇が無い・・・イライライライライライラ・・・恰好つけて言うならば、「一日が24時間じゃ足りない」といったところです。・・・・・・・・・・プッ・・・恥っ!言ってみてものすごく恥ずかしいことを口走っていることに気づきました。さて、本題。携帯電話を買い替えようかと思っているのです。現在のものを使い始めて、すでに4,5年たっているのではないかと思います。使っている年数は正確には記憶していません、もしかしたら6年かもしれません。いずれにせよ、相当年季がはいっているということには変わりありません。『iphone5』欲しいなぁ、なんて強く強く思うわけです。しかし、起業して半年、俺はただの一度も給与を貰っておりません。給与も貰えない現状なのに何がiphone5か!とも思うわけです。で、現在、自分の物欲と戦っているわけです。あ、ちなみに起業なんて恰好つけて書いてますが、その実、定食屋をこじんまりと始めただけですので、あしからず。思い起こせば、携帯電話なんてものを皆が持ち始めたのはいつの頃だったか。流行りものに敏感な友人達がポツリポツリと携帯電話、と言うかPHSを持ち始めたのが20年位前。それ以前は、ポケットベルというものが若者の間で流行していたらしいが、俺は当時ど田舎にいたため、ポケットベルの実機を眼前に見たことはない。数字をペコペコ打って数字の表記だけで、「今すぐ会いたい」だとか、「おやすみ」だとかの会話を起用にやりとりしていたらしい。その光景を想像しただけでもメンドクサイ。俺には絶対に無理だ。で、PHSである。携帯電話であることには変わりはないのだが、当時、いかんせん恐ろしい程に電波が悪かった。ところで、俺はPHSや携帯電話なんてものには最後まで抵抗した口である。俺がそれを手に入れたのは、その後大分経ってからであった。というのも、何で、四六時中誰かに簡単に捕まってしまうようなそんな面倒なものを好き好んで皆持つのか俺にはさっぱり理解できなかったからである。で、当時のある日の会話。「ミムラさん起きました?」俺は家の電話の受話器を手にしている。「ああ、今起きたけど何?」と俺。電話の相手はちょくちょくこのブログにも登場する相棒である。今では立派なおっさんだが、当時19歳位だったのではないかと思う。ちなみに、相棒の登場回は以下です、興味のある方はどうぞ。相棒(シーズン1)  相棒(シーズン2)相棒はPHSである。「今、バイト終わったんですけど、今日も行きますよね?」と相棒が当然のように言う。「うん、いいけど、新宿だよね、マーブル?アラジン?」と俺。さて、上記キーワードで分かった方は相当です。「そうですね、アラジンをさっきちょっと覗いたんですけど、ハンターが爆発してましたよ」さあ、いいかげん、ハンターでもう分かりましたね、そうです、あの懐かしの名機です。はいはい、そうですよぉ、スロットです。当時俺と相棒は、ほぼパチプロみたいな生活をしていたのである。「マジかぁ、じゃあ後で行くよ」と俺。「・・・・・・・」ん?「もしもし?」と俺。「・・・・・」「もしもーし」「・・・・・」返事がない。「おーい、もっしもーし」「・・・ああ、はい、すいません電波が途切れちゃいましたぁ」相棒のプツプツの声が受話器の向こうから再び聞こえてきた。「ああ、そうなんだ」「今、目の前にトラックが止まっちゃったんですよ」「ああ、だからかぁ」はい、皆さん今ものすごい違和感を感じましたよね?そうなんです、当時のPHSなるしろものは、目の前にトラックが止まっただけで電波が途切れてしまうような性能だったのです。もちろん、例えば車なんかに乗っていても、車が走り出すともう途切れてしまうわけです。トランシーバー並か!そんなものでも当時皆ありがたがって使っていたわけです。さて、今回はこの辺にしておきます。スロットマニアの方は「ハンター」なんてキーワードがとても気になっているはずです。俺と相棒の半パチプロ時代の話もそのうち書けたら書きます。では。

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  • 15 Nov
    • 不毛な休日(文学バージョン、けっ)

      鼻がグスグスするなぁなんて思っていたのが3日前。とりたてて気にもとめていなかったのである。そんなことよりも”明日休みだ”という事実の方が俺にとっては重要であった。さてさて、明日何しようかなぁ店の用も無いし、ようし、久々に映画でも観に行こう!ワクワクしながら俺は床についたのである。そして翌朝。ムムムッ・・・起きた瞬間、俺はすぐに異常に気が付いた。こ、これは・・・絶対に、なんかやばいぞ・・・まず、猛烈に腹が痛い。俺は、ものすごい勢いで布団を蹴りあげて、便所にダッシュした。ズボンを下ろすやいなや、固形を成さない食物たちの成れの果てが俺の尻から噴出した。それはまるで水のように何の抵抗も無く俺の体内から放出されていく。ギュルルルル・・・・な、なんだこの症状は・・・喫緊の危機を乗り切って俺は、さらに痛いのは腹だけでは無いことにも気が付いた。頭もガンガンと痛い。かつ、グラングランとする。か、風邪なのか?自覚症状というものがほとんどなかったのにこんなに急に発症するものなのか?しかも、寝ている間に悪化するってどういうことだ?何もかもが初めてのことで、俺はすっかりテンパってしまっていた。だ、ダメだ・・・吐き気までするではないか・・・ズボンを引き上げて俺は、やっとのことで布団まで這って行き横になった。腹と頭が痛くて、吐き気がし、鼻がグズグズする。しかも、寒気が治まらない。どう考えても風邪の諸症状だ。しかも、最悪の部類の症状がフルコースで襲って来ているわけである。く、薬を・・・確か、あったはずだ・・・俺は引出の中をかきまわす。『ルル』ルルがあったはずださらに、俺は引出の中をかきまわす。あ、あった!!オレンジ色の小瓶をようやく探し出して俺は用法用量の項に目を走らせる。『15歳以上1回3錠』キャップを開けて小瓶から錠剤を取り出す。コロン・・・なっ・・・小瓶を逆さにして振ってみるが、それ以上何も落ちてこない。い、一錠って・・・マジか・・・仕方なく俺はその一錠を飲み下してまた布団にもぐり込んだ。飲まないよりかは、マシか・・・いや、変わんねえな・・・数分後。ギュルルルルルル…クッ・・・と俺は腹を押さえる・・・津波のように腹痛が襲ってくる。ま、またか・・・飛び起きて便所に駆け込む。慌ててズボンを引き下ろす。ピシャーぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁと不浄が俺の体内から放出されていく。まるで、これまで俺が重ねてきた悪事を浄化するかのように・・・せ、正露丸をくれ・・・だ、誰か・・・こんな時ほど一人暮らしが切ないことはない。助けてくれる誰かを頭の中でアドレス帳をめっくて探してみる。しかし非情なことに、月曜日の真昼間に助けに来てくれるような暇人の顔なんて、まったくもって浮かんで来なかった。さて、どうしたものか・・・これほど、腹と肛門がいうことをきいてくれない状況で外に出るのは自殺行為である。薬の調達は諦めるしかない。つまり結論は簡単だ。俺は大人しく布団にくるまって、危機をやり過ごしつつ、回復を待つしかないのである。その後も、数十分おきに腹を押さえて便所に駆け込むことを繰り返した。しかも、寒気が尋常でないから熱があることも明らかであった。しかし、あえて体温計は手にとらなかった。体温計の39度とかの表示を見てしまうと、おそらく俺の心はポッキリと折れてしまうであろうことが十分予測できたからだ。ま、でも間違いなく39度位は出ていたと思う。夢からうつつへ戻って来るたびに俺の全身は汗でビッショリになっていた。そのたびに布団から這い出して着替えるのである。汗をかけばかくほど、回復が早くなることを俺は経験上知っていた。こうして、枕元には汗みどろのシャツとパンツが積みあがって行ったのである。これだけ汗をかき、下痢を繰り返しているのである。喉はカラカラであった。冷蔵庫を開けてみるが、庫内はほぼ空っぽであった。切ないこと極まりないのである。ただ、乾燥わかめがポツンと一袋あるのみであった。わかめで何をしろというのだ・・・仕方ないので俺は水道水をがぶ飲みした。都市部に住んでいる方はご存じだと思うが、水道水なんてカルキ臭くて飲めたもんじゃないのである。普段なら絶対に飲まないのであるが、背に腹はかえられない。飲まなきゃ脱水症状になるのは確実だ。何か食べた方が良いのも分かっていた。菓子パンが一袋テーブルの上に転がっているのだが、どうしてもそれを口にする気になれなかった。食い物を見るだけで、吐き気が襲って来るのである。だから、俺は水道水だけを飲み固形物の全くない下痢を繰り返し、ただただ体力を消耗して行ったのである。鏡を見てみると見覚えのない無精ひげの目の落ち窪んだ男が鏡の中から俺を見つめ返していた。俺の休日は、このように風邪との不毛な戦いに浪費されて行ったのである。長い長い夜が明けて、俺はそこで初めて体温計を口にくわえた。ピピっという電子音の後、体温計の表示を見た。36度5分。枕元に積みあがったシャツとパンツを見ながら俺は風邪に辛勝したことを悟ったのである。ギュルルル・・・再び、俺は便所に駆け込み、風邪の搾りかすをケツから放出した。まだかすかに痛む腹は空腹を俺に訴えていた。

