ネットプロレス大賞2014結果寸評 | KEN筆.txt

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プロレスポータルサイト「ブラックアイ2」にて実施された「ネットプロレス大賞2014」の集計結果が14日、発表された。これは「サイト管理人(Twitter、facebook、mixi含む)、ブロガーなどを中心に日々、インターネットを通じてプロレスを楽しんでいるファンの投票により決定するプロレスアワード」で、回を重ねて今年で9度目の実施となる。
 
純然たるファン運営による企画であり、マスコミや選手、団体のフィルターがかからぬデータになる一方、あくまでもネットというくくりのもとにおこなわれているためこれをもってプロレスファンの全体像とはならないが、ネットツールを利用してプロレスを楽しむ層がどのようなところへ着眼、評価しているかの傾向をつかむための資料として大いに参考になると思い、週刊プロレス在籍時代からコラム等で紹介し続けてきた。ましてやこの数年、新日本プロレスやDDTのようにネットを有効に活用する団体が実績につなげてきた事実を踏まえれば、最大公約数と著しく離れた結果とはならないだろう。
 
東京スポーツ紙選定プロレス大賞を筆頭に、週刊プロレス誌が実施し読者投票で決められる「プロレスグランプリ」やサムライTV番組「インディーのお仕事」制定「日本インディー大賞」などのメディア主宰アワードが並ぶ中、独自のスタンスのもと決められることから年々注目度も増し、ランクインした選手や団体、関係者にとっても励みになる存在たり得ていると思われる。同時に、投票する側の関心も着実に高まり、今回の総投票数は前回の236から1.5倍以上増の368と史上最多に。2006年の第1回は64で、地道に継続してきた結果6倍ものファンがこのイベントへ参加するようになった。
 
例年同様サイト管理者の杉さんは、なんの見返りもないのに使命感でこの集計を担当された。実行委員会制ではなく、個人の情熱でここまでやるのは毎年のことながら頭が下がるし、そうした姿勢に感じるものがあって参加したネットユーザーも少なくなかったはず。また、2012年からはネットユーザーのひとりであるそーさんが集計等で協力しており、横のつながりに関してもあくまでプロレスファンのみとなっている。
 
1位=10点、2位=6点、3位=3点の得点制で集計した結果、全7部門は以下の通りとなった。各賞10位までの紹介だが、それ以外もどんな顔触れとなっているかをぜひサイトに飛んで確認していただきたい。下位にいけばいくほど意外な選手や団体、試合に当たり、それがまた興味深いのだ。
 
 

★MVP(最優秀選手賞)
1位…棚橋弘至 811点(55/38/11)
2位…AJスタイルズ 787点(58/27/15)
3位…HARASHIMA  658点(46/22/22)
4位…中邑真輔 496点(34/20/12)
5位…オカダ・カズチカ 284点(14/17/14) 
6位…飯伏幸太 167点(8/10/9)
7位…柴田勝頼 162点(9/8/8)
8位…石井智宏 144点(3/14/10)
9位…木高イサミ 140点(2/15/10)
10位…関本大介 125点(8/5/5)
※( )内は1位/2位/3位の票数(以下同)

 


プロレス大賞、プロレスグランプリ、日刊スポーツ制定「日刊バトル大賞」同様、ネットユーザーが選ぶMVPも棚橋になったのは、マスコミとファンの認識の間に大きな乖離がなかったことを表している。リング上の実績はもちろん、業界の顔として世間との矢面に立ちプロレスを発進、伝えてきたその姿勢も含めての評価(最優秀プロレスを伝えたで賞でも著書が6位になったほか、個人としても39位に入っている)。まさに、棚橋弘至そのものがプロレス伝道のツールとなった。
 
その棚橋と最後までデッドヒートを繰り返したのがAJ。投票受付を開始した直後には得票で上回る日もあったとのこと。その後も競り合い、一時は2点差まで迫った。上位10人中7人が新日本関連の中でDDTのHARASHIMAが3位となったのは特筆すべきこと。日本インディー大賞ではMVPに選ばれており、防衛戦をおこなうたびにKO-D無差別級王者として見る者を脱帽、唸らせる強さを見せつけてきたことで絶大なる信用を持たれるエースの評価を定着させた。団体をけん引する立場にある者としてやるべきことをキッチリとやり続けている点では、新日本の棚橋に通じるものがある。
 
