論理的誤謬のサブリスト-2 不当演繹原理(理論的原理不全) | マスメディア報道のメソドロジー

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マスメディア報道の論理的誤謬(ごびゅう:logical fallacy)の分析と情報リテラシーの向上をメインのアジェンダに、できる限りココロをなくして記事を書いていきたいと思っています(笑)

理論
(写真:Assessment Systemsから引用)


演繹的推論は既に証明された理論的な原理と正しい概念を前提にして普遍的な結論を導くものです。
換言すれば、演繹的推論によって正しく普遍的結論を導くためには、次の3つの要件をクリアする必要があります。

・推論の「論証構造」が正しいこと
・推論の根拠となる理論的な「原理」が完全であること
・推論を記述する資料である「概念」が正しいこと

不当演繹原理は、このうち原理に誤りがあるため、正しく結論を導くことができない場合を意味します。

人類は、数学・物理を中心とする理論体系によって明証性を持つ理論的原理を導き、
過去に発生した現象の解釈および将来発生する現象の予測を行っています。
具体的に言えば、物理現象を記述する3種類の偏微分方程式(楕円型/放物型/双曲型)から、
物体の定常・非定常の非線形挙動を解釈して予測しています。
もう少し一般化して言えば、偏微分方程式は時空間という四次元空間における物体の挙動を扱う自然科学にとどまらず
時空間に生命体の意思という軸を加えた五次元空間における事物の挙動を扱う社会科学にも適用されています。

このような理論的原理は前提となる概念から結論となる概念を推論する際の根拠となるものであり、
この根拠が正しくない場合には、結論が合理的でなくなることになります。

ここで、不当演繹原理の具体的な事例を分類すると次の5つに集約されます。

論点先取:結論が含まれた前提から結論を証明する。
論点相違:明証的でない根拠によって前提から結論を証明する。
論点歪曲:他説の根拠を不当に歪曲して正当な結論を無効化する。
論点回避:他説の根拠を不当に無効化して正当な証明を成立させない。
疑似原理:矛盾した根拠によって前提から結論を証明する

以下、個別に説明していきます。

(1) 論点先取

結論が含まれた前提から結論を証明するというこの誤謬は、原理自体に誤りがあるのではなく、
原理を適用する制約条件に誤りがあるものです。
私たちは、推論において既知の概念からその概念とは異なる未知の概念を導くことを暗黙の制約条件にしていますが、
この誤謬では、既知の概念からその概念と一致する既知の概念を導いています。
この暗黙のセキュリティーホールを突いたトートロジー(tautology=同語反復)を論証成立のように欺く行為は、
制約条件を含めたシステムとしての原理の誤りと解釈することができ、
このブログでは不当演繹原理の一つとして扱うことにします。

(2) 論点相違

明証的でない根拠によって前提から結論を証明するというこの誤謬は、主として次の3つに分けることができます。

感情に訴える論証
人格に訴える論証
権威に訴える論証

これらの論証は、感情・人格・権威に起因する先入観(フランシス・ベーコンの4つのイドラのうち種族・洞窟・劇場のイドラ)
によって「好感を持つ人」「良い人格の人」「権威がある人」は正しい言説を述べ、
「嫌悪感を持つ人」「悪い人格の人」「権威がない人」は誤った言説を述べるとするものです。
言説の真偽と感情・人格・権威の間には正の相関性があると仮定する帰納的推論を展開している可能性がありますが、
これらは演繹的推論における有意な根拠にはなりません。
物事の真偽を演繹的に推論するときに「誰々がそれそれそのように言ったからそれは正しい」のではなく、
「理に適った根拠がこれこれこのようにあるからそれは正しい」とするのが妥当です。
なお、理に適った根拠を説明できないときに、他者の意見に無批判にコミットするのはギャンブルであり、
緊急の判断が必要でない限りニュートラルなスタンスを取るのが論理的です。
ちなみにこの誤謬はマスメディア報道や国会討議において見事なまでに多用されています。

(3) 論点歪曲

他説の根拠を不当に歪曲して正当な結論を無効化するというこの誤謬は、
オリジナルの言説の根拠の一部を勝手に変更あるいは誤解釈し、その部分を批判するものです。
この方法は、言説当事者が不在で反論ができない場合に特に有効であり、
「問題発言」「責任追及」の名の下に言説当事者の糾弾材料としてマスメディアが用いる事例がしばしば認められます。
特に、感情に訴える論証や人格に訴える論証を併用して批判キャンペインを展開することで、
言説当事者の他の言説まで否定する事例も散見されます。

