最近は、ずっといじめ問題やら本のレビューやら書いていましたが、トランプ当選で色々と思うところがあり、久しぶりに政治ネタを多めで更新しようかと思います。

 

実は先日京都大学のF先生と哲学者のTさんと、ブロガーのMさんとお会いして食事をしながらアレコレ議論をしておりました。その際に、話題になったことの一つがこちらのグラフです。

 

 

こちらのグラフは、現在のように日本がほとんどGDPがゼロ成長を続け、日本以外の国が現在のペースで順調にGDPを増加していった場合に2040年に世界のGDPシェアがどのように推移するかを予測したグラフです。

(↓こちらは各国のGDPの推移)

 

で、このグラフをもとに何を議論していたのかというと、「果たして実際にGDPのシェアがこのように推移し、2040年には日本は後進国に転落してしまうのか?」という問題です。まず、一つ確認しておくと、現在ではヨーロッパも政治的な要因により十分な財政政策を打てないという意味で日本に近い状況に陥りつつあり、また中国も国民の一人当たりGDPが一定の水準に達した段階でGDPの成長率が鈍化するのではないか?とも言われていることから、仮に日本がこのままゼロ成長を続けてもここまで極端な差は付かないかもしれないということはあります。ですが、まあこのあたりは細かい議論になりますので、ここではあえて議論を単純化し、おそらく日本以外の国家はそれなりのペースでGDPを拡大していくであろうということを前提に、「日本が政策転換(保護主義+積極財政)を成し遂げられなければ、他の先進国に逆転されGDPで大きく差をつけられるであろう」と仮定して「では、果たして日本は経済政策を正しい方向へ転換できるのか?」という問題に関して議論をしました。

 

現在では、保護主義+積極財政という方向への政策転換の兆しは見られず、日本が主体的に政策の転換を行う可能性は低いのですが、一方で、海外に目を向けてみると、イギリスは国民投票でEU離脱を決定し、アメリカではトランプとサンダースというアンチグローバリゼーションで国民経済重視の政治家がアメリカの大統領選で大きな役割を演じるカタチになりました。このようなことから、日本では周回遅れになっていても、すでに海外では新しい政治思想のムーブメントが発生しつつあると、そこで私は、「確かに、現状で日本はどうしようもな状況ではあるが、アメリカやイギリスがアンチグローバリゼーションへの政策転換を成し遂げつつある中で日本も10~20年ほど遅れてアンチグローバリゼーションと保護主義の流れに追随する可能性はあるのではないか?」という意見を述べました。

 

ところで、この議論を行っていた時点ではヒラリーが圧倒的に優勢とされていたので、まさか今回の選挙でトランプが当選するとは予測していませんでした。先のような意見を述べたときも、あくまで今回トランプが当選するとは考えておらず、おそらく今回はヒラリーが当選するが、4年後の大統領選ではアンチグローバリゼーションと保護主義と国民経済重視の政策転換を求める声が大きな流れとなって新しいムーブメントを引き起こすのではないか?というようなことを想定し、少なくとも4年以上先の未来を予測した発言だったのですが、今回のトランプ当選によってこの流れは4年間前倒し(?)で一気に加速することでしょう。

 

ちなみに、トランプは就任初日にTPPから撤退し、10年間で1兆ドル規模のインフラ投資と大幅な減税を行うことを約束しています(ついでにメキシコとの間に万里の長城も建設するらしいです)。

 

 

財政出動の規模が十分であるか?減税と支出拡大を同時に行うことが財政的な制約から考えて可能であるのか?等いくつかの疑問点はあるのですが、それでもおそらくは国内の需要不足を解消し、国内経済を成長させるための正しい方向への政策転換であることは間違いないでしょう。

 

ならば、日本やヨーロッパもこのビッグウェーブに乗らないと!!とばかりに追随するべきなのでしょうが、そうスムーズに政策転換が可能かというと結構難しい問題に直面しています。

 

前回記事(『『服従』ミシェル ウエルベック 著 レビュー~お笑い小説デスカ?コレヽ(*゜▽。*)ノ?~』)の前半部分でも述べたように、日本でのチェンジは基本的にはシステムの解体と移民・外資の呼び込みです。トランプに期待されている変革は明らかに自国重視の孤立主義で、そこには「強いアメリカを自分たちの手で再建していく!!」という強い自負心を伴っているのですが、日本の場合はそうはなりません、ここに戦勝国アメリカと敗戦国日本の違いが端的に表れているワケで、戦後という時代を眺めた際に、明らかにアメリカは「歴史上最も偉大な戦争に勝利した偉大な国家」であることを国家のアイデンティティとしている一方で、日本は佐藤健志さんが『僕たちは戦後史を知らない――日本の「敗戦」は4回繰り返された』で解説したように、常に敗戦と占領というものを基盤にしてアイデンティティが形成されています。戦後復興は「敗戦からの立ち直り」であり、高度成長は「戦勝国への挑戦」であり、防衛政策は常に「戦勝国アメリカとの同盟関係を如何に据えるか?」であって、TPPは「敗戦国が世界の孤児にならないために」参加せざるを得ないワケです。もっともTPPに関しては戦勝国アメリカからNOを突きつけられたカタチになり、なんとも滑稽な状況になっているのですが・・・ちなみに、先日NHKのラジオ番組を聴いていたら、コメンテーターが「TPPに関しては安倍首相のトランプとの会談で如何に安倍首相がTPPの重要性をトランプ新大統領に教育できるかがポイントとなります」なんて大真面目に言っていて思わず吹き出しそうになりました。こんなもの、ペットの飼い犬が御主人様を手懐けてお手とお座りをやらせるようなもので土台滑稽な話です。今回の選挙戦でトランプ勝利をどこのメディアも予測できなかったことから、Twitterなどでは「アメリカのメディアのレベルもこんなものだw」なんて書き込まれていたりもしますが、安心してください日本のメディアの方がその100倍はバカですから( ^ω^)・・・

 

まあ、ともかく何が言いたいのかというと、やはり日本はどうにも精神的なねじれみたいなものがあって、アメリカのように自国民で強い国家を再建していくという強い決意のもとに、有効な政策転換を行っていくことが困難なのではないかということです。

 

一方で、ヨーロッパは共通通貨ユーロによる金融政策の制約と、マーストリヒト条約による財政政策の制約により、金融政策と財政政策という二つの最も重要な経済政策が有効に活用できないという制度的な面での袋小路に陥っています。

 

このように、日本とヨーロッパがそれぞれの事情から有効な政策を打てない中で、アメリカはさらに一歩先んじることになるでしょう。アメリカの凋落が叫ばれて久しい現在ではありますが、腐ってもアメリカというか、プラグマティズムなんだかある種のノリと勢いなんだか分かりませんが、どうにかこうにか先進国の中で唯一正しい方向へ政策転換の舵を切ろうとしているあたり何かダイナミックなパワーや底力のようなものを感じます。

 

 

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