激戦 ハート・オブ・ファイト(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

激戦 ハート・オブ・ファイト(ネタバレ)

激戦 ハート・オブ・ファイト

激戦 ハート・オブ・ファイト

原題:激戰 Unbeatable
2013/香港 上映時間116分
監督・原案・脚本:ダンテ・ラム
製作:キャンディ・リョン
製作総指揮:ユー・ドン、ジェフリー・チャン
原案:キャンディ・リョン
脚本:ジャック・ン、フォン・チーフォン
撮影:ケニー・ツェー
美術:チョン・シウホン
衣装:ステファニー・ウォン
編集:アズラエル・チュン
音楽:ヘンリー・ライアクション
監督:リン・チーワー
出演:ニック・チョン、エディ・ポン、メイ・ティン、ワン・バオチャン、クリスタル・リー、アンディ・オン、ジャック・カオ、フィリップ・キョン、ウィル・リュー
パンフレット:★★(600円/辛酸なめ子先生のイラスト付きコラムは愉快だったけど、香港映画に詳しい人の文章が読みたかった…)
(あらすじ)
借金を抱える元ボクシング王者ファイと、父親の会社が倒産して一文無しになった青年チー。格闘技で賞金を稼ごうとジムを訪れたチーは、そこで雑用係をしていたファイが元王者だと知り、弟子入りを志願する。タッグを組んだファイとチーは、プライドと賞金を賭けて過酷な闘いに挑む。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




97点


※今回の記事に関しては、板垣恵介先生版「餓狼伝」「ANNIE/アニー」「ライオンハート」「ボディ・ターゲット」「ローン・サバイバー」のネタバレに触れているので、気を付けて!

ダンテ・ラム監督の総合格闘技映画「激戦 ハート・オブ・ファイト」については、確か2013年から情報が「映画秘宝」で流れていて、超期待してましてね。激めんを食べながら「激マン!」を読み、“北朝鮮の軍隊格闘技”激術を学びながら待つほどだったんですが…(以上、雑なウソ)。公開初日に観る予定が、バタバタしてなかなか新宿武蔵野館に足を運べなくて、2月に入ってからやっと鑑賞いたしました。超感動しましたYO!ヽ(TДT)ノ ウワァァァン! ハッキリ言って、当ブログをよく訪れるような方はぜひ観てほしい作品なのです。


劇場には記事の切り抜きが飾られていたんですけど…。
記事の切り抜き

なんと奥には「等身大パネル」と「特設リング」があるというからビックリ! 「リング」ってスゴいな。
等身大パネルと特設リングだと!?

と思いきや、この程度…。まぁ、仕方ないよね。宣伝会社、頑張った!
等身大パネルと特設リング

ちなみに2回目を観に行った時は「マッハ!無限大」の立て看板がありましたよ。
2回目の時はマッハ無限大の立て看板が


僕的には褒めるところまみれで何から書けば良いのかわからないんですが…。一番ハートをワシ掴みにされたのは、登場人物たちのキャラクター設定。ダンテ・ラム監督は「過剰に不幸を盛る」ことで知られていて、例えば「ブラッド・ウェポン」の主人公は「片想いしていた同僚にプロポーズするも撃沈」「任務中、上司に裏切られて、好きだった同僚が死亡」「自分も脳に弾丸が留まってしまい余命2週間」「幼いころに別れた父と兄を探すと、兄は犯罪者になっていた」と不幸が特盛り状態だったりするワケですよ。

で、今作の話。主要登場人物は3人なんですが、どのキャラの“事情”も非常に“コク”がありましてね…(しみじみ)。もうね、一歩間違えたら吐くレベルというか、彼らのハードな生き様を見ているだけで涙が止まらないのです… (ノω・、) グスン 乱暴に紹介するとこんな感じ↓



<1人目:“金持ちのボンボン”スーチー>

エディ・ポン、「TAICHI/太極 ゼロ」「コールド・ウォー 香港警察 二つの正義」に出てた人とは気付かなんだ。
父が破産した元御曹司

「親が金持ち」なんだけど、その金には頼らず、中国の地方都市を旅するバックパッカーだったスーチーですが(「SEX&禅」は関係ないヨ (o^-')b ネンノタメ!)、父親が破産→自暴自棄の飲んだくれにトランスフォームしてからは、その面倒をみるエヴリデイに突入。ヤケになった父親の暴力で頭から流血しながらも、決して見捨てない親孝行な息子なのです(でも、素直すぎる分、頭は悪そうな感じ)。そんな彼は「父親に諦めないで頑張る姿を見せたい」という強い想いを抱いて、総合格闘技(MMA)のジムに通い始めるのでしたーー (ノД`)



