金正日総書記の遺言状。 | プールサイドの人魚姫

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うつ病回復のきっかけとなった詩集出版、うつ病、不登校、いじめ、引きこもり、虐待などを経験した著者が
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プールサイドの人魚姫-キム

 19日、正午のNHKニュースが始まった矢先の事だった。ニュース速報のテロップが流れると同時に、アナウンサーの顔に緊張が走った。

 「たった今入ったニュースです…金正日(キム・ジョンイル)総書記が死亡しました。」TV画面が朝鮮中央テレビの映像に変わり、喪服と思われる黒い民族衣装を纏った、あの看板アナウンサーで有名な女性リ・チュンヒ氏が悲痛な面持ちで訃報を語り始めた。

 「偉大なる領導者(指導者)金正日同志が2011年12月17日(午前)8時30分に、現地指導の途中、急病により逝去されました…」。

 彼女はこれまで、キム総書記の動静など重要情報を担当していたが、10月以降、同テレビから姿を消しており、その動向がネット上等で話題に上っていた。

 この突然の訃報には、さすがのわたしも「えっ?」と思わず声を上げてしまった。訃報が流れた時点ではその死因などには一切触れておらず、世界中の誰もが耳を疑ったのではないだろうか。但し、キム総書記死去のニュースを事前に知っていた中国だけを除いてではあるが。

 その後の報道で、専用列車で移動中、急性心筋梗塞を起こし死去したとされているが、その死については多くの謎が残されたままである。

 ある報道では列車は駅に止まっており、キム総書記お気に入りのホテル内で死亡したという説や、暗殺説まで飛び交っている。

 わたし自身も『列車内での死亡』については疑問を抱いている。北朝鮮にとって、金総書記の健康管理と維持は『最優先課題』である筈。

 急性心筋梗塞が起こった場合、『へパリン』の投与が効果的であり、死亡率は20%減少し、再発する確率も30%減少する。発作時にどのような処置が施されたのか詳細は不明であり、列車内に医療従事者が常駐していたのか、十分な医療機器が揃っていたのか等、疑問点が多すぎる。

 健康不安を抱えながら、現地視察など過密スケジュールをこなす場合は、側近が常に体調の変化に眼を配らせていなければならず、僅かの変化でも見逃すような事があればそれは重大なミスに繋がり、国家の存亡に発展する可能性をも秘めている。

 北朝鮮は何が起こっても不思議ではないほど、わたしたちの想像を超越しており、世界の常識が全く通用しない唯一の国でもある。

 秘密裏に軍事クーデターが起こっていた可能性も捨て切れないし、後継者の金正恩(キム・ジョンウン)自らが一部の造反者に唆されて父親を殺した…と言うのはさすがに考え過ぎだろうか。

 安置されている金総書記の遺体が不自然であり捏造との噂も飛び交っているが、それら全てを含めて『北朝鮮』なのである。

 拉致問題を抱える日本にとって、彼の死が今後の問題解決に結び付くのか、遥か彼方に遠のくのか、現時点では全く将来像さえも見えて来ないが、政治力の弱い日本にとってはある意味でのチャンス到来とも受け取れる。

 飴と鞭を上手く使い分けて交渉に臨む、機動力のある外交政策を期待したいところではあるが、それを実現出来る政治家・政党が存在しないのが実に歯がゆい。

 それにしても中国と北朝鮮の親密な関係を今回の事で改めて思い知らされた。金正日死去がトップシークレットとしてまる二日間に亘り一切漏れて来なかった事。徹底した情報操作の裏で、朝鮮戦争の当事者である韓国でさえもが知らなかったと言うのは、日本と同様に危機管理意識の低下を浮き彫りにしたようなものである。

 金日成と金正日それぞれの遺言は北朝鮮人民全てに伝わっているかどうか、それが鮮明になるまではもう少し時間がかかる事だろう。まさか『テポドン』が飛んで来ることはないと思うが…。