かぐや姫の物語(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

かぐや姫の物語(ネタバレ)

かぐや姫の物語

かぐや姫の物語

2013/日本 上映時間137分
監督・原案・脚本:高畑勲
製作:氏家齊一郎
製作名代:大久保好男
企画:鈴木敏夫
プロデューサー:西村義明
脚本:坂口理子
人物造形・作画設計:田辺修
美術:男鹿和雄
作画監督:小西賢一
塗・模様作画:斉藤昌哉
動画検査:野上麻衣子
色指定:垣田由紀子
撮影監督:中村圭介
音楽:久石譲
主題歌:二階堂和美
製作担当:奥田誠治、藤巻直哉、福山亮一
制作:星野康二、スタジオジブリ
声の出演:朝倉あき、高良健吾、地井武男、宮本信子、高畑淳子、田畑智子、立川志の輔、上川隆也、伊集院光、宇崎竜童、古城環、中村七之助、橋爪功、朝丘雪路、仲代達矢、三宅裕司
パンフレット:★★★(700円/高畑勲監督の文章がタメになりました)
(あらすじ)
今は昔、竹取の翁が見つけた光り輝く竹の中からかわいらしい女の子が現れ、翁は媼と共に大切に育てることに。女の子は瞬く間に美しい娘に成長しかぐや姫と名付けられ、うわさを聞き付けた男たちが求婚してくるようになる。彼らに無理難題を突き付け次々と振ったかぐや姫は、やがて月を見ては物思いにふけるようになり……。(以上、シネマトゥデイより)

予告編はこんな感じ↓




75点


※今回の記事は、なんとなく「悪の法則」「サプライズ」のネタバレに触れているので気をつけて!
※今回の記事は、「平成狸合戦ぽんぽこ」が好きな人は確実に不快になるので、絶対読まない方が良いです。
※というか、今回の記事はいろいろと読みにくくて本当にごめんなさいごめんなさい…。


「“若さ”って何だ?」という問いの答えは「振り向かないこと」であり、「“愛”って何だ?」と聞かれれば「躊躇わないこと」と即答するのは、串田アキラさんのファンにとっては社会常識。「燃え上がる心」や「とけあった若さ」は、当然ながら「プラズマ」なワケですが、では「強さ」の意味を聞かれたら? そう、「強さ」は力じゃなくて、「男らしさと正しさ」が正解のハズなんですが…しかし! 板垣恵介先生の漫画によると、「自己の意を貫き通す力」「我儘を押し通す力」だったりするのです(なにこの文章)。


最凶死刑囚の1人、ドリアン海王が訊いてみると…。
強さとはいったいなんだろう?

烈海王はスムースに回答。ううむ、確かにそうかもしれませんな。
ワガママを押し通す力


そう考えるならば! 日本の映画界において、己の新作に対して「庵野秀明監督を主演にする」といった好き勝手なことができる&湯水のように予算を掛けられる宮崎駿監督は最強なのではないかと。そして、その師匠かつライバルと目されている高畑勲監督もまた、今回の「かぐや姫の物語」で“8年間の期間&50億円の予算”という見事なアンチェイン振りを発揮しているということでね、日本人ならばその“強さの結果”を確認しに行くべきだとは思ってたんですが…。「観たい映画の覚え書き」で「○=たぶん観る」の印を付けていた程度の期待値だったのは、説教臭かったらイヤだなぁと。

というのは、僕は「平成狸合戦ぽんぽこ」が大嫌いでして。もうね、ラストの“タヌキの皮を被ったこぶ平さん&高畑勲監督による説教シーン”は、「沈黙の要塞」でのスティーブン・セガールの偉そうな演説並みにムカつきまして。この忙しすぎる師走の時期、わざわざお金を払って観に行って、あんな上から目線のクソつまらない能書きをカマされたら、座席で憤死するじゃないですか、マジで。だから、この疾走するバージョンの予告編とかスゴイと思いつつも、なんとなく敬遠しようかとも考えていたんですが、やっぱり気になる自分もいて。

で、とりあえず「夢と狂気の王国」を観てみたら高畑勲監督への好感度がガンガンズンズングイグイ上昇!(o^-')b さらに今週のムービーウォッチメンの監視対象にも選ばれたということでね、この予告編のかぐや姫のように服を脱ぎ捨てながらユナイテッド・シネマとしまえんまでダッシュ(誰も得をしないウソ)。ポイントを使ってタダで鑑賞したんですけど、確かにスゴい映画でしたな… (;`Δ´) ヌゥ