(4) 論点回避

他説の根拠を不当に無効化して正当な証明を成立させないというこの誤謬は、
主として次の3つに分けることができます。

論点転換
論点逃避
議論回避

このうち、論点転換は、自分にとって不利な結論を成立させないために
他説に対する議論の論点をそらしてしまうものです(diversion)。
一方で、論点逃避は、自分にとって有利な結論を成立させるために
自説に対する反論の論点をはぐらかしてしまうものです(evasion)。
また、議論回避は、自分に不利な結論を成立させないために議事を理不尽に遅延させる、
あるいは自分に有利な結論を成立させるために議事を拙速に進行させるものです。
国会の法案討議で頻出する誤謬です。

(5) 偽原理

矛盾した根拠によって前提から結論を証明するというこの誤謬は、
論証不足によって生じるいわゆるトンデモ原理です。


以下に、このカテゴリーに属する誤謬のリストを示します。


感情
(Awesome Work! by Mike Larremore)


[論理的誤謬のメインリスト] 演繹と帰納

[論理的誤謬のサブリスト-1] 不当演繹立論(形式的誤謬)
[論理的誤謬のサブリスト-2] 不当演繹原理(理論的原理不全)
[論理的誤謬のサブリスト-3] 不当演繹資料(概念曖昧と概念混同)
[論理的誤謬のサブリスト-4] 不当帰納立論(情報欠如)
[論理的誤謬のサブリスト-5] 不当帰納原理(経験的原理不全)
[論理的誤謬のサブリスト-6] 不当帰納資料(情報偏向:認知バイアス)
[論理的誤謬のサブリスト-7] 不当帰納資料(情報偏向:社会バイアス)
[論理的誤謬のサブリスト-8] 不当帰納資料(情報偏向:記憶バイアス)
[論理的誤謬のサブリスト-9] 不当帰納資料(情報歪曲)


A-2 不当演繹原理(理論的原理不全) invalid deductive reasoning


A-2-1 論点先取/論点窃取 petitio principii

【先決問題要求 begging the question】
結論が含まれた前提によって結論を証明する。

【循環論証 circular reasoning】
結論が含まれた前提によって結論を証明し、結論によって前提を証明する。

【循環定義 circular definition】
結論が含まれた定義によって結論に言及し、結論によって前提を定義する。

【説明想定内の主張 limited depth】
結論が内包する自明な内容を根拠として結論を証明する。

【ホムンクルスの虚偽 homunculus fallacy】
提唱する言説で現象を説明すると、同一の現象に帰着する。


A-2-2 論点相違 irrelevance

(1) 感情に訴える論証 appeal to emotion

【同情に訴える論証 appeal to pity / ad misericordiam】
情報受信者に不合理な同情心を喚起させて自説に導く。

【罪悪感に訴える論証 appeal to guilt】
情報受信者に不合理な罪悪感を喚起させて自説に導く。

【恐怖心に訴える論証 appeal to fear / appeal to force / argumentum ad baculum】
情報受信者に不合理な恐怖心を喚起させて自説に導く。

【プライドに訴える論証 appeal to pride / appeal to loyalty】
情報受信者に不合理な自尊心を喚起させて自説に導く。

【嫉妬心に訴える論証 appeal to envy】
情報受信者に不合理な嫉妬心を喚起させて自説に導く。

【俗物根性に訴える論証 snob appeal】
情報受信者に不合理な俗物根性を喚起させて自説に導く。

【平等に訴える論証 appeal to equality】
情報受信者に不合理な不平等感を喚起させて自説に導く。

【信仰心に訴える論証 appeal to faith】
情報受信者に不合理な信仰心を喚起させて自説に導く。

【愛国心に訴える論証 flag-waving / appeal to patriotism / appeal to nationalism】
情報受信者に不合理な愛国心を喚起させて自説に導く。

