「しそ」作りのポイント
種・家庭菜園・園芸・野菜 市川種苗店
新潟県のK様より当店自慢の「赤ちりめんシソ」
のご注文を頂きましたが、そのご注文メールのコメント欄に以下のような書き込みがなされておりました。勝手に引用いたしましたが、皆様にも考えて頂ける良い機会だと思いお名前を伏せてとりあげさせてもらいました。
**********引用です************************
お世話様になります。今年もこちらの商品よろしくお願い致します。昨年はお陰様で播種時のポイント等、丁重にご指導頂きまして7月に収穫できました。今まで純赤チリメンシソ種も含めて数種を試したのですが、おっしゃっていらっしゃる通り、こちらの種は全く今までとは違っておりまして特に太陽光線から透けて見えます何とも言えない深くて美しい葉のお色に感動しました。
ただ、如何せん葉の交配がみられ、レモンバーム・バジル・オレンジミント・ローズマリー等のハーブ類は全部鉢うえにして離しているつもりでしたがそのせいか、あるいはにんにくを作っていまして連作障害を避けるため5年で一巡するよう順繰りにしているのですが、苦土石灰が残っているせいで少し交配してしまうのか、まだまだ分からないことだらけでございます。今年は6月に間に合わせる分も欲しいため、寒い新潟では今から温度管理で育苗する必要があったりで、今年は一通りやってみるだけやってみようと思います。
**********K様ありがとうございました************
当店のご注文にはこのようなコメントが度々書いてございます。
昨年度の成果をご報告頂くのはとても嬉しく思います。例え、それが失敗のご報告であってもです。何とか良い野菜を作りたいとのお客様の気持ちが痛いほど伝わって参ります。私にできることは何か無いだろうかと真剣な気持ちになります。
それが、「良くできたよ!」との成功談だと無上の喜びです。お客様と一緒に万歳したい気持ちになります。
今日はメールにあったこの「赤ちりめんシソ」について書いてみます。
梅干し用の「赤しそ」ですが、いわゆる「大葉」つまり「青しそ」にも当てはまりますし、広く言えば、バジル、レモンバーム、ミントなどのシソ科の葉もの野菜についても当てはまるのではないかと思いますのでご参考になれば幸いです。
このような品質についての答えを探るとき、先天的あるいは後天的なものについてしっかりと区別して考える必要があります。混同すると原因が分からなくなりますし、対処法も大きく的を外してしまうからです。
◆先天性~半分はDNAで決まる。
シソなんて、自然に生えてくるので種なんか蒔いたことがない・・・・とおっしゃる方、けっこう多数派なのではないでしょうか?でも、私は全く反対だと考えています。
もし、人が手を加えない自然界の中で、赤シソが種を落とし、子孫を残そうとするとき、シソは何を考えるでしょうか?シソに限らず、全ての植物は、自分の子どもが虫に食われないように、風雨にさらされても生き残れるように強い形質を子どもに与えようとするでしょう。ダーウィンによると、強くて優秀な形質を受け継ぐものだけが生き残れるからです。
すると、香りが強く、柔らかく、おいしい・・・・このような形質を受け継ぐシソは弱肉強食の自然界においてはけっして生き残れないでしょう。人間がおいしいと考える野菜は昆虫たちには絶好のごちそうだからです。
もし、シソが賢い親なら、子どもに与える形質は
①香りがせず虫にその存在を気づかれないこと。
②葉が厚くて繊維がかたくて強い風に当たっても折れず、雨にたたかれても耐えること。
③虫にマズイ!と思わせ、産卵する気をおこさせないこと。
・・・等が思い浮かびます。
つまり、人間が好む性質は遺伝的に劣性因子であり、人為的に選択しなければ子どもには伝わらない!!
