やっぱりキモはこれなんですよ | 朝倉新哉の研究室

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全ては日本を強くするために…

公共事業の記事が続いたせいか、このところ、アクセス数が減っています。

しかし、公共事業に関して、すごいものを発見したので、

あえて今日も公共事業ネタでいくことにします。

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以前ご紹介していた

  『デフレーション下での中央政府による公共事業の事業効果分析』
  http://www.union-services.com/sst/sst%20data/2_57.pdf

という地味な論文ですが(笑),雑誌掲載となりましたので,ご紹介差し上げます。

その概要はといいますと....

「本研究では、
 デフレーションに突入した1998年から2010年までのデータを用いて、
 中央政府の公共事業が日本のマクロ経済に及ぼした事業効果についての分析を行った。
 ・・・その結果、
 中央政府の公共事業の1兆円の増加によって、
 名目GDPが約5兆円増加する
こと、
 そしてそれを通して、
 デフレータ、失業率、平均給与、被生活保護者数がいずれも改善し、
 最終的に総税収が1.6兆円、
 出生数が1.7万人増加する
という分析結果が示された。
 一方、総輸出額の増加にはそうした広範な効果は検出されなかった。」

というものです。

つまり,
中央政府の公共事業を1兆円行えば
(地方政府もその裏負担金を公的支出する事なども手伝って。。。)
回り回って日本全体の所得(名目GDP)が,5兆円も増えて「いた」
しかも,税収の点から言うなら,1.6兆円も増えて「いた」
ということが,「過去のデータ」から明らかになった,という研究結果です。

逆に言うと,公共事業を1兆円削れば,GDPは5兆円も減ってしまって「いた」,
税収も,1.6兆円も減ってしまって「いた」
ということが「過去の実績値」として明らかになった,というものです。

いわゆる「厳密な乗数効果の推定」とは異なる手順ですが,
上記の様な統計的関係があることは紛れもない事実。。。
であることは,誰も否定できないと思います。

仮に控えめに言ったとしても,
「公共事業をやっても景気に意味が無い!」
とか言う言説は,過去のデータを見れば,明らかに現実と乖離している。。。
ということくらいは,間違い無く言えるのでは。。と思います(笑)。

詳しい所にご関心の方は,下記論文ご参照ください。
以上,ご紹介まで!
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https://www.facebook.com/Prof.Satoshi.FUJII/posts/402981056469510より転載。
(青字、赤字による強調は筆者による)

上記の文章は、京都大学大学院教授で、内閣官房参与も務めている

藤井聡さんが書いたものです。

麻生副総理も、公共事業の効果についてこのように述べています。

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麻生氏は、
橋本内閣による消費増税の結果、所得税が減ったことなどにより
税収総額が落ち込んだことに触れ、
「安易に増税しても増収にならない」と強調。

優先順位の一番はデフレ解消だ。政府支出を増やし、経済を成長させるしか道はない。
(そのためには)雇用を確実に生む公共事業は大きい
」と述べた。
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http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2012021200060より転載
(青字強調は筆者による)

藤井教授は、公共事業に効果があることを、はっきり数字で示したわけです。

下のグラフ1は、経済活動別名目GDPで、

言ってみれば、それぞれの業界がどのくらいGDPを生んでいるかを比較したものです。

グラフ1(クリックすると拡大できます)
$国家戦略研究








http://www2.kumagaku.ac.jp/teacher/~sasayama/images/gdpsupply.gifより転載

藤井教授の著書『公共事業が日本を救う』文春新書 には、

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公共事業を担う建設産業は、日本の全雇用の9パーセントを創出し、
GDPの6パーセントをたたき出す文字通りの「巨大産業」だ。
その雇用も経済規模も、
日本経済を牽引する産業と位置づけられることが多い自動車産業のそれよりも大きいのだ。
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とあります。

グラフ2(グラフ1を拡大したもの)
$国家戦略研究

















自動車産業は、グラフ2の左から14番目の「輸送用機械」になります。

建設業は、右から11番目になります。

藤井教授の言うとおり、建設業のほうがはるかに大きいですね。

公共事業に対して、”土建屋だけ儲けさせてけしからん”

といったような批判があります。

しかし、自動車産業に比べて、はるかに大きいのです。

こちらに重点的に予算を配分したほうが効果が大きいことは一目瞭然です。

そういうことなら、建設業より大きい業界があるので、

そちらを優先すべきだ、という話にもなってきます。

建設業よりも大きいのは、

住宅賃貸業
政府サービス生産者
対事業所サービス
対個人サービス
卸売業
公共サービス

となっています。

グラフ3(グラフ1を拡大したもの。グラフ2に入りきらなかった項目がある)
$国家戦略研究






グラフ2、3で、最も大きいのは、住宅賃貸業です。

住宅賃貸ですから、アパート、マンション、貸家などを貸して家賃収入を得る、

要するに”大家さん”ということです。

建設業の場合、公共事業を増やすことで、”テコ入れ”ができますし、

自動車産業も、エコカー減税によって、ハイブリッド車の売り上げが増えました。

住宅賃貸業に、そういう”テコ入れ”って可能でしょうか?

