大河ドラマ「花燃ゆ」の視聴率を科学的に予測する | 西陣に住んでます

大河ドラマ「花燃ゆ」の視聴率を科学的に予測する

花燃ゆ




2015年NHK大河ドラマは、

幕末の吉田松陰の妹で松下村塾の女幹事とされる

杉文の一生を描く「花燃ゆ」です。


この記事では、「八重の桜」および「軍師官兵衛」視聴率

ほぼ的中できた科学的手法を用いて、「花燃ゆ」視聴率

あくまでも「予想」ではなく「予測」したいと考えます。


2013/01/13記事[大河ドラマ「八重の桜」視聴率予測]

2013/12/16記事[「八重の桜」視聴率予測、ほぼ的中しました~!!!]
2014/01/08記事[「軍師官兵衛」の視聴率を科学的に予測する]

2014/12/23記事[「軍師官兵衛」視聴率予測、的中しました~!!!]


大河ドラマといえば、毎年話題となるのが年間平均視聴率です。

作品自体の出来栄えを評価する上で

必ずしも「視聴率」は有効なインデックスにはならないと私は考えますが、

長期にわたる日本人の歴史ドラマへの嗜好性を分析する上では

一つの有効なインデックスになるかと思います。


換言すれば、

どのような思考回路で、大河ドラマが支持/不支持されるのか?・・・

そのメカニズムを把握することは、

日本人の歴史観をひも解く鍵といえるかもしれません。


さて思考回路のメカニズムを把握するにあたって有効と思われるのが、

質的データを用いて量的データを予測する統計手法である

「数量化理論Ⅰ類」です。


この手法は、「大河ドラマ作品の時代が平安時代/戦国時代/幕末」、

「大河ドラマの主人公が男性/女性」といったような

質的データ(カテゴリカルデータ)を

ダミー変数というテクニカルな変数を使って数量化することによって

「視聴率」などの量的データ(数値データ)を予測するものです。


この手法、結構パワフル!で

一昨年、昨年とこの手法を用いて年間平均視聴率を予測したところ

ぼちぼち良い予測結果を得ることができました。


「八重の桜」 予測:15.1%実測:14.6%

「軍師官兵衛」 予測:15.5%実測:15.8%


そして、良い予測結果を得ることができたということは、

考察した思考回路のメカニズムがほぼ適正であったということが

証明されたことになります。


今回も昨年と同様の手法を用いて、

「花燃ゆ」の年間平均視聴率を予測したいと思います。



サーチサーチサーチサーチサーチサーチサーチ



まず、数量化理論Ⅰ類による統計分析結果を説明する前に

過去52年分のNHK大河ドラマ作品の

初回の視聴率平均の視聴率(年間平均視聴率)を示したいと思います。


花燃ゆ


初回視聴率と平均視聴率と間には次の図に示すような

正の相関関係があります。

つまり、初回視聴率に0.8843をかけると平均視聴率を予測できますが、

その予測制度は以下のような理由でかなり低いといえます。


花燃ゆ

図中のR2決定係数相関係数の2乗)と呼ばれるもので、

1に近づくほど2変数(今回の場合は初回&平均視聴率)の関係性が高く、

0に近づくほど2つの変数の関係性が低いことを意味します。

この図の場合にはR2=0.3177なので、ぼちぼち相関性が低いといえます。

したがって、y=0.8843xという式で視聴率予測を行うのは、

予測制度がかなり低く信頼性が低いといえます。


メモメモメモメモメモメモメモ


さて、以下に数量化理論Ⅰ類の分析について簡単に説明します。


予測にあたっては、過去の視聴率データから

ドラマの時代などの各ファクターが視聴率に及ぼす影響を統計学的に求め、
その結果を基に視聴率を予測します。


まず各ファクターが視聴率に及ぼす影響を統計学的に求めるにあたっては、
視聴率に関連しそうな観点を挙げるともに、
その観点に属するファクターを挙げておく必要があります。
数量化理論では、