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  • 28 Aug
    • ありがとう その2

      さてさて、ご無沙汰して申し訳ないです。なにぶん忙しくて暇がないのですよ・・・と忙しい自慢をしたところで本題に入ります。前回、いやいや、前前前回の続きです。俺は考えた。この混乱しきった店のどこから手をつけたものか、と。そんな最中、そのチェーンの成果発表会がパシフィコ横浜というホールを貸し切って行われるというお知らせを受け取った。ご存じのとうり、パシフィコ横浜は『みなとみらい』というチャラチャラした街に存在する。さて、ネット上で下手にバッシングをするなと先日教わったばかりなので、さっそく言い訳をしておく。チャラチャラは言いすぎた、すいません。しかしまあ、カップル共がウジャウジャいる街ではあるのは事実である。しかも、パシフィコ横浜は相当でかいホールなのである。そんなところでの成果発表って、一体何が行われようとしているのだ?俺は、一瞬不安に陥ってしまった。カップルだらけのおしゃれスポットで、5000人収容の大ホール、なのである。当日。9時半にみなとみらい駅で中川と待ち合わせた。ちなみに、中川は時間にルーズである。当然ながら9時半になんか来ないのである。遅刻である。10時5分前になってやっと、人ごみの中を走ってくるドレッドの姿が見えた。「すいません、一本乗り過ごしました・・・」ドレッドは息をきらせながら言った。一本?嘘つけ!少なくとも3本は乗り過ごしているだろ!会場に滑り込み3階席に腰かけた。映像と音楽が舞台上で鳴り響いている。一瞬で俺は圧倒されてしまった。成果発表会が始まった。そのチェーンは、焼肉店、居酒屋、しゃぶしゃぶ屋、釜飯店などを全国展開している。名前を出すのはひかえるが、聞けば知らぬ人などいないであろう。当時でもすでに店舗数は1000店を超えていたように記憶している。その1000店舗の中から優秀店舗が5~6店選ばれて、数千人が見守る中でその店のアルバイトが成果発表を行うのである。そして、観客の投票によって順位が決まるのである。確かに、会場の規模や仕掛けには圧倒された。しかし、檀上で発表している店舗が特に目新しい取り組みをしている訳では無かった。はっきり言おう。壇上で発表している店舗の皆さんがやっている取り組みのほとんどを俺の店ではすでにやっており、というよりもむしろその二三歩先のことを俺の店はやっていたのである。俺の店は全く違う系列のチェーン店であったから、当然そのフォーラムには参加できないのであるが、もし出場できるのであれば、かなりの確率で優勝できるという確信を抱いたのである。4時間ほどの成果発表を見終えて、俺は言った。「中川、あの壇上に立ちたくないか?」「え?いやあ、まあ、そうですね・・・」中川の返事は煮え切らなかった。この際、中川の返事なんてどうでもよかった。何故なら、俺の中では答えは決まっていたからだ。絶対にこのドレッドを壇上に立たせてみせる。これは俺にとっても新たな挑戦だった。自分自身が壇上に立つのはそんなに難しくないという自信はあった。しかし、指導した店長を壇上に上げるとなってくると話は大分違ってくる。ここから、俺と中川とアルバイトの皆さんとの熱い戦いが始まっていくのである。続きは次回。

