財務省、墓穴を掘った? | 朝倉新哉の研究室

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やあ、みなさん、私の研究室へようこそ。
いつもより遅くなって、すみません。

日本人の金融資産(家計つまり個人がもつ金融資産)が、過去最高になりました。

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家計の金融資産が過去最高に 昨年末

日銀が25日発表した資金循環統計(速報)によると、
2013年12月末時点で
家計部門が保有する金融資産の残高は
前年同月末比6・0%増1645兆円となり、過去最高となった。
これまでの過去最高は13年9月末の1609兆円(速報値は1598兆円)だった。
株価上昇や、投資信託の評価額が膨らんだことで資産が増加した

家計が保有する金融資産の内訳は、
株式・出資金が38・5%増の155兆円で、
投資信託は28・4%増えて79兆円だった。
現金と預金は2・3%増の874兆円だった。

日本国債の発行残高は2・8%増985兆円となった
このうち日銀の保有残高は、
大規模な金融緩和で国債の大量購入を続けているため、
58・9%増の183兆円過去最高を更新。
一方で、国内銀行の保有残高は13・0%減の135兆円となった
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http://sankei.jp.msn.com/economy/news/140325/fnc14032511380006-n1.htmから引用。
(青字、赤字による強調はブログ主による)

資産額が過去最高になったのは、
株価が上がったからだ、ということのようです。
ロイターも同じ見方をしています。

>株高・円安基調を背景に
>株式や投資信託などの時価が膨らんだことが背景。

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYEA2O00420140325?pageNumber=2&virtualBrandChannel=14173から引用。

家計の金融資産が過去最高なら、
国債の発行残高985兆円という額もまた、過去最高です。
実は、政府が負債を増やせば増やすほど
(つまり”国の借金”が増えれば増えるほど)、
家計の資産は増えるのです。

グラフ1

https://www.mof.go.jp/budget/fiscal_condition/related_data/sy014/sy014e.htmより転載

このグラフは、財務省のHPにあったものです。
長期債務残高というのが、国債の残高で、いわゆる”国の借金”の額です。
ご覧のとおり、長期債務残高が増えれば、家計の資産も増える、
という関係になっています。
財務省としては、
1989年ごろは、家計の資産は、”国の借金”の4倍ぐらいあったのに、
1997年ごろには、3倍、
2002年ごろには、2倍、と、
だんだん差が縮まっているから、やがて、
”国の借金”が家計の資産を追い抜いてしまう、
と言いたいのだと思います。
しかし、冒頭の引用記事にあるように、
家計の資産は、6%増で、
国債は2.8%増です。
家計のほうが、増加幅が大きくなっています。
政府が借金を増やすのは、借りたお金を何かに使うためです。
政府がお金を使えば、使った分以上に、GDPが増えます。
これを乗数効果と言います。

グラフ2
名目GDPの推移 - 世界経済のネタ帳

グラフ1とグラフ2を見比べてください。
1990年を過ぎたあたりから、日本のGDPは成長が鈍くなり、
その後、ほとんど成長していません。
政府の借金の額の伸びに比べて、
家計の資産の伸びが鈍くなったのは、そのせいだと考えられます。
つまり、
”国の借金は増えてるが、GDPが伸びなくなった”
のが原因だろうと思います。

グラフ3(クリックして拡大してご覧ください)
$国家戦略研究







http://hirohitorigoto.iza-yoi.net/2013.2.html#01より転載

グラフ3でわかるように、
先進国は、みな、90年以降、政府の負債(国の借金)を増やしています。

グラフ4(クリックして拡大してご覧ください)
$国家戦略研究







http://hirohitorigoto.iza-yoi.net/2013.2.html#01より転載

しかし、グラフ4でわかるように、GDPが伸びていないのは、日本だけです。
そうなった原因は、日本が、政府支出を増やさなかったことです。

グラフ5(クリックして拡大してご覧ください)
$国家戦略研究








http://hirohitorigoto.iza-yoi.net/2013.2.html#01より転載

グラフ5でわかるように、日本が最も支出の増やし方がショボいです。
イタリア、フランス、カナダは、1990年と比べて2倍以上に増やしています。
イギリスにいたっては、3倍以上です。
政府が支出を増やすほど、GDPは成長するのです。
それを表したのが、グラフ6です。

グラフ6
$国家戦略研究






















http://hirohitorigoto.info/2013-1-26.htmlより転載

政府が支出を増やせば、給料も増えるのです。
それを表したのがグラフ7です。

グラフ7

http://grandpalais1975.blog104.fc2.com/blog-entry-181.htmlより転載

注目していただきたいのは、
政府が支出を増やすと、”民間給与”が増えているということです。
だからといって、ただ支出を増やせばいいかというと、そうではありません。

グラフ8
国家戦略研究
http://tamurah.iza.ne.jp/blog/entry/2936695/より転載

1997年に比べて、2011年は、政府最終消費支出が16兆円余り増えています。
(その中でも社会保障関係現物給付が15兆円ほど)
しかし、それ以上に公共投資を減らしたため、給料は増えず(グラフ9)、
GDPも成長しなかった(グラフ10、グラフ4)のです。

グラフ9
$国家戦略研究
















http://ameblo.jp/hirohitorigoto/entry-11521220087.htmlより転載

このとおり、公的固定資本形成(公共投資)を増やせば、
賃金(給料)は増えるのです。

グラフ10

平成8(1996)年と平成21(2009)年を比べて、
公共投資を減らしているのは、日本だけです。
その結果、グラフ4のように、日本だけ名目GDPが成長しなかったのです。
グラフ4と5で、
日本は、政府支出を増やさなかったから、GDPが増えなかったことが、わかりますが、
日本の政府支出が増えなかったのは、公共投資を減らしたことが、
主な原因だったのです。
グラフ8でわかるように、
社会保障の支出が増えたから、「その分を削らなきゃならない」ということで、
公共投資を削ってしまったのが、間違いだったのです。

財務省は、グラフ1で、
「このままだと、国の借金が、家計の資産を超えちゃうぞ、大変だ。
 財政健全化が必要だ。
 増税が必要だ。
 緊縮財政(政府の支出を減らすこと)が必要だ。」
という方向へもっていきたいのでしょうが、
経済データを正しく読み取れる人が増えた今、
かえって墓穴を掘ることになるのではないでしょうか。
私でさえ、財務省のトリックに気づきましたから。

いかなる時でも、政府は支出を増やすべきだ、なんて極論を言うつもりはありませんが、
少なくとも、不況やデフレから脱却したいときは、
政府は、借金が増えるのを気にせず、支出を増やすべきなのです。

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