ポエトリー アグネスの詩(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

ポエトリー アグネスの詩(ネタバレ)

ポエトリー アグネスの詩

三角絞めでつかまえて-ポエトリー アグネスの詩

原題:Poetry
2010/韓国 上映時間139分
監督:イ・チャンドン
製作:イ・ジュンドン
撮影:キム・ヒョンソク
編集:キム・ヒョン
出演:ユン・ジョンヒ、イ・デビット、アン・ネサン、キム・ヒラ、パク・ミョンシン
(あらすじ)
釜山で働く娘に代わり中学生の孫息子ジョンウク( イ・デビッド)を育てる66歳のミジャ(ユン・ジョンヒ)は、ふとしたきっかけで詩作教室に通い始めるが、その矢先に自分がアルツハイマー型認知症であることが発覚する。さらに、少し前に起こった女子中学生アグネスの自殺事件にジョンウクがかかわっていたことを知り、ショックを受けたミジャは、アグネスの足跡をたどっていくが……。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




100点


※今回の記事は、かなり独りよがりな感想であり、点数だけ信用して映画館に行くのは危険かもしれないので、気をつけて!

本来なら土日はブログを休む予定なんですけど、僕的には100点の映画だったので、急遽前倒しで更新しておきますね。銀座テアトルシネマで観てきたんですけど、素晴らしかったです。


劇場入口には大きな看板がありまして。
三角絞めでつかまえて-看板

中には記事の切り抜きがありました。
三角絞めでつかまえて-記事の切り抜き


最近やっとDVDが発売された「ルイーサ」のような“善良だけど不遇なおばちゃんが頑張る映画”にスゲー弱いという僕の性質も十分作用していると思うんですが、本当に素晴らしくて…(しみじみ)。この映画の主人公のミジャは初老の女性。善良だけど、基本的には波風を立てないように、事なかれ主義で生きてきた夢見がちな人なんですね。だから、孫がクラスメイトの女子のアグネスに性的暴行をして自殺に追い込んだグループの一員だということが発覚しても、うまく問題に向き合えない。「娘とは友達のような関係なの!川´∀`)」なんて言いつつも、預かっている息子が問題を起こして500万ウォン(約35万円程度)の示談金が必要なことすら相談できない(そうなると、息子を預けられた経緯すら疑問が湧いてくる)。


孫はクズだから死ねばいいけど、やっぱりちゃんと教育してないミジャと母親の責任が大きいと思うのです。
三角絞めでつかまえて-バカな孫とミジャ


なんとなく通い始めた詩作教室で、映画中盤、いろいろな人が“人生で一番美しかった瞬間”を語る中、ミジャは「小さいころ、『ミジャ、こっちにおいで』と言われるのが好きだった… 川ノДT)」と泣きながら話しまして…(ここは失明するかと思うくらい泣いた)。それまでのミジャは「ちょっと綺麗な服を着て出かけて『あら、オシャレですね 川´∀`)』って褒められるだけで満足」という“ささやかな事なかれ人生”を送ってたのに、アルツハイマーは発症するわ、孫が非道い事件に関わってるわと、ホトホト疲れ果ててしまったワケですよ。


詩作教室に通うミジャ。周囲の空気を読まずに質問する姿とか、超萌える!(そして、答える先生も優しい…)
三角絞めでつかまえて-詩作教室に通うミジャ


でもね、ミジャは詩を書こうとすることで、川に身投げして死んだ少女の心に自分を重ねていくんです。というのは、詩を書くというのは現実を直視することだから。暴行の現場に行ったり、飛び降りた橋に行くだけでなく、ミジャは男子たちに乱暴されたアグネスに寄り添うために、体が不自由な金持ち老人(キム・ヒラ)に抱かれたりもするんですね(って、拡大解釈かもしれませんが、僕はその後で500万ウォンをせしめたのは結果論だと思う)。


詩の先生に「リンゴを見ろ!」と言われて、しげしげと眺めた後、食べるミジャ。ミジャかわいいよミジャ… (´Д`;) ハァハァ
三角絞めでつかまえて-リンゴを分析するミジャ

暴行現場を覗きに来たミジャは、なんとなく市原悦子さんチック。
三角絞めでつかまえて-現場を覗くミジャ


そして、最終的には、示談金を払うだけじゃなく、孫を警察に告発して事件に向き合わせるとともに(ここ、スゲー大事)、たぶん自らも命を絶って責任を取ることを決心したからこそ、自殺した少女の詩、「アグネスの詩」が書けたというね…。最後、アグネスの笑顔、そして川が映し出されて終わるワケですけど、実に静かで美しい終わり方だと感動して、ワンワン泣きました。

イ・チャンドン監督は韓国で実際にあった女子中学生集団レイプ事件から着想を得たそうですが、派手だったり、扇情的だったりするシーンはなくて。全体的には淡々としてるんですけど、僕がミジャにほとばしるほど感情移入してたせいなのか、「ああん、孫の教育がなってないのは自業自得だけど、こんな苦境に立たされて可哀相… (ノДT)」「んもう、500万ウォンくらい、誰か貸してやれよ!ヽ(TДT)ノ」と全編泣きっぱなし。ミジャが泣きながらシャワーを浴びるシーンなんか、泣きすぎて死にかけたほどだったり(大げさ)。


