日本の”国の借金”問題を斬る | 朝倉新哉の研究室

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こちらをご覧ください。

政府総債務残高(対GDP比)の推移 - 世界経済のネタ帳


アイスランドが破綻した2008年時点の政府債務対GDP比は、70.33%です。

この年、日本は191.81%、ドイツは66.91%です。

・日本→年収(GDP)の1.9倍ほどの借金があったのに破綻しなかった

・アイスランド→年収の70%ほどの借金で破綻

・ドイツ→年収の7割弱の借金があり、破綻せず

ドイツが最も財政状態がよかったので破綻しなかったのは当然としても、

財政状態が最も悪いはずの日本は破綻せず、

ドイツとあまり違わないはずのアイスランドは破綻しました。


ギリシャが破綻状態になったのが2010年とすると、

ギリシャは144.55%で、日本は215.29%、ドイツは82.39%です。

・日本→年収の2倍以上の借金で破綻せず

・ギリシャ→年収の1.5倍弱の借金で破綻

・ドイツ→年収の8割強の借金があり、破綻せず

ドイツが最もよい状態なので破綻しないのは当然としても、

最悪の日本が破綻せず、日本よりマシなはずのギリシャが破綻しました。


韓国が事実上の破綻状態となった97、98年の政府債務残高対GDP比は、

10.73%、15.36%です。

日本は、97年が105.58%、98年は118.32%です。

ドイツは、97年が59.75%、98年は60.49%です。

・日本→年収よりやや多い借金があったが破綻せず

・ドイツ→年収の6割ほどの借金があったが破綻せず

・韓国→年収の1割から1割5分程度の借金で破綻

政府債務残高対GDP比(=公的債務残高対GDP比)は、

破綻するかどうかの目安ではないので、この結果は当然なのですが、

財政状態が健全かどうかの指標として使うのも、無理があると思います。

日本は、

政府債務残高対GDP比の数値が悪い=財政状態が悪い、

だからこの数値を下げるのだ!

といっても、日本より良い数値だった韓国、ギリシャ、アイスランドが破綻している以上、

この数値(政府債務残高対GDP比)を下げることを目標にする、

というのは、とんだ的外れだと思います。


今まで見てきたのは、政府債務残高が、GDPに対してどのくらいの割合なのか、

というデータです。

では、対GDP比ではなく、純粋に政府債務残高だけを見てみましょう。


政府総債務残高の推移 - 世界経済のネタ帳

対GDP比のデータと似たような感じで、ほぼ一本調子に上昇しています。

”国の借金”(政府債務残高)が増え続けている、ということです。

ギリシャはどうでしょう。

政府総債務残高の推移 - 世界経済のネタ帳

日本と似てますね。

ギリシャのグラフだけを見れば、

”ギリシャは、国の借金(政府債務残高)が増え続けたから、ついに破綻したのだ”

と言えそうですが、

日本のグラフも似たようなものです。

同じように”国の借金(政府債務残高)”が増え続けたのに、

日本は破綻せず、ギリシャは破綻した、というわけです。

政府総債務残高の推移 - 世界経済のネタ帳

アイスランドの政府債務残高は、

2006年3520.7億クローナ、2007年3808.8億クローナ、

2008年1兆423.3億クローナで、

破綻した2008年に急増しています。

”政府債務が増えていって破綻した”というわけでは全くないことがわかります。

政府総債務残高の推移 - 世界経済のネタ帳

”破綻予備軍”PIIGS諸国のひとつ、アイルランドのグラフです。

2006年440.6億ユーロ、
2007年471.6億ユーロ、
2008年795.8億ユーロ、
2009年1046億ユーロ

なので、アイスランド同様、リーマンショック(2008年9月)のために急増した、

と考えられます。

それ以前は、ほぼ平坦ですから、政府債務が積もり積もって”ヤバい状態”になった、

とは言えないでしょう。

政府総債務残高の推移 - 世界経済のネタ帳

こちらもPIIGS諸国のひとつ、スペインです。

こちらもアイスランド、アイルランドと似たようなグラフになっています。

リーマンショックで、政府債務が急増していますが、

それ以前は平坦で、政府債務が累積してヤバい状態に…、とは言えないでしょう。

政府総債務残高の推移 - 世界経済のネタ帳

PIIGS諸国のひとつ、ポルトガルです。

こちらは、リーマンショック前から、政府債務が増えていっているので、

”政府債務が増えたからヤバい状態になった”

と言えそうです。

政府総債務残高の推移 - 世界経済のネタ帳

PIIGS諸国最後はイタリアです。

こちらもポルトガルと似た感じで、リーマンショック前から政府債務は増え続けていました。

政府総債務残高の推移 - 世界経済のネタ帳

”優等生”ドイツです。

ドイツもリーマンショック前から政府債務は増え続けていました。

しかもイタリアより増え方が急じゃないですか?

政府総債務残高の推移 - 世界経済のネタ帳

韓国は、1990年に26兆4329.9億ウォンで、

96年は39兆6594.5億ウォンですから、1.5倍ぐらいに増えています。

97年は54兆3345.6億ウォンです。

”破綻モード”に入った97年に増え方が急になっていますが、

借金が増えたから破綻の危機を迎えたのか、

というと疑問です。

90年から96年までの増え方とそれ以後の増え方を見れば、

破綻以後の増え方のほうが急です。

増え方が急になっているのに、2000年ごろに、韓国経済は一時的に立ち直っています。

その後またおかしくなったようですが…。


日本、ギリシャ、ポルトガル、イタリア、ドイツは、

多少増え方の違いはあるものの、政府債務は増え続けているのです。

債務が増え続けている状況はあまり変わらないのに、

ギリシャは破綻し、ポルトガル、イタリアは”ヤバい状態”になり、

日本、ドイツは、それに比べればずっと健全なのです。

韓国は債務が増え続けている中で、経済状態が良くなったり悪くなったりしています。


政府債務も債務ですから、借金です。

借金なら、全額返済して、ゼロになっている国があってもよさそうなものですが、

1つもなかったですね。

政府がする借金と民間がする借金は根本的に違うので、

実はそれが当たり前なのです。

(調べれば全額返済してゼロになっている国があるかもしれませんが
 面倒なので調べません 笑)


いわゆる”国の借金”(政府債務残高)は、

絶対額で見ても、対GDP比で見ても、日本は悪い状態です。

(額が大きく、GDPに比べても大きい
 つまり、借金が巨額で、収入に対しても過大ということ)

しかし、日本より良い状態のはずの国が破綻したり、破綻の危機に直面したりしているのです。


いわゆる”国の借金”に関するデータ、

基礎的財政収支対GDP比、政府債務残高対GDP比、政府財務残高の絶対額

を見てきましたが、

これらの数値を良くすることを目標にすることは意味がないと言えます。

それどころかむしろ害になるのです。

そのことの検証はまた別の機会に譲りたいと思います。


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