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  • 12 Aug
    • 近況報告2

      俺は霊感が無い。無いはずである・・・多分無いような気がする・・・夜中、一人で店を閉める機会が多々ある。ある夜、トイレで用を足していると店内からガシャン!!という音が聞こえてきた。何かが落っこちたな、と思い店内に帰る。俺は落ちた物がないか見回す。・・・・・何も無いのである。ガシャン、のその原因が見当たらないのである。むむむ・・・気のせいか・・・ある日の夜、山田と俺は事務所にいた。すると、ドンッ!と誰かが壁を叩く音がした。一棟立ての一階である。隣の部屋というものは存在しない。しかも、音がした壁側は線路なのである。マジか・・・窓を開け線路を見回す。暗い線路が遠くまで伸びているだけである。もちろん誰もいない。居るわけがない・・・この店は、調理場の壁ががステンレスだらけで自分の姿が2重、3重にあちこちに映りこむのである。そのせいもあるとは思う。夜中、一人で片づけているはずなのに誰かの気配を多々感じるのである。意味も無く寒気がして、鳥肌がたつのである。そんな時、頭をよぎるのは『生霊』という言葉である。悔しかったはずである。俺が、以前この店をやっていたご主人ならば、悔しくてたまらない。ご主人は、数回会っただけの俺をとても気に入ってくれていたそうである。俺がその店を借りようと思い申し込んだ時、実はもう一人同時期に申し込んだ方がいたそうである。そんな状況下、ご主人は大家さんに俺のことを推薦してくれたそうだ。しかし、しかしである・・・人間は矛盾を抱えた生き物である。俺のことを気に入ってくれていたのは本当のことだと思う。一方、本来はやめたくないのである、自分たち夫婦が店を続けていたいのである、「あいつら、失敗すれば良いのに」と心のどこかで思っていたとしても、それはそれでまた本当のことだと思う。そのことに思い至るたびに俺は、一人夜中に後ろを振り返ってしまうのである。朝、山田が言った。「昨日の帰り、車にひっかけられました」「は?!」「いや、信号待ちをしていたら後ろから来た車にちょっとハンドルを引っかけられまして、サイドミラーが破損したんですよ」「ほう、で?」「ちょっと、こけちゃいましたけど、怪我は無いんです、ですぐにその車を追いかけたんですけど逃げられちゃいまいた」「・・・・・」こいつはまあ、次から次へと厄介ごとに巻き込まれるな・・・で、これまたある夜、山田が携帯で深刻な顔をして誰かと話をしているのである。電話を切って奴は言った。「すいません、ちょっと早上がりしていいですか?」「何でだよ?」と俺。「いやあの、友達が事故を起こしまして、その相手がどうやらヤクザらしく、それで車の名義がですね、俺の名義のままだったんですよ」「は?」「その車、俺が友達に売ったんですけどね」「で?」「そのヤクザが、名義の本人を呼べときかないらしくて」で、奴はいそいそとヤクザの元へ出かけて行ったのである。ま、結局、話は何とかまとまったらしいが・・・ある朝、俺の携帯が鳴った。山田からであった。「ちょっと遅れそうです・・・すいません」「は?何でだ?」「事故にあっちゃいまして、多分2時間くらいは無理そうです」「・・・あ、そう」俺はそれ以上聞くのをやめた。正直言ってあきれ果てていたのである。何なんだあいつ・・・そもそも、小さな店である。従業員数も全部で4人しかいない。店は基本的に2人でまわしている。急きょ来れないその代わりなんか見つかるわけがないのである。お昼を大分過ぎた頃、山田が出勤してきた。大丈夫なのかときくと、分かりませんと奴は答えた。明らかに目がうつろであった。「休憩時間に病院に行ってきます」と奴は言った。結果、左腕と右足大腿部の2カ所にヒビが入っているとのことであった。もちろん、ギブスをするように言われたらしい。それを拒否して奴は店に帰って来たのである。「熱が出たら終わりだそうです」その日、奴は呻きながら最後まで働いたのである。他人の痛みは理解できないが、相当痛かったのは間違いないはずである。根性あるなこいつ。俺は山田のことをずい分見直した。翌日から奴は40度近い高熱を発し一週間店を休むことになるのである。その間、俺は店で死亡である。フェイスブックでその状況をつぶやくと、昔の仕事場のアルバイトの子達が店を手伝いに来てくれた。正直、これには涙が出る程感動した。何とか色んな人の助けを借りてその一週間を乗りきったのである。山田が出勤してきたからと言ってもやはり無理をさせるわけにもいかず、早上がりをちょくちょくさせた。そうすると、当然俺が店を一人で閉めることになる。夜中2時、ふっと香水の香りがした。むむむっ?気のせいか・・・何だろ?俺はまた、片づけの手を動かし始める。するとまた、ふうっと香水の香りがする。辺りを見回すが、もちろん誰もいない。俺の手足には鳥肌がびっしりと立っている。俺は、確信した。店主の生霊だけじゃないな、奥さんの生霊もいる・・・数日後、朝開店前の忙しい最中、店の外で山田が誰かと話しているのが見えた。その瞬間、俺の手足には鳥肌がびっしりとたった。奥さんであった。銀行に用があって近くまで来たからと、立ち寄ってみたらしい。申し訳ないけれど、俺は恐ろしくて奥さんの前に行くことは出来なかった。山田はニコニコしながら、奥さんが店に立ち寄った事情やら、ご主人の療養が上手くいっているらしいことを俺に話してくれた。俺は言った。「おい、山田、お前何ともないのか?お前の不運の元凶かもしれない人だぞ・・・」「あ、そうか」「ホントにあの人には申し訳ないけど、玄関に塩をまいておけ」その夜、山田のお母さんが心筋梗塞で倒れた。もちろん偶然だと思う。人間が、他人を心筋梗塞に陥れることなんか出来るわけがない。でも・・・・・山田のお母さんは、その後回復し無事退院した。発見が早かったのが良かったらしい。さて、月に一度税理士の先生が店に来て下さる。その日は、所長も一緒にいらしていた。事の顛末を俺が話すと息子の税理士が言った。「そうですか、そういうお話をしてくださったのなら申し上げますが、実はオープンの日ですね、お座敷に座らせていただいたんですが、所長が途中で具合が悪くなってしまったんですよ」「はい・・・」ああ、そうかあの時のよそよそしい態度は、具合が悪かったからなのか。「と言いますのは、以前の店主の方の念と言いますか思いが強烈に残っていまして、苦しいとか痛いとかつらいとかそういったものがですね、壁やら床やらに染みついているんですよ」「はい・・・」「恐らく、店が夜遅くに終わってから、そのまま4時まで仮眠をとられて市場に行ってらしたと思うんです、その仮眠をとられていたのがお座敷のこの席なんですよ」俺は一気に自分の毛穴が縮むのが分かった。そんな話は税理士にいっさいしていないのだが、確かに店主があそこで仮眠していると俺に言っていたのを思い出したのである。しかも、朝の4時と言っていたのである。「おはらいに行った方が良いです、そしてお札をキチンと飾って水やら米やら塩をお供えして毎日取りかえた方がいいです」翌日俺は近所の神社でおはらいをしてもらった。それからは、一応落ち着いている。後日談。店を手伝いに来てくれた女の子が、膝の手術をすると言っていた。靭帯の手術である。バスケット選手であり、現役復帰するには9か月の期間が必要らしい。結構な大手術である。その子が店を手伝ってくれている様子を写真に撮って俺はツイッターにアップした。写真共有サイト上に写真はアップされている。その子の隣には、お祓いに行った神社の鳥居の写真が掲載されている。しかも、同じ写真が3枚である。しかし、その3枚はツイッターにはアップされていない。何回アップしようとしても、アップできなかったのだ。数回のトライの結果、同じ写真が3枚並んでいるのである。ツイッターにはアップ出来ていなくても、写真共有サイトの俺のページにはアップされているのである。あまり気分がよろしくないから、俺はその写真3枚を何回も削除しようとした。一端は消えるのだが、次にログインすると何故だかまたその3枚は掲載されているのである。ちなみに、違う写真をためしてみると簡単に削除できるのである。隣の女の子の写真にも明らかにバグがあり、映像自体がちょっと歪んでいるのである。女の子の手術は翌日である。これって、何かの警告なのか・・・俺は、何だか気味悪くなって写真共有サイトのアカウントごと削除するという強硬手段に出た。それでやっと写真は消えたのである。俺は女の子の手術が心配になって来た。仕事が終わってから夜中、俺はお祓いに行った神社に再度お参りした。「どうか、彼女の膝の手術が上手くいきますようにお願いいたします」手術は成功した。当たり前だ。科学が発達した現代においてそんな超常現象的事態がそうそう続いてなるものか。ちなみに、手術の朝、俺は店で釘を踏み抜いて足の裏を負傷した。自転車はパンクした。つまり、自転車の足まわりである。なあ、神様、そういうこと?手術を成功させてやるかわりに、お前もちょっとくらい痛い思いしろ、てこと?さて、そもそもの疑問なのだが、なぜ店主の俺に何事も無いのに山田にだけ不運が次々に襲いかかって来たのか、その理由を税理士はこう言っていた。「あなたはお父様に守られているから大丈夫なのです」それをきいて、俺の気持ちは一気にグジャグジャになってしまった。つい一年前、癌を患い生死の境をさまよっていた父に俺は守られているというのか・・・人間は一人で生きている訳じゃない、という言葉をよくきく。俺は何も分かってなかったのだな、と改めて思った。俺は一人で生きてきたような気がしていたけれど、それはとんでもない思い違いであった。皆に助けられて俺は生きている。その話を俺は山田にした。山田は言った。「それって、どういうことですかね?俺も守護霊的な誰かに守られているってことですかね?」「いや、お前の肩の辺りは空き家であるか、もしくは誰かがいたとしても、超弱いかのどっちかだな」「じゃあ、どうすれば良いんですか?」「さあな」

