『空獏』 北野勇作 | たまらなく孤独で、熱い街

『空獏』 北野勇作

空獏 北野 勇作
空獏
(早川書房)
初版:2005年8月31日
 
 
 
 
北野作品の感覚にはいつも悩まされる。
うれしい悩みであるのですが。
P・K・ディックならば、それでも最初だけでも確固たる現実(と思われるもの)はある。
しかし、北野は最初からそれがない。
だから読んでいても落ち着かない。
精神的に穏やかな時ならそれなりに読めるが、イライラしてたり不安な時に読むと、イライラや不安が増幅されてしまう気がする。
 
この本は「ひたすらかっこわるくてセコくてアホらしい戦争の話にしようと思った」らしい。
それがこんな話になるわけ?
秀逸だと思ったのは、そのままでは敵が認識できないから変換ソフトを使うということ。
そう、山田正紀の『ジュークボックス』 のようだ。
「そう」と言われても、『ジュークボックス』を読んだ人は少ないだろうから、イメージが湧かないと思うが、「そのままでは相手が認識できない」という発想は好きだなあ。
 
本を読んで、のめりこんで、ふと「現実」に戻った時のギャップが凄いね。
ほっとしたような、夢から覚めて愕然としたような。