あまり関係ありませんが、「大事な話をしに来たのに、ついカラオケで逃避するミジャ」を貼っておきますね。
三角絞めでつかまえて-カラオケで逃避するミジャ


僕が一番好きだったのが、アグネスのお母さん(パク・ミョンシン。コクがあって最高!)のところにミジャが示談の話をしに行くんだけど、つい楽しく雑談してしまって、立ち去る時に本来の目的を思い出して超ゲンナリする場面。「あ、アホすぎる… (゚д゚;)」と愉快に見えつつも、アルツハイマーが進行していることを示すという残酷さもあり、さらに「記憶がなくなる→代わりに詩を遺す」というミジャの気持ちが強くなったという示唆もあって、本当にスゴいシーンだなぁと。基本的に、登場人物が具体的にその心情を説明するような台詞とかも一切ないんですけど、しっかり考えられた演出&役者さんたちの見事な演技で映画自体は不思議と分かりやすくて、イ・チャンドン監督は大したモンだと思いましたよ(突然、上から目線)。


例えば、警察に告発する直接的なシーンはないけど、泣くミジャに刑事が寄り添ったりしてるから、結構分かりやすい感じ。
三角絞めでつかまえて-刑事の隣で泣くミジャ


ってことで、なんかダラッと書いちゃいましたけどね、本当に素晴らしい映画でしたよ。今、思い出すだけでも涙が出てきちゃう感じ… (ノω・、) 「詩を書く=心を遺す」ということをね、あらためて考えさせられました。唯一の不満は邦題で、「アグネスの詩」というミジャの詩のタイトルを知らない方が、より感動できたと思いました(些末な点ですが)。まぁ、正直、僕はミジャに超萌えてしまったところがあるから、もしかしたら他の人はここまでグッと来ないかもしれませんが、イ・チャンドン監督の作品が好きな人なら絶対観た方が良いですぞ。




イ・チャンドン監督作。宗教について誠実に向き合った映画だと思うのです。



イ・チャンドン監督が製作した、本当に良い映画! 僕の感想はこんな感じ



ゴンサロ・カルサーダ監督作。大好きな映画であり、DVDも買いました。僕の感想はこんな感じ



“詩”繋がりで思い出した一冊。こちらのレビューが素晴らしいので要チェック!











※心底どうでも良い追記

非常に面倒くさい文章になるので、こうやって下の方に書いておきますが…。僕はこの映画を観て、「ミジャは僕だ!ヽ(TДT)ノ」と思ったんです。さっきも書きましたが、ミジャは「ちょっと綺麗な服を着て出かけて『あら、オシャレですね 川´∀`)』って褒められるだけで満足な人」であり、その他のことは事なかれ主義で生きてきたワケですけど…。人間、大なり小なり、そうやって生きたかったりするじゃないですか。布団の中でダンゴムシのように丸まって、すべてに耳を塞いでやり過ごしたくなるじゃないですか。僕だって、取引先の顔色なんて伺いたくないし、部下を怒りたくなんかないし、クレーム処理だってすっぽかしたい! このブログだけ書いて「あら、面白い感想でしたね 川´∀`)」なんて褒められるだけで生きていきたいんですYO!ヽ(TДT)ノ(なんだこれ) 

でもね、ミジャは、詩を書くということは決心することだから、ちゃんと現実に向き合ったワケですよ…(まぁ、フィクションの中の人物ですが)。だからね、僕も向き合おうと。今、全然仕事とかしたくないんだけど、ミジャに負けないよう、頑張って働こうと。そして、詩を書こうと思ったんです。

僕は「詩を書く」という行為にずっと憧れてた…というのは、どうしても書けないから。いや、「翼を広げて~」とか適当なフレーズを組み合わせて書くとか、そういうことじゃなくて。例えば、昨年に読んで感動した「砂に咲く花」“少女たちの素朴な心の詩”のように、自分の想いをスムースに美しい言葉で遺したい。中学生のころからトライしてるんですけど、自意識が邪魔して書けないというか、なんか構えちゃって何も書けなくて、「書けませんでしたら~ん♪ ヘ(゚∀゚*)ノ ホエホエ!」とお茶を濁して生きてきたワケですよ。

だがしかし! 僕もちゃんと向き合って、詩を書いてみようと。まぁ、前からメモ帳(タマフルMDノート)は持ち歩いていて、思いついたことや映画の簡単な感想を書いたりしてたんですが、ミジャのように「いろいろな場所やモノを見て、それについて書いてみよう」と。ということで、夜の銀座の街を眺めながらメモ帳を開いたんですが…。


このミジャのように“見て感じたこと”を書き残そうと思ったら…。
三角絞めでつかまえて-メモをするミジャ

お…「女の子少年」だと!? Σ(゚д゚;)
三角絞めでつかまえて-女の子少年


ページを開いたら、「女の子少年」という単語が書かれてまして。「ALWAYS 三丁目の夕日'64」の終盤、確か茶川先生が出版社に行った時、後ろにあったポスターに書かれてた雑誌か書籍の名前なんですよ。基本的に映画を観る時はメモを書かないんですけど、その時の僕はよっぽど気になったのか、この単語だけ書き残してたというね…。すっかり忘れてただけに、なんかショックというか、自分に残念というか。よく分からないけど「ポエトリー アグネスの詩」の感動がちょっと冷めちゃいました… ('A`)オシマイ