ショートショート×トールトール・ラバー【4】 | 虹色金魚熱中症

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虹色金魚の管理人カラムが詩とお話をおいています。

拙いコトバたちですが読んでいただければ幸いです。

ころころとため息 しょぼしょぼと語尾

 
 

ショートショート×トールトール・ラバー【4

 



 さんさんと降り注ぐ朝日に反比例するような曇った声でミチは小さく呟いた。
「またかぁ」
 私も合わせて小さく頷く。休み明けだというのに、まったくもって元気が出ない。体が重い。

 風邪から回復したミチと一緒に登校しながら、冴子の新たに芽生えてしまった恋の話を苦い顔で伝えると、同じような顔でミチは肩を落とした。

 冴子なしで二人で歩くと、まさにでこぼこコンビである。ミチは平均よりも随分と低いから、私と比べなくても小ささは格別なのに一緒にいると誰もが思わず振り返る。

 まさに山と谷。脅威の威力で心を破壊するコンプレックスにもめげずに一緒にいるのはひとえに、気の合う友達。それに尽きる。二人は同士のようなものである。目下の悩みも等しく同じ。
「なんだよねぇ」
 ミチを見下ろし、今度は空を仰ぐ。語尾は二日目の風船のようにしょぼしょぼと萎んでしまった。
「まぁ、さぁ。いいんだけどさぁ」
 友達の新しい恋を盛大に祝ってやれない二人の肩は沈むことしかできない。それもそのはずで、前回の「恋のお手伝い」が鉛よりも重く尾を引いていた。

 そのせいで、私もミチも二組の前を通るたびに心臓は縮こまるし、全校集会になんてなると胃の辺りがきりりとする。目線は常に足元だ。絶対に目を合わせたくない人たちがいる。
「うちなんてもぉ、さぁ。恋愛恐怖症だよぉ」
 ミチが何かにつけていう言葉だ。それは私にも当てはまる。だけど何も冴子のせいばかりではないから、あまり大きく頷けない。
「この間、上谷君に睨まれたもん、うち」
 上谷君から受ける印象だとそういうことはしそうにない。だから、多分気のせいに違いないけど、その気持ちは痛いほど分かる。そして、上谷君が私たちを睨んだとしても仕方ないなと思う。

 

 ちょっと前に私たちは上谷君の好きな人を体育館裏に呼び出したことがある。私とミチ、そして冴子で呼び出した。今もその時も、はっきり言って「筋違いな事してるよね」という意識があった。それゆえの罪悪感は今となっても消えてくれない。
 もちろん、私たちは不良ではないから体育館裏という薄暗い響きを伴う場所でとはいえ、健全なおしゃべりをしようと思っていた。「上谷君のこと好きなの?」という疑問の答えを聞きたかっただけなのだ。
 いざ、その場に立つとてんぱるばかりで、親分に付き従う小者よろしく、冴子の後ろで頷くしかできないヘタレっぷりを発揮した。だけど、傍から見たらこれはもう、女の子一人をいじめているようにしか見えなかったと思う。
 冴子も緊張していたから、いつもよりも早口でまくし立て、言葉もかなり攻撃的だった。幸いなことに、呼び出しに一人で応じた小波さんは見た目よりもとても気丈で、泣くでもなく淡々としてくれて本当に助かった。あの場で泣かれたら、もう目も当てられない。悪者三人組として罵られることになったと思う。

 そんな痛い過去のせいで、上谷君たちのクラスを通りすぎるときは息をするのも慎重に慎重をきたす日々を送っている。
 なのに、あれから然したる日数もたっていないのに我らが親分は新たな恋に目覚めてしまった。手放しでなんて喜べるはずも無い。
「なんかねぇ。自分の恋愛で悩むならまだしもだよねぇ」
 ごもっとも。
ミチの言葉に深く頷いて、またひとつ、不必要なため息を道端に転がした。

 

 
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