三島由紀夫『春の雪』苦読
あまり、良い書評ではないので、これはむしろ自分が忘れない為に書いた書評です。
三島ファンの人達、怒らないでね。笑
三島由紀夫さんの『豊饒の海』四部作は学生の頃読んだことがあります。
この歳になり、『新釈中国古典怪談』でも少し紹介した『豊饒の海』を、改めて読むことにより、三島流、輪廻や生まれ変わりの視点を再び厳密に検証してみようと思いました。でも、この読書はカナリツライ………
私は、三島由紀夫さんは好きですが、彼の小説はあまり好きではありません。
主に学生の頃、彼の書く評論を好んで読んでいました。これ等は良かった。
三島さんは、評論では結構まともな事を書くのですが、小説になると、どうしてこう、性的に変態、偏屈、プライド高さ、頭でっかち、思想的不健康、神経質の気味の悪い不自然な主人公が多いのでしょうか?? お育ちなんでしょうが…
この『春の雪』に出て来る主人公、清顯(きよあき)の人格も最悪……
変態、偏屈、プライドだけ高くて、神経質、幼稚、勝手、思想的不健康、不自然…
こいつのバカな妄想と行動の為に、周りの人達が振り回される話です。
読んでいてイライラし、そんな展開ないだろう…と、前半三分の一で読書を止めようかと何度も思ったのですが、ちょっと無理して読み切ってみました……疲
十代の頃は、意味も充分解らず、こんな事がすごいんだ…なんて無理して読んだものですが、この歳になると、彼の難解な理論や言葉もかなり理解でき、それ故、かえって読んではいられません… こうした発見の意味でも若い頃読んだ本の再読はいいのですが…
ただ、十代が読む読み物としては、有害図書ですね。笑
三島さんは、この本でジョルジュ・バタイユが言う、禁忌への違反こそがエロチシズムであるという考えを、物語で試みていますが、物語にしてしまうと、ものすごく不自然で、「そんなヤツ、居ないだろ…」とツッコミどころ満載。あり得ない身勝手さで不自然。
いいかげん、性欲メインの考えかた止めようよ……と思ってしまう。まるで盛り付いた猿。まだ、バタイユの小説の方が破天荒で面白い。
十代って、かなりおかしな事を考えているもので、当時十代の私も、かなり悪い影響があったと思うよ。笑
そして、無駄に多い修飾語の数々。この多過ぎる修飾語を削除するだけでも、この本は五分の一になるのではと思うほど。氏はその『文章読本』の中で、簡潔な文章こそ美しいと書いていた記憶があるのですが、記憶違いか…
さらに細かな心理描写。神経質過ぎる心理描写にも疲れが。人はそこまで細かい事にこだわって生ていないと思うのですよ…
私が中国怪談に魅かれる点も、心理描写に拘泥していないところもあります。
『新釈 中国古典怪談』でも指摘しましたが、近現代小説の心理描写って、なんだかとても病的なものが多い。
以前、小説は読まなくなったと書きましたが、ほんと、もう情や業の話はウンザリなのです。 中国怪談はそんな心理描写に拘泥せず、もっと端的に本質を語っているところが好きなのです。
本書で気になった発言を少し抜粋。
●「歴史を変えようとする意志を持っていたとする。俺の一生をかけて全精力全財産を費やして、自分の意志どほりに歴史をねじ曲げようと努力する。中略。
それでも、歴史は思うままの枝ぶりになってくれるとは限らないんだ」
●どうしたら若い内に死ねるだろう、
○こういうこと言ってるから… 老荘思想を読もうよ… でも老荘思想は、勿論、三島さん、好きではなかった。笑
●僕らは生ていて、死を豊富に所有している。葬ひに、墓地に、そこのすがれた花束に、死者の記憶に、目のあたりにする近親者たちの死に、それから自分の死の予測に。
それならば死者たちも、生を豊富に多様に所有しているかもしれない。死者の国から眺めた僕らの町に、学校に、工場の煙突に、次々と死に次々と生まれる人間に。
生まれ変わりとは、ただ、僕らが生の側から死をみるのと反対に、死の側から生を眺めた表現にすぎないのではないだろうか。
●現代は便利なもので、この小説、前半によく出てくる『得利寺付近の戦死者の弔祭』という写真は、この写真だそうです。
だから、どうよと言われても、それだけですが。この長々しい文章からも、読書のシンドサが解るでしょ… 写真や絵を文章で表現するってどれだけむだなことか…
他にもあるけど、クドくなるので、この辺で。
この作品は今でも好きだという人々も多いもので、私にはどこがいいのか全然解りません。笑
確か、石原慎太郎さんや他の人達が、この作品、良くないと言っていた記憶があるけど、これに関しては同意見です。
さぁ、これから残りの3部を読もうかどうか悩むところです…。1部くらいならまだしも、まだ四分の一だし…イヤな気分で長々と読むには時間がかかり過ぎる。確かに三島輪廻観は、再び知りたいが…。
写真の、美しい本は、自決されてすぐに出版された豪華本だと思います。
昔、私の父が買ったものです。当時、売れたんでしょうね。この本は。
遺作ってどうなんでしょう。そう言えば開高健さんの遺作も、おしっこかけの変態シーンがあって、学生の頃なんだかいやな気分になったことがあるぞ。笑
小説家ってなんか変。
あー、そうそう、『春の雪』は映画化もされてますよね。
映画公開の時に、監督の、行定勲さんは撮影したことあるよ。
『春の雪』を読んでいると、法学の話があったり、私が撮影の仕事で初めて訪れた国がタイで同じだったり、三島さんゆかりの美輪明宏さんを撮ったり、私の友達が遠い三島さんの親戚だったり、三島さんと喋ったことのあるカメラマンと友達だったりと、妙に、三島さんとは、近しいものは感じるのですが。こんなのも。