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    • 近況報告1

      つい、2ヶ月前から店を始めた。現時点では激烈に赤字で、さてどうしたものかと日々思い悩んでいるのである。しかしそれでも、何だか楽しいのである。一緒にやっている社員の山田(26歳)も充実した日々を過ごしている。彼の表情はまるで、何かに挑戦しようとする大航海時代の船乗りのように希望に満ち満ちているのである。いや、正確に言うと満ち満ちていた、のである。というのも、にわかには信じられない、恐ろしい程の不運と不幸が次々と襲いかかり、彼の表情から希望を奪い去って行ったのである。そして、それは現時点でも進行中である可能性を否めないのである。これから、この約2ヶ月間に起こった事態を順を追って説明していこうと思う。ま、当然ながら至近距離にいる俺は山田の不幸と無関係でいることは出来なかったのである。つまり、かくいう俺も奴の不幸の渦に巻き込まれてしまったのである。さて、俺が借りた店は、お寿司屋さんの跡地である。いわゆる居抜きという形で借りたため、そのお寿司屋さんの機材一式もろとも譲り受けることになったのである。居抜きという形態は、低投資で開業できるというメリットがある。その反面、いらない機器類や皿まで譲り受けるというデメリットもある。そしてさらに、大幅な内装外装工事等を行わない場合が多いから、地域住民の方々から以前のお店の印象を払しょくすることが難しいのも大きなデメリットである。そのお寿司屋さんは23年間営業し、地域の方々に愛されていたお店であったようだ。実際、数回そこの店主にお会いしたが、非常に感じの良い方であった。そして、その店主の傍らには必ず奥様が寄り添うように立っていた。奥様は若い頃は、さぞ美しかったであろうことが偲ばれるお顔立ちであった。地域の方に愛され、繁盛し、店をたたむ理由は何も無いように思うのだが、人生全てが上手くいくわけではない。ご主人が病を患い、命の危険もあるとの診断を下されたらしい。実際には辞めたくないのですよ・・・とご主人はおしゃっていた。繁盛店を閉めるのである。くやしく無いはずはない。そういう、様々な方の思いの詰まった店を我々は譲り受けたのである。身の引きしまる思いであった。不必要なものを捨て、徹底的に掃除をし、ほぼ手を加えぬまま6月1日店はオープンした。ゆかりのある様々な方が店に来てくれた。お花もたくさんいただいた。ありがたい限りで、感謝という言葉をこれほど心から発したことは初めてであった。来客の中に、税理士の先生親子もいた。今回からお世話になっており、区の創業無料相談所に紹介していただいた方である。ものすごく親切な方で、料金も良心的で、店の経営の様々な相談に親身にのって下さるのである。所長は70歳を超えており、それでもカクシャクと精力的に仕事をこなされているようで、このあたりでは顔役的立場でご活躍されているようであった。その息子も同じく税理士で物腰やわらかい青年である。お帰りの際に俺は席にご挨拶に伺った。息子の方は、いつものように「ごちそうさまです、大変おいしかったです」とにこやかにおしゃった。しかし、所長の方はしかめっ面で対応もよそよそしくて、俺はものすごく違和感を感じたのである。何か、失礼があったかな・・・とは思ったが、忙しさに紛れてそのことはすぐに忘れてしまったのである。オープン後まもなく経ったある日の夜、山田が青い顔をして俺に言った。「父親が事故にあったみたいです・・・今メールが来ました」「え、マジ?!じゃ、じゃあ、とにかく帰れ、で容態は?」「・・・危ないみたいです・・・すいません」と山田はうなだれて帰って行った。翌日、憔悴した顔で山田は出勤してきた。「で、大丈夫だったのか?」と俺は訊いた。「はい、もう大丈夫です、朝方持ち直しました」「そうか、良かったな、大事にならなくて」そしてまたある日、山田が言った。「今後、電車で通おうと思います」ちなみに、店から奴の自宅までは10キロ程ある。店が終わるのが遅いから電車通勤は不可能なのである。だから、山田はバイクで通勤していたのである。「は?何で?バカじゃねえの?」と俺。「いやあ、あのう・・・免停になっちゃいまして・・・」「はあ?!」「あいつら、汚いんですよ、あんなん絶対引っかかりますって」「はあ?!」「ちょっと一時停止しなかっただけですよ!そんで陰に隠れててウ~つって出てくんですもん、運が悪いよなぁ」「・・・・・」山田の運転が問題だらけであることは、奴の元カノやら色んな人から聞いている。基本的に運転が荒いのである。実際に元カノは、奴が前の車にオカマを掘るという事態を引き起こした際、その助手席に乗っていたそうである。正確には分からないが、どうやら奴の居眠り運転が原因であるらしかった。そんな奴が、運が悪かった、などとほざいているのである。その発言に何の説得力があろう。「何だお前、終電で帰るつもりか?」と俺。「いやあ、仕方無いですよね」と山田。「・・・・・」こいつぶっとばしてやろうか!「チャリで来い」「・・・マジですか?」「マジだ、自業自得だ」結局、奴は数日チャリで通うはめになり、大慌てで講習会に参加して免停を解除してもらったのである。そしてまたある日のことである。休憩を終えて山田は店に帰って来た。心なしか元気が無い。「なんだ、どうしたんだ?」と俺。「いやあ、財布をパクられました」と山田は言った。「はあ?」「俺の財布長いじゃないですか、だから自転車のカゴに入れてホームセンターに向かっていたんですよ」「うん、で?」「そしたら、おじいさんが道を教えてくれって言うから、自転車から降りて教えてあげてたんですよ」「うん、そりゃ親切な話だな」「で、ですね、教え終わってまた自転車に乗ってホームセンターに行ったんです、そこでべニア板を買おうとレジに並んで初めて自分が財布を持っていないことに気付いたわけです」「ほう」「あ、自転車だ、と思って大急ぎで自転車の所に行ったんですけどもう無いわけです、で考えたんですけど、俺ホームセンターで財布を持って降りた記憶がないんですよ、ということは、あのじいさんに道を教えている時しか考えられないんですよ!」「じゃあ、何か?じいさんと誰かがグルになってということか?」「そうです、間違いないです!」ちなみに、この山田物をあちこちに置き散らす癖がある。それを知っている俺としては、奴の話を丸々信じることが出来ないのである。こいつどうせどっかに置き忘れたんじゃねえの。で、休みなく朝から晩までフラフラになって働いている最中、奴の貴重な休憩時間は数日間に渡ってその事後処理に追われてほぼ無くなっていくのである。クレジットカードを止めたり再発行したり、、免許証の再発行、保険証の再発行エトセトラエトセトラ、我が身に同じ事態が起こった場合きっと俺は発狂していると思う。考えただけでめんどくせえ!さて、長くなりそうです。続きは次回。あ、そう言えば前回の話の続きを書いてません。申し訳ない。近々必ず書きます・・・・・・多分。

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  • 14 Jun
    • ありがとう

      皆様お久しぶりです。プライベートが現在、人生のかなり大きな転機の真っただ中でございましてなかなか更新できずにおります。そこら辺の事情もそのうち詳しく書けるのではないかと思っております。さてそんな最中、一つのくぎりとしてこれまでの仕事のことを書いておこうと思います。さて、前職で俺は飲食店の店長っぽいことをやっていた。自分の店をやりつつ、他店の店長たちを指導するという役回りを任されていたのである。先日、その内の最後の一店を後にした。静かに色んな感慨をもって俺はその店を去ったのである。7,8年前、社長に『面倒を見て下さい』と言われて行くようになったその店は、当初ホントにひどかった。店内は雑然と散らかっており、従業員は私語をし、お客様がイライラしていようともお構いなし、それはそれは最低な店舗であったのだ。当然、そんな店が黒字なんかであるわけが無い。赤字である。得てして赤字店舗では、マイナスのスパイラルが発生しやすい。赤字店舗であるという認識は、働いている従業員達を卑屈にしてしまう。そして、そんな彼らは赤字の原因を外的要因に求める傾向がある。今日は雨だからとか、街自体が活気が無いとか、競合店ができたからとか、そういった言い訳を次から次へと考え出して来るのである。まるで他人事であるかのようにそう言うのである。自分たちに原因があるなんてことは、露だに思わないのである。さて、見た目で他人を判断してはいけないと言うのは、いい大人なら誰でも知っている。もちろん、俺もその一人だ。しかし、何事につけても物事には限度というものがある。「初めまして中川です」とその店の店長が俺に挨拶をした。「あ、ああ、は、初めましてミムラです・・・」な!俺は、思わず後ずさってしまった。か、髪型が・・・ド、ドレッド・・・・!!ちなみにその店は、全国チェーンのしゃぶしゃぶ店である。ありえねぇだろ・・・「社長から聞いてます、この店を今後手伝って下さるんですよね?」と中川は言った。「ええ、そういうことになってます」と俺。「早速で申し訳ないんですけど、俺明日からどうしても行かなければならない用事があるので、2,3日お店をお願いしても良いですか?」は?こいつは何を言っているのだ?「明日から?」「はい、明日からです」ちなみに俺が勤めている店は『とんかつや』である。『しゃぶしゃぶや』では無い。だから、今日来て明日から『しゃぶしゃぶや』を切り盛りするのは不可能なのである。こいつバカじゃなかろうか?「いくら何でもそれは無理でしょ」と俺は言った。「・・・そうですよねぇ・・・でも、どうしても行かなければならないんですよね」と中川は困り果てたように言った。「そう言われてもなぁ・・・・で、何があるんですか?」と俺。「ええ、彼女とスノボに行く約束してるんですよね」と中川は眉根を寄せたまま言った。は?す・の・ぼ?こいつ完全に仕事舐めてるな・・・そんな状況にもかかわらず、中川は翌日からスノボに行ってしまったのである。で、中川が居ない2,3日中の店の段取りはもちろん出来ているものと思っていた。しかし、蓋を開けてみてそれが俺の勝手な思い込みであったことが判明したのである。奴は、翌日以降のシフトを作成することなく、店を後にしていたのである。ありえねぇだろ・・・緊急事態である。何回も中川に電話をした。しかし、すぐに留守電に切り替わってしまって、奴と直接話すことはなかなかできなかった。つまり、奴は電話に出る気が無いということである。ふざけやがって・・・まあ結局、アルバイトリーダーの大東君が一流大学に通う優秀な切れ者であったから何とか乗り切れたが、シャレにならない事態であったことは間違い無い。このように、世間の尺度から言えば中川店長はいい加減である。もっと言うならば、無責任である。しかしこれが、何と言えば良いのだろう・・・うーん、どうやら彼は彼なりに頑張っているような様子が見てとれないこともないのである。結果から言えば、翌日のシフトが出来ていなかったり、店が雑然と汚かったりとロクでもない事実が列挙されるのだが、本人は真面目にそのことを気に病んでいたりするのである。前任の店長が体を悪くして店を辞め、その後店長不在という状況が半年程続いていたらしい。その半年間は、当時はアルバイトの一人であった中川を中心にして何とか店をまわしていたらしい。そのような状況が続けば、当然ながら売上は落ちていく。そして、もうこれ以上は落ちようがないところまで落ちたところで、社長が中川に頼み込んで店長になってもらったのである。それも、正式な社員ではなく、アルバイト店長としてである。そもそも、中川は音楽がやりたくて上京してきたのである。飲食店の店長になりたくてではない。だから、「アルバイトでなら・・・」と渋々店長を引き受けた次第なのであった。で、引き受けたは良いのだが店長業務というものを誰も教えてくれかったのである。フランチャイズ本部のスーパーバイザーがその任にあると言えば言えるのだが、実際には彼らは複数店舗を担当しているため、一店舗の店長だけに手取り足取りという訳にはいかないのである。結果、中川店長はほぼ放置されているという状況であったのだ。つまり、彼は良い店にしたいという思いはあるのだが、その方法が分からないという状態であったのだ。長くなりそうですので、今回はここまでにしておきます。書き始めて分かったのだが、今回は相当長くなりそうです。さてさて、書ききる自信が全くないのだが・・・どうしたものか・・・

