”国の借金”に関するニュースで、
公的債務残高対GDP比という指標が使われることがあります。
公的債務(国の借金)が、その国のGDPに対してどのくらいあるのか、というデータです。
では、まず日本と財政破綻を経験した国々とで比較してみます。
政府総債務残高とは、
中央政府と地方自治体の債務(借金)の残高の合計額です。
政府総債務残高(対GDP比)ですから、
政府の債務残高(国の借金)がGDPに対して何%あるのか、ということです。
冒頭に書いた公的債務残高対GDP比と同じことです。
数字が小さいほど財政が健全だ、ということになります。
日本は2012年の推計値で236%ほどです。
GDPが500兆円だとすると、1180兆円ほどの政府債務があるということです。
家計に例えると、
年収500万円の人が1180万円ほどの借金がある、ということになります。
ギリシャは170%ほどです。
”日本は年収の2倍以上の借金があるが、ギリシャは1.7倍ほどだ”
ということですから、日本はギリシャより悪い、ということになります。
しかし、日本は破綻せず、ギリシャは破綻しました。
破綻前のデータが少ないロシア、アルゼンチン、メキシコを除いてみましょう。
アイスランドが破綻した2008年時点の政府債務対GDP比は、70.33%です。
この年、日本は191.81%です。
”日本は、年収(GDP)の1.9倍ほどの借金があったのに破綻せず、
年収の70%ほどしか借金がなかったアイスランドは破綻した”
ということになります。
ギリシャが”破綻モード”に入ったのが2010年とすると、
ギリシャは144.55%で、日本は215.29%です。
”日本は年収の2倍以上の借金があったのに破綻せず、
ギリシャは年収の1.5倍弱の借金で破綻した”
ということになります。
ギリシャは92,3年ごろから、2006年ごろまでは、横ばいで、
財政が悪化していたとは言えません。
それに対して日本は、どんどん財政が悪化していったと言えます。
アイスランドは、95年から2005年までの10年間、減少していますから、
財政の健全化が進行していたと言えます。
2006、7年ごろは、日本よりはるかに健全な状態でした。
あっ。思い出しました。
韓国も事実上の破綻経験国なんですよね。
普段、韓国なんて眼中にないので、すっかり忘れてました(笑)。
韓国は、97年のアジア通貨危機でデフォルト(債務不履行)寸前になり、
その後IMF管理下に置かれました。
放っておかれたら、破綻していたのは確実です。
韓国を含めたグラフを見てみましょう。
韓国が事実上破綻したといえるのは、97年から98年にかけてですが、
その前の時期を見ると、韓国も財政が健全化していたと言えます。
しかし、わかりにくいので、日本と韓国だけで見てみます。
これでもちょっとわかりにくいですね。
韓国だけを見てみましょう。
やはり、破綻前の時期は、減少しているので、財政は健全化していたと言えます。
では、優等生組(日本、ドイツ)と破綻組(アイスランド、ギリシャ、韓国)を
比較してみましょう。
韓国が破綻した97,8年時点で、
ドイツも日本も韓国より財政状態は悪かったことがわかります。
アイスランドとドイツに注目してください。
96年から、アイスランドが破綻する直前の2007年までは、
ドイツはアイスランドより財政状態が悪かったのです。
しかし、ドイツは破綻せず、アイスランドは破綻しました。
ギリシャとドイツを比べると、ギリシャは常にドイツより悪くなっています。
これでは、
政府債務残高対GDP比(=公的債務残高対GDP比)が悪いと破綻する
などということは全くなく、
良ければ破綻しないというものでもない、
としか言えないんじゃないでしょうか。
”破綻予備軍”のPIIGS諸国を見てみましょう。
イタリア、アイルランドは93,4年ごろから、スペインは96年ごろから、
右肩下がりになっています。
つまり、財政の健全化が進行していたと言えます。
しかし、3ヵ国とも「もしかしたら破綻するんじゃないか」と言われるほど
”ヤバい状態”になっています。
ただ、ポルトガルは2000年ごろから上昇しているので、
財政が悪化したから”ヤバい状態”になった、と言えそうです。
政府債務残高対GDP比(=公的債務残高対GDP比)は、
財政が健全かどうかの目安として一応使われてはいますが、
日本より健全なはずの国が破綻したり、
破綻が噂されるほど経済状態が悪くなったりしている現実があるのです。
政府債務残高対GDP比(=公的債務残高対GDP比)、
つまり”国の借金”がGDPに対してどのくらいあるか、
は、少なくとも日本については、”気にする必要のない指標”だ、
と現時点では言っておきます。
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