2011年サイトウ・キネン・フェスティバル 松本 公演プログラム

まず 鑑賞後の感想をここに置くにあたり
この素晴しき企画ト存在に心から拍手を贈り
この素晴らしさに加え 音楽と演劇の融合等
今後益々変化していくだろう事を心から願い応援したい

その主催者である小澤 征爾さんの快復を祈り
明日最終公演の小澤さん指揮 オペラ『青ひげ公の城』で
観客がそして第一にご本人も願っておられるだろうタクトを振られんことを願う



プログラム中 鑑賞したのはこちら
サイトウ・キネン・フェスティバル松本+まつもと市民芸術館 共同制作
ストラヴィンスキー『兵士の物語』


公演概要
音楽と演劇など舞台芸術によるフェスティバルを目指す、小澤征爾総監督と、串田和美まつもと市民芸術館・芸術監督が組んだ初めての作品です。兵士と悪魔のやりとりから始まる数奇な運命の物語を、実力・人気とも抜群の石丸幹二ら魅力的な俳優陣と、アイデア満載の演出でお贈りします。




音楽監督:小澤征爾 

芸術監督:串田和美


作曲:イーゴリー・ストラヴィンスキー
台本:シャルル・フェルディナン・ラミューズ   
演出:ロラン・レヴィ
美術:フロランス・エヴラール

兵士:石丸幹二
プリンセス:麻生花帆
語り手:福井貴一
悪魔:串田和美

ヴァイオリン:郷古廉
クラリネット:吉田誠
トランペット:只友佑季
パーカッション:中谷孝哉
コントラバス:谷口拓史
ファゴット:星野美香
トロンボーン:今村岳志


会場はまつもと市民・芸術館

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その美しい流線型の外観
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この建物
非常に贅沢な造り
広い空間で入った途端その空間に吸い込まれそうになる
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お知らせのポスターには確かに「アフタートーク」のお知らせがある
今頃 知る(笑)
でもあの時 鑑賞後に知ってとてもHappyだったので良し!!
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階段ではなく動く歩道でホワイエへ(笑)
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マチネ公演に向かう時は外光が入り込む壁
その美しい壁と長い歩道が夢の世界に誘われるよう



ソワレ公演の壁は外光は入り込まない
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代わりに建物内の照明が外にもれて…
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日が暮れると 石丸さんが納めはったフォトに至る(笑)
この夜の会館の様子を石丸さんはフォトに収めてはりました!
この続きの光景は石丸さんの後援会ページへ~



劇場はこちらのまつもと市民芸術館:実験劇場

この「実験劇場」の設備そのものが今回の演出のラストで素晴らしい旨味になる事となる


私が観劇した8月24日マチ&ソワ鑑賞(全5公演中の第3回目&第4回目)感想をここに落とす

階段を上り切った所でマエストロたちが出迎えてくれる
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ホワイエには花が華を添える
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少し残念だった事はパンフレットについて
ホワイエにて1部500円で販売
その挿絵といい作りといいこの絵本を手に取った事がある方ならすぐにわかるその遊び心

兵士の物語/中原 佑介

¥1,680
Amazon.co.jp


パンフレットそのものが絵本仕立て
そして中央に そこだけ紅紐で袋綴じ状態にされた仕掛けがあり(まだ紐解いていない 笑)
大体の絵は想像できるけれど紐解くと再びの驚きがあるのかもしれない
本当に面白くわくわくするものになっているのだけれど
いかんせん販売部数が少ない!

