経常収支で見る日本の強さ  | 朝倉新哉の研究室

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全ては日本を強くするために…

国連開発計画が2011年10月に公表した

United Nations Development Programme,
"Towards Human Resilience:Sustaining MDG Progress in an Age of Economic Uncertainty",
13 October 2011

という報告書があります。

この報告書には、その国の財政にどのくらいの余裕があるかを見る

「財政余裕度」の指標として、次の5つが挙げられています。

①経常収支

②対外債務

③総貯蓄率

④外貨準備高

⑤財政収支


この中の経常収支について、廣宮孝信さんは、こう言っています。

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筆者の感覚では、経常収支こそ政府の財政余力や経済の安定度を知るための
もっとも重要なものの1つです。

経常収支こそが、危機になるかどうかの明暗を分けていたのです。
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『国の借金 アッと驚く新常識』より引用。


では、財政破綻を経験した国々と日本の経常収支を比較してみましょう。

経常収支の推移 - 世界経済のネタ帳

昨日の記事で述べましたが、

ロシアは、破綻以前のデータがあまりないので参考にはなりません。

そこで、ロシアを除き、

かわりに”ヨーロッパの優等生”ドイツを入れたグラフを見てみましょう。

”優等生組(日独) 対 破綻組(ギリシャ、メキシコ、アルゼンチン、アイスランド)”

の比較というわけです。

経常収支の推移 - 世界経済のネタ帳


ドイツは、90年ごろから2000年にかけて赤字でしたが、

2000年以降、急激に黒字が拡大しています。

日本は81年以降、ずっと黒字です。

”破綻組”は、ずっと赤字基調です。

(アルゼンチンは2001年の破綻以後、経済が急速に回復したので、
 黒字基調に変わっています)


”破綻予備軍”といえるPIIGS諸国を見てみましょう。

経常収支の推移 - 世界経済のネタ帳


やはり悪いですね。

イタリアが一時期、黒字でしたが、その後赤字に転落しています。

やはり、”経常収支が悪ければ、破綻するか、破綻の可能性が高い”

と言えそうです。

事実上破綻したギリシャよりもスペインのほうが悪そうに見えますが、

急激に赤字幅が縮小しているので、そのせいで助かっているのかもしれません。


破綻組(メキシコ、アイスランド、ギリシャ、アルゼンチン)だけのデータを見てみましょう。

経常収支の推移 - 世界経済のネタ帳

メキシコは、82年と94年に破綻しています。

80年以前のデータがないので、わかりにくいですが、グラフの感じからすると、

80年以前から、82年にかけて、急激に赤字が拡大したように見えます。

87年ごろから94年にかけて、急激に赤字が拡大しています。

ギリシャは、2004年ごろから急激に赤字が拡大しています。

それ以前もずっと赤字基調です。

アルゼンチンは、91、2年ごろから赤字が続き、98年に破綻しました。

破綻後は急速に経済が回復したため、2002年ごろには黒字に転換しています。

アイスランドは、このグラフだとわかりにくいので、

アイスランドだけのグラフを見てみます。

経常収支の推移 - 世界経済のネタ帳

80年以降、ほぼずっと赤字基調で、2002、3年ごろから急激に赤字が拡大しています。


以上、破綻経験国と”破綻予備軍(PIIGS諸国)”の経常収支を見てくると、

”経常赤字が長期間続いたり、急激に赤字が拡大したりすると、破綻の可能性が高い”

ということが言えそうです。


少なくとも、基礎的財政収支対GDP比や、公的債務残高や、公的債務残高対GDP比よりは、

財政余裕度を量る指標としては、ずっと適当なものだと思います。


日本は、基礎的財政収支が赤字で、

公的債務残高対GDP比も大きいので(GDPに比べて国の借金が多いということ)、

政府の財政状態は悪いのですが、30年以上もの間、経常黒字が続いているので、

破綻の可能性は極めて低いのです。

財政状態が悪いのに破綻の可能性が低い、

というのは、わかりにくいと思いますが、それが事実だから仕方がありません。

経常収支が圧倒的に良い日本は破綻から最も縁遠い国なのです。


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