私の足りないアタマでは、思いつきません。

住宅賃貸業に好影響を及ぼそうと思ったら、

デフレを脱却して、人々の給料が上がっていくように仕向けること

ぐらいしかないんじゃないでしょうか。

アパート、マンション、貸家などを借りている人たちの収入が上がれば、

家賃が上がっても支払うことができますから、

大家さんも家賃を上げることで収入が増えます。

住宅賃貸業がこんなに大きなGDPをたたき出している、

ということは、家賃が上がれば、

恩恵を受ける人(企業も含む)がかなりいる、

ということです。

デフレを脱却して、給料が少しずつ上がっていく状態になれば、

家賃を上げることで、大家さんたちの収入も増え、

個人消費が一気に増加するんじゃないでしょうか。

ただし、そうなるまでに時間がかかると思います。

大家さんたちが直接恩恵を受けるような”テコ入れ策”があればいいですが、

ありますかね?

あったら教えてほしいくらいです。

2番目に大きい「政府サービス生産者」とは、政府のことです。

これは、テコ入れも何も、政府の支出を増やせば、それで話は終わりです。

(公共サービスも同様)

3番目の「対事業所サービス」ですが、

http://www.pref.toyama.jp/sections/1015/lib/renkan/_rep2/report11.html

によると、対事業所サービスは、

他産業に対する影響力が弱く、他産業から受ける感応度が強い業種

に分類されています。

建設業は、他産業に対する影響力、他産業から受ける感応度がともに強い業種

に分類されています。
(http://www.pref.toyama.jp/sections/1015/lib/renkan/_rep2/report11.html)

対事業所サービスが、建設業よりGDPが大きいといっても、

他産業に与える影響が弱く、逆に他産業から影響を受けやすいのです。

建設業は、他産業に与える影響力が強いのですから、

建設業にテコ入れすることで、それが対事業所サービスに波及することを期待するほうが

理に適っています。

商業、金融・保険、電力・ガスも、対事業所サービスと同じ分類になっています。
(http://www.pref.toyama.jp/sections/1015/lib/renkan/_rep2/report11.html)

商業は、グラフ1,2,3の小売業、卸売業にあたります。

卸売業は建設業よりGDPが大きいですが、

対事業所サービスと同じ分類(他産業に与える影響が小さく他産業から影響を受けやすい)

なのですから、

建設業にテコ入れすれば、卸売業に好影響を及ぼすことが期待できるわけです。

グラフ1,2,3で、建設業の右側に、

電気業、
ガス・水道・熱供給業、
卸売業、
小売業、
金融・保険業

が並んでいますが、これらは全て、対事業所サービスと同じ分類なので、

建設業にテコ入れすれば、みな恩恵を受ける、ということになります。


4番目の「対個人サービス」は、

他産業に対する影響力、他産業から受ける感応度がともに弱い業種

に分類されています。
(http://www.pref.toyama.jp/sections/1015/lib/renkan/_rep2/report11.html)

こういう業種にテコ入れしても、あまり意味がないでしょう。


このように見てくると、

建設業へのテコ入れは、かなり有効な景気対策になる、と言えるでしょう。

ただ、何度も取り上げているこのグラフ
           ↓
$国家戦略研究
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_40.html#Kensetsuより転載

でわかるように、建設業者数が減っているので、

こなせる仕事の量が減っています。

そのため、復興予算が1兆円以上余ってしまったりしています。

ですから、建設業への就職者数が増えるような施策をやりつつ、

それでも足りなければ、国営建設会社設立も準備を進める、

というのは、有効な策だと思います。

もちろん、建設業だけでなく、

予算の許すかぎり、過度のインフレにならない範囲で、

他の産業へのテコ入れをやっていけばいいのです。

ですから、防衛費ももっと増額すべきです。

国産の兵器を増産すれば、国内の防衛関連企業が恩恵を受けます。

建設業に比べれば波及効果は小さいですが、

やらないより、やったほうがいいに決まっています。


日本は財政危機ではないのです。

>>>
日本は財政危機ではありません。
これは財務省自身が認めていることです


私はある勉強会で財務官僚と議論する機会がありました。
デフレを脱却するために無利子非課税国債を発行してはどうかと提案すると、
無利子非課税国債など発行すれば
諸外国から日本は財政危機に陥っていると思われるからそれはできない、
という答えが返ってきました。

財政危機だから消費増税しなければならないと主張していたのは財務省ではないか、
と問うと、
国債は安定的に償還されているので日本は財政危機ではない、
と自ら認めたのです。

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『月刊日本 6月号』に載った参議院議員 亀井亜紀子さんのインタビュー記事。
(青字強調は筆者による)

財務官僚が、「日本は財政危機ではない」と言っているのです。

全国銀行協会によると、今年6月末時点の預金超過額は、182兆8570億円です。

単純に考えて、この金額まで、国債を買う余力が、銀行にはあるということです。

ですから、財源の心配はないのです。


日本は、災害への備え、外国の脅威への備え、

という”やるべきこと”をやっていけば、自ずと復活できるのです。

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