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  • 04 May
    • 事の顛末

      個人で店をやっている方は、店とは別に自分の棲家のために家賃を払うのはちょっとつらいな、と 一度は思ったことがあると思う。俺もそうだ。そう思って、ニョロニョロと一緒に住み始めたのがちょうど一年前のことになる。正直言って、元来俺は野心が無い。社長になりたいなんて一度も思ったことがない。俺の理想の生き方は、『晴耕雨読』なのである。そんな男が、ふと社長になろうかな、と思ってしまったのである。魔が差したとしか言いようがない。当然ながら、これまで社長になるための勉強というものをしてきていない。だから、この一年間俺は図書館にこもり、片っ端から実学書を読み飛ばしてきた。世の中の人はこんなことはきっと分かっていると思うのだが、俺がこれから歩き始めようとしているこの道は、すでにあまたの先人達が歩いた道であり、そうするとそこにはすでに色んなノウハウが積まれているのである。会社が大きくなっていく各段階で、こういう問題が起こりますよ、と予言のように書かれている本が図書館や本屋の棚に並んでいるのである。そんなもの、読まない方がどうかしている。すげえ・・・なんて感心しきりである。そりゃあ、世の中の人が勉強するはずだ。で、今回エイヤッと気合を入れて物件探しに本腰を入れてから約5か月、とうとう見つかったのである。あれだけ無かったのに、見つかる時はあっさりである。たまたま入った不動産屋で、明らかに、私今ちょっと出かけなきゃいけないのだけどね、あんた達が入って来たから行けなくなっちゃったじゃないのよ!あたしは今ものすごく忙しいんだからね!!的オーラをビシビシ発散させたお姉ちゃんが面倒くさそうに出してきた物件が、実はビンゴだったりしたのである。巡り合せなんて分からないものである。ものすごく親身になって何件も紹介してくれた不動産屋さんには、結果、良い物件がなかったりしたのである。不思議なものである。さて、不動産の契約を済ませて初めて俺は、もう後戻りできないな、という覚悟がやっと固まったのである。ニョロニョロと店をやろうな、という話をしたのはいつだったのだろう。少なくとも、3年位前ではあったはずだ。その時点では、リアルな話ではなく、俺にも奴にも何の覚悟も無かったのである。店をやろうなと言いながらも、俺は本気で言っているのだろうか、と自分でも自分が言っていることを疑っていたのである。だからその時点では、社長になる勉強なんてするわけが無いのである。それが、いよいよ具体的になったその矢先、なんと、ニョロニョロが夜逃げしてしまったのである。奴が一週間帰って来なくなった時点で初めて、俺はその異常に気付いた。奴が2日、3日帰って来ないことは別に珍しく無かったので、まったく気にしていなかったのである。おかしいなと思って、奴の部屋の荷物をチェックしてみたら通帳やPSPやらが無くなっていた。しかし、9割以上の荷物は残されたままだった。慌てて、逃げたという感が明らかに漂っていた。奴が帰って来なくなったその日は、仕入先を精査して仕入れ値等を奴が俺に報告する予定になっていたのである。逃げ出すくらいだから、要はそれを全くやっていなかったということであろう。もしくは、出来なかったのであろう。これも、昨日今日依頼した話なんかではなく、一年前から進んでいた話である。仕入先は押さえてある大丈夫です、という奴の話を俺は丸々信じていたのである。それが、嘘だったということだ。他にもこういう会話が俺と奴との間で、よく交わされていた。「俺の貯金が今〇〇万円ある、お前はいくらあるのだ?」と俺。「青森の実家に200万円預けてあります」と奴は言った。さて、ここで奴が青森に200万円預けることになった顛末を説明する。奴は、キャバクラが大好きである。俺が奴と知り合った十数年前の時点で、奴はすでに借金まみれであった。確か200万円の借金であったはずだ。ちなみにすべてがキャバクラの代金である。バカである。このように、元々おつむが弱いのである。当時働いていた店に借金とりがしょっちゅう現れていたのである。そんな時、このブログの読者ならご存知かと思いますが、あのヤ〇ザの青木さんが助け船を出してくれたのである。ニョロニョロに弁護士を紹介してくれたのである。それによって、あちこちにあった借金が一つにまとめられ、どのように返済していくかの道筋が見えてきたのである。ちなみに借金取りは弁護士が絡んだ瞬間に、取り立てが出来なくなる。ニョロニョロはやっと安心して眠れるようになったのである。そんな矢先、突然、なんと弁護士が居なくなってしまったのである。雲隠れである。数日後、テレビのワイドショーでその弁護士が取り上げられていた。『悪徳弁護士雲隠れ!被害者が告発!』何をやったのかは忘れてしまったが、当時結構大騒ぎになるほどの事件ではあった。つまり、ニョロニョロの借金は宙に浮いたままになってしまったのである。当然、引き続きサラ金も取り立てを行うことができないのである。そのまま、数年が過ぎた。その間、俺は「200万円なんていう大金がウヤムヤになるなんてことは絶対にないから、お前貯金しておけ」と常に言い続けたのである。で、やはり世の中そんなに甘く無く、200万円であったはずの借金がある日突然、500万円となってニョロニョロの前に現れたのである。数年間ほったらかしにしておいた利子が膨らみに膨らんだわけである。そんなものは払えるはずも無く、結局奴は自己破産したのである。その際、貯金していた200万円を実家の通帳に移し替え没収を免れるという、クズっぷりを発揮したのである。それが、実家にある200万円の正体である。「俺の貯金が今〇〇万円ある、お前はいくらあるのだ?」と俺は言った。「青森の実家に200万円預けてあります」 とニョロニョロは答えた。「じゃあ、その200万円を使って俺と共同経営者になれば良いんじゃないか?今さら俺に雇われても仕方ないだろ?」「そうですね」「じゃあ、とりあえずその時が来たらその200万円は出資しろ、そして店をやるまでにもっと貯金しておけ」「分かりました」そんな、会話が幾度となく繰り返されて来たのである。5か月前に、本腰を入れて物件を探し始めた際、「じゃあ、そろそろとりあえず例の200万円を俺に渡しておけ」と俺は言った。その数日後、奴は「あの、200万円の件ですけど、東日本大震災が起きた時に東北の親戚に親があげてしまっていました」と笑いながら言った。は?である。その時疑えば良かったのである。そもそも、200万円なんていう大金を本人に黙って親がどうにかしてしまう訳がないのである。しかし、俺の思考は東日本大震災というキーワードによって停止させられてしまったのである。じゃあ仕方ないかな、と思ってしまったのである。しかし、奴が笑いながら言っている時点で俺は切れるべきであったのだ。「で、店をやる金はどうするんだよ?」と俺は静かに言った。「貯めます」と奴は答えた。俺と一緒に住む半年ほど前から、奴は社員として週末2,3日だけ働き、25万円の給料をもらっていた。これは、たまたまそうなっただけで、奴が優秀だからとかいう理由ではない。説明がややこしいので、ここでは端折る。その半年の間、週に2,3日しか働いていなかったのである。残った日は何をしていたのか訊くと、ずっと家にいてテレビを見ていたらしい。クズである。残った日は、バイトでもしたらどうだ?という俺の意見で奴はやっとバイトを始めたのである。だから俺と一緒に住み始めてからは、奴は平日のバイトと週末の仕事で月に50万円位稼いでいたのである。奴の、貯めます、という返事にはきちんと裏付けがあったのである。そして今から3か月ほど前、奴は貯金が100万円あると俺に言っていた。「じゃあ、とりあえずその100万円を持って来い」と俺は奴に言った。数日後、「税金の支払いで、全部使ってしまった」と奴は言った。さすがに俺はぶち切れた。ボロクソに説教した。すると、奴は約一週間家に帰って来なかった。その後、知り合いから借りて金は用意するということで、話はまとまった。一か月程前、そろそろ金を用意しておけと俺は言った。数日後、「金は借りれませんでした」と奴は言った。「で、何人に土下座してまわったんだ?」と俺。「いや、土下座はしてませんけど・・・」「何人に頼んだんだ?」「・・・2人です」「は?たった2人?しかも土下座もしてないの」「・・・・・」「どこの誰が、お前みたいにだらしない奴に金を貸すんだ?しかもお前自己破産してるしな、そんな人間が、たった2人に聞いただけ?土下座もしないで?自分の立場分かってるのか?」俺の怒りは頂点に達していた。こんなバカと一緒にやる必要性がどこにある?俺は本気の奴としかやりたくない。数日後、それでも、俺は奴を許した。給料から取り立てるなりなんなりして、結果的に奴が出資したようにすれば良いかと思った。その旨を俺は奴に説明した。そして、仕入先を精査して仕入れ値等を俺に報告するように日時を指定して依頼した。そして、奴は夜逃げした。奴に送られてきた、請求書の数々を開いて分かったことは、奴が借金まみれであるということであった。家賃は、奴の口座から引き落としになることになっていた。俺は毎月奴に家賃の半額を手渡していたのである。しかし、奴は家賃の2か月分を滞納していた。三菱のクレジットカードの利用明細を開いて俺は愕然とした。キャシングは限度額の30万円まで使用され、他にもその月の支払請求額、16万円。ご利用内容の欄には、キャバクラの名前が3日と開けずに並んでいた。まさか・・・キャバクラ・・・やっぱり奴はクズだった・・・俺は、まるっきり人間てものが分かっていなかった。キャバクラで自己破産しているのだから、まさかもうそんなことをするわけが無い・・・勝手にそう思い込んでいた。甘かった、人間の業みたいなもんは、治るような代物ではなかったのだ。奴は、『女』という業から逃れられないまま、一生足元をすくわれ続けるのだろう。さらば、ニョロニョロ・・・もう、一生会うことも無いだろうな・・・