この観点を「アイテム」、ファクターを「カテゴリー」と呼びます。


分析で設定したアイテムとカテゴリー(カッコ内)は次の通りです。


(1) 時代(平安/鎌倉/室町/戦国/江戸/幕末/近代)
  時代をまたぐ作品については、主要な時代を割り当てました。


(2) 主人公の身分(天下人/キーパーソン/庶民)
  日本の実質的最高権力者となった人物またはその配偶者を「天下人」、
  天下人を経験しない政治家・各種指導者を「キーパーソン」、
  それ以外の人物を「庶民」としました。


(3) 出世度(出世なし/1階級出世/2階級出世)
  「庶民」「キーパーソン」「天下人」の各階級をステップアップした場合に

  そのステップアップの回数を出世度としました。

  ちなみに「下級武士」については「庶民」としました。


(4) 主人公の性別(男/女)
  主人公以外に夫婦が主演の場合には「女」としました。


(5) 主人公の死因(殺害/床死)
  戦死、暗殺、斬首、自害の場合に「殺害」としました。


(6) 主演俳優の大河ドラマ経験(初演/再演)
  一度、NHK大河ドラマを経験した俳優が再び主演級を演じる時、
  「再演」としました。


(7) 主人公の運命・境遇(時代に翻弄/他)

  実在の主人公が、その意思に関わらず強制的に苦労を強いられるような
  境遇におかれる場合、時代に「翻弄」されたと判断しました。


(8) 主な活躍場所(東北/東日本/中日本/西日本/海外)

  東北地方をそこそこ含む場合「東北(北)」
  関東甲信越地方が主な活躍場所の場合「東日本(東)」
  中部・関西地方が主な活躍場所の場合「中日本(中)」
  中国・四国・九州が主な活躍場所の場合「西日本(西)」
  海外をそこそこ含む場合「海外(外)」としました。


(9) 放映期

  (黎明期/平常期/高度成長期/バブル期/不況期/地デジ期)

  高度成長期に入る前、大河ドラマが誕生したころを「黎明期」
  GNP世界2位となった1968からオイルショック前年の1972を「高度成長期」
  日本が栄華を極めたバブル絶頂期の1986年から1988年を「バブル期」
  バブル崩壊による不況が顕在化した1994年以降を「不況期」、

  2011年以降を「地デジ期」としました。「地デジ期」は新設カテゴリーです。


このように各アイテムをカテゴリー区分して
過去データに対して適用した結果が↓この表です。


花燃ゆ


このデータをパッケージソフトウェアに入力し、解析を行いました。
用いたソフトウェアは誰もがダウンロードして無償で利用することができる
オープンソースのプログラミング言語[R] です。
数量化理論I類については、
群馬大学青木繁伸先生[プログラム] を提供されているので
これを利用しました。

上記のようなカテゴリー区分を用いることで
極めて精度の高い分析を行うことができました。
分析の結果は↓この表のとおりです。


花燃ゆ


各カテゴリー(ファクター)が視聴率に及ぼす影響については
カテゴリースコアの値によって知ることができます。


「定数項」の欄に示されている視聴率22.91%を基本値として
カテゴリースコアの「マイナス」欄に数字が入っているカテゴリーは
その数値だけ視聴率を下げる影響があり、
逆に「プラス」欄に数字が入っているカテゴリーは
その数値だけ視聴率を上げる影響があります。


また、偏相関t値が大きいアイテム(観点)は

視聴率に対する影響度合いが大きいアイテムと言えます。

ここで、各アイテムごとに分けて説明をしたいと考えます。


(1) 時代
「江戸」「戦国」は視聴率を上げる作用があります。
一方、他の時代は視聴率を下げる作用があります。


(2) 主人公の最終身分
「庶民」が最低のマイナス要因になっています。
庶民は歴史のメインストリームに乗らないので、
歴史物を期待する大河ドラマの主役には向いてないのではと思います。


(3) 出世度

出世度が高いとやはりプラス要因になります。

大河ドラマで1年間観るからには、

ちょっとばかし出世してもらいたいという感情移入が感じられます(笑)


(4) 主人公の性別
「男」がプラス要因「女」がマイナス要因であることがわかります。

(5) 主人公の死因
主人公が運命の巡り合わせによって「殺害」される場合、
マイナス要因になることがわかります。
これも視聴者のハッピーエンド願望によるものと考えられます。
「時代」や「主人公の身分」に比べれば影響度合はやや低いものの
けっして少なくない影響度合を示しています。