ということです。
したがって、自然に生えてきた「赤しそ」と、栽培種として人間が「選抜した」種とでは雲泥の差が生まれるのです。上記の新潟県のK様は実際に栽培して頂き実感頂けたものと考えます。
特に、当店で販売している「赤ちりめんシソ」
は色、味も最高ですが、縮みもすばらしく、梅干し用の赤しそとしては最高ランクの品質であると自負しております。
◆後天性~ストレスが味を良くする
トマトやメロンや西瓜や葱や蜜柑・・・、これらは油粕をやったり、高級な肥料を使えば甘くおいしくできる訳ではけっしてありません。そのように思っていらっしゃる方が多数派だと思いますのであえて反語的に書きました。さらに、サニーレタスの赤み、人参の赤さ、花々の鮮やかな色・・・・これらも良い肥料を使えば自然に得られる性質ではけっしてありません。
トマトやメロンや葱は糖度や香りを増すために生育後半はカラカラになるくらいに乾燥状態にさせます。西瓜は元々砂漠の野菜です。これらは水分が少なくなっていく課程で糖度が上がり、香りがまし、おいしくなります。窒素成分が効くからおいしくなるのではけっしてありません。 乾燥=水分抑制というストレス要因が働くからそれに耐えるように体内濃度が上昇し結果的においしく変身するのです。
サニーレタスは高温多窒素では赤くなりませんし、おいしくはできません。野沢菜、高菜、ほうれん草・・・葉物野菜は冬の寒さに当たると、その寒さに耐えようとして養分を重点的に茎葉に配分するので味が良くなります。 ストレス要因は寒さ=低温です。
キク、コスモス、スターチス、つつじ・さつき・・・その栽培書には開花期に肥料が切れるように肥培管理しなさいとくどいほど強調してあります。肥料が残っていると、花腐れがおきます。鉢物の蘭類なども同じでしょう。肥料が必要なのは花が終わって、次の花芽を作ろうとするまさにそのときです。これを花卉類に対する「お礼ごやし」といいます。 ストレス要因は=窒素の抑制です。
以上、長くなりましたが、赤シソの場合を当てはめてみますとこうなります。
→生育後半に、水分が多すぎたり肥料がたくさん残っている状態だと、赤く、縮みのある、香りが強い、濃厚なシソは、・・・絶対にできません(キッパリ!)。
◆その他
先天的といえる遺伝的劣勢なDNAが選択され、その上に後天的なストレス要因が加わり、それに耐えようとしてシソはおいしく変身できる・・・ということを書きました。どれが欠けてもダメです。全部揃って初めて上手く栽培することができます。
さて、K様の分の中に気になるキーワード「交配」があります。
例えば、赤スイカと黄色スイカを掛け合わせるとか
えびす南瓜と早生日本系である日向南瓜を掛け合わせると・・・?
どんな西瓜や南瓜ができるかという疑問です。
答えは簡単です。母親の形質を受け継ぎます。ただし一代限りですよ。果実の中にできた種=子どもは両親の形質を確率的に受け継ぐので、どうなるかは実際に試してみなければ分かりません!
ただし、例外があります。父親に支配される形質が果実として大きくなる時です。この例外の例はトウモロコシです。
したがって、葉ものや根もの野菜は親の形質をそのまま受け継ぎますので交配の影響は出る余地など全くありません。またほとんどの果菜類の場合、食用になる果実の部分は母親の一部が肥大したのと同じですから、この場合も交配の影響は出ないのが普通です。(繰り返しますが例外はトウモロコシ。飼料用トウモロコシの隣にスウィートコーンを栽培すると甘くないトウモロコシができてしまいます!)
つまり交配という現象は親自身ではなく子どもにだけ影響を与えるのでその種=「子ども」を栽培しない限り問題にはならないはずです。
結論はシソを上手く栽培するには先に述べたように、
良い種を選び、肥料や水をやりすぎたりしないで、甘やかさずに栽培する!これに尽きると思います。
なんだか、人間の子育てと全く同じになってしまいました。(^_^)
※同じ人間が書くと同じような内容となるのですね。3年前に同じ内容のブログを書いてました。
※申しわけありません。昨年も同じようなテーマで書いてました。赤面。後で気づきました。
ただテーマは種まきが中心でした。
書いた後で気づくなんて・・・認知症の始まりかも?(大笑)
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