プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命(ネタバレ)

プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命※ムービーウォッチメンのリンクを追記しました(2014/8/7)

三角絞めでつかまえて-プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命

原題:The Place Beyond the Pines
2012/アメリカ 上映時間141分
監督・原案・脚本:デレク・シアンフランス
製作:シドニー・キンメル、ジェイミー・パトリコフ、リネット・ハウエル、アレックス・オルロフスキー
製作総指揮:ジム・タウバー、マット・ベレンソン、ブルース・トール
原案・脚本:ベン・コッチオ
脚本:ダリウス・マーダー
撮影:ショーン・ボビット
美術:インバル・ワインバーグ
衣装:エリン・ベナッチ
編集:ジム・ヘルトン、ロン・パターネ
音楽:マイク・パットン
出演:ライアン・ゴズリング、ブラッドリー・クーパー、エバ・メンデス、ベン・メンデルソーン、ローズ・バーン、マハーシャラ・アリ、デイン・デハーン、エモリー・コーエン、ブルース・グリーンウッド、ハリス・ユーリン、レイ・リオッタ
パンフレット:★★★(500円/この値段にしては良い出来)
(あらすじ)
かつての恋人ロミーナ(エヴァ・メンデス)と再会したルーク(ライアン・ゴズリング)は、息子ジェイソンが産まれていたことを知り、2人を養うため銀行強盗に手を染める。新米警察官のエイヴリー(ブラッドリー・クーパー)は、ルークを追いつめるがあるミスを犯し、罪悪感を抱える。しかし、周囲からは評価され複雑な気持ちを胸に、警察の腐敗に立ち向かう。15年後、成長したジェイソン(デイン・デハーン)はルークとエイヴリーそれぞれの秘密を知ってしまい、その怒りの矛先は親しくしていたエイヴリーの息子AJ(エモリー・コーエン)へ向けられる。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




75点


※今回の記事は、映画の感想とは関係のない面倒臭い文章が多く書かれているので、そういうのが苦手な人は読まない方が良いです。

本日はすでに「フッテージ」の感想をアップしていますが、とりあえずこの記事も更新しておきますね。デレク・シアンフランス監督(一部では「デレク・シアンフラン」って表記になってるから気をつけて!)の前作「ブルーバレンタイン」は超凶悪な映画でして。観た人間(特に結婚している人)をクリティカルに鬱にするというか、「アレを1度でも観た人は、挿入歌の『You And Me』を耳にすると、『リトルトウキョー殺人課』に出て来たヤクザみたいに自分で首を捻って自殺しちゃうんだって… ヒソヒソ 川;´д)(゚д゚;し コワーイ」なんてウワサが女子高生の間で囁かれる級の“呪いのビデオ”であり(勝手なデマ)、僕の“2度と観たくない映画ベスト10”に確実に入る作品だったりするんです…がしかし! このシアンフランス監督に才能があるのは間違いないワケでして。今回の「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命」は、そんな天才監督の最新作なのでね、尊敬する映画評論家の町山智浩さんは「たまむすび」で微妙な評価をされてましたけれども、一応、観に行こうとは思っていたんですよ。


なんとなくPenny and the Quartersの「You And Me」を貼っておきますね↓ 首を捻って死にたい!ヽ(TДT)ノ




ただ、タイトルが覚えられなくて… (ノω・、) 「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ(The Place Beyond the Pines)」というのは、「松林の向こう側」という意味であり、映画の舞台となるニューヨーク州の町スケネクタディのことを差すそうなんですが、ごめんなさい、僕は偏差値が低い男なので、全然頭に入ってこないというか。劇場に表示してあるタイトルを音読しながら係員に伝えることすら自信がない感じ…。「なんか面倒臭いから、レンタル開始まで待つかな (・∀・;) エヘヘ」なんて思っていたら、今週のムービーウォッチメンの監視対象に選ばれたので、仕方なくヒューマントラストシネマ有楽町に足を運んだワケですよ。


ちなみに劇場には記事の切り抜きが貼られていて…。
三角絞めでつかまえて-記事の切り抜き

オリジナルドリンクも売られてました。飲まなかったけど、こういうの好きよ。
三角絞めでつかまえて-オリジナルドリンク


で、スゲー残念だったのが、受付が女性だったこと(しかも少し好みのタイプ)。野郎だったら、「『プレイス』を1枚!m9・∀・) ビシッ」と、勢いで乗り切るのもアリだと思ってたんですが、女性の前では少しでも見栄を張りたいのが男心。タイトルをちゃんと伝えられなくて、「やだ、あのお客さんったら『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ』って言えないのね! 『大男総身に知恵が回りかね』とはまさにこのことだわ 川`∀´) オホホホホホ」なんてバカにされたらって考えると、胸がスゲー痛い!ヽ(TДT)ノ でも、僕も一児の父親ですからね、こんなことに負けてはいられませんよ。窓口から、一旦、離れてから、スマホでタイトルを再確認し、心の中で何度も復唱して、再度、受付に、向かって、彼女に、タイトルを、伝える、今!