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三島ファンの人達、怒らないでね。笑
三島由紀夫さんの『豊饒の海』四部作は学生の頃読んだことがあります。
この歳になり、『新釈中国古典怪談』でも少し紹介した『豊饒の海』を、改めて読むことにより、三島流、輪廻や生まれ変わりの視点を再び厳密に検証してみようと思いました。でも、この読書はカナリツライ………
私は、三島由紀夫さんは好きですが、彼の小説はあまり好きではありません。
主に学生の頃、彼の書く評論を好んで読んでいました。これ等は良かった。
三島さんは、評論では結構まともな事を書くのですが、小説になると、どうしてこう、性的に変態、偏屈、プライド高さ、頭でっかち、思想的不健康、神経質の気味の悪い不自然な主人公が多いのでしょうか?? お育ちなんでしょうが…
この『春の雪』に出て来る主人公、清顯(きよあき)の人格も最悪……
変態、偏屈、プライドだけ高くて、神経質、幼稚、勝手、思想的不健康、不自然…
こいつのバカな妄想と行動の為に、周りの人達が振り回される話です。
読んでいてイライラし、そんな展開ないだろう…と、前半三分の一で読書を止めようかと何度も思ったのですが、ちょっと無理して読み切ってみました……疲
十代の頃は、意味も充分解らず、こんな事がすごいんだ…なんて無理して読んだものですが、この歳になると、彼の難解な理論や言葉もかなり理解でき、それ故、かえって読んではいられません… こうした発見の意味でも若い頃読んだ本の再読はいいのですが…
ただ、十代が読む読み物としては、有害図書ですね。笑
三島さんは、この本でジョルジュ・バタイユが言う、禁忌への違反こそがエロチシズムであるという考えを、物語で試みていますが、物語にしてしまうと、ものすごく不自然で、「そんなヤツ、居ないだろ…」とツッコミどころ満載。あり得ない身勝手さで不自然。
いいかげん、性欲メインの考えかた止めようよ……と思ってしまう。まるで盛り付いた猿。まだ、バタイユの小説の方が破天荒で面白い。
十代って、かなりおかしな事を考えているもので、当時十代の私も、かなり悪い影響があったと思うよ。笑
そして、無駄に多い修飾語の数々。この多過ぎる修飾語を削除するだけでも、この本は五分の一になるのではと思うほど。氏はその『文章読本』の中で、簡潔な文章こそ美しいと書いていた記憶があるのですが、記憶違いか…
さらに細かな心理描写。神経質過ぎる心理描写にも疲れが。人はそこまで細かい事にこだわって生ていないと思うのですよ…
私が中国怪談に魅かれる点も、心理描写に拘泥していないところもあります。
『新釈 中国古典怪談』でも指摘しましたが、近現代小説の心理描写って、なんだかとても病的なものが多い。
以前、小説は読まなくなったと書きましたが、ほんと、もう情や業の話はウンザリなのです。 中国怪談はそんな心理描写に拘泥せず、もっと端的に本質を語っているところが好きなのです。
本書で気になった発言を少し抜粋。
●「歴史を変えようとする意志を持っていたとする。俺の一生をかけて全精力全財産を費やして、自分の意志どほりに歴史をねじ曲げようと努力する。中略。
それでも、歴史は思うままの枝ぶりになってくれるとは限らないんだ」
●どうしたら若い内に死ねるだろう、
○こういうこと言ってるから… 老荘思想を読もうよ… でも老荘思想は、勿論、三島さん、好きではなかった。笑
●僕らは生ていて、死を豊富に所有している。葬ひに、墓地に、そこのすがれた花束に、死者の記憶に、目のあたりにする近親者たちの死に、それから自分の死の予測に。
それならば死者たちも、生を豊富に多様に所有しているかもしれない。死者の国から眺めた僕らの町に、学校に、工場の煙突に、次々と死に次々と生まれる人間に。
生まれ変わりとは、ただ、僕らが生の側から死をみるのと反対に、死の側から生を眺めた表現にすぎないのではないだろうか。
●現代は便利なもので、この小説、前半によく出てくる『得利寺付近の戦死者の弔祭』という写真は、この写真だそうです。
だから、どうよと言われても、それだけですが。この長々しい文章からも、読書のシンドサが解るでしょ… 写真や絵を文章で表現するってどれだけむだなことか…
他にもあるけど、クドくなるので、この辺で。
この作品は今でも好きだという人々も多いもので、私にはどこがいいのか全然解りません。笑
確か、石原慎太郎さんや他の人達が、この作品、良くないと言っていた記憶があるけど、これに関しては同意見です。
さぁ、これから残りの3部を読もうかどうか悩むところです…。1部くらいならまだしも、まだ四分の一だし…イヤな気分で長々と読むには時間がかかり過ぎる。確かに三島輪廻観は、再び知りたいが…。
写真の、美しい本は、自決されてすぐに出版された豪華本だと思います。
昔、私の父が買ったものです。当時、売れたんでしょうね。この本は。
遺作ってどうなんでしょう。そう言えば開高健さんの遺作も、おしっこかけの変態シーンがあって、学生の頃なんだかいやな気分になったことがあるぞ。笑
小説家ってなんか変。
あー、そうそう、『春の雪』は映画化もされてますよね。
映画公開の時に、監督の、行定勲さんは撮影したことあるよ。
『春の雪』を読んでいると、法学の話があったり、私が撮影の仕事で初めて訪れた国がタイで同じだったり、三島さんゆかりの美輪明宏さんを撮ったり、私の友達が遠い三島さんの親戚だったり、三島さんと喋ったことのあるカメラマンと友達だったりと、妙に、三島さんとは、近しいものは感じるのですが。こんなのも。
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