モヒカン故郷に帰る(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

モヒカン故郷に帰る(ネタバレ)

モヒカン故郷に帰る

モヒカン故郷に帰る

2016/日本 上映時間125分
監督・脚本:沖田修一
製作:横澤良雄、川城和実、三宅容介、佐野真之、太田和宏、稲垣宏
企画:重松圭一、佐々木史朗
プロデューサー:青木裕子、西川朝子、久保田傑、佐藤美由紀
撮影:芦澤明子
DIT/VE:鏡原圭吾
照明:永田英則
録音:岩丸恒
美術:安宅紀史
編集:佐藤崇
音楽:池永正二
主題歌:細野晴臣
衣装:纐纈春樹
ヘアメイク:田中マリ子
スクリプター:田口良子
音楽プロデューサー:安井輝、篠崎恵子
助監督:茂木克仁
制作担当:齋藤大輔
出演:松田龍平、柄本明、前田敦子、もたいまさこ、千葉雄大、木場勝己、美保純、小柴亮太、富田望生、劔樹人、大竹康範、矢澤孝益、クリテツ、渡辺道子、守屋文雄、坊薗初菜
パンフレット:★★★(800円/インタビューが充実。金澤誠さんのコラムが良かった!)
(あらすじ)
売れないデスメタルバンドのボーカル・永吉(松田龍平)は、恋人の由佳(前田敦子)が妊娠したことをきっかけに、瀬戸内海に浮かぶ故郷の戸鼻島(とびじま)へ7年ぶりに帰郷。同じく故郷を出ていたはずの弟(千葉雄大)もいつの間にか帰郷しており、久々に一家が顔をそろえるが、そこで父親(柄本明)のガンが発覚し……。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




91点


ごめんなさい、劇場でチラシやポスターを見た時、脳裏に浮かんだのは、「ケッ、バッカバカしいッ!(`Δ´)」という加藤清澄な感想。基本的に沖田修一監督作は嫌いじゃないものの、「どうせ“モヒカン頭のパンクロッカーが田舎に戻って騒動を巻き起こす”的な、わかりやす~いカルチャーギャップコメディなんでしょ?┐(´ー`)┌ ヤレヤレ」と思って、あまり観る気が起きなかったんですが…。当ブログの読者であるタカハシさんやグラビトン・ボルトさんに熱くプッシュされて興味が湧いたので、公開から2ヵ月近く経った6月頭にキネカ大森で観て来ました。眩しかったです… (ノДT)


劇場には、記事の切り抜きがありまして。
記事の切り抜き

場面写真のパネル展示や…。
パネル

グッズもいろいろと販売されてましたよ。
グッズ販売


話を超簡単に書くと、デスメタルバンド「断末魔」のボーカル・永吉が、恋人の由佳が妊娠したので結婚することにしましてね。7年振りに、瀬戸内海に浮かぶ故郷の戸鼻島に帰郷してみたら、父親が末期ガンで余命いくばくもないことが発覚。永吉は親孝行として、「えーちゃんに会いたい」といったいろいろな願いを聞いてあげたりすると、父親ったら“手作りの結婚式”を挙げている途中で断末魔の叫びを上げて死亡しまして。最後は、すぐにでも出産しそうな由佳と一緒に帰京して、映画は終わってましたよ。


ラストはこんな感じでしたよね、確か。
最後のシーン

映画の主題歌「MOHICAN」のPVを貼っておきますね↓




本作の役者さんはみんな素晴らしくて。沖田監督の演出力の高さも影響していると思うんですが、常に自然体な松田龍平さんや、雑に可愛い妊婦の前田敦子さん、矢沢永吉ファンの父を演じた柄本明さん、母親役のもたいまさこさん、若干バカっぽいけど無害なムードの弟役の千葉雄大さんといったメインどころだけでなく、端役のおばちゃんやピザ屋の人などなど、とにかく良かったです。ただ、映画開始早々、僕の涙腺を刺激したのは、吹奏楽部の部長・清水さんを演じた富田望生さん。「ソロモンの偽証」での松子役は“理想の娘”として僕のハートに刻み込まれていただけに、本作で清水さんがクラリネットを吹くシーンは、「意地悪な樹里に会うことも、事故に遭うこともなく、大好きな吹奏楽をまっとうできたパラレルワールドの松子」に思えてね、彼女が画面に映るだけで泣いていたというね… (ノДT) ヨカッタネー


父の治は地元中学の吹奏楽部を教えているんですが…。
吹奏楽部が登場!