女子では藤本が11位にランクイン。以下、新潟のローカル団体所属でありながらササダンゴが12位に。脳梗塞を乗り越えて復帰を果たしたGENTAROが17位。
 
☆最優秀試合賞(ベストマッチ) 
1位…新日本8・1後楽園ホール(G1クライマックス公式戦) AJスタイルズvs鈴木みのる  684点(54/18/12)
2位…新日本8・17西武ドーム(G1クライマックス優勝決定戦) オカダ・カズチカvs中邑真輔 470点(35/14/12)
3位…DDT9・28後楽園ホール(KO-Dタッグ戦) 飯伏幸太&ケニー・オメガvs竹下幸之介&遠藤哲哉 232点(16/10/4)
4位…新日本1・4東京ドーム 後藤洋央紀vs柴田勝頼 205点(13/11/3)
5位…新日本6・8国立代々木競技場第二体育館(ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア優勝決定戦) KUSHIDAvsリコシェ 181点(7/13/11)
6位…新日本10・13両国国技館(IWGPヘビー級戦) AJスタイルズvs棚橋弘至 168点(12/6/4)
7位…新日本6・21ボディメーカーコロシアム(IWGPジュニアヘビー級戦) 飯伏幸太vsリコシェ 161点(11/6/5)
8位…新日本9・21神戸ワールド記念ホール 棚橋弘至vs柴田勝頼 141点(9/5/7)
9位…DDT8・17両国国技館(KO-D無差別級サバイバル3WAY戦) HARASHIMAvsケニー・オメガvs木高イサミ 129点(9/4/5)
10位…DDT8・17両国国技館(DDT EXTREME級戦) 男色ディーノvsマッスル坂井 104点(5/7/4)
 


上位10試合のうち7試合が新日本で3試合がDDT。年間を通じクオリティーの高い試合を提供し続けた新日本の中で、G1クライマックス優勝戦やIWGPヘビー&インターコンチネンタル戦を押さえて1位となったのは、G1公式戦のひとつであるAJvs鈴木戦。試合がおこなわれた直後からネット上で大絶賛され、その後も語り甲斐のある内容が口コミで拡がっていった。まったく異なるタイプの両者が激突する刺激性に加え、途中乱入などを含む起伏のある展開、さらには予想を上回る攻防とじつに完成度の高い“作品”に。ライヴで見ている人数は西武ドームのオカダvs中邑の方が多いにもかかわらず、それを上回った。
 
3位のKO-Dタッグ戦は日本インディー大賞でもベストバウトに選ばれた。この日は同じ若手の平田一喜がKO-D6人タッグ王座を、彰人がDDT EXTERME級王座を奪取しており、アフター・ザ・両国一発目の後楽園大会で新世代の台頭を見せつけたことで、団体としてものすごいスピードで前に進んでいる印象を植えつけた。業界を代表するタッグチームのゴールデン☆ラヴァーズから若い2人がベルトを奪取したインパクトは大きかった。
 
8位は昨年末に棚橋を取材したさい「頭の中を真っ白にして、最初に浮かんできた今年の試合はどれですか?」と質問したところ口にした一戦。IC奪取から始まりG1での連戦、IWGPヘビー級奪回と幅広くいくつものテーマと向き合ってきた棚橋本人が選ぶ2014年心のベストバウトが、この柴田戦ということになる。10位は坂井の復帰戦、煽りパワポといった要素に加え、肛門を爆破された山里亮太さんの尊き末路もこみでの評価だろう。プロレスファンが選ぶアワードで10位になったとあれば、山ちゃんさんも肛門を粉々に吹っ飛ばした甲斐があったというものだ。
 
