WILD CARD ワイルドカード(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

WILD CARD ワイルドカード(ネタバレ)

<この映画を観る前の心境について>

「映画秘宝 2015年03 月号」「タフガイ通信」(誌面の1/6程度のスペース)で、“信用できる映画ライター”ギンティ小林さんが今作を紹介していたんですが…。「ステイサムがラスベガスの裏社会をド派手に大掃除する映画だな! と期待しちゃいますが違います」「まったく着地点の読めない物語が展開」「ステイサム演じる主人公も安定の無敵路線ではなく、ガイ・リッチー作品に出ていた頃を思わせる、どこかガードのユルい男」なんて書かれていましてね。雑誌としてそんなに“押す”ムードではなかったんですよ(プッシュする時は半ページ使って、“信用できる漫画家”古泉智浩さんあたりが熱っぽい文章を書くイメージ)。

だから、正直、全然期待してなかった。「エクスペンダブルズ2」を撮ったサイモン・ウェスト監督自体は嫌いじゃないけど、基本的には雑な映画を作る男だし…。とは言え、ジェイソン・ステイサムと組んだ「メカニック」はそこそこ好きだし、そもそもステイサム主演作は劇場で観る主義なのでね、2月中旬になって、やっと新宿バルト9に足を運んだのでしたーー。

夕方、シネマチネを利用して鑑賞。劇場はシアター1でしたよ。
新宿バルト9

パンフがないのはスゲー残念でしたな…。
パンフはなしよ














WILD CARD ワイルドカード

ワイルドカード

原題:Wild Card
2014/アメリカ 上映時間92分
監督:サイモン・ウェスト
製作:スティーブ・チャスマン
製作総指揮:ニック・メイヤー、マーク・シャバーグ、カシアン・エルウィズ、ロバート・アール、ブライアン・ピット
原作・脚本:ウィリアム・ゴールドマン
撮影:シェリー・ジョンソン
美術:グレッグ・ベリー
衣装:リズ・ウルフ
編集:パドレイク・マッキンリー、トーマス・J・ノードバーグ
音楽:ダリオ・マリアネッリ
アクション監督:コリー・ユン
出演:ジェイソン・ステイサム、マイケル・アンガラノ、マイロ・ビンティミリア、ドミニク・ガルシア=ロリド、ソフィア・ベルガラ、マックス・カセラ、ジェイソン・アレクサンダー、ホープ・デイビス、スタンリー・トゥッチ、アン・ヘッシュ
パンフレット:なし
(あらすじ)
元エリート兵士で、ラスベガスの裏社会で用心棒として生きるニック(ジェイソン・ステイサム)は、ある日、何者かに暴行を受けて重傷を負った元恋人から、犯人の正体を突き止め、復讐してほしいと依頼される。ニックはすぐさま犯人を見つけ出して依頼を完遂するが、犯人の背後には強大な権力でラスベガスを牛耳るマフィアの存在があった。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




95点


超僕好みでしたYO!ヽ(`Д´)ノ ウォォォォ! 先日、ユナイテッド・シネマ豊洲で2回目を観て、さらに好きになったというか。「激戦」を抜いて、現時点で今年のベストだったりするのです。


スクリーン2で観ました。
UC豊洲

つい、プレミアムポップコーンを食べちゃったりしてね… (ノω・、) フトッチャウ
プレミアムポップコーンはホワイトチョコ


いや、「空腹は最高のスパイス」なんて言葉があるように、もともとの期待値が低かったという要因もなくはないんです。特に「安定の無敵路線ではなく、ガイ・リッチー作品に出ていた頃を思わせる、どこかガードのユルい男」という一文を読んで、「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」「バンク・ジョブ」の時のような“普通の腕っ節のキャラ”を勝手に連想していたため、序盤、イタリアンマフィアのドラ息子ども相手に高い戦闘力を発揮する場面を観ただけで、「えぇっ、今回も普通に強いじゃん!Σ(゚д゚;)」と驚きながらもテンションが急上昇したのは確かですし…。


結局、今作も凄まじく高い戦闘力を発揮しまくるステイサムなのでした (´∀`) ナァンダ
普通にスゲー強いステイサム


ただ、それ以上に、オーダーメイドであつらえたスーツのように、あらゆる要素が僕の好みにジャストフィット。なんて言うんですかね、例えるなら美味いステーキを食べられる店なんて腐るほどあるけれども、一番しっくりくるのが「ステーキハウスB.M」だったりするように(自分ルールとして「年に1度、誕生日の時期だけ食べに行く」ようにしてる)、決して万人にオススメできる名作ではないものの、僕にとってはスペシャルな1本だったという感じ。正直、ニュアンスの部分が大きいので、上手く伝わるかどうか自信がないんですが、何にしっくり半蔵だったのか((C)杉作J太郎先生)、箇条書きで残しておきますね↓


