http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130306/fnc13030621490020-n1.htm
からの引用です。
>>>
財政健全化 半減目標厳しく、財務省が試算
2013.3.6 21:48
財務省は6日、平成28年度までの財政状態に関する試算を発表した。
示された4つの試算の中では、
最も楽観的なシナリオだけが
政府が国際公約として掲げる財政健全化目標をぎりぎりクリアするが、
平成24年度補正予算で借金が増える中、達成は困難な状況だ。
27年度の名目経済成長率を1・5%とする慎重シナリオでは、
国際基準の基礎的収支の赤字幅がGDP比でマイナス3・7~4・2%になる見通しで、
22年度のマイナス6・8%からの半減は達成不可能。
成長率を3・0%とする楽観シナリオでも「厳しい状況」(同省)だ。
>>>
では、過去に財政破綻したことがある国と日本を比較してみましょう。
引用記事にあるように、基礎的財政収支(対GDP比)という指標で見てみます。
ギリシャ 2009年~12年にかけて経済危機に陥る。
EUによる救済措置がなければ破綻していたのは確実。
メキシコ 1982年と1994年に対外債務不履行(=破綻)。
ロシア 1998年に対外債務不履行。
アイスランド 2008年に対外債務不履行。
アルゼンチン 2001年に対外債務不履行。
日本 財政危機だ、近いうち破綻するぞと言われつつも、破綻したことは一度もない。
上のグラフだと、ちょっとごちゃごちゃしてわかりにくいので、
日本と各国を1対1で比較してみましょう。
このように、アルゼンチンの場合、2001年に破綻する前にどういう状態だったか、
データがないので参考になりません。
ロシアも似たようなもので、98年の破綻以前のデータがほとんどないので参考になりません。
メキシコに至っては、基礎的財政収支対GDP比のデータが全くありません。
93,4年ごろから、2007年ごろにかけては、
ギリシャは日本より”いい状態”にあったと言えそうです。
でも、日本は破綻せず、ギリシャは事実上破綻しました。
アイスランドも同じように、”日本よりいい状態だったのに破綻した”と言えそうです。
”破綻予備軍”とも言えるPIIGS諸国の一角、スペインとの比較を見てみましょう。
これも似てますね。日本よりいい状態だったのに、”ヤバい状態”になっています。
”ヨーロッパの優等生”ドイツはどうでしょう。
ドイツも日本より”いい状態”と言えそうです。
もちろん、ドイツも破綻はしていません。
ギリシャ、アイスランド、スペイン、ドイツ、
いずれも、基礎的財政収支対GDP比は、日本よりいいのに、
アイスランド、ギリシャは破綻、
スペインは破綻の可能性あり、
ドイツは破綻の可能性なし、
というわけで、基礎的財政収支対GDP比なんて指標として意味があるの?
という話になってきます。
実際、基礎的財政収支対GDP比は、
破綻するかどうかの指標として使われてはいません。
『国債を刷れ!』 廣宮孝信 彩図社
には、
>プライマリーバランス(基礎的財政収支)なるものは、
>竹中平蔵氏が経済財政政策担当大臣だったころ(2001年)に言い始めたもので
とあり、
>竹中氏は、財政再建のためにこのプライマリーバランスを黒字化することを
>重要な政策課題として「骨太方針2001」に盛り込んだ。
>これによって、財政収支を黒字化することが政府の正式な方針となったのである。
とあります。
しかし、財政収支が黒字だったアイスランドは破綻し、スペインもまた破綻の危機にあります。
>>>
プライマリーバランスの黒字化など、何の意味もない。
それどころか、この目標のせいで
国民を貧乏(フローの面での所得の低下という意味で貧乏)にしている。
政府支出を増やし続けている諸外国ではあるが、
借金を増やし過ぎないルールを設定して、「財政規律」を重視している場合は多い。
ただしそれは、英国では公的純債務/GDP比を40%に維持することであり、
EUではユーロ参加国に財政赤字をGDP比3%以内にするよう義務付けていることであって、
財政収支の黒字化などではない。
あくまでも赤字は容認しているのであり、ユーロ参加国GDP比3%にしても、
英国の公的純債務/GDP比40%にしても、
GDPが大きくなれば
それだけ財政赤字の絶対額の上限が増える仕組みになっている点がポイントである。
>>>
↑
『国債を刷れ!』から抜粋して引用。
以前の記事で紹介したように、
国が破綻するかどうかの指標として最も重要なのは、経常収支です。
日本と”破綻経験のある国”の経常収支を見てみると…。
日本が他国を圧倒しています。
日本は、政府の財政はよくありませんが、
このように経常収支が大幅黒字なので、破綻の可能性は極めて低く、
廣宮さんが言うように、プライマリーバランスなど気にする必要がないのです。
上のグラフに、ロシアが入っていないのは、ロシアが破綻したのは1998年であり、
その後、経済状態がよくなったので、あまり参考にならないためです。
しかも、92,3年ごろ以前のデータがないのです。
ロシアを含めたグラフは以下のようになります。
日本とロシア2国で比較すると…。
ご覧のように、ロシアが破綻する前のデータがあまりないのです。
日本は、基礎的財政収支対GDP比で見ると、悪いのですが、
経常収支では、圧倒的に良いのです。
しかも、基礎的財政収支対GDP比は、破綻するかどうかには関係がなく、
経常収支は関係あるのです。
つまり日本は、破綻する可能性は極めて低い、ということです。
財務省は、
日本が悪い数字になっているデータを使い、
日本が良い数字になっているデータを使わない
ことで、「日本は経済状態が悪い」という印象を与えようとしている、
と見なされても仕方がないと思います。
この記事が、財務省にだまされないための参考になれば幸いです。
少しでも参考になった場合はクリックをお願いします。
↓