11位は中島と藤本の間でおこなわれた異なるタイトルマッチの昼夜2連戦のうち夜のJWP無差別級戦(中島の防衛)が入った。この一戦を女子プロベストバウトに推す声は確かに多かった。12位に鬼神道11・18新木場のミスター雁之助vsGENTARO、14位にK-DOJO11・3後楽園の真霜拳號vsヒロ・トウナイ、22位にユニオン5・18後楽園の石川修司vs大家健、28位にハードヒット4・26新木場の砂辺光久vs勝村周一朗といったところがランクインしているが、これらは現場で観戦した人数としては限られており、いずれもニコニコプロレスチャンネルで放送された。WEB配信を通じて目撃した選手や試合が、評価の対象になる傾向は今後も高まるだろう。
 
★最優秀団体
1位…新日本プロレス 2151点(183/45/17)
2位…DDT 1372点(67/96/42)
3位…大日本プロレス 641点(26/36/55)
4位…ドラゴンゲート 270点(6/22/26)
5位…アイスリボン 156点(12/4/4)
6位…全日本プロレス 155点(5/7/21)
7位…NOAH 140点(2/14/12)
8位…WWE 122点(5/9/6)
9位…ガンバレ☆プロレス 106点(7/4/4)
10位…みちのくプロレス 83点(2/6/9)
 


1位~3位は3年連続同じ順位。これに昨年同様4位となったドラゴンゲートが日本のプロレスシーンにおける主要な“入り口”となっていると思われる。新日本とDDTは広告戦略や他ジャンルとのタイアップ、ネットを活用した発信を何年も前から実践してきており、それが観客動員に反映されている。
 
大日本は今さらながら、デスマッチというコンテンツの引きの強さが他団体の差別化につながっている。一昔前と比べてデスマッチだからとキワモノ扱いされるケースが減ったのは、時間をかけて理解を高めるべく向き合ってきた賜。それに加え、ストロングBJの満足度も増したとあれば支持されて当然。
 
ドラゴンゲートは巡業形態を敷く団体の中でもっとも全国津々浦々までプロレスを届け、それと並行して月イチの平日後楽園を連続超満員とし、年に数回のビッグマッチもキッチリと埋めている。業界の主流とは別に独自の価値観で観客を開拓し続けているのも強い。5位に女子のアイスリボンが入ったのは、年間を通じエースの藤本が“団体力”というキーワードを前面に出し、それに共感したファンとともに走ってきたのが票数につながったと思われる。団体力とは選手やスタッフだけでなく、応援するファンのパワーも含めてのものなのだ。
 
8位・WWE、9位・ガンプロという並びもたまらない(いずれもファンをユニバースと呼ぶ団体)。この結果をレスリングオブザーバーのデーブ・メルツァー氏が報じ、それをビンス・マクマホンが目にしたら「ウチと1位違いで並んだこのプロモーションはいったいなんだ!?」と興味を持ち、カリスマ号泣師・大家や今成夢人がニューヨークにヘッドハンティングされるかもしれない。ちなみにガンプロは昨年の6位から順位は下がったものの、得点は逆に増えている。11位はさくらえみ率いる我闘雲舞、16位にUWF現在形のハードヒット、26位に試合をやらないことを前提に開催されるコペルニクス的発想団体の欠場プロレスが入った。
 
☆最優秀タッグチーム賞(ユニットも含む)
1位…ヤンキー二丁拳銃(宮本裕向&木高イサミ) 889点(55/47/19)
2位…杉浦貴&田中将斗 480点(30/24/12)
3位 ムーの太陽(ザ・グレート・サスケ&バラモンシュウ&バラモンケイ) 433点(31/15/11)
4位…ヤングバックス(マット・ジャクソン&ニック・ジャクソン) 427点(28/20/9)
5位…後藤洋央紀&柴田勝頼 333点(21/16/9)
6位…竹下幸之介&遠藤哲哉 302点(17/18/8)
7位 …バラモン兄弟 300点(18/11/18)
8位…カール・アンダーソン&ドク・ギャローズ 195点(9/9/17)
9位…ツインタワーズ(佐藤耕平&石川修司) 192点(9/9/16)
10位…バレットクラブ 191点(14/7/3)
 


