イジメと水害とレバ刺しとマスコミ | 西陣に住んでます

イジメと水害とレバ刺しとマスコミ

今週もいろいろとニュースがありましたが、

大津のイジメ事件については本当に痛ましいですよね。
私は、こんな現代社会におけるイジメに
TVメディアニュースショーが強い影響を与えているのではと思います。


第4の権力とも呼ばれる報道メディアの社会への影響力は大きく、
その報道内容が間接的に人の命を左右するような場面も
少なくないと私は思います。
特にTVメディアは、オーディオ&ヴィジュアルに強く訴えることから
紙メディアと比べてより多くの層に浸透していて
世論形成と言う点では紙メディアを上回る影響力を持っていると思います。


ここであらためて見直しておきますと、TVメディアというものは、
限られた周波数帯域を利用することを特別に許可された放送事業者であり、
放送法を遵守することが要求されます。


第一章 総則


(目的)

第一条  この法律は、次に掲げる原則に従つて、放送を公共の福祉に

      適合するように規律し、その健全な発達を図ることを目的とする。


一  放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを

   保障すること。
二  放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、

   放送による表現の自由を確保すること。
三  放送に携わる者の職責を明らかにすることによつて、

   放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること。


(国内放送等の放送番組の編集等)

第四条  放送事業者は、国内放送及び内外放送の放送番組の編集に

      当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。

一  公安及び善良な風俗を害しないこと。
二  政治的に公平であること。
三  報道は事実をまげないですること。
四  意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から

   論点を明らかにすること。


つまり、TVメディアには「不偏不党」「政治的に公平」であることが

求められると同時に、特定の考え方に偏らないように
多角的な視点から論点を明らかにすることが求められます。
ちなみに、新聞メディアは、株式譲渡に関する法律があるだけで、
「不偏不党」や「政治的に公平」であることは要求されないので、
偏向報道をしても法律上は問題がありません。


さて、


このようにTVメディアには、偏りがないことが求められているにも関わらず、
実際に報道が公平かといえばそうでないのは明らかですよね(笑)


何か世の中に問題が生じると、一つの視点からヒステリックに物事を批判し、
「ダムはムダ」のような「お題目」のような造語をつくっては、
そのお題目に反する意見は排除する雰囲気作りが行われるのが通例です。


その端的な例が以下のような番組であると私は思います。


(1) 特定の意見を持ったメインキャスターが
  感情を最大限に込めてニュースを読み、
  その後で持論を繰り返すと同時に
  論敵を極悪人に仕立てあげてしまう報道ステーション

(2)特定の意見を持った司会者が
  自分の経営する事務所のタレントや

  司会者と考え方を同じにする偏ったコメンテーターのみを使い、
  反論する人間を絶対に出演させないサンデーモーニング

(3)大衆の味方を自認する司会者が
  視聴率のためにショッキングな話題のみをとりあげ、
  完膚なまでのご機嫌取りアナウンサーのうなずきに助けられながら
  不合理な論理も勢いで正当化してしまう朝ズバッ

(4)あたかも素人っぽく公平を保っているかのような司会者が
  特定の意見を持ったコメンテーターや
  私の意見は常に正しいとも言いたげな芸能人の
  説教くさい意見に強く同調し、
  いつも特定の結論に導くモーニングバード


こういった番組のレギュラー出演者に共通するのは、
常に社会にはびこる悪者キャラを形成した上で、
ありとありうる手段を使って完膚無きままに
その悪者キャラを集団で叩きのめすことです。


具体的にその悪者キャラとは、
政治家官僚大企業社長警察アメリカなど
「水戸黄門」でいうところの悪代官的な立場にいる人物です。
芸能ニュースでいえば、過去のスターなどがこれにあたります。


もちろん、これらの悪者キャラは

何らかの問題をもっていることが多いのですが、
問題なのは、番組出演者が、人格攻撃をはじめとして
悪者キャラを必要以上にヒステリックにつるしあげていることです。

これは芸能ニュース全般にも言えることであり、
ことの発端はあの江川問題だったかもしれません。


そしてこのような完膚無きままのヒステリックなつるしあげこそ
今問題となっているイジメと同じ手法であり、
イジメの蔓延に多かれ少なかれ影響を与えているのではと私は思います。


実際、今日のニュースショーやワイドショーを見ていると、
悪者キャラに対して次から次へと多くの人物が畳み込むように批判を続け、
そのいくつかは明らかに理不尽であることも少なくないように思えます。
特によくあるのは、事実確認もしないで憶測で人格攻撃をして、
レトリカルクエッションで話を終えると言うものです。