観客席は380席
通常には無い列を2列加えているので機材等で差し引いても400席程度の集客があったはず
リピート客を見込んでいるのかロビーにて販売されている数は毎公演100部
私は2公演鑑賞したのでこれを知り購入出来たけれど
(マチネ公演終了後 イベントトークまでの間に購入にいくと「売り切れ」との事でこの事実を知る)
私も麻痺してしまいがちだが通常の感覚では鑑賞は1回という常識を大切にしなければならない
そうしてこういう事を理解し大切に出来るのならば
各公演事に収容観客数の数だけパンフレットの数を揃えておくべきだと思う
素晴らしいパンフレットだけに非常に残念



さていよいよ劇場へ
その日は撮影記録日だったよう
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座席表
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この座席表も事前にチェックしていなくて
大体がABCD…とアルファベット順の座席表なので
ソワレ公演はえらい後ろやなぁ位に思っていて入場前にチェックしてびっくり
Y列とは通常席に加えられた前列だった!
2列目のしかもセンター下手寄りというこの演目には大変素晴らしいお席
マチネ公演を観終えていて 石丸さんの立ち位置や郷古さんの演奏位置を知っていただけにソワレ公演は着席する直前にその嬉しさに気付く(笑)



物語のメッセージ&感想については
石丸幹二さんが2010年1月に白井晃さん演出の元に上演された『兵士の物語』観劇後と同じ

参考2010観劇始め 石丸幹二出演 『兵士の物語』 2010-01-03 23:55:28

これは「言葉と音楽のシリーズ」第二弾の演目
舞台上での共演はピアノとパーカッションのみ
石丸さんが語り手 兵士 悪魔 王女の4役を全て一人で演じ分けつといった
ストラヴィンスキーが望んだシンプルな上演スタイルをもっとシンプルにしたものだった

この時も面白い演出だなぁと思ったが
今回はまた違った意味の面白さ(旨味)のある演出だったので
それについて書き留めたい

舞台上に所狭しと並べられた楽士達が座るだろうと思われる譜面台が用意された椅子
しかしそこに登場するのは原作どおりの楽士7名
これはパンフレットによると来るはずだったオーケストラが戦争のせいで7人の演奏家しか来られなかったという設定だと

日本でもつい先日同じような話があった
そう その私もその現実に向き合ったゴールデンウィーク
行くはずだったLFJ…
手にしていたチケット
楽しみにしていたのに来る事が叶わなくなった外国人アーティストたち
この物語は時代を超えて通じるものがある

バックには重いグレーの緞帳
そして3つの小ステージ

下手に衣装を携えたブティックハンガー
同じ下手にテーブルが1つ
下手寄りにオレンジステージ
中央に青ステージ
そして上手寄りに赤ステージ
後にわかるがオレンジステージは兵士が
赤ステージは悪魔のステージという事になる

開演前 既に楽士達が椅子に座って各楽器の調律をしている
私はもうこの時点でヴァイオリニストの郷古廉さんと郷古さんが奏でる音が気になってしようが無かった
郷古さんのお席は下手寄り
そして語りの福井さんもこの下手寄りに語る事が多く
大変見応えのあったソワレ座席!

そして定刻(マチネは定刻 ソワレは5分遅れ)に石丸さんが下手から舞台上に!

黒いシャツにチノパン姿
楽士達と談笑したり
椅子を利用して屈伸したり
下手に用意されたテーブル上の水を飲んだり
そして一旦 下手にはける

郷古さんによって調律された3億円の(笑)いえいえ10フランのヴァイオリンはオレンジステージに置かれる

しばし後
このテーブルに俳優陣&楽士全員がわやわやと集まり
再び水を飲みながら楽しげに談笑している図に変化していく

さあ始めよう!といった串田さんのジェスチャーで全員が横一列に並び語り手の福井さんによる口上で物語は始まる

この語り手の福井さん
ストーリーテラーであるが語られるその言葉は「兵士」でもある
福井さんによる「兵士」の語りに合わせ石丸さんが演じる
そんなシーンも多く…

進軍する兵士の様子の演出について
歩く~ただ歩く~歩き続ける
石丸さんのひとり芝居の時はそれこぞ文字通り舞台上を歩き回った
白井晃演出のコンセプトは音楽劇ではなく朗読劇
しかも石丸さんのひとり芝居で石丸さんは一人4役をこなし舞台中を歩き回っていた

今回の演出は
たくさん並べられた椅子
その椅子に座る7人の楽士達
そして3つの小ステージ
これらの為 実質歩き回る事が難しかったのだろうが
ひとつの小ステージ上(下手のオレンジステージ)で足踏み状態を繰り返すという事で「歩く」という演出がされていた
これが良かった!
舞台上を歩き回る事は視覚的に分かりやすい
しかしこのように同じところで足踏みを繰り返す事は「ただ歩く」という事を強く感じさせてくれる
上手い!!