ヤンキー二丁拳銃は2年連続1位に。2013年の勢いがまったく落ちなかったのがすごい。“本拠地”である日本インディー大賞ではムーの太陽のズルすぎる支持率にベストユニット賞を譲ったが、ネットプロレス大賞では2位に倍近い差をつけての受賞となった。やはり最侠タッグ3連覇の実績がモノを言ったと思われる。2位はプロレス大賞&プロレスグランプリで選ばれた杉浦&田中。3位は日本インディー大賞&「ニコプロ民がMVPとかを選んでみた」で選ばれたムーの太陽。こう見ると、2014年のタッグ(ユニット)戦線はこの3チームの活躍に集約されると言える。また、バラモン兄弟はムーの太陽とは別枠でもランクイン。
 
バレットクラブ関連が3つ入っているのも目を見張る。ヤングバックスはIWGPジュニアタッグ戦線の中核となり、カール&ドクは1年間IWGPタッグ王座を守り抜いた。15位がTMDKで16位がパワー・オブ・ドリームス、17位が平成極道コンビという並びもネットアワードならでは。WWEのワイアットファミリーやシールド(82位)よりも力&今成の方が遥かに上ですよ。
 
★最優秀興行
1位…DDT8・17両国国技館(両国ピーターパン2015) 792点(51/34/26)
2位…新日本8・10西武ドーム(G1クライマックス最終戦) 521点(38/17/13)
3位…新日本8・1後楽園ホール(G1クライマックス) 386点(32/10/2)
4位…新日本1・4東京ドーム 305点(17/17/11)
5位…新日本10・13両国国技館 195点(12/8/9)
6位…DDT11・19大船渡市民体育館(プロレスキャノンボール収録) 191点(14/6/5)
7位…新日本6・8国立代々木競技場第二体育館(ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア最終戦) 98点(5/6/4)
8位…大日本11・21後楽園ホール(最侠タッグリーグ最終戦) 90点(6/3/4)
9位 …新日本6・21ボディメーカーコロシアム 89点(2/8/7)
10位…新日本7・21北海道立総合体育センター(G1クライマックス開幕戦) 84点(6/3/2)
 


ベストバウト、最優秀団体と並びここでも新日本とDDTの支持の高さが顕著に。10位中新日本が7、DDTが2で大日本が1大会食い込んだ。DDTは2012年の日本武道館から3年連続1位に。一年を通じビッグマッチを何度かおこなうのと違い、勝負どころが1度しかない中で確実に期待以上の満足感を提供する難しさは、我々が考える以上のものがあるはず。だが、それをなし得ることでDDTは興行会社としての信用を築いてきた。
 
一発勝負のDDTに対し、新日本は業界の盟主らしく常にクオリティーの高いビッグマッチを続けてきた。2大ドーム大会だけでなく、両国、大阪、札幌といった大会場でも心に残るビッグショーを提供。さらにスーパージュニアの最終戦が高く評価されたのは、前年にプリンス・デヴィットのダーティーな優勝が賛否両論となったのを一気に払しょくし、ジュニアの信頼を回復した点で大きな意義があった。
 
大日本は日本インディー大賞でも上位5位中4つを独占したように、新日本同様年間を通じコンスタントに満足度の高い興行を続けてきた。その中で最侠タッグリーグ最終戦がもっとも評価の高いものとなったのは二丁拳銃が3連覇を果たした優勝戦だけでなく、準決勝の2つもそれに劣らぬ盛り上がりを見せたためだ。宇宙大戦争は13位、ハルク・ホーガン&ストーンコールド&ロック様の揃い踏みが実現したレッスルマニア30は14位、大会場を満員にし続けたドラゴンゲートの中では7・20神戸ワールドが15位で最高。旗揚げ10年目にして初の聖地進出となったガッツワールド10・12後楽園が16位で続いた。
 
☆新人賞
1位…植木嵩行(大日本プロレス)1025点(83/24 /17)
2位…遠藤哲哉(DDT) 513点(33/24/13)
3位…赤井沙希(DDT/オスカープロモーション) 339点(24/11/11)
4位…ビッグR清水(ドラゴンゲート) 294点(18/13/12)
5位…宝城カイリ(スターダム) 244点(16/10/8)
6位…タンク永井(K-DOJO) 181点(10/11/5)
7位…力(リキ・エンタープライズ) 172点(10/8/8)
8位…エル・デスペラード(新日本) 162点(9/9/6)
9位…小松洋平(新日本) 148点(7/11/4)
10位…田中翔(新日本) 143点(8/8/5)
 