<① こぢんまりとしたドラマがしっくりきた!(o^-')b シックリ>

「狂言の片棒を担いで、ヅラオヤジにボコられる→タイトルとともに『BLUE CHRISTMAS』が流れる」なんてオープニングから、サイモン・ウェスト監督作にしてはなかなか渋いなぁと。同じ事務所を使う弁護士やダイナーのウェイトレスなど、ちゃんと演技ができる脇役を散りばめて主人公ニックと絡ませることで、「こいつは昔からラスベガスで事務所を構えていて、そこそこの名声とそれなりの信頼を得ているんだな」って情報をちゃんと観客に伝えるのも結構好き。

ストーリーも「用心棒を依頼してきた若造サイラス(実は金持ちでニックのファン)との交流」「仲の良い娼婦ホリーをレイプしたクズを制裁」「でも、そのクズはイタリアンマフィアのボスの息子ダニー・デマルコだったから命を狙われることに」「ラスベガスを出ようとするものの、ギャンブル中毒が祟って、ブラックジャックで50万ドルまで勝ったのに、最終的にはすべてスッてしまう」「『2万5千ドルを持ってきて、それをスッただけのこと』と強がりながらも、『勝ってたのにぃ!ヽ(TДT)ノ』と荒れた挙げ句、逃げるタイミングを逃してしまう」「ラスベガスの顔役ベイビーの元で『裁判』が行われる」ってな調子で、ステイサム主演作としては地味なんですけど…。なんかね、良質なハードボイルド小説を読んでいるような気持ちになって、スゲーしっくりきたのでした。

“実は億万長者”のサイラスを演じたのは、「ドラゴン・キングダム」のマイケル・アンガラノでございます。
サイラス・キニック(マイケル・アンガラノ)

“股間に全人類のあこがれを持つ男”ダニー・デマルコ役はマイロ・ヴィンティミリア。何気に出演作をかなり観てた。
ダニー・デマルコ(マイロ・ビンティミリア)

ベイビー役はスタンリー・トゥッチ。結構豪華だと思ったり。
ベイビー(スタンリー・トゥッチ)



<② アクションがしっくりきた!(o^-')b シックリ>

全然期待してなかった…ってのもなくはないんですが、アクション演出もちょうどいい感じ。アクション監督はコリー・ユエンなんですけど、彼が担当した映画の中でもトップクラスに好きというか。この映画、「マフィアの息子と用心棒2人をボコる」「カジノで乱闘」「ダイナーの裏で殺戮三昧」の3つしかアクションを見せる場面がないものの、どれも見せ方を変えるなど工夫していて、非常に見応えがあるのです。

戦闘シーンは3つ。1つ目は、手に武器を持たない状況からのケレン味溢れる瞬殺アクション。
雑魚を瞬殺

2つ目は、カジノでダニーの手下を相手に愉快な大乱闘。
カジノで乱闘

3つ目は、ダイナーの裏で銃を持ったイタリアンマフィアとの死闘が繰り広げられるというね… (´Д`;) ハァハァ
ダイナーの裏での死闘

特にカジノで「WHITE CHRISTMAS」をBGMにして次々とギャングを倒していくシーンは最高のひと言。“今どきの軍隊格闘技感”に“アメリカンな殴り合い感”を上手く融合させていて、編集のテンポとか引きの画面の見せ方とか超ストライクでしたよ(敵が微妙にドジだったり、ニックも殴られたりするのがイイ!)。クライマックスのバトルに関しては次に詳しく書きますけど、残酷さの中に微妙なユーモアも交えていてカッコ良かったし、『96時間レクイエム』もこんな感じだったら良かったのに… (´・ω・`)」と思うほどしっくりきたのでした。



<③ クライマックスの展開がしっくりきた!(o^-')b シックリ>

でね、一番しっくりきたのがクライマックス。“ラスベガスのボス”ベイビーの立ち会いで行われた「裁判」では何とか難を逃れたものの、ニックにはイタリアンマフィアの魔の手が迫ってまして。そんな朝、行きつけのダイナーで金持ちの若造サイラスと会話しながら、ニックは自分がギャンブル中毒だということを認めるんですね。それを受けたサイラスは、ニックが憧れていたコルシカ島への航空チケットと50万ドルの小切手をプレゼントしようとしたところ、ダニーたちがやってきて、絶体絶命の状況に陥るんです。

だがしかし! 突然、サイラスが勇気を振り絞って歌い出し、みんなの注意がそちらに向けられている間にニックは裏口から逃走した…と見せかけて、ダイナーの屋根に登って隠れるんですよ。一応、この世界のリアリティラインは「いかに素手で簡単に人を殺せるニックでも、イタリアンマフィアを敵に回したら命がない」というムードであり、向こうは銃で武装しているのに、ニックの手にはバターナイフとスプーンしかない状況なので、そのままやり過ごそうとしまして。目を閉じれば、ずっと行きたかったコルシカ島が浮かんでくる。早く立ち去ってくれ…と思っていたら、ダニーの口から「店内のガキもぶっ殺せ!」なんて指示が発せられて、その瞬間、ニックったら屋根から飛び降りるんですYO!ヽ(TДT)ノ ウワァァァン!