【希望に訴える論証 appeal to hope】
情報受信者に不合理な希望的観測を喚起させて自説に導く。

【偏見的語用に訴える論証 prejudicial language】
情報受信者に不合理な偏見を喚起させて自説に導く。

【信頼に訴える論証 appeal to trust】
情報受信者に不合理な信頼感を喚起させて自説に導く。

【友情に訴える論証 appeal to friendship】
情報受信者に不合理な友情を喚起させて自説に導く。

【愛情に訴える論証 appeal to love】
情報受信者に不合理な愛情を喚起させて自説に導く。

【怒りに訴える論証 appeal to anger】
情報受信者に不合理な怒りを喚起させて自説に導く。

【嘲笑に訴える論証 appeal to ridicule】
情報受信者に不合理な軽蔑感を喚起させて自説に導く。

【嫌悪に訴える論証 appeal to disgust / wisdom of repugnance】
情報受信者に不合理な嫌悪感を喚起させて自説に導く。

【庶民性に訴える論証 appeal to common folk】
情報受信者に不合理な親近感を喚起させて自説に導く。

【子供に訴える論証 think of the children】
子供の権利を自説に含めることで情報受信者に曖昧な責任観を喚起させて自説に導く。

【精神の虚偽 spiritual fallacy / spiritual excuse】
理解が不可能な物には精神が宿るとして情報受信者に神秘的な世界観を喚起させて自説に導く。

【物活論 animistic fallacy】
すべての物質には生命・魂が宿るとして情報受信者に寓話的な倫理観を喚起させて自説に導く。

【擬人観 anthropomorphism】
一般の生物や無生物にも人間と同じような頭脳・心があるとして情報受信者に寓話的な倫理観を喚起させて自説に導く。

(2) 人格に訴える論証 ad hominem

【対人論証 ad hominem abusive】
言説の論者のアイデンティティを根拠にしてその言説を肯定/否定する。

【出自に訴える論証 appeal to origin / genetic fallacy】
言説の論者の出自を根拠にしてその言説を肯定/否定する。

【業績に訴える論証 appeal to accomplishment】
言説の論者の業績を根拠にしてその言説を肯定/否定する。

【ステイタスに訴える論証 appeal to status】
言説の論者の社会的地位を根拠にしてその言説を肯定/否定する。

【知名度に訴える論証 appeal to celebrity】
言説の論者の知名度を根拠にしてその言説を肯定/否定する。

【富裕度に訴える論証 argumentum ad crumenam / argument to the purse】
言説の論者の富裕度を根拠にしてその言説を肯定/否定する。

【貧困度に訴える論証 appeal to poverty / argumentum ad lazarum】
言説の論者の貧困度を根拠にしてその言説を肯定/否定する。

【信頼度に訴える論証 appeal to confidence】
言説の論者の信頼度を根拠にしてその言説を肯定/否定する。

【誠実さに訴える論証 appeal to sincerity / earnestness】
言説の論者の誠実さを根拠にしてその言説を肯定/否定する。

【素朴さに訴える論証 appeal to plain folks】
言説の論者の素朴さを根拠にしてその言説を肯定/否定する。

【努力に訴える論証 notable effort】
言説の論者の努力を根拠にしてその言説を肯定/否定する。

【容姿に訴える論証 argument by personal charm / sex appeal】
言説の論者の容姿を根拠にしてその言説を肯定/否定する。

【騎士団と悪党 knights and knaves】
言説の論者が誰であるかを根拠にしてその言説を肯定/否定する。

【状況対人論証 circumstantial ad hominem】
言説の論者が置かれている状況を根拠にしてその言説を肯定/否定する。

【連帯責任 guilt by association / association fallacy / bad company fallacy】
言説の論者の関係者の人格を根拠にしてその言説を肯定/否定する。

【動機に訴える論証 appeal to motive】
言説の論者の主張と論者の個人的嗜好・利益が一致することを根拠にしてその言説を否定する。

【損得関係の規範 norm of reciprocity】
言説の論者との政治的・経済的・社会的な損/得関係を考慮してその言説を肯定/否定する。

【責任転嫁 tu quoque / shifting the blame / appeal to hypocrisy】
言説の論者が犯した過失の履歴を根拠にしてその言説を否定する。

【血は水よりも濃い blood is thicker than water / favoritism】
自分の血縁者の言説を肯定する。

(3) 権威に訴える論証 irrelevant authority

【権威者に訴える論証 appeal to authority / ad verecundiam】
権威者の言説を無批判に肯定して推論する。

【偽の権威者に訴える論証 appeal to false authority】
論点とは異なる分野の権威者の言説を無批判に肯定して推論する。

【第三者に訴える論証 interloper effect】
公平な立場にある第三者の言説を無批判に肯定して推論する。

【威嚇による証明 proof by intimidation】
強力な威厳を持っている人物の言説を無批判に肯定して推論する。

【服従的権威に訴える論証 blind authority fallacy】
親・恩師・上司・上官等の言説を無批判に肯定して推論する。

【年長者に訴える論証 argument from age / elderly bias】
年長者の言説を無批判に肯定して推論する。

【漠然的権威に訴える論証 vague appeal to authority】
医者・教育者・メディア等の言説を無批判に肯定して推論する。

【著名人の推薦状 testimonial】
著名人の言説を無批判に肯定して推論する。

【過去の権威に訴える論証 appeal to the past / appeal to the past authority】
歴史上の権威者の言説を無批判に肯定して推論する。