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  • 29 Apr
    • チャラ男 最終話

      松本は熱い女であった。店がオープンする時、そこの店長及び社員は大抵死ぬ。その例外にもれず、俺と桐谷も寝る暇が無くてフラフラになっていた。あんなロクデナシでもさすがにオープン当初は店の近所に泊まり込み、湘南の自宅マンションに帰れない状況に対しても不満は口にしなかった。特に22時以降の人員が不足しているのが、俺たちを苦しめていた。そんな状況の時である。真剣な顔をして松本が言った。「店長、あたしで良ければシフトに入りますよ、22時以降でも入ります、翌日が学校の日でも大丈夫です」体力的に弱ってくると、それに比例して気持ちも弱ってくる、俺は一瞬目頭が熱くなった。何ていい奴なんだ。「松本ありがとうな、でも、高校生は22時以降は働いちゃダメなんだ、法律でそう決まっているんだ、だから気持ちだけいただいておくよ」「そうですか、あたしは大丈夫なんですけどね」と眉根を寄せて松本は不満そうに言った。松本が、熱い女であるエピソードをもう一つ。ある日、ホールをやっていた松本が調理場に入って来て、「店長、あたし・・・」と俺の顔をジッと見つめて、かすれた声で言った。そして、突然大きな目からポロポロッと涙をこぼしその場に崩れ落ちた。「な!?・・・ど、どうした?」「レジで、お客さんがあたしに向かってもっと笑顔でやった方がいいって・・・」松本が笑顔が出来てないというわけでは無いのだが、 ともすると美しすぎるその容姿から彼女は少々とりすました感じを他人に与えてしまうようだ。「いや、松本、おまえ昨日よりも今日の方が笑顔出来ていたぞ」「でも・・・」とひっく、ひっくとしゃくりあげて言葉が続かない。つい先日個人ミーティングをした際、今月は笑顔を頑張ります、と松本は俺に宣言していたのである。その矢先のお客様の言葉なのである。自分なりに頑張っているつもりなのに、認めてもらえなかったことが悔しくて仕方なかったのである。「とりあえず、事務所でいっぷくして来い」と俺は言った。さて、前回の続きである。22時で上がったあと、俺と松本は事務所で話込むことが多々あった。「桐谷さん、今頃なにしているんでしょうね・・・」松本はそう言って、濡れた瞳で遠くをみつめた。「さあ、何してんだろうな」と俺。な、何だお前急に・・・しかもその濡れた瞳はどういうことだ・・・俺は嫌な予感がした・・・「誰か連絡とってないんですか?」と松本。「まあな、あんな辞め方した後だしな」自業自得だから同情の余地は無いのだが、桐谷は会社から追い詰められ辞めたのである。「もう、どこかで働いてるんですかね?」「だから、俺は知らねえよ」「ああ、そうですよね・・・」「そんなに気になるなら、メールすればいいだろ?」「いやいやいやいや、それはダメですよ!!」と急に慌てて松本は言った。もう、ここまで聞けばバカでも分かる。「お前、桐谷と何かあったのか?」と俺は言ってみた。「・・・いや、何もないですけど・・・」言葉とは裏腹に、表情は『ありました』と言っている。ほほう・・・あんなネズミ野郎とこいつは・・・あれだけ言ったのになぁ・・・「で、お前ら付き合ってんの?もしくは付き合っていたの?どっちだ?」「いやいやいやいや、付き合ってないですよ!!ホントですよ!ただ・・・」「ただ?」「いや、あの・・・」「何だよ、ほら、言えよ!」「あの、いや、行ってないですよ、行ってないですけど遊びに行く約束はしてました」「ほう、で?」「ほら、桐谷さん、中野店に移動になっちゃたじゃないですか、だからウヤムヤになっちゃったんですよね」「それは、良かったじゃねえか」「え!何でですか!」「お前ね、あいつはクズだぞ、適当に遊ばれてそれで終了だぞ」「そんなこと無いです!」はいはい、どうやら松本はすっかり桐谷に熱を上げてしまっているようであった。しかし、今の様子だとお互い連絡を取り合っているわけでは無さそうだし、まあ大丈夫だろう。その後も仕事を上がった後にちょくちょく松本と話込むことがあり、その都度桐谷の話になった。俺は桐谷とは通算すると半年位一緒に居て、特に小田原では2か月間みっちり濃い時間を一緒に過ごしていたわけであるから、まだ松本に話していない桐谷の話はいくらでもあった。しかも、その大半がロクでもない話なのである。基本的な俺のスタンスは、『桐谷はこんなにクズなのだからお前今すぐに考え直せ』である。しかし、俺がいかに桐谷のクズ話をしようが、松本の想いにはあまり影響は無いようであった。そして、一年が過ぎた。夏、湘南海岸。松本は同級生の女の子数人で湘南の花火大会を見に来ていた。花火が上がるたびに江の島の輪郭がくっきりと浮かび上がる。浜には人がぎっしりといて、出遅れてやって来た松本たちはなかなか良い鑑賞スポットを見つけられずにいた。人ごみの浜を歩きまわりながら夜空を見上げていた。突然、松本の携帯電話が鳴った。表示された名前を見て松本は驚いた。「はい」と松本は電話に出た。「久しぶりだね」と携帯の向こうで男が言った。「ど、どうしたんですか、急に?」松本は自分の声が震えるのを止められなかった。「いや、何だか懐かしくなっちゃってさ」と男。「あ、ああ、そう言えばあたし今、花火を見に来てるんですよぉ」「ふうん、そうなんだ、偶然だね、俺も今花火見てる」「え、そうなんですか、あたし湘南に来てるんですよぉ」と松本。「うん、知ってる」「え?」「俺も今、湘南にいる」「え・・・・・」「後ろ向いてごらん」と男の声は言った。大きな花火が連続で上がった。観客の歓声が遠くに聞こえている。松本はゆっくりと振り返った。人ごみの中に、笑顔の桐谷が立っていた。これは、ホントに偶然であったらしい。一年近くお互い連絡をしていないのに、十数万人がひしめきあうそんな会場で出会う確率っていったいどれくらいなのだろう・・・この出来事を松本が運命と感じても不思議では無かった。『運命ならまた遭える・・・』昔流行った、歌の歌詞をふと思い出してしまった。後日談。その数か月後、家庭の事情で松本はアルバイトを辞めた。俺と松本が個人的に会うようなことは無かったが、店に食べに来たり、弁当を買いに来てくれたりしていたからまるっきり縁が切れてしまったわけでもなかった。松本を最後に見たのは、店の裏にあるスーパーであった。「おっ、久しぶりじゃねえか」と俺は言った。「あ、店長!!」と松本は満面の笑顔で叫ぶように言った。お互い立ち話で近況を語った。「ふうん、そうなんだ、で、何今から湘南に行くのか?」「そうなんですよ」と松本は照れて笑った。「うまくいってんだな、意外だよ、あいつ浮気とかしないのか?」「大丈夫ですよ!」「ホントか?お前が、気づいて無いだけじゃないの?」「大丈夫ですって、あの人、変わりましたよ」「ふうん」桐谷が変わったとは信じられないけれど、でも、松本が幸せそうにしているのを見ると、ま、いいか、なんて思ってしまう。松本はレジに並んで支払を済ませると、俺に手を振ってスーパーを出て行った。ちなみに彼女が買ったものは、なめこ1パックであった。ここで買わなくてもそんなもん、湘南のスーパーでも売ってんだろ!またまた、後日談。ある日、アルバイトの中国人の朱君が一枚の写真を持って来た。朱君は横浜のホテルでベルボーイのアルバイトもやっていた。朱君は言った。「ものすごくびっくりしたよ、もしかしてそうかなと思って声をかけたらそうだった、店長見てこれ」差し出された写真には、ウェディングドレス姿の松本が写っていた。「え?え?どういうこと?」と俺。写真は衣装合わせの際に撮ったもであるらしかった。元々綺麗な子ではあったけれど、ウェディングドレス姿の松本は息をのむほど美しかった。複雑な思いで俺は、写真を見つめた。朱君が言った。「今度、僕がバイトしているホテルで結婚式を挙げるらしいよ」そして松本の隣には、幾分たくましくなった桐谷が写っていた。『運命ならまた遭える・・・』か。