舞台上では通して俳優と楽士が同じ空間に居る
隣り合わせになったり
そこどけ!と追い払われたりもする
俳優か楽士かの前に皆 ひとつの物語の演じ手というスタンス

楽士が演奏している時は俳優はその音楽を聴いている
(だから石丸さんのフォトエッセイにあの楽譜が登場したのだ)
そして楽士達が俳優を舞台を観ている
そこどけ!と一緒に演じる事もある(笑)

無数のイスは来られなかった楽士達の数でもあるけれど
芝居の中で上をあるかれたりと意外な使われ方もする

「本」「ヴァイオリン」と手書きで書かれたカードが出てきた時はビックリ仰天だったけれど
その後のこのカードの使われ方をみるとまんざらでもないような気もする(苦笑)

この「本」と「ヴァイオリン」を取り換えようと誘惑される兵士
欲望&境界線といった取引内容を餌に魔法にかけられる時の一瞬の動きがコント的で面白い
悪魔が「クワーッ」「シャーッ」と魔法ビームを送り
兵士は落雷に打たれたようにのけぞる

そして誘惑に負けた兵士が悪魔扮する老人と共に馬車に乗ったと想定される場面では
天井からハシゴが降りてくる
時空を超えて 3日間と思っていた実は3年間を過ごす空間へ
その間石丸さんはそのハシゴを中央付近まで昇り宙に浮いている事になる

この間の演奏も素晴らしいものだった

3年の間に兵士は大切なものを全て失っていた
ヴァイオリンとの引き換えにもらった「本」
将来を見て取れる「本」
将来を見て取り金には困らなくなる
天から金が降ってくる

しかし気付く兵士
全てがあるが何一つない本当に大切なものは金では買えない
本当に必要なのは食べ物ではなく食欲なのだと
破り捨てられる「本」


ここで物語は小休止
石丸さんは舞台上でシャツを着替え
楽士達も水を飲んだり
しかし客席の観客の私達はそれらに目が釘付けで小休止など無い(笑)


休憩無しの第二幕(笑)

福井さんの「第二幕のはじまり」の口上で幕開け

兵士はヴァイオリンを聴いている
そして再び歩き始める
ただ歩き続ける

病に伏した王女を救うんだと語り手に勧められている間に
悪魔の串田さんが髪を逆立てて悪魔に変身している
これが何気に可笑しくて

そんな策で王女を救えるはずがないと再び操られる兵士
魔法ビームを浴びのけぞる兵士(笑)

このあとの金を失うために悪魔と賭けトランプをする様子がもう可笑しくて可笑しくて
この物語 こんなに可笑しくしなければならないのかなと少々不思議に思いつつも
これは演出の面白さなのか串田さんの面白さなのか訳がわからなくなってしまった(笑)
が面白いものは面白いのだ
それでいい

倒れた悪魔からヴァイオリンを取り戻し病に伏す王女に聞かせる
この時の演奏もとても美しい

王女が病から(悪魔の魔法から)醒め3つの舞曲に合わせて踊る
流れるのはタンゴ ワルツ ラグタイム
そのヴァイオリンの奏でる舞曲が本当に素晴らしく
上演中で一番の冴えどころ!
音楽とは凄いもので こんなにも若いまだ高校生の彼にこのような演奏をさせてしまうのだ
ヴァイオリニストの郷古廉さんの呼吸がその旋律に乗っている
全身で全呼吸で奏でている
そしてその先で王女が繰り広げる舞踊
これはこのシーンを観られただけでも儲けものといえるほどの素晴らしいシーンだった

そしてこのシーンではヴァイオリンの音色で目覚めさせる兵士と目覚めさせられる王女のやりとりと
お互いを意識したのちの駆け引きが描写される
それは静かな舞踊から楽曲が変化していくに伴い
バックスクリーンに大きく映し出される石丸さんの操る手と
その手に操られる王女の舞踊とで表現される


そしてラストの演出!
これはあの空間に居合せないとわからない体感
「思わず息を飲む」とはこのこと!