「えーっと、プレイス・ビヨンドゴニョゴニョ、い、1枚… (´Д`;) ゴニョゴニョ」


負けた…(脳内BGMは「It's a Long Road」)。一瞬、「ビヨンド」と「パインズ」の間に「ザ」を入れるかどうかに迷ってしまって、ゴニョゴニョと濁して、逃げてしまった…。彼女は何事もなかったかのように席を選ばせてくれたけれども、内心、軽蔑したんじゃないだろうか。例え間違えたとしても、果敢にチャレンジした結果だったら、それなりに認めてくれたかもしれない。でも、誤魔化して逃げるなんて! よくよく思い出してみれば、彼女は“養豚場のブタでもみるかのような冷たい目”で僕を見ていた気がします。「かわいそうだけど、あしたの朝にはお肉屋さんの店先にならぶ運命なのね」ってかんじの…。


なんとなくジョジョ第二部の“冷たい目をするリサリサ”を貼っておきますね。
三角絞めでつかまえて-冷たい目のリサリサ


な~んて、被害妄想を長々と繰り広げちゃいましたが(苦笑)、やっと映画の感想に入りますね。いろいろと好きでした (´∀`) この作品<「ハンサム・ルーク、銀行強盗になる」の巻><「新米警官エイヴリー、ヒーローになる」の巻><「15年後、2人の息子が出会うナリ」の巻>の3部構成ということで、それぞれについて書いておきますよ↓



<「ハンサム・ルーク、銀行強盗になる」の巻>

稲妻のようなライダー、ルーク。僕も「ハンサム」と呼ばれるような男に生まれたかったです…。
三角絞めでつかまえて-ルーク

もうね、このパートは最高でした。主人公は、移動遊園地で命懸けのバイクスタントショーをこなして、その日暮らしをしてた通称“ハンサム・ルーク”。シェイプされた腹筋を見せつけつつ、そのままワンカットでバイクに乗ってケージに入るオープニングが超素晴らしくて、一気にハートを掴まれちゃうのです(ケージに入る直前、スタントと入れ代わっているようですが)。

シックスパックから始まる映画に駄作なし(今、思いついた法則)。僕も夏までに防弾腹筋を作り上げねば…。
三角絞めでつかまえて-ナイス腹筋!

こういうバイクスタントショーを観ると、デンジマンのOPを思い出す中年男性は僕だけじゃないハズ。
三角絞めでつかまえて-バイクスタントショー

スタント後、ファンの子どもにサインをしていたら、1年前、行きずりに抱いた女ロミーナと再会→彼女が自分の子どもを密かに産んでいたことを知りまして。ずっと孤独に生きてきたっぽいルークは「オレが2人を養うんだYO!ヽ(`Д´)ノ」と一念発起。「オレが父親だと子どもに伝えてほしい」という一心で、せっせと銀行強盗をして金を稼ぐんです。この志はね、「孫文の義士団」のドニー・イェン兄貴が演じたクズな父親に通じるところもあって、スゲー泣けました。

子どもがいたと知らされて、親心ビッグバン( (C)古川耕)が発動するルーク。その気持ち、わかる~ (´∀`) ワカルー
三角絞めでつかまえて-自分に子どもがいた!