 

 
2013年12月にデビュー後、ベルトを奪取するなどの実績がないにもかかわらず警官キャラで衝撃(笑撃)を生み出し続けた植木巡査が、日本インディー大賞に続いて断トツの新人賞に。普通、実績が伴わなければ敬遠されるものだが、植木の場合はそうした価値観を飛び級で超越していた。なんといっても神奈川県警出身というバリバリの本職がベースなのだからモノが違う。加えて迷いがいっさいない。何をやるにしても徹底すれば、見る者に響く。その意味でも植木の受賞は、これまでの新人枠に大きな風穴を開けたと言っていい。
 
2位の遠藤は対照的にKO-Dタッグ王座へ就き、その後も強豪チャレンジャーチームを相手に防衛を重ねている実績が評価された。パートナーの竹下は昨年のこの部門で1位となっており、年齢も上でデビューも先にした遠藤の方が1年後に同じ新人賞に輝くというのも面白い。
 
3位の赤井はプロレス大賞新人賞を受賞したさいネット上にも否定的な声が多くあがったが、ではじっさいにファン投票をやったら3位に入った。つまり見ている人には、ちゃんと伝わっているということ。彼女にとってその事実は今後プロレスを続けていく上での支えとなるだろう。
 
4位はリョーツ清水から10月に改名したのを機にキャラクターチェンジし、12・28福岡国際センターにおけるビッグマッチでオープン・ザ・トライアングルゲート王座を奪取したビッグR清水。今年に入り同じ警官キャラの植木が台頭してきたためどうなるかと思われたが、ビッグRに生まれ変わりもともとあった地力を生かせるようになった。いつか植木との絡みは見られるか。7位に力が入ったのも素材を膨らませて楽しむことに長けたネットユーザーならではの支持と言えるだろう。28位のがばいじいちゃんは、ある意味お約束。
 
★最優秀プロレスを伝えたで賞(前回までの最優秀マスメディア賞から改称)
1位…ニコニコプロレスチャンネル 642点(48/22/10) 
2位…スーパー・ササダンゴ・マシンの煽りパワーポイント 342点(24/11/12)
3位…新日本プロレスWORLD  319点(19/12/19) 
4位…プロレスキャノンボール撮影関連 299点(20/12/9)
5位…日本テレビ「スッキリ」スイーツ真壁コーナー 233点(14/11/9)
6位…書籍「棚橋弘至はなぜ新日本プロレスを変えることができたのか」 198点(9/13/10)
7位…週刊プロレス 157点(7/12/5)
8位…NHK「ドキュメント72時間」 地方プロレス3日間の旅巡業 147点(6/12/5)
9位…ABC朝日「探偵ナイトスクープ」97歳のおばあちゃん初めてのプロレス観戦 138点(6/11/4)
9位…ゴング 138点(9/6/4)
 

2013年1月に開局し、その年に最優秀マスメディア賞へ選ばれたニコプロが連続受賞。出演者のひとりとして客観的に見ても、2年続けて1位になるのは難しいというのが正直なところだった。それほどササダンゴの煽りパワポの支持率は高く、さまざまなまとめサイトやサブカル系でとりあげられ無限大に拡散していった。また12月にスタートした新日本WORLDもまさに待望のコンテンツであり、開始後まもなくして1万人を超える入会があった。
 
何より、順位云々以前にせっかく評価されながら視聴者の満足度が下がってしまうのは避けたかった。だからこそ現状の中でやれることは何かと頭を絞り、前年を上回るクオリティーの番組を提供するべくいくつものアイデアを実施した。2月のロフトプラスワンにおける公開収録、7月の28時間ニコプロとその中でやったテーマ曲グランプリ、G1クライマックス全大会二次会、11月のみちのくプロレス夢メッセみやぎ復興ドキュメンタリーといった企画は、そうしたニコプロがこだわった姿勢から生み出されたものだった。2015年もニコプロは、コメントを通じたファンとのコミュニケーションに基づく番組を、持ち前のフットワークの軽さによって提供していくだろう。
 