背景の緞帳が落とされる
そして落とされた緞帳の向こう側には…

この空間が!!

この怪しく幻想的に光る赤のグラデーション
この主ホール客席後方に そう遥か彼方に「悪魔」が立っている
その悪魔も怪しく光る
手招く悪魔に吸い込まれるように引き寄せられていく兵士
石丸さんの姿が遠くなっていく…



そう!
そういえば私達は実験劇場に居たのだった
上演会場は「実験劇場」となっていたではないか!

事前にどんな会場なのかと公式サイトでこの会場の様を見たではないか!
そしてここが 主ホールの後舞台に設けられたロールバック式客席の仮設劇場であり
舞台の中の劇場とチェックしていたはず
やられた~という感じ

こちらは400席あまりの空間
あちらは1800席の空間
いかにこの主ホール客席が現れた時に息をのんだか!!
これほどまでに
確かにこんな劇場の使い方
北京や上海では出来ぬだろう
この劇場だから出来るのだ

物語が警鐘するメッセージはどんな演出でも同じだろう
しかし今回の演出では その選ぶという事 求めるという事に垣間見える人間の浅はかさや欲の愚かさが末恐ろしいという実感をもたらしてくれた
ゾッとする

こういう演出こそ ある程度の年齢の子ども達に観て欲しい
私はいつも思っている
そしてそうしてきている
我が子達に…

良質の演目の観劇を子と共にする事
子の手を引きその劇場まで足を運ぶ事
子の手を引く大人がその劇場にそして 
その演目を観に行く事を心から楽しんでいる事
そして観劇の感激を共有する事
そこに説教じみた言葉はいらない
何故なら芝居やミュージカルや音楽が大切な事を語っているから
大切な事を諭しているから
共に良い時間だったね
楽しい時間だったねと語り合えればそれでいい
それだけでいい

極上の作品があり
その作品をよく理解する極上の演出家が居て
極上の空間に
極上の俳優と極上の音楽家が居る
表現をするという芸術を共通として
違うジャンルの芸術家だちがひとつの演目を繰り広げる
これぞ!という作品に仕上がっていた
本当に良い時間だった


石丸幹二さんを応援する事により
その石丸幹二という俳優に与えられた仕事を通じて
私達はこのような良質の演目に導かれ 感動を頂く
その機会に大感謝!

その石丸幹二さんという魅力的な人間&俳優が引き寄せる仕事は
その幅を広げ 奥行きを増し魅力を増す
そしてその魅力がまた新たな仕事を引き寄せる

今回もまた 『兵士の物語』とう作品を石丸幹二さんご出演で再び観るに至り
おなじ物語でも演出が異なるとこうも旨味が違うという事を改めて知るに至り
出演者にしても串田和美さんという石丸さんが今年1月にご出演になった『十二夜』の演出家&俳優でもある方を再び拝見するに至り
今回のお仕事もこの串田和美演出の『十二夜』をきっかけにしているというそのご縁を不思議に思う

その様々な導きによる作品を拝見する事
ここに駆けつける事が出来る事
その駆けつけた空間の隣の席には
私よりも先に後援会に入会しているにも関わらず
石丸さんに手紙を書く事もない(これは私もそうだけれど 苦笑)
差し入れをするわけでもない
しかし心から石丸さんを応援している母の姿がある

そんな母の手を引いて
小旅行を兼ねて 自分も楽しみ 母孝行が出来
何より石丸幹二さんを応援出来ているという事が本当に嬉しく
心から様々な事に感謝の想い…

様々な必然にありがとう