町に腰を落ち着けて、ロビン(ベン・メンデルソーン )の修理工場で働き始めると、銀行強盗に誘われまして。
三角絞めでつかまえて-ロビン(ベン・メンデルソーン )

その手口は「金を奪う→バイクで逃走→トラックの中に隠れる (゚Д゚) ウマー」という手口。2、3回で止めておけば良かったのにね…。
三角絞めでつかまえて-バイクをトラックに収納

特に、3人でお出掛けして、赤子にアイスを食べさせて、「アイスを食べるたび、オレのことを思い出してくれれば…」とか言う場面は号泣メーン!ヽ(TДT)ノ 早速、自分の1歳10ヵ月の娘にも実践して「僕がいなくなっても、彼女がアイスを食べるたびに…」気分を堪能しようと思ったんですけど、奧さんから「アイスはまだ早い!ヽ川`Д´)ノ クソガ!」と止められて断念するほどでしたよ(なんだこれ)。記念撮影の時、ロミーナが泣くのも印象的で(現状では、ルークと上手くいかないのがわかってたから)、本当にね、「もう銀行強盗から足を洗って、真っ当に働いてほしい」「このまま仲良し親子3人のコメディ映画になって、ハッピーエンドで終わってほしい」と切に願いながら観ていたんですが…。

このシーンはいろいろな意味で凶悪なのです。
三角絞めでつかまえて-幸せの絶頂

ロミーナにはすでに恋人コフィ(マハーシャラ・アリ)がいて、一緒に住んでいましてね。で、ルークったら空気の読めない迷惑な行動をとった挙げ句、コフィを理不尽に殴り倒しちゃうから、人生の坂道をライク・ア・ローリングストーン。「ロミーナにすっかり嫌われる→ああん、もっとお金を渡さなきゃ!ヽ(´Д`;)ノ」と焦って、ロビンが止めるのも聞かずに銀行を襲おうとしたら、サングラスを忘れる(目元に特長的な刺青があるので致命的)→警戒した銀行が透明な衝立を設置してて金回収に手間取る→バイクのエンジンがなかなか掛からない→バイクの後輪がパンクするといった不運すぎるコンビネーションを食らって、結果、民家に籠城するハメに。

同じ手口をやりすぎて、衝立が設置されちゃったという残念な展開。みんな、犯罪する時は気をつけて!(アウトな呼びかけ)
三角絞めでつかまえて-衝立が付きました

そこからロミーナに電話するんですけどね、それが「オレが父親だって伝えるな!(;`Δ´) ダメゼッタイ!」という、切ないにも程がある内容だから、泣きすぎて目がもげた!ヽ(TДT)ノ オオゲサ で、単身で突入してきたエイヴリーに射殺されてしまうというね…。この遺体描写がまた実に無惨に演出されていて、ここまでは100点の映画だと思いましたよ。

つーか、ライアン・ゴズリングはスゴいですな。同監督と組んだ「ブルーバレンタイン」のボンヤリ中年役を観た時は、「この男なら10秒で絶命できる!」と侮ったものでしたが、全然同じ人に見えないというか。見た目がカッコ良いのはもちろんのこと、肉体の存在感もあって…。「銀行強盗をして、バイクで車を抜きまくって逃走する」というワンカット長回しとか、よくやったなぁと感心しましたね。彼のシーンだけでも1800円の価値はあると思いました(って、僕はサービスデーを利用して1000円で観ましたがー)。

まったく関係ありませんが、一人称が「わたし」になっている範馬勇次郎の画像を貼っておきますね。
三角絞めでつかまえて-10秒で絶命できる!



<「新米警官エイヴリー、ヒーローになる」の巻>

新米警官エイヴリー。ブラッドリー・クーパーの見た目が老けてて、あまり新人っぽくないのは、少しマイナス。
三角絞めでつかまえて-エイブリー

ルークが死ぬと、主人公は射殺したエイヴリーにバトンタッチ。簡単にストーリーを書くと、「強盗犯ルークを射殺したエイヴリーは、一躍ヒーローになる→でも、実はルークが銃を向ける前に撃ってしまっていて、同じ1歳の息子がいたルークに対して負い目を感じている→そんな折、悪徳刑事デルカ(レイ・リオッタ)に不本意ながら“弱み”を作ってしまい、悪の一味にさせられそうに→地方検事を脅して検事補の地位をゲットし、悪徳警官どもを一網打尽!」って感じでした。

正直、ルークのパートほどグッと来るところはなかったんですが、デルカ一味と対決するくだりは面白くて。「ロミーナの家を違法に家宅捜索して現金をゲットし、それをエイヴリーにあげる→恩を売る=弱みを握ることで、いつか利用する目論見だった」ってのはなかなか怖かったし、それを意外と上手く処理する腹黒なエイヴリーも良かったし…。デルカを演じたレイ・リオッタも悪徳刑事が似合ってて素敵でしたね~。

レイ・リオッタは本当に“悪”が似合う役者さんですな。
三角絞めでつかまえて-悪徳刑事デルカ(レイ・リオッタ)



