『銀盤のトレース』 | 本がともだち

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銀盤のトレース/碧野 圭

¥1,575 Amazon.co.jp




フィギュアスケートは大好きなのですが、通常のグランプリシリーズや世界選手権はともかく、オリンピックに関してはソルトレイク大会以来、何やら政治的なことが絡んでいるように思えてモヤモヤ……。
今回のバンクーバーでもそれを感じてしまい、あまり楽しく観戦できませんでした。
選手たちにしてみれば、必死で練習した成果をお披露目する機会。
政治力は発揮されない方向で開催して欲しいものです。




内容 「BOOK」データベースより

名古屋でフィギュアスケートに打ち込む小6の竹中朱里。
だが、レッスン費用がかさむスケートを辞めさせたい両親に「バッジテストで5級に受かるか、県大会で3位以内に入らない場合はクラブを辞める」という条件を出される。
バッジテストに落ち、県大会でも大きなミスをし、絶対絶命の朱里に、スケート連盟からある提案がなされて……。
緻密な取材に基づくリアルなフィギュアスケート小説。




というわけで、フィギュアスケートの話を真摯に描こうとすると、そういった力がまだ及ばないジュニア以下ノービスクラスの話の方が自由度が高そうです。
わたし自身、伸びしろが多いキャラの話が好きなので、非常にウキウキしながら読みました。



名古屋というと、日本人初の女子シングル銀メダリストとなった伊藤みどりを始めとして、安藤美姫、浅田真央といった選手を輩出したフィギュア女子シングル王国。
(フィギュア王国というには、他の種目で抜きん出た選手がいるわけではない)
フィギュアをやっている女の子が多いだけに、NHK杯会場が名古屋になったりするとフラワーガールの衣装が派手でビックリします(笑)。

そんな名古屋のスケート事情や、ジュニアクラス以下のクラス分けや大会への出場条件などの説明など織り込みつつ、ジャンプに関しては天才的な才能を持つのではないかという主人公が成長していくストーリー。




姉がやっているのを真似て始めたフィギュアに夢中になり、アクセルジャンプは誰よりも上手に跳べるのに、それよりも簡単なはずのフリップやルッツが苦手・ステップもうまくなく、バッジテストに受かることができずに上のクラスに行けない、主人公の朱里。
しかし好きの一念で、フィギュアを諦めさせようとする両親に納得してもらえるように、練習と勉強をがんばります。


いいなぁ……いい!
やっぱり「好き」という気持ちって大切です。

フィギュアを続けたい朱里を援護してくれるおじいちゃんの言葉も、深くていい。
それでも、子供に過度な期待をして投資をする親よりも、朱里の両親のように地に足が着いている人の方がなんとなく安心して読めるのはなぜなのでしょうか。



なんとなく続きがありそうな終わり方だったので、twitterで作者本人に伺ったところ、あと二冊分の構想があるそうです。

うむ、これはアンケートなりお手紙なり出さねば!