<2人目:“元ボクシング王者”チン・ファイ>

演じたニック・チョンはダンテ・ラム作品によく出ている印象(これで3作目)。
借金まみれの元ボクシング王者

って、スーチーなんて、2人目のチン・ファイに比べたら3.5牛乳ですよ(変な例え)。若いころ、ボクシング王者として一世を風靡したものの、八百長試合に手を出してしまい、黒社会との繋がりもできてドロップアウト→逮捕→前科者にフォームチェンジ。ギャンブル好きが祟って多額の借金を抱えてしまい、香港からマカオに逃げてきたというね。そして、現在は昔のボクシング仲間のツテでMMAのジムで働くも、昔の八百長行為&クズとして生きてきたその後の20年間を激しく悔やんでいるのでしたーー (ノД`)



<3人目:“息子を亡くしたシングルマザー”クワン>

演じたメイ・ティンは全然知らなかったです。
家族を失ったシングルマザー

な~んて、チン・ファイごとき、所詮は4.5牛乳(しつこい例え)。一番ヘビーなのがこのクワンであり、特濃ミルクにバターと生クリームをふんだんに加えたような不幸振りなんですね。夫に愛人ができて捨てられたことで、2人の子どもを抱えていたクワンはストレスからキッチンドリンカーになっていたんですけれども。ふと眠った隙に、1歳程度の息子が風呂に転落→水死するというね… ('A`) ゲンナリ クワンは心に異常をきたしてしまい、精神病院に直行。残った長女シウタンは施設に入れられてしまうのです。数年後、何とか退院したクワンはシウタンを引き取り、母子2人で慎ましく暮らしていたのでしたーー (ノДT)



どうです、この容赦ない負け犬感。で、ここから「チン・ファイがクワン&シウタン親子の家に居候する」「スーチーがチン・ファイからボクシングの技術を習い始める」「チン・ファイと母子の距離が縮まっていく」「スーチーとのMMAトレーニングを経て、チン・ファイも生き甲斐を取り戻していく」「スーチーがMMA大会に出場→勝利!」という、観客の心が「ヨカッタネー (ノ∀T) ウェーン」とアガる展開が次々と繰り広げられていくんだからたまらない。もう、僕の中の“何か”は痛いくらいに固くなってギンギン状態だったのです(アウトな文章)。


劇中で印象的に使われる「Sound of Silence」を貼っておきますね↓




特に泣かせるのが、クワンの娘シウタンですよ。演じたクリスタル・リーは「ブラッド・ウェポン」で「天然痘ウィルスに感染させられた挙げ句、海に投棄される」というあんまりすぎる目に遭っていましたが、今作では母親をバカにされまいと強がる姿が本当にいじらしくて…。もうね、この映画のクリスタル・リーは100点であり、「ディスる奴は殺す!ヽ(`Д´)ノ」ぐらいの思い入れを持って観ていたんですね(危険な文章)。


母を守ろうとする健気な少女。シウタンかわいいよシウタン… (´Д`;) ハァハァ
健気なシウタン


だがしかし! 幸福はそう続かないのが映画の常。「スーチーの勝利を喜ぶチン・ファイの姿をテレビで見た借金取りがマカオにやってきて大乱闘→シウタンが階段から転落して負傷」したことをキッカケに、「クワンの精神状態が悪化→病院に入院する羽目に→シウタンが別れた夫に引き取られることに」とか「スーチーが試合中にバックドロップで首から落下→体を動かせないほどの重症に」とか、またもや不幸イベントが連打されるワケです… (ノω・、) ヒドイ


階段から転落したシウタン。この瞬間、「ダンテ・ラム、殺す!ヽ(TДT)ノ」と激怒しました(迷惑な観客)。
襲う不幸


ただ、当たり前ですけど、このままでは終わらない。弟子の敵討ちというワケではなく、自分がもう一度栄光を掴むために、チン・ファイはMMAの大会にエントリー&ハードなトレーニングを開始。見事対戦相手に選ばれると、苦戦の末、勝利するのです。しかもその後は「試合後、シウタンと抱擁」「チン・ファイはそこから2試合に勝利→自分に賭けていたため、借金を返すことに成功」「娘がケガしてから精神的に不安定だったクワンと仲直り」「スーチーは無事回復(父親も立ち直り済み)→仲良く練習」なんて、今までの不幸を引っ繰り返すような展開がつるべ打ちされた上に、エンドクレジットでは「スーチーがMMA大会で優勝して父親と仲良しな様子」や「チン・ファイとクワン母子が3人で仲良くお出掛けしている様子」などが流れるから、「なにこの幸せカーニバル!Σ(゚д゚;)」と大泣きしつつも驚かされた次第。


なんと工藤夕貴さん本人が歌う動画があったので、貼っておきますね↓




そんなワケで、ストーリーとキャラクター描写が最高だったんですが、それをさらに盛り上げるのが試合描写&特訓シーンの数々。総合格闘技を舞台にした映画と言えば、「ネバー・バックダウン」やら「レッドベルト 傷だらけのファイター」やら「ワイルド・ファイト エックス」やらと適当に観てきましたが(「Warrior」「闘魂先生 Mr.ネバーギブアップ」は未見)、結構頑張ってたのではないでしょうか(主人公たち以外の選手は本物の格闘家を起用したそうな)。

