日進月歩の医療技術が日本を長寿大国へと導いて来たが、それを根底から揺るがすような事件が日本各地で続発している。
その発端になったのが、先日東京足立区で発見された白骨遺体。都内最高齢(111歳)とされていた男性の加藤宗現さんである。
実際には30年前に既に死亡していたというショッキングなニュースが日本列島を駆け巡ることとなり、100歳を超える高齢者の行方不明者が続出。
女性としては最高齢の杉並区に在住していると思われていた113歳も行方が依然として掴めていない。しかも年金の不正受給という問題までが発覚し、これは家族ぐるみでの「誘拐詐欺」ではないかとさえ疑問を抱いてしまう。
自治体や国の対応にも呆れてしまうが、高齢者の所在や安否確認があまりにもずさんで、事が起こってから慌てて高齢者探しに明け暮れるこの国が如何に「放置国家」であるかが浮き彫りになった。
長生きは本来「幸福」なことで喜ぶべきなのだが、高齢者への配慮や環境が、自治体によってバラバラであり統一性が全くないのが現状。
高齢化社会が目前に押し迫っている中でのこの事件は、日本の将来に大きな不安の影を落とす。核家族が進み、個人主義が間違った方向で蔓延し、他人に無関心な社会構図が人と人との絆なや繋がりの在り方を根底から崩し始め、厄介な事には出来るだけ関わりを持たないという、自己中心主義が他人への思いやりを閉塞させてしまうという悪循環に陥っているのだ。
男女の平均寿命が延びるのは喜ばしいことでありながら、現実とは逆行する生きにくい世の中に絶望感を抱く人々のなんと多いことか。
人は支え合ってこそ生きられる、助け合って生きていくこと。この人間回帰を今こそ各々が実現させなくてはならないだろう。