3位の新日本WORLDはスタート1カ月でこの順位ということで、2015年の同部門受賞最右翼と断言できる。4位は2月に公開されるDDT制作映画『プロレスキャノンボール2014』の撮影過程がTwitterハッシュタグ#pwcb2014を中心にアナウンスされ、それをユーザーが追う形でムーブメントとなった。撮影段階でこれほど支持されたのだから、作品そのものが2015年上位に来るのは確実。今から公開が楽しみだ。
 
5位は久々にプロレス関連本がランクイン。ネット時代と言われながら、今なお書籍による波及力は確実にある。ビジネス方面での引きもあったというから、同書がプロレスを世間に届かせた功績は大きい。8位に北海道のローカルプロレス団体・北都プロレスのドキュメンタリーが入ったのも意義深い。ゴング誌は創刊準備号の段階で早くもベスト10入り。
 
以上、プロレスを伝えたで賞を除く6部門の内訳は新日本3、DDT1、666&ユニオン(主戦場は大日本)1、大日本1ということで、やはり業界のリーダーシップをとる立場にある新日本がそれを実践してみせた結果に。また、女子ではアイスリボン関連が最優秀団体の5位を別とすると藤本がMVPで11位、中島vs藤本戦がベストバウトの11位、世羅が新人賞で11位とベスト10入りまであと一歩という結果が並んだのも、今年の特徴と言えるだろう。
 
最後に私自身と関連性がある最優秀プロレスを伝えたで賞について率直な思いを記しておきたい。1位のニコプロを始め、自分がなんらかの形で携わらせていただいているメディアが上位30位中5つ(7位の週刊プロレス、11位のサムライTV、22位の週プロモバイル、30位の千葉テレビK-DOJO中継)も入ったのは本当に嬉しい。私は決まったメディアに属しているわけではないので、携わった媒体の評価が高まることを第一に考える立場にある。
 
どの媒体で書き、喋るにしてもそれがプロレス関連メディアの中でベストとされるような作品にすること。そのためならば、やれることはなんだってやる。そうした姿勢が今回の結果につながったとすれば、さらに言うなら各メディアを通じ発信したテキストや言葉によって、プロレスとプロレスラーたちの魅力が伝わればフリーとして本望以外の何ものでもない。
 
今回のネットプロレス大賞ではこうした媒体を通じての評価に加え、鈴木健.txtの個人名で36位に入れていただいた。上を見ればすべてがブログを含む媒体、あるいは作品名であり、同じように個人…つまりは人そのものがメディアとみなされた方々は限られている。私はオフィシャルウェブサイトを開設していなければ、ブログも今年に入って再開したばかり。これといったプラットフォームを持たずやっているにもかかわらず、こうした形で評価していただけたのはどんな仕事もガムシャラにやってきた一年間が報われた思いだ。
 
2015年もプロレスファンに楽しんでもらえることを念頭に文章、コメンタリー、実況、講座ほか、さまざまな活動をやっていきますのでよろしくお願い申し上げます。

最後に――今回のネットプロレス大賞発表をもって国内のプロレスアワード関連の結果が出揃った。プロレスは、100人いれば100通りの見方があるジャンルなのだから、どんなやり方をし、どんな結果が出ようとも万人が納得できる形はない。だから、マスコミが制定する賞に対する異論が出るのも当然だ。そんな中、近年はプロレスグランプリや日本インディー大賞、ニコプロが番組として実施したインタラクティヴなアンケート機能による「ニコプロ民がMVPを選んでみた」、さらにはネットプロレス大賞と、ファン参加型のアワードが増えた。
 
大切なのは結果よりも、参加してファンが自分なりに楽しむ姿勢。だから、これらへ投票することによって楽しめたのだとしたら、それが正解なのだと思う。今年の年末から来年にかけても、こうした機会には積極的に参加し、楽しみ、その上で皆さんひとりひとりがツールとなってプロレスを拡散していっていただきたい。

ニコニコプロレスチャンネル「ネットプロレス大賞2014結果報告会」  
※1月22日(木)まで公開
ネットプロレス大賞2014発表会 まとめ
※togetterによる結果発表時のTwitter上における反応のまとめ
投票権のない私にとっての最優秀プロレスを伝えたで賞
昨年の「ネットプロレス大賞2013」結果発表を踏まえたコラム