【神の意思に訴える論証 appeal to heaven】
宗教の教義を無批判に肯定して推論する。

【神のワイルドカードの虚偽 god wildcard fallacy】
神秘的な存在の逸話を無批判に肯定して推論する。

【神聖に訴える論証 sacred cow】
宗教の聖職者の言説を無批判に肯定して推論する。

【他者の言説に訴える論証 ipse dixit / he, himself, said it】
他者の言説を無批判に肯定して推論する。

【伝聞に訴える論証 argument from hearsay】
伝聞情報を無批判に肯定して推論する。

【匿名の権威 anonymous authority】
以前聞いた覚えがある出所不明の情報を無批判に肯定して推論する。

【政治的公正の概念の虚偽 political correctness fallacy】
政治的に公正であると認定された言説を無批判に肯定して推論する。

【大衆に訴える論証/情勢に訴える論証 argumentum ad populum / appeal to the bandwagon / appeal to consensus】
支持者が多い言説を無批判に肯定して推論する。

【コンセンサスによって形成された真実 truth by consensus】
コンセンサスが得られた言説を無批判に肯定して推論する。

【伝統に訴える論証 appeal to tradition】
伝統を無批判に肯定して推論する。

【先例に訴える論証 appeal to precedent】
先例を無批判に肯定して推論する。

【格言に訴える論証 appeal to aphorism / cliche / slogan / proverb / platitude】
格言、決まり文句、標語、諺、成句などを都合よく解釈して推論する。

【語源に訴える論証 etymological fallacy / appeal to definition / dictionary】
言葉の語源を都合よく解釈して推論する。


A-2-3 論点歪曲 the straw man

【他説の拡大解釈 extension of ideas】
論敵の言説を不当に拡大解釈して、その点を批判する。

【他説の歪曲 putting words in opponent's mouth】
論敵の言説を不当に言い換えて、その点を批判する。

【他説の不合理な引用 quoting out of context】
論敵や過去の権威の言説を歪めて紹介し、その点を批判する。

【言葉の切り取り contextomy / quoting selectivity】
言説の一部のみを切り取ることで言説の意図を歪めて紹介し、その点を批判する。

【選択的注意の虚偽 selective attention fallacy】
自説に好都合な点のみに焦点をあてて他説を批判し、不都合な点については無視する。

【質問の言い換え rephrasing the question】
自説に対する質問を巧みに言い換えて回答することで、その点の批判を避ける。


A-2-4 論点回避 red herring / ignoratio elenchi / avoiding the issue

(1) 論点転換 diversion

【論点変更 shifting to another problem】
問題の論点を他の問題の論点にすり替える。

【議論の演出 use of humor, sarcasm, parody, innuendo, ridicule, bodily gesture】
ユーモア・嫌味・パロディー・当てこすり・謎かけ・ジェスチャーなどを含めて議論を構成することで論点から意識をそらす。

【機知に富んだ台詞 witty remarks】
機知に富んだ台詞を含めて議論を構成することで論点から意識をそらす。

【威嚇 intimidation】
威嚇的発言によって論敵の思考を混乱させることで意識をそらす。

【チューバッカの弁護戦術 Chewbacca defense】
論点と関係のない不規則発言をすることで論点から意識をそらす。

【無知に訴える論証 feigning ignorance / appeal to stupidity】
言説を理解できないと主張することで論点を換える。

【論理に対する嫌悪 misology】
論敵の「論理」を「こじつけ」と曲解して難癖をつけることで論点を換える。

【論争の拡大解釈 inflation of conflict】
専門家の意見が分かれたことを根拠に問題の解決法が存在しないと主張することで論点を換える。

【多すぎる仮定 too many ifs】
言説に仮定が多いことを批判して論点を換える。

【例に訴える論証 argumentum ad exemplum / attacking the example】
言説の本論ではなく言説のたとえ話を攻撃することで論点を換える。

【相対的窮乏の虚偽 fallacy of relative privation / appeal to bigger problems / barking cat】
解決すべきより重要な問題が他にあるとして論点を換える。

【あら探し faultfinding / petty objection / nit-picking】
言説内の自明な点について説明がないことを問題視することで論点の中心をそらす。

