グズグズ寺で読む、畔倉重四郎の手引き | 神田松之丞ブログ

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毎月のスケジュールと、演目などを更新していきます。

また、自主興行のテーマなども書いていきます。

今日は「グズグズ寺」。毎月必ずやってくる「グズグズ寺」。

私は主任なので「狼退治」と「越前の首」と2席勤めます。

「狼退治」はともかくも、「越前の首」は連続物の続きだからお客様に分かりにくいという事を考慮して、あらすじを書いておきます。


名奉行、大岡越前守が生涯裁いた中で「八つ裂きにしてあまりある」と言わしめたのが、徳川天一坊、村井長庵、そして畔倉重四郎。

これを講談界で三政談という。

今、講談研究室で師匠とリレーで読んでいるのが「村井長庵」。

今日は「畔倉重四郎」のあらすじを。

下総幸手の中宿に穀屋平兵衛という大商人がいた。この男が江戸へ用足しに出かけた際に、島津家の家臣にからまれて危うく命のないところ、畔倉重右衛門という侍に助けられる。

しかし、その事が元で重右衛門はお暇になってしまう。命の恩人が自分が元で浪人になってしまったと申し訳なくなった平兵衛は、この男を面倒をみる決意をする。息子もいて、それを畔倉重四郎という。

父親の重右衛門は、昼の内は手習いの師匠、夜になると剣術を教え、誰からも好かれる人物。ところが、この重右衛門が亡くなった事で、色々な歯車が狂いだす。

後を継いだ重四郎は、生来気性も荒い。父親とは違う。平兵衛とも折り合いが悪くなる。次第に平兵衛の娘のおなみに片恋慕するようになる。艶書を発見し激怒する平兵衛。

もめにもめ、重四郎はとうとうお笹堤で平兵衛を殺してしまう。その傍に、同じ穀問屋の杉戸屋富右衛門の煙草入れを置いておく事で、杉戸屋に罪をきせる。

さぁ、この杉戸屋に息子がいて城富という。幼年の頃から盲目ゆえ、今では按摩などをやっているが、父親が罪を受けてお仕置きを受けるという事を聞いて、父は無罪であると出入りの安藤対馬守に訴えにかかる。そこで、大岡様の再吟味となり、名奉行の大岡様ならと安心をするが

ある一日、風呂屋でこんな噂を聞く。
「この前、獄門台に出てた首だけど。妙なんだよ」
「何が」
「面の皮が剥がされていた。」
「へぇー、それは妙だな。」
「つくづくあんな風にはなりたくねぇと思ったよ」
「それで、その首の名前は」
「なんでも傍の捨て札をみると、杉戸屋富衛門という」

物語はここから、進んでいくという。


この畔倉重四郎というのは19席あるんですが、みんなタイトルが素晴らしいのが多いので紹介しておきます。

1話目が「悪事のなれそめ」。2話目が「穀屋平兵衛殺害の事」。この「殺害の事」の「事」って何か斬新。

他にも「金兵衛殺し」「栗橋の焼場殺し」「重四郎の三五郎殺し」とどこまで殺すんだという演題が続く。

また「奇妙院登場」。さらには「奇妙院の悪事」という。お前、誰なんだよと興味をそそる。

最後の方には「牢屋敷炎上」という、ハリウッドばりの事もしてくれたりと大変陰惨な読み物。

気に入らない奴は全員殺すが文句あるかという、それでいて悪事の美学が何処かに貫かれいる読み物。

ちなみに師匠がこの話を連続でかけていた時に、あまりに陰惨すぎて、お客様が吐きそうになったという伝説が残っている。

ちなみにこの話を完全に持っているのは、師匠松鯉と一門の阿久鯉だけ。

今回は短いですが、よろしければ「グズグズ寺」是非お越しを。