ユナイテッド・シネマとしまえんは割引サービスがいろいろあるのが超ありがたいのです。
ユナイテッドシネマとしまえん

期間限定のキャラメルミルクティーポップコーン。高いけど、この機会を逃したら二度と口にできないカモ…。
キャラメルミルクティーポップコーン

と思ってしまって、つい購入。ちくしょう、ポテトも付けちゃいました… (´Д`;) オイシイヨゥ
ポテトも付けちゃった...


ごめんなさい、僕はアニメに関してはあまり詳しくないんですけど、鉛筆線&水彩画風のタッチで統一された映像は、素人目に見てもクオリティが高いのがわかる感じ。その時の感情によって、登場人物たちの表情…というよりは顔自体が変わってしまうのも非常に面白かったです。正直、終盤、かぐや姫と捨丸が空を飛ぶシーンだけは唐突なCGっぽさに違和感を感じたんですが(あそこだけ宮崎駿監督作っぽいイメージ)、基本的には全編圧倒されながら観てました。

一番テンションが上がったのは、予告編にもあった全力疾走シーン。「サプライズ」を観たばかりだった僕的には、無礼なクズ貴族どもが近づこうとした瞬間、かぐや姫が御簾越しに構えて、奴らのノドを平拳で叩き潰してほしいと強く願っていたんですが、まさかあそこからダッシュを始めるとは! あの迫力には度肝を抜かれたというか、ぜひあの技術を使って「サスケ」風の忍者バトルモノを作ってくれないかと強く願うほど(日本の男性デュオのことじゃないヨ (o^-')b ネンノタメ!)。結局は夢オチだったワケですけど、もしかすると月による“何らかの力”が働いて「なかったこと」にされたのでは…ってのは、深読みがすぎるでしょうか。


この場面の迫力は凄まじかったです。
疾走シーン!

「サプライズ」を観た人だったら、あの貴族どものノドに平拳をお見舞いしてほしかったハズですよね? ね?
平拳でノドを一撃!


御門との対決シーンも良かった! 「オレが後ろからハグすればイチコロだぜ?」ムードで抱きついてみれば、かぐや姫にアッサリと姿を消されてしまい、「あ…ありのまま今、起こった事を話すぜ! 『おれは奴を後ろから抱き締めたと思ったら、いつのまにか消えていた』。な…何を言っているのかわからねーと思うが、おれも何をされたのかわからなかった…」ライクなポルナレフ顔に舌つづみですよ。欲を言えばかぐや姫にはもう少し御門を酷い目に遭わせてほしかったというか、翁たちに迷惑がかかるから仕方ないとしても、出来るならばあのだらしなく伸びた鼻の下に一本拳などの攻撃を叩き込んでほしかったですな…。


「オレが抱けば、女はヒィヒィと喜ぶんだぜ?」が口グセのクソ野郎、御門(誇張アリ)。かぐや姫もモノにする気マンマンだったものの…。
御門の野郎!

不意を突かれて人中に一撃→御門は即死! こんな「かぐや姫の物語」が観たかったよォ。
人中を一撃!


って、話が逸れちゃいましたな、すみません。脚本に関しても「こう来たか」と感心して。あらすじは意外なほど竹取物語のままなんですけど、ちゃんと現代に通じるテーマを盛り込んでいるのが、非常に上手いと思いました。パンフレットで高畑勲監督が「物語の基本の筋書きは変えることなく、また、そのときどきのかぐや姫の感情もそのままに、面白くてかなり今日的な物語を語ることができるのではないか」と書かれていたんですが、まさにそれをキッチリ実現したんだなぁと。一応、オチを書いておくと、最後はかぐや姫が泣く泣く月に帰ってました…って、身も蓋もありませんな ┐(´ー`)┌ ヤレヤレ

もうね、すでにクラシック化していると思うほどスゴい作品であり、今後は“「竹取物語」=「かぐや姫の物語」”になると思うのです。Blu-rayが出たらとりあえず買っておきたいし、奧さんとも一緒に観たいし、たぶん娘がもう少し大きくなったら観せたいと思うくらいなんです…が! ごめんなさい、少しだけ文句を書くと、物語の根本的な部分に乗れない感があって。だって、結局、“月の奴ら”にやられたい放題なんだもの (´・ω・`) ウーン