一見、間抜けだけど、最高に燃えて泣ける名場面。
飛び出せ!

「神シーンだな… ( ;∀;)イイハナシダナー」と感動しました。知り合った若者を巻き込むまいと、バターナイフとスプーンを手に、銃を持った奴らの間に飛び込むんですよ?(“逃げる隙を作ってもらった恩”があるにせよ) そのビジュアル自体はちょっとバカっぽいものの、その“心”が凄まじくカッコイイ。映画鑑賞後、ポスターのメインビジュアルになっている“仁王立ちステイサム”の手を確認してみれば、バターナイフとスプーンがあって…。なんかね、そのネタバレに気付かなかった自分が恥ずかしくなりましたよ。

例えばバルト9の10Fに飾ってあったタペストリー風のポスター。
バルト9に飾ってあったポスター

左手をアップにすると、スプーンが握られているのです。
左手にスプーン!

しかも、アクション自体も小気味良い。それまで若干漂っていた「トランスポーター」感が増幅するというか、屋根の上で躊躇する必要ゼロというか、「1人でイタリアンマフィア、壊滅できそうじゃねーかよ ( ゚д゚)」と思わなくもない超人レベルの強さを発揮するんですけど、まぁ、いいじゃないですかぁ~(急に馴れ馴れしく)。使っている武器がバターナイフ&スプーンなだけに、そこそこ残酷な殺し方をするのが超楽しいのです。僕は基本的に「最後はタイマンで〆てほしい派」なんですが、悪役ダニーの憎らしさや戦闘までのタメなどが効果的に働いて、驚くほどしっくりきた次第。

サクサクと敵を刺していくだけでなく…。
普通にサクサク!

引き金にバターナイフを入れて、撃たせなかったりするのがナイスでした。
引き金に!

備忘録としてオチを書いておくと、イタリアンマフィアを皆殺しにした後、ニックはサイラスからあらためて50万ドルと航空チケットをもらいまして。バカをやって逃がしてくれたサイラスを認めたニックは「じゃあな、デューク ( ̄ー ̄) ニヤッ」と、彼がずっと呼ばれたかった名前で呼んであげて、ラスベガスを去ったところで映画は終わってました。



僕がしっくりきた要素は以上です。いや、ちょっと変だし、とろけそうなほど甘いだとは思いますよ(「金持ちに50万ドルもらえる」ってオチだもんね…好きだけど)。ただ、サイモン・ウェスト監督の演出やウィリアム・ゴールドマンの脚本が良かったのか、役者さんが良い人材揃いだったせいなのか、居心地の良い世界観だった…って、伝わりにくいですかね (´・ω・`) ウーン とにかく褒めたいのがダニー役のマイロ・ヴィンティミリアで、そのクズ野郎振りが最高でして。娼婦ホリーに股間をハサミでちょん切られそうになる場面とか、100点でしたよ…(しみじみ)。それと、「なんちゃって家族」に出ていたマシュー・ウィリグが用心棒のキンロー役で登場したのもうれしかったり。


男からすると恐ろしすぎる場面…。ホリー役のドミニク・ガルシア=ロリドも良かったです。
ちょん切られちゃう!


そんなワケで、スゲー面白かったです (´∀`) ウフフ 「ザ・レイド GOKUDO」みたいな“アクション・メガ盛り状態”な映画も大好物ですけど、こういう“ドラマ性と上手く絡んだ作品”もいいなぁと。今まではオリビエ・メガトンと大差ないイメージでしたが(失礼な文章)、今作で見直したというか、サイモン・ウェスト監督の“最良の1本”じゃないでしょうか。リメイク元のバート・レイノルズ主演作「ビッグ・ヒート」も観たくなりましたよ。たぶん「僕にとって」という要素が大きいというか、他の人からすれば過大評価な気がするので、ステイサム主演作でいえば「ハミングバード」あたりが好きな人が観ると「しっくりくる」かもしれませんな。




サイモン・ウェスト監督×ジェイソン・ステイサム主演作。僕の感想はこんな感じ



僕的には100点の映画。サイモン・ウェスト監督はこれを撮って一皮剥けたのでは…という勝手な妄想。



同じタイトルの韓国映画があったので、貼っておきますね。ちょっと観たい。