中国本土とは? | 朝倉新哉の研究室

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昨日の記事の中で、『遊牧民から見た世界史』からの引用文の中に、

「中国本土」という言葉がありました。

この「中国本土」について考えてみましょう。

「中国本土」。英語では China Proper チャイナプロパーと言います。

戦前は「支那本部」と呼ばれていました。

China と、properlyを合わせた言い方なので、

西洋人は、”China本来の土地”、”本来の中国”という意味で使っているようです。

Chinaとは、秦に由来する言葉なので、秦の支配領域が”China本来の土地”ということになります。

国家戦略研究
秦の支配領域(紀元前210年)
ウィキペディアより転載

しかし、この領域を”中国本来の土地”と呼んでよいか、というと問題があります。

昨日の記事で掲載した周の支配領域は以下のようになります。
国家戦略研究
ウィキペディアより転載

周の領域は秦に比べてかなり狭いです。

しかも”面”の支配ではなく、”点”の支配です。


周が衰え、”東遷”した以後の春秋時代の各国の領域
国家戦略研究
ウィキペディアより転載


戦国時代の各国の領域
国家戦略研究
ウィキペディアより転載


前漢(西暦1年)の領域
国家戦略研究
ウィキペディアより転載


後漢の領域
国家戦略研究
ウィキペディアより転載


西晋(後漢の後の三国時代の後の王朝)の領域
国家戦略研究
ウィキペディアより転載


漢民族王朝ではありませんが、隋(610年)の領域はこうなります。
国家戦略研究
ウィキペディアより転載


北宋(1111年)の領域
国家戦略研究
ウィキペディアより転載



南宋の領域
国家戦略研究
ウィキペディアより転載



明末期の領域
国家戦略研究
ウィキペディアより転載


このように、”China本来の土地”といっても、時代によって違うわけです。

その違いが生じる原因は、そのときの王朝の”力”にあります。

力が強ければ、領域は広がり、弱ければ狭まるわけです。


中国では、「中國本部」という言葉が使われていましたが、今は使われなくなりました。

それは、「中國本部」(中国本土)という言葉が、今の中国にとって危険だからです。

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中華人民共和国においては、
台湾、新疆、チベットといった領域は、中国の不可分の一部である、
というのが公式の政策であり、
政府が発行する公文書ではさらに進んで、
これらの地域は、過去においても常にそうであったと主張されている。

中国本土(チャイナ・プロパー)という概念が排除されるのは、
独立(分離主義)の正当性に根拠を与えるからである。
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ウィキペディアより


「中國本部」(中国本土)という言葉を使ってしまうと、本土以外の地域は、

中国ではないことになり、分離独立の大義名分になるからなのです。

しかし、中国政府の

”台湾、新疆、チベットといった領域は、中国の不可分の一部であり、
 これらの地域は、過去においても常にそうであった”

という主張は、過去の王朝の支配領域を見れば、大ウソであることが一目瞭然です。

中国は、台湾、チベット、満洲、東トルキスタン、南モンゴル(内モンゴル自治区)

といった地域を支配したいがために、

「中國本部」(中国本土)という言葉を使うな、と言っているわけです。

「中國本部」(中国本土)という言葉が使われなくなったのは、

「中華民族」という概念が広まるのと軌を一にしています。

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1912年1月1日に孫文が臨時大総統就任宣言で
「漢満蒙回蔵ノ諸他ヲ合シテ一国トナシ、漢満蒙回蔵ノ諸族ヲ合シテ一人ノ如カラントス」
として清王朝の支配下にあった地域を統合しようとし、
1921年に孫文は三民主義の具体的方策の中で
「漢族ヲ以テ中心トナシ、満蒙回蔵四族ヲ全部我等ニ同化セシム」
として満州人・モンゴル人・ウイグル人・チベット人を同化することを提唱した。
1925年には孫文は、外来民族は一千万しかいないとして、
4億人のほとんどが漢民族であるので中国人は完全な単一民族であるとした演説を行っている
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どちらもウィキペディアより

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中華民族(ちゅうかみんぞく)という用語は、
一つには中華民国、中華人民共和国の国籍を持つ全ての文化的集団(エスニック・グループ)を
統合した政治的共同体(ネーション)を表す概念である。

中国共産党は漢族だけでなく、蒙古族、チベット族やウイグル族などの少数民族も含むとしている。

中国共産党によって中華民族に属すると定められた人々が居住する地域を
中国の一部であると解釈することにより、
そのような人々や地域を武力で併合していく侵略主義であるとして問題視する見方もある。
>>>

中華民族とは、

漢民族を中心として、それ以外の民族を同化させてしまおうという意図から生まれた概念です。

1912年に初めて登場した概念であり、

中国本土以外の地域を漢民族中心の国家が支配するために作り出された概念です。

漢民族を中華民族と単に言い換えただけなら、問題はありません。

しかし、中華民族には、満洲人やウイグル人、チベット人、モンゴル人も含まれているのです。

そして、満洲人以下の人々は、過去においても中華民族の一員であった、

という主張までされています。

これは、昨日の記事の引用文の中にあった

”現在の中国を過去に逆投影する”行為です。

この考えに沿って、中国は他民族の同化(民族抹殺)を進めているのです。

そのような行為をやめさせるためにも、中国本土とそれ以外の地域を、

明確に区別すべきです。

中国本土の北限としては、万里の長城がよいでしょう。

万里の長城(明代に築かれたもの)
国家戦略研究
ウィキペディアより転載

ここより北は、漢民族の土地ではなく、満洲、モンゴル、東トルキスタンであるべきです。

現代中国の民族分布を見ても大体そのようになっています。
国家戦略研究
http://home.hiroshima-u.ac.jp/er/Rres_CH.htmlより転載


中国本土という言葉を使うということは、別の意味で問題があると思います。

中国には、本土とそれ以外の地域があるということになり、

中国が本土以外の地域を支配することを認める余地を生むからです。

本土以外の地域は本来、中国ではないのです。

ですから、本土と呼ばず、シナ(または支那)と呼んだほうがよいと思います。

よって、

シナ、支那、シナ(中国本土)、シナ(中國本部)、

支那(中国本土)、支那(中國本部)のいずれかの表記を使うべきだと思います。

シナ(中国本土)の範囲は、

万里の長城以南、1111年の北宋の領域

とするのが至当だと思います。

それ以外の地域は満洲であり、南モンゴルであり、東トルキスタンであり、

チベットであって、中国でもシナでもありません。


中華民族は漢民族だけだ!それ以外は別の民族だ!
中華民族(=漢民族)は、本来の土地(シナ)だけで満足しろ!
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