こういったコメンテーターの行動原理は
彼らの個人的立場からしてみれば極めて合理的です。
こういったときに批判をできないコメンテーターは
番組制作者からしてみれば不要な人物であり、
今後起用されない可能性があるわけです。
一般人では考えられないような多額の報酬を貰っている
司会者やコメンテーターにとって、悪者キャラへの批判は、
番組における自分の地位を保つために必要不可欠な行動であると同時に
番組における自分の価値を高める絶好のチャンスと言えるわけです。


また、TVメディアがもともと用意しているような
「お題目」がある話題に関連して街頭インタビューを行い、
そのお題目を一般人に巧妙に言わせると言う手法も
TVメディアの意見を正当化する一つの手法として頻繁に用いられています。
街頭を歩いていてもともと思考停止している中で
急にTVがインタビューしてきたら
自分が属している職場や生活場所での世間体のこともあり、
TVを通して頭の中に刷り込まれていて
あたかも一定のコンセンサスを得ているような「お題目」を
連発することが多くなると思われます。

しかも不都合な意見はカットすればよいのですから

街頭インタビューがスタジオの意見と一致する場合には、

無視するべきであると思います。


さて、このようなニュースショーにおけるつるしあげの手法は、
イジメを行っている中学生や高校生にとって、
イジメの格好の教科書であり、
自分を正当化する理論武装をも学ぶチャンスと言えます。
もちろん、イジメと言うのは昔からあったことかと思いますが、
メディアのこんな姿勢が、イジメの手法のさらなる陰湿化に
大きな影響を与えているのではと思います。


今マスコミは、大津の中学校のいじめの問題で
教育委員会や学校の批判を繰り返していますが、
このこと自体はいじめの構造をを究明する上で
悪いことではないと思います。
ただし、記者会見におけるヒステリックな質問や
その返答に対して集団で上げ足をとりながら
ヘッドクォーターでレトリカルクエッションを繰り返す
司会者やコメンテーターのスタンスには絶望する次第です。


事件の発生要因は、

教育委員会や学校が事件の発生を見逃したことばかりではなく、
本質的には、イジメを行った人物の倫理観の欠如と
それをとりまくグループの歪んだ大衆心理にあり、
このうち、歪んだ大衆心理の形成には
マスコミのイジメのような報道姿勢が一役買っている
可能性があると私は思います。

教育委員会や学校の問題点をヒステリックに挙げるばかりではなく、

多角的な視点からこういった事件の発生の防止策を考えることこそ、

TVメディアが目的とすべき「公共の福祉の健全な発達」

という目的に合致すると考える次第です。


テレビテレビテレビテレビテレビ


なお、TVメディアは、言いたい放題言っておいて
全くと言ってもいいほど責任をとらない体質であることも

社会のモラルハザードに影響を与えているのではないかと私は思います。


例えば先週の木曜日から熊本・大分で観測史上最大級の豪雨があり、
洪水があった地域で20名を超える死者を含む被害が生じました。
TVメディアは、今まで「ダムはムダ」とか「コンクリートから人へ」
というキャンペインを続けてきたことには一切触れずに、
地球温暖化に問題があると一様に報道しています。


こんなときこそ、公平な報道を行う事業者であるのならば、
「ダムはムダ」とか「コンクリートから人へ」のトレードオフとして
こういった水害が生じることを報道すべきなのに、
まさに自らが最も嫌っている「隠蔽体質」としか思えません(笑)
また、地球温暖化に問題があるということならば、
当面の間は火力発電に頼らざるを得ない「脱原発」が不利であることを
報道すべきだと思います。


もともと「ダムはムダ」と「コンクリートから人へ」という
キャンペインに対して私は異論を持っています。
下表は、戦後の日本の自然災害について
内閣府の資料を基にまとめたものです。


西陣に住んでます-日本の自然災害


この表を見れば、戦後、多くの水害で人が亡くなっていた日本から
水害を減らしたのはダム建設や河川工事であったのは明らかです。
マスコミは、そのような人を災害から守ってきたダム・コンクリートに対して
礼を欠くような表現のお題目を作り、バッシングを続けました。

もちろん防災といえどもコストパフォーマンスを念頭に置くことが必要であり、
水害がある程度おさまった状況下でダム建設や河川工事を
抑えることは検討すべき事柄です。

ただし、ここ100年で東京で3.0℃、京都で2.3℃など
温暖化現象は確実に起きていることから
今後はより豪雨被害が生じやすくなると考えられ、
水力発電といった別の観点からも、むしろダムは必要になると私は思います。
よく合衆国がダム建設を一部中止したことが引き合いに出されますが、
もともと日本と合衆国では河川勾配が大きく異なり、
比較をすること自体、理不尽そのものです。
また、将来必ず発生する世界的水不足に対する準備をする上でも
ダムは重要であると考えます。


