旧ソ連製旅客機の美学 イリューシン62M 他 | 世界の食卓  グルメ探求の旅

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エアラインスタッフの食べ歩き日記

最近は見かけることが少なくなり、もはや絶滅危惧種となった旧ソ連製旅客機。

今日はシベリアのちょっと面白い飛行機にまつわるエピソードを紹介します。


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オリエントアビア航空のイリューシンIL-62M


体操はお家芸

アメリカ製のDC-8が空の貴婦人だとすれば、ロシア東欧の女性体操選手のような

イメージがこのイリューシン62型。旧ソ連が開発した旅客機の中で最もスマートで美しい

デザインだと思います。ただし実用面ではエンジンが後部に4発もついている割には

130人程度しか運べず燃費が極めて悪い機材でもあります


マイナス17℃のウラジオストク空港にて撮影)


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ツポレフTu-154Mのコクピット

緑を基調としたパネル、キリル文字の計器類が印象的な旧ソ連機のコックピット

(1999年撮影)


熊で満員の操縦席?

機長、副操縦士、航空機関士、航法士、通信士の5人のロシア人が狭いコックピットに

ひしめきあって乗務しています。(現代は2人乗務が主流なのに操縦席に5人とは凄い・・・)

※ロシア人はしばしば熊にたとえられます。


扇風機

APUがない?ので地上ではエアコンが効かず夏場は猛暑!!

コックピットには扇風機がついており、離陸直前まで窓を開けていました。

北朝鮮の高麗航空はシートポケットに特製団扇が入っています。


単位

飛行高度は世界的にフィートで表示するのが一般的ですが、ロシア上空はメートル表示

日本に飛んでくる時はフィート・メートル換算表の紙をコックピットに貼っていました。


マルボロは通貨?

上の写真の操縦席のセンターパネルに置かれているのはマルボロの箱

ソビエト時代の臭いのするコックピット風景とアメリカ製品との対比が実に渋い。

マルボロと言えばソビエト末期には実質的に通貨として通用するほどの人気でした。


労働者はお客様より偉い

つい最近まで共産主義の理念により乗客より乗務員が優先されてきました。

飛行機が空港に到着すると乗客より先にパイロットが「ダスビダーニャ!」(さようなら)

言って乗客に手を振って降機していました。



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(左)旧ソ連機のエコノミークラスのシート

シートが完全に前に倒れる構造となっています。体験された人もいると思いますが、

着陸の衝撃で空席のシートがバタバタと音を立てて前に倒れていきます。


座席に仕掛けが

それには訳があるようで、有事の際にシートをすべて前方に倒せば客室がフラットになり

軍事物資を運べるからと言われています。写真はkashiwanがわざと前方に倒してみた図

確かに瞬時に軍用機に転換できそうです(笑)


将軍様専用

また、シートピッチは一般的に極狭ですが、写真のように最前列だけは若干広めです。

それは有事の際にそこに軍の将校が乗るからだとか?北朝鮮の高麗航空の機内には

前方に高級将校用のサロンがあります。(※将軍様は飛行機嫌いなので外遊は列車専門)


無骨

その他の突っ込みどころとしては、シートポケットが網である点や、テーブルが鉄板で

できている点でしょうか。


(右)ヤコブレフYak-40引退で富山線が運休に!(2010年12月)

日本発着最小座席数(19席)の国際線だった富山線のヤコブレフYak-40が引退。

理由は老朽化だそうで、しかもそれに代わる小型機材がないから富山線は先月末から運休に

なってしまいました。(最近はロシアが中古車関税を引き上げたため、中古車関連の商売で

富山にやってくるロシア人ビジネス客も激減していました)


■驚異の燃費

19席でジェットエンジン3発って聞いただけで燃費が非常に悪いことくらい容易に想像がつき

ますね。どうしてこんな機体が開発されたのでしょうか?


神風?

もともとシベリアの未整備空港でエンジンが1発故障しても残りの2発でベースに帰還できる

ようなタフな機体として開発されたのが始まりだとか


実は高級プライベートジェット?

さらに富山線の19席バージョンはJRのように4人掛けボックスシートのような座席配置で、

しかも真ん中に机があったのでまるでビジネスジェットでした。日本発着の旅客機の中で最も

ユニークかもしれませんね。