<「15年後、2人の息子が出会うナリ」の巻>

左がエイヴリーの息子のAJで、右がルークの息子のジェイソンでございます。
三角絞めでつかまえて-AJとジェイソン

そして話は一気に15年後に飛びまして。超簡単にあらすじを書いておくと、エイヴリーの息子のAJがスケネクタディの学校に転校したら、そこでルークの息子のジェイソンと知り合いまして。若干、意気投合するんです…がしかし! ジェイソンが、父親のことを調べた&AJの家に行ったら、自分の父親をAJの父親が射殺したことを知ってしまったから、さぁ、大変。ジェイソンは銃を購入して、AJを襲撃し、さらにエイヴリーを松林の中で射殺しようとしたものの、彼が心から謝罪するので許しまして。最後は、エイブリーは見事司法長官選挙に当選し、ジェイソンはエイヴリーから奪った金でバイクを購入→旅立って、終わってました。

エイヴリーを射殺しようとするも、断念するジェイソンなのでした~(「きょうのわんこ」の口調で)。
三角絞めでつかまえて-射殺しようとするジェイソン

このパートの何がグッとくるって、ジェイソンですよ。観客的には、幼いころから知っているだけに、「こんなに大きくなって… (ノД`)」と成長した彼を観るだけで涙腺が緩んじゃう。アイスを食べてるシーンとか、「ルークが食べさせてあげてたっけ…」と涙が止まらなくてね…(しみじみ)。あと、薬局からドラッグを盗むシーン、バイクと自転車という違いはあれど、逃げる手口がルークと一緒で、「血は争えないのね… (ノ∀T)」と泣き笑い状態に。ロビンに父親の話を聞きに行くのも良かったなぁ(ベン・メンデルソーン、良い演技!)。

最後、バイクで旅立つシーンもね、「運転できるのか?」と聞かれて、無言で乗りこなして去っていく姿は爽快であって(“血”で運転してる感があってイイ)。「父親をスケネクタディに留まらせた息子が、父親によってスケネクタディから去って行く」という、“ルークとジェイソンの物語”として考えると最高の終わり方じゃないでしょうか。

ジェイソン役のデイン・デハーン、繊細な演技が素晴らしかったです。
三角絞めでつかまえて-ジェイソン(デイン・デハーン)

ただ、3部構成が終わってみると、微妙に納得が行かないところもあって。エイヴリーなんですけど、「ルークを射殺してしまったことを悔いていた→彼の写真が財布に入ってた」のはスゲー良くて。その息子のジェイソンに自分の謝罪が受け入れられたことで、やっと父親としてAJとも向き合える…ってことになると思ったんですけど、なんか「選挙に当選!ヘ(゚∀゚*)ノ ヤッター!」的な感じで終わっちゃったから、なんて言うんですかね、エイヴリーとAJの物語としては消化不良だったというか。今後、AJが三田佳子さんの二男みたいにならないか、心配ですな… (´・ω・`) ウーン

エイヴリーの財布からこの写真が出て来た時は、テッポウウオの水鉄砲のように涙が噴出しましたよ(行きすぎた表現)。
三角絞めでつかまえて-財布に写真が!

ただ、AJとの親子関係は、ほったらかしのまま終わっちゃったような…?
三角絞めでつかまえて-ボンヤリしてるAJ

それと、これは好みの問題だし、根本的な話になっちゃいますけど、僕は「育ての親より血が繋がった親」的なオチって好きじゃなくて。ジェイソンの“育ての親”のコフィったら、超イイ奴じゃないですか。実の父親話になった時、ダースベイダーを引用して2人で笑うシーンとか観ちゃうと、十分素敵なお父さんなワケですよ。だから、この映画の終わり方には、グッと来つつも納得しきれないというか。もしジェイソンと会ったら、「君をここまで立派に育ててくれたのはコフィじゃないか (`・ω・´) キリッ」と話したい心境…って、面倒臭い文章ですな ┐(´ー`)┌ ヤレヤレ



てなワケで、好きなところは多いんですけど、微妙に乗れないところもある感じでしたよ。ただ、ルークとジェイソンの物語という点では、今、思い出しても涙が出てくるし、何よりもライアン・ゴズリング&バイクのカッコ良さがハンパではないので、興味がある人は観ても良いんじゃないかしらん。

宇多丸師匠の非常にタメになる時評がアップされているので、ぜひ聴いて!




デレク・シアンフランス監督作。名作だけど、キツイからもう一生観ないと思う。



サントラも貼っておきますね。