いや、もちろん派手に見せるための跳び蹴りなどの要素も入ってましたけど、基本的にはリアル寄りで許せるバランスというか。MMAを知らない人でも「どうなったら痛い」とか、わかりやすかったような気がします。特訓シーンも役者たちがちゃんと鍛えた肉体を駆使しているのがビンビン伝わってきて、超良い感じ。最近気になっていたバトルロープ(ロープトレーニング)の場面があったのはうれしかったなぁ。


これ、一度やってみたいんですよね~。かなり高強度のトレーニングだそうな。
ロープトレーニング


ラスト、強敵との対決で“ひと工夫”あったのもグッときました。僕的に「チン・ファイの右肩が脱臼しやすい」という設定は「ベスト・オズ・ザ・ベスト」のエリック・ロバーツのような「有利に攻めていたら古傷のせいで不利になったけど、オレはまだ頑張るぜ!ヽ(`Д´)ノ」的な使い方をするのかと思っていたら! なんと「あえて肩を外すことで敵の技を脱出する!」と攻撃的に機能させたから結構驚きまして。ちょっと違うんですが、「餓狼伝」のグレート巽vsクライベイビー・サクラの極め技を思い出して、顔がほころんだのでした (´∀`) ヤルジャン


わざと右肩を外して脱出し、パンチ連打からのアッパーで見事勝利するチン・ファイ。
アッパーカット

なんとなくこのフィニッシュシーンを連想いたしました(「餓狼伝」第8巻より)。
折れた腕で極めてる!!?


まぁ、文句がないワケではないんです。最初観た時は「100点!m9`Д´) ビシッ」と思ったものの、よくよく考えれば気になるところも多くて。「あんなMMA大会ないだろ」とか「『挑戦者は引き分けでOK』って有利すぎじゃね?」とか「スーチーとチン・ファイのクジ運の強さ」とか「寝技のトレーニングでキスしようとする展開はやめてほしい」とか「スーチーとチン・ファイの寝技の上達の早さ」(「とりあえず防御を覚えさせる」という方針は良かったのに)とかとかとか…。

で、最もどうかと思ったのがエピローグ。正直、あまりに幸せカーニバルすぎるというか。僕だって「ヨカッタネー (ノДT)」と泣きながらハートを揺さぶられまくったんですけど、かなりしつこく感じたのも確かでして…。大体、「チン・ファイが2試合勝った」って明らかにやりすぎだし、スーチーも元気になりすぎじゃないですか(首のケガなんだから、せめてリハビリ段階にしといてほしかった)。そういう部分でもダンテ・ラム監督のサービス精神が過剰というか、みんなが幸せになってうれしかった反面、「クライング・フィスト 泣拳」級の感動には至らなかった…というのは面倒くさいですかね。


見終わった瞬間、ちょっと「ハウルの動く城」のサリマン気分にもなった…って、伝わるでしょうか。
ハッピーエンドってわけね


とは言え、ラストに大人と子どもが抱き合えば大抵は良い映画(暴論)。特に今作では「足を踏む」という要素が活かされていて、人類ならばチン・ファイとシウタンの触れ合いには感動せざるを得ない!m9`Д´) ビシッ だから、本当に惜しいというか、エピローグをもっと上手く整理してくれれば、あと2回は劇場に足を運んだのになぁと思ったり。


この場面は大泣きいたしました… ( iДi) ウェェェェ
抱き合う2人

近作では「ANNIE/アニー」でもハッシュパピーエレクトロが抱き合って、観客の涙を強奪してましたな。
抱き合うラスト

ジャン=クロード・ヴァン・ダム主演作でも「ライオンハート」のラストは凄まじく泣けるし…。
ライオンハートのラスト

「ボディ・ターゲット」のラストも涙が止まらないのです。
ボディターゲットのラスト

ただ、「ローン・サバイバー」だけは取って付けた感があって、乗れなかったカナー (・ε・) ナンダコレ
子どもとの触れ合いはどうよ


その他、「北京語と広東語をカタカナを使って書き分けていた字幕が素晴らしい!ヘ(゚∀゚*)ノ ナイス!」とか「男性が座って小便をするのがオススメなのは、便器周辺が汚れなくて良いだけでなく、なんとなく…女子気分が味わえるから… (´Д`;) ハァハァ」とか、書きたいことはあるんですけど、もう眠いので割愛! つまらない文句も書きましたが(苦笑)、僕は大好きな映画であり、Blu-rayが出たらきっと買うことでしょう。ごめんなさい、残念なことに都内での上映はすっかり終わってしまったみたいなんですけど(汗)、僕と映画の趣味が合うような方は機会があったらぜひ観て!




ダンテ・ラム監督作。ニック・チョンが超不幸な悪役を演じております。僕の感想はこんな感じ



これもダンテ・ラム監督作。クリスタル・リーが出ております。僕の感想はこんな感じ



なんとなく思い出した韓国映画。僕の感想はこんな感じ