【些細な反論 trivial objections】
大局に影響しない些細な点を過度に問題視することで論点の中心をそらす。

【たとえ話の文字通りの解釈 literal interpretation of figurative remark】
たとえ話の言葉尻を問題視することで論点の中心をそらす。

【無意味な詳細の提示 irrelevant and selected detail】
論点の議論に不必要な詳細情報を提示することで論点の中心をそらす。

(2) 論点逃避 evasion

【リスク回避 hedging】
巧みに主張を改変しながら反証を避けることで自説に対する批判を回避する。

【選択肢要求 there is no alternative】
現実的な選択肢は自説の他にないと主張することで自説に対する批判を回避する。

【主張回避 failure to state】
他説の批判に終始して論点への賛否を曖昧にすることで自説に対する批判を回避する。

【魔法の杖を持っていれば I wish I had a magic wand】
実際には実現可能なことを残念ながら実現不可能であると偽り、この偽りを前提とする自説に対する批判を回避する。

【ロキの賭け Loki's Wager】
他説の曖昧な部分を厳密に解釈して批判することで自説に対する批判を回避する。

【本物のスコットランド人 no true Scotsman】
修辞法を用いて反証を排除することで自説に対する批判を回避する。

【タブー taboo】
自分の信条や主張の批判をタブーとして拒否することで自説に対する批判を回避する。

【言葉の言い換え changing the words】
視点を変えて言葉を言い換えることで自説に対する批判を回避する。

【曖昧な回答 answering a question ambigurously】
質問に対して論点を避けて回答することで自説に対する批判を回避する。

【偽装回答 camouflaging the answer】
事実の回答を避けてその事実と反対の状況を想像させる個人の感想を述べることで自説に対する批判を回避する。

【半分真実 the half truth】
質問に対して不都合な部分の説明を故意に省くことで自説に対する批判を回避する。

【逆質問 counter-question】
質問に回答せずに逆に質問を返すことで自説に対する批判を回避する。

【代案への攻撃 attacking the alternative】
論敵が示した代案を攻撃することで自説に対する批判を回避する。

【対案の欠如 there is no alternative】
対案がないことを根拠に自説に対する批判を回避する。

【二者択一の回避 denying the correlative】
互いに背反する言説について二者択一を迫られたときに選択肢とは異なる言説を主張することで自説に対する批判を回避する。

【ポリアンナに訴える論証 fallacy of worse evil / appeal to Pollyanna】
ネガティブなものよりもポジティブなものを想起するポリアンナの原理を利用して自説に対する批判を回避する。

【説教者の「私達」 preacher's we】
論者が一人称単数の代わりに一人称複数を用いることで自分に対する批判を回避する。

【非論理的な正当化 rationalisation】
あたかも合理的で論理的な話しぶりによって正当化することで実際には論争を招くような行為や主張に対する批判を回避する。

(3) 議論回避 avoidance of discussion

【引き延ばし stalling / procrastination】
様々な手段を用いて議事進行を妨害する。

【分析麻痺 paralysis by analysis】
分析に時間がかかることを根拠に議事進行を妨害する。

【一歩づつの虚偽 one step at a time】
合理的な根拠なしに、ゆっくり考えるべきであると主張して議事進行を妨害する。

【無意味な質問 meaningless question】
論理的に無意味な質問をすることで議事進行を妨害する。

【フィリバスター filibuster】
民主主義の手続きを逆手に取り、無意味な演説を長時間続けるなどの遅延行動で議事進行を妨害する。

【無謀論証 appeal to desperation / rough and ready】
結論を得ることを前提とすることで正常な議論を妨害する。

【結審のための譲歩 apeal to closure】
議論の終結を目的として証拠を無批判に受け入れる。

【仕事終了の虚偽 finish the job fallacy】
プロジェクトを達成することよりも終えることを優先する。


A-2-5 偽原理 non-sequitur / it dosen't follow

【矛盾する条件 conflicting conditions / a self-contradiction】
言説が自己矛盾している。

【ケトルの論理 kettle logic / inconsistency】
互いに矛盾している複数の言説を用いて自説を肯定する。

【概念の盗用 stolen concept fallacy】
ある概念を反証しようとする言説にその概念が真であるという前提が含まれる。

【疑似科学 pseudoscience】
十分な検証が行われていない疑似理論を無批判に肯定して推論する。

【病的科学 pathological science】
虚偽の方法によって導かれた理論を無批判に肯定して推論する。

【拷問による白状 confesses under torture】
拷問によって白状させられた言説を無批判に肯定して推論する。