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  • 27 Apr
    • チャラ男 その4

      新店舗のアルバイトの募集には、ずい分と苦労した。20名以上の人員が必要なのに、オープン間近の時点で15名程度しかそろっていなかったのである。だから、足りない分は前職の職場から引き抜くなどして、何とか18,9名まではかき集めたのである。で、オープニングスタッフの中には女子高生も5人いた。状況が状況であったから、オープニングスタッフに関しては面接に来た人ほぼ全員を採用したのである。選ぶ余裕などないくらい応募が少なかったということだ。それを踏まえた上で聞いてほしい。チェーン店であるからオープン日前後の一週間、本部からのオープンフォロースタッフが何人か手伝いに来てくれる。その全員が全員、口をそろえて言うのである。「ここの店、可愛い子しかいないね」と。そして、彼らは俺のことを好き者を見るような目つきで見るのである。確かに、採用した女子高生達は全員容姿端麗であった。他にもこういうことがあった。オープン後数か月が経ったある日、アルバイトに応募して来た女子高生を面接することになった。面接の方がいらっしゃいました、と事務所にバイトの男の子が知らせに来てくれた。分かった、と言って俺は事務所を出て、客席のテーブルに向かった。ん?制服の女の子とおばさんがテーブル席に並んで座っている。どういうことだ?「・・・面接の方ですよね?」と俺。すると、おばさんの方が立ち上がって、「今日は面接お願いします、これが娘です」と女子高生を見ながら言った。「・・・ああ、もしかしてお母様ですか?」俺はあっけにとられながら訊いた。「はいそうです」とおばさん。「面接をお受けになるのは、娘さんですよね?」「はいそうです」「あのう、お母様は、面接の間ちょっとお席を外していただきたいのですが・・・」と俺。「あ、そうですよね、分かりました」とおばさんは答えて席を立った。いやぁ、ホントにこういうママって存在するんだ・・・俺は気をとりなおして、面接を行った。しかし、俺の中で結論はすぐに出た。不採用だな。まず、元気が無い。覇気がない。そういう人は、接客業はやめた方が良い。向いてないから。本人もつらいだけだから。その人に能力が無いとかいう意味ではない。その仕事に向いていないという意味だ。そもそも、面接にお母さんと来ている時点で不合格だけどね。翌日、不採用の旨を書いた文書と履歴書をその子の自宅に郵送した。その数日後、不採用にした女の子本人からでは無く、お母さんから店に電話がかかって来た。「娘が、不採用になった理由を教えてくれないですか?」とお母さんは言った。うわぁ~、これは確実に面倒くせぇぞ・・・「採用基準に関しては申し上げられません、ただ今回は縁が無かったという風にご理解下さい」皆さん、いかがでしょう?無難な答えだと思いませんか?そもそも、この人の娘が何故不採用になったのかを正直に俺が答えた場合、この人も、この人の娘さんも相当傷つくことになると思うのだが・・・するとお母さんは俺が予想もしないことを言い始めた。「娘は泣いています・・・もしかして、娘がブスだからですか?ブスだから不採用になったんですか?」は?何言ってんだこの人?「いや、違いますよ」と俺。「この店で働いている女の子達は皆可愛いじゃないですか、あれはあそこの店長の好みでそうなっている、ってこの辺の人は言ってます!」ははははっ・・・何なんだ、この人・・・んなわけねえだろ!!!かわいい子が多いのはタマタマだ!!だいぶ話が脇道へ逸れてしまいました。本筋に戻します。さて、桐谷である。もちろん、オープニングスタッフの一員として桐谷もその店にいた。皆さんお分かりですよね?そう、全くもって危険なのである。誰がどう考えても明らかに危険なのである。そんな可愛い女の子達の中にあんなクズを解き放てば何が起こるか、想像は難しく無い。だから俺は先手を打つことにした。女の子の一人一人に桐谷がいかにクズかを教えたのである。だからあいつの誘いにのるな、と。狭い店内で二股三股なんてかけられたら、店が崩壊する。桐谷ならそれをやりかねないのである。他にも、例えば桐谷と女の子が同じ時間帯に休憩に入るようなシフトは作らないようにした。そういう、俺の影の骨折りによって女の子達の貞操は守られたのである。良かったよ、と安心していた俺は実は大甘の男だったのである。俺は桐谷のスケコマシ能力を見くびっていたのである。オープン3月後、今度はうちの会社の外食事業部の2号店がオープンすることになった。同じチェーンのとんかつやである。桐谷はそのオープンの手伝いで、しばらくうちの店を離れることになった。実は、これは会社側からの嫌がらせでもあったのだ。桐谷は、小田原での研修期間中にすっかり俺を初め、浅井事業部長、社長の信用を無くしてしまっていた。会社全体の意思としては、桐谷は辞めさせる方向に、ということで固まっていたのである。ちなみにうちの店は、大田区にある。桐谷の住まいは湘南である。飲食店をオープンさせるにあたって、社員が店の近くに住んでいないというのは結構不便なのである。だから引っ越しなさい、会社は引っ越し費用も出すし、家賃補助もしますと言ってくれていたのである。そもそも入社の時点で、引っ越しは可能かどうかという意思の確認がなされているはずなのである。なのに、桐谷はこの期に及んでも引っ越しを拒否していたのである。その理由が、「今住んでいるマンションが湘南海岸の目の前にあって、ベランダからは海が見えるし、何と言っても湘南の花火大会が家に居ながらにして特等席で見れる、だから引っ越しは嫌だ」ということらしのだ。理由がチャラチャラしているのが、イラッとするのである。そうなってくると、長時間の通勤があるから遅い時間帯の勤務を露骨に嫌がるのである。その負担は、俺や浅井事業部長に降りかかって来るわけである。で、その2号店であるが、桐谷にとったら大田区でも遠いのに、もっと遠い中野区がその住所であった。通勤時間はもっと長くなるわけである。明らかに、嫌がらせである。2か月間くらいは、中野まで桐谷は通っていたようであるが、最後はとうとう根をあげて辞めたようであった。さて、松本という女の子がいた。容姿端麗な女子高生5人の中の一人である。ある日、事務所で松本が言った。「桐谷さん、今頃何しているんでしょうね・・・」桐谷が会社を追われるようにして辞めた数週間後の発言であった。松本は美しい濡れた瞳で遠くを見つめながらそう言ったのである。むむむっ、ま、まさか・・・そういうことなのか?続きは次回。