(6) 主演俳優の大河ドラマ経験
主人公が「再演」する場合、マイナス要因であることがわかります。
NHKとしては過去の実績で優良俳優を再起用するのでしょうけど、
視聴者としてみれば「1年間観たあの人がまた・・・」
という感覚やビミョ~な違和感をもつのではと思います。


(7) 主人公の運命・境遇
主人公(実在の人物に限ります)が時代に「翻弄」される場合、

プラス要因であることがわかります。
やはり、日本人は、不運にも時代に翻弄されてしまうような

ドラマのシチュエーションが好きなようです。


(8) 主な活躍場所
西日本、東北、海外がマイナス要因で

東日本、中日本(中部&関西)がプラスとなりました。
やはり、人口が多いだけのことはありますね(笑)


(9) 放映期
「バブル期」には視聴率が高く、
「不況期」には視聴率が低いという結果が得られました。
また「高度成長期」にも視聴率が低いという結果になっています。
これは単に経済との関係なのか、時代の風潮に関係するのか
についてははっきりしませんが、
「高度成長期」や「不況」の時には、
大河ドラマなど悠長に観ていられないということかと思います。

そして、「地デジ」となって、その傾向はさらに大きくなったようです。

番組表がテレビに標準装備されて録画も容易になると

リアルタイムで観る必要もなくなりますね。
いずれにしても、このアイテムは偏相関とt値は最も高く、
大河ドラマの視聴率が時代に反映されていることがわかります。




さて、今回の分析結果が高い精度であることを証明するものが下表です。
この表では、今回得られたカテゴリースコアを

実際のデータに適用させた予測結果と実測結果を比較しています。


花燃ゆ


この表を基に予測視聴率と実測視聴率の関係をプロットすると
↓この図のようになります。


花燃ゆ

回帰式は見事にy=xに一致し、その決定係数0.9384
その平方根である相関係数はなんと約0.97です。
このことから、予測と実測が極めてよく一致していて
今回の分析によって得られたカテゴリースコアの値が
NHK大河ドラマの視聴率の予測に非常に有効であることがわかります。


換言すれば、上のカテゴリースコアの表を使うだけで

過去50年以上にわたる大河ドラマの視聴率の形成メカニズムを

しっかりと説明することができるということです。


・・・というわけで、得られたカテゴリースコアを用いて
2015年NHK大河ドラマ「花燃ゆ」の視聴率を予測してみたいと思います。


「花燃ゆ」の場合、
主な時代は幕末、主人公はキーパーソンの女子で

主として西日本で活躍します。

最終的に華族となるので出世は1階級

吉田松陰の妹と言うことで余儀なく時代に翻弄されますが、

他者から殺害されずに床死で一生を閉じます。

また、主演の井上さんは初演、時代は地デジです。


この場合予測視聴率は次式によって求められます。


-1.35%+1.40%+1.51%-2.80%+1.45%+0.59%+2.85-2.07-11.77%

+22.91%=12.72%


つまり、予測平均視聴率(年間)は12.72%となります。

そして95%の確率9.90~15.54%の間におさまるという結果です。


花燃ゆ

・・・というわけで、かなり危ないことに、

「花燃ゆ」はめちゃくちゃ低い視聴率という予測になっています(汗)。

もしかしたら、最低視聴率だった「平清盛」を下回りそうな勢いです!

ぜひ予測を裏切って高視聴率をはじき出していただきたいところです!


なお、低視聴率であってもあまりくよくよすることはありません。

今は完全地デジ移行の時代です。録画も非常に簡単になりました。

私自身のテレビ視聴の行動に照らし合わせてみても、

むしろ面白い番組ほど録画して観る傾向があります。

そのようなわけで非常に興味深いのは、

今年から本格的に発表されると言われている録画視聴率です。

今後の動向をしっかりと見守りたいと思います。


年の初めからあまり景気の良くない予測となってしまった恐縮ですが、

まぁ あまり重く考えずに

最後に↓こちらの記事でも見て明るくなってくださ~い(笑)


[幕末そっくりさん総集編]