いや、最近は、2歳になる娘・マナ子への思い入れが強くなっているだけに、かぐや姫=マナ子、翁=自分、媼=奧さんを重ねて観てましたよ。成長過程の描写はとにかく可愛かったし、思うように生きられなくて苦しむシーンはスゲー可哀相だったし。月に赤子が重なるラストショットとか、ベタすぎてどうかと思いつつも、二階堂和美さんが歌う「いのちの記憶」の破壊力が凄まじすぎて、目がもげて指で押し込むほど超泣いちゃいましたけれども! 地球を流刑地扱いにする奴らがヘラヘラしたまま終わるからさ、僕も翁気分に浸って「もっと姫の言うことを聞いてあげれば… (ノω・、)」と嘆く云々よりも、「てめぇらの血はなに色だーっ!ヽ(`Д´)ノ」という怒りが勝ってしまうのです。


「北斗の拳」でも屈指の人気キャラ・レイの名台詞を貼っておきますね。「究極版」、買うべきか…。
三角絞めでつかまえて-北斗レイ


この“一方的な暴力を受けて納得が行かない”感じ、最近、何かで味わったなぁと思ったら、リドリー・スコット監督の「悪の法則」ですよ。宇多丸師匠による「悪の法則」評を聴いてみると、月サイドからすれば「この世界ってのは、お前らがいつも思っているような、話が通じるような世界じゃないんだよね」ということなのかと。「そういう世界の在り方っていうのをお前らは知らなかったり、あるいは知らないフリをしようとしたり、でもそのくせその世界の恩恵(潮の満ち引きとか、月のモノとか?)は何気に受けていたりすると。でも、そんなお前らの思惑とは関係なく、その世界は今も昔も厳然と存在しているんだ」と。確かに月のシステムが機械的に動き出したら、人間にはもうどうすることもできなくて…。僕にはムービーウォッチメンで、「みなさん、この映画を観て、翁はどの時点で間違えたんだと思います?(▼Д▼) ネェネェ」と、リスナーに問い掛ける宇多丸師匠の姿が目に浮かぶよう…って、すみません、あまり寝てなくて疲れているんです… ('A`) ネムイヨゥ


ところどころで月が印象的に描かれていましたな。
月は見ていた!


ちくしょう、本当は「月の奴らの監視を逃れるために地下組織を作って…」という妄想や、媼の健脚(破壊屋さんのこの記事を参照)を活かした格闘術、媼の乳首露出と月人による強制肉体変化の恐怖などについて書こうと思っていたんですけど、精神力&体力の限界が来たので割愛!ヽ(`Д´)ノ 何はともあれ、お話自体は好きになれませんが、今でもこの6分のプロローグを観るだけでボロボロと涙がこぼれるほど“何か”を焼結されたというか、とにかく心に無理矢理残る映画という印象。高畑勲監督、さすがだと思いました。「平成狸合戦ぽんぽこ」でムカついた件、もう水に流すことにします(偉そうに)。


むしろこの動画だけだったら100点な気がします。




ちなみに役者さんたちも素晴らしくて、故・地井武男さんとか実に良かったワケですが(一部を三宅裕司さんが演じてたなんて、全然気付かなかった!)、何よりも女童が超可愛くて。「この声の人、良かったなぁ」と思ってエンドクレジットを観ていたら、演じてたのは大好きな田畑智子さんでしてね。彼女との間になんとなく運命を感じたーー。そんな心底どうでも良い文章を最後に、感想を終えたいと思います (´∀`) オワリ




一番好きな高畑勲監督作はこれですかね。



サントラ。結構ほしいのです。



こちらは主題歌を歌った二階堂和美さんのニューアルバム。



絵コンテ全集。ちょっと読んでみたいです。



ビジュアルガイドもあります。



こっちのアートブックもスゴそうですな~。



脚本を担当した坂口理子さんによるノベライズです。



高畑勲監督の最新エッセイ集。



原作に興味のある方用にkindle版を貼っておきますね。



市川崑監督作。のちのビオランテである。