そんな人の命に関係している内容に対して
「科学的根拠」に基づくわけではなくではなく
「政治主導」と言うお題目を掲げる政治家の「政治的根拠」によって
建設の意思決定を行っているのが政治の現状かと思います。
それこそ今回の原発事故における過失の系譜とそっくりと
言えるのではないでしょうか。


民主党の言う「コンクリートから人へ」というのは、
実質上は公共事業をやめると言うのではなく、
建設業界から他の業界に事業を移行すると言うものでした。
例えば、エネルギーの分野では
再生エネルギー法が成立し、太陽光エネルギーに莫大な資金が
移動することになると思います。
これは、確かに「コンクリートから人へ」だと思います。
もっと正確にいえば、「コンクリートから孫社長へ」です(笑)

以前も指摘しましたが[→新エネルギー導入を分析する]
TVメディアが大賛成した再生エネルギー法のもとでは、

実質上は一般国民の財産が富める者のふところへ移動することになります。
今、国民が支払っている電力サーチャージは、
天下の大金持ちでキャッシュフローを自在に扱うことができる孫社長
なんのリスクもなく受け取っているはずです。
こんなリスクのない事業に対してkWhあたり22円の電力に42円も支払うのは
まさにクレージーです。きっと建設業者も怒ってしまうでしょう。
結局、菅首相のもつ「再生可能エネルギーの祖」になりたいという
個人的願望に付け込んで、個人的財産を増やす法律を作らせたという
まさに悪代官と越後屋の関係が公然と行われた実例(笑)に

他ならないかと思います。

なお、太陽光発電を導入するのであれば、
価格が2/3から1/2になる10年後に行うのが合理的であると私は思います。
電力サーチャージの必要性がほとんどなくなるからです。
ちなみに、世界の太陽光発電メーカーは今ばったばったとつぶれています。
日本メディアは、日本がトップの座を失って情けないと言っていましたが、
実際には早いこと手を引いて助かったってところです。
こんなところからもTVメディアがいかに無責任であるかがわかります。


TVメディアの無責任さは非常に身近の話題にも現れます。
TVメディアは、6月の末に禁止直前の駆け込みのレバ刺し需要の映像を
延々と流しただけでなく、数人のコメンテーターが
「レバ刺しを禁止にするなどとんでもない」などと語っていました。
昨年の夏にあれほどユッケで食中毒を起こした社長や
規制を管轄する厚生労働省を徹底的に批判しておいて
今回のレバ刺し禁止を批判するのには驚きました。
相当に無責任な不規則発言と言えるかと思います。
実際、この移行期間にレバ刺しを食べた70代男性が
O157で死亡したという事件も起こってしまいました。
このニュースをほとんど報道していないTVメディアの
隠蔽体質には言葉を失います。


また、政治報道に対する無責任さにも言葉を失います。
前回の総選挙に際して
漢字を間違えて読んだり、カップラーメンの値段を知らないと言って
TVメディアを通して当時首相の人格攻撃を行い、
「国民の生活が第一」というマニフェストを掲げて
政権交代を成し遂げた民主党が
マニフェスト違反を犯していることについては明らかな事実です。
そんな実現不可能なマニフェストを作った
小沢氏、鳩山氏、菅氏、そして長妻氏は
マニフェスト違反をはっきりとした形で認めていません。
長妻氏に関しては今でもマニフェストを実現するのはこれからだと
発言していますし、
小沢氏にいたっては逆切れして新党を作ってしまいました。


そんな民主党の明らかなマニフェスト違反に対して、
TVで民主党を強く宣伝し続けたコメンテーターの人達が、
他人に対しては常に強要する「けじめ」もつけずに

涼しい顔して政治評論を続けているのには閉口します。
例えば、吉永みち子氏、二木啓孝氏、勝谷誠彦氏、高野孟氏、
芸能人の大竹まこと氏は、今でも上から目線で
コメンテーターの第一線として活躍していますね。
また、選挙当時にABCの朝の番組のアナウンサーとして
民主党の絶賛報道を続けていた清水貴之氏が
所を変えて、東京の放送局の番組で民主党批判をしていたのには

大笑いしました。


公務員の天下りと言うものが批判されていますが、

TV業界自体、電波の周波数帯を独占して多額の報酬を得ることができる

利権企業であると言えます。

事実、TV局社員は、1000万円を裕に越す平均年収という

世間がビックるするほどの報酬を得ていることが報告されています。

そして、その多額の報酬は、私たちが物を買う際に課される

広告費の一部であることは自明です。

そんなマネーをしっかりと自分のふところに入れているのがこの人達です。


以上、今週のニュースを基にして、

TVメディアの問題点の一部を書いてきましたが、その根は深く、

問題点の解決にあたっては、TVメディアの理不尽な点を見逃さずに

地道に小さな指摘を繰り返すことであると思います。