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  • 23 Apr
    • チャラ男 その3

      2か月の長丁場の研修生活の間、週に1回は事業部長の浅井さんが我々を慰問に訪れていた。その4,5回目の慰問の際の俺との面談で、「基本的に俺はミムラに店長になってもらいたいのだが、研修の最後に実施される筆記試験で点数が良かった方を店長にすることに決まった」だから頑張ってくれ、と浅井さんは言った。なるほど妥当な結論だが、俺はどうしてもすんなりと受け入れる気持ちになれなかった。桐谷の素行の悪さを理解していれば、絶対にそういう結論には至らないはずなのである。さすがに一か月、二か月と過ごすうちに浅井さんも、薄々そのことに気付き始めていたのだと思う。だから、先ほどの発言になったわけである。ということはつまり店長選定方法の決定は、桐谷と接触がない社長の意見ということになる。でも、ま、要は俺が試験で負けなければ良いわけだ。そういう会社側の思惑を知ってか知らずか相も変わらず桐谷は、要領よく適当に研修をやり過ごしていたのである。店長の前では無駄口も叩かずもくもくと働き、積極的に質問をし優等生を演じていたわけである。あ、ちなみに店長の名は徳井という。で、もちろん徳井店長の不在時は、これまでどうりである。バイトの女の子にちょっかいを出し、べらべらしゃべり、そりゃあもう楽しそうに働いていたのである。俺をはじめ良識ある面々はその様子をただ冷ややかに眺めていたのである。そして、俺は確信していた。こんな奴に負けるわけがない、と。しかし、事態は俺の思惑とは裏腹に進み始めていた。つまり、桐谷の権謀術数が静かに進行していたのである。そしてある日を境に何の前触れも無く、ん?と思う不自然なシフトが組まれるようになった。俺のシフトがほとんど調理場になっていたのである。一方、桐谷のシフトは全てホールなのである。元来、俺は調理場が好きであるからそれはそれで構わないのだけれど、研修ということから考えればおかしなシフトなのである。そのまま、一週間、二週間と経過し2か月の研修期間の終了が近づいて来た。俺は、今の事態を事業部長の浅井さんに報告した。浅井さんもおかしいと思い、徳井店長にどうなっているのかを問い合わせた。すると、「桐谷さんを店長候補として私は考えています、だからそういうシフト組にしました」と答えたのである。皆さんこれが相当深刻な事態であることをご理解いただけるだろうか?ではここで少々、フランチャイズ本部とその加盟店の関係について説明します。本部と加盟店は同じ屋号の看板を掲げてはいても、会社自体は別である。つまり研修先の徳井店長は、俺の上司では無いのである。 本部にとって加盟店はいわばお客様なのである。そのお客様である会社の社員をお預かりして、店舗を運営できる技術を教え習得させるのが研修であるわけだ。それが、たかだか本部の一店舗の店長が何の相談も無く、そういう職務権限もないのに、お客様である加盟店の会社の人事を勝手に決めてしまったである。徳井店長が『使えない男』と言われる所以はこういうところにあるのである。当然、うちの会社側は激怒である。で、社長が本部に怒鳴り込むという事態になってしまったのである。本部は平身低頭、正式な謝罪が行われ、事は一応収束したのである。後々、詳細を徳井店長に聞いてみたところ「桐谷さんが、『うちの社長がどちらを店長にするか徳井店長に決めてもらいたいみたいなことを言ってましたよ』って言うからじゃあそうなのかなと思いまして」とうつむきながら言った。やはり、桐谷か・・・にしたって、軽率だろ、お前!さすが『使えない男』、目が節穴である。ちなみに徳井店長が『使えない男』である事例を他にも2,3紹介しておこう。まず、何より衝撃的に店が汚い。例えば、俺はフライヤーを何とかピカピカにしようと頑張ってみたが無理であった。数年分の油が層になってこびりついていて、とてもじゃないが太刀打ちできなかった。ガラスも汚いし、床も汚い、事務所も汚い。ひどいものである。そして、従業員教育ができていない。ラストの従業員が平気で余った食材を持って帰る場面に何回も遭遇した。生ビールを勝手に飲んでいる場面にも遭遇した。もちろん、お客様に対して笑顔なんかまったくない。確実に平均点以下の店であった。そうこうしているうちに、研修の卒業筆記試験の日がやって来た。300ページのマニュアルをすべて頭に叩き込んで俺は試験に臨んだ。万が一にも不合格になるようなことは無いだろうが、要は問題は点数である。桐谷よりも良い点数をとってくれという、浅井事業部長からの命令があるのである。しかも、研修が終了する頃には浅井事業部長だけでなく、社長も桐谷がロクデナシであることを理解したようで、やはり俺に桐谷よりも高い得点をとることを期待しているようであった。そのプレッシャーたるや、俺の胃は2,3日の間、ドスンと重く痛み続けていたのである。翌日、試験の結果が発表された。何点であったのかは教えてもらえなかったが、何とか俺は桐谷の点数を超えることができたのである。よって、新店舗の店長は俺に決定したのである。嬉しさよりも、ただただホッとしたというのが正直な感想であった。しかし、ここでもやはり問題が発生していたのである。試験問題の管理の問題である。試験問題は、店の金庫に保管されていた。金庫のキーは、徳井店長とアルバイトリーダーの女の子が持っている。で、アルバイトリーダーの女の子は、とっくに桐谷にやられてしまっている。それは、桐谷本人が言っていたから間違いない。さて、試験の内容である。実はこの試験問題、100点をとることが不可能なように出来ていたのである。要は、試験範囲であるマニュアル本の300ページには書かれていない問題が一題紛れ込んでいたのである。もちろん俺はその問題は不正解であった。しかし、どういうわけか桐谷はその問題に正解していたらしいのだ。皆さん、もうお分かりですよね?つまりそういうことです。おそらく、アルバイトリーダーの女の子に事前に金庫を開けてもらって試験問題を盗み出していたということです。いやもう、ホトホト嫌気がさすとはこのことである。クズとは、奴のためにあるような言葉である。状況証拠しかないから、どうせ問い詰めても口八丁手八丁で言い逃れられるのがオチである。社長、浅井本部長そして俺はギリギリした思いを抱えたまま、ただ桐谷を見つめるしか無かったのである。さて、今回はここまで。店がオープンし、また問題が発生します。次回は恋の話です。

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