その部長である清水さんを演じたのが、「ソロモンの偽証」の松子だったのです!Σ(゚д゚;) ナンデスト!
清水さん(富田望生)

もうね、彼女が画面に映るだけで多幸感に包まれたし、演奏がエスカレートする場面とか100点でしたよ。
演奏シーン!


作品的には、今までの沖田監督作のように、ふんわりしたムードでボンヤリと面白い場面が紡がれていって、なんかホッコリする感じなんですが、今作は本当に良いシーンが多くてね…(しみじみ)。「屋上での吹奏楽演奏シーン」とか「父親のためにピザを頼むシーン(最終的には、父が気を遣う)」とか「矢沢永吉のコスプレをして、呆けた父親に会うシーン(『目が合いましたよね!』が泣ける!)」とか「手作り結婚式のシーン」とか、思い出すだけでも心が温かくなるんですけれども。一番グッと来たのが、家族で海に行くシーン。呆けた父の「ビッグになるまで帰ってくるな」という台詞を聞いて、「なんで永吉は7年も帰郷しなかったのか→ビッグになってなかったから」ということに気付いた瞬間、「アタシ、永吉の気持ち、全然分かってなかったんだ!ヽ(TДT)ノ ウワァァァン!」「ももへの手紙」ライクに号泣ですよ。


ピザを食べるシーン、ピザ屋の人たちも愉快で良かったなぁ。
ピザを食え!

海辺のシーン、素晴らしかった。松田龍平さんは本当に良い役者さんですよね。
オニギリを食いながら泣く!


つーか、僕は自分の父親(故人)には非常に思うところがあって、「幸せ家族系映画」にはネガティブな感情を抱きがちだったものの、2014年に「ぼくを探しに」を観て、やっと心の険がとれて。そんな目線で本作を観ると、羨ましかった。「父とこんな関係が築けてたら…」と素直に思っちゃって、涙が止まらなかった。それと、昨年、お義父さんがガンで亡くなったんですけど、僕の奥さんとその家族はとても仲良しで明るく頑張ってたりして、そういうことも重なって、またスゲー泣けたのです。


父・治が大好きな矢沢永吉の「アイ・ラヴ・ユー、OK」を貼っておきますね↓




そんなワケで、基本的に褒めるところしかない作品なんですが…。逆に言うと、僕には眩しすぎた。家族や親戚が絡むと、すぐにネガティブなことを想像しがちというか、例えば、千葉雄大さん演じる弟が出てきた瞬間、「コイツと遺産やら何やらで揉めるのだろうよ… (;`∀´)」などと穿った目線で観てみれば、そんなことはなく。結婚式を挙げるということで由佳の家族がやってきた時、「母親が金を要求してきたりするのだろうよ… (;`∀´)」と深読みしてみても、そんなことはなく。なんかね、“人間の暗黒面”ばかり考えてしまう自分が心底イヤになった次第。


この弟、いつ友好的な仮面を脱いで牙を剥いてくるか、ずっとドキドキしてました。
弟・浩二(千葉雄大)

由佳の母親を演じているのが美保純さんだったのもあって、強請ってくるかと思ってましたよ…。
由佳の家族

そんなネガティブな深読みをしがちな僕は、すっかり阿久津典子さん気分なのでした(「いつかティファニーで朝食を」より)。
三角絞めでつかまえて-こんな自分が嫌なの...


まぁ、何はともあれ、つい「現時点で今年の邦画1位!」なんて先走ってしまうくらいに良い映画でした (´∀`) ホッコリ 勧めてくれた方々には超感謝しております。気になる人は観ると良いです。おしまい。




なんだかんだ言って、一番好きな沖田監督作はこれな気がする。



公開記念でリリースされたメイキング。バンド「断末魔」のPVも収録されているそうな。