さて、本日ご紹介するのは、塩田武士先生の「騙し絵の牙」です。
カルチャー誌「トリニティー」の編集長である速水は、出版不況の煽りを受け、廃刊寸前に追い込まれている雑誌を立て直す為に奔走する。
大物作家の連載、映像化、タイアップなど、類稀なコミュニケーション能力を活かし、あらゆる策を講じるのだが、努力も虚しく成果が振るわないーー。
やがて速水は、ある決断を下すのだが……。
塩田武士先生といえば、徹底した取材を元にした、リアルな描写に定評があります。
以前にブログでも紹介しましたが、「罪の声」も、警察顔負けの取材力で、圧倒的なリアリティーを生み出していました。
本作でも、その取材力が活かされています。
作品で描かれる出版社の現状は、物語の為に創作されたものではなく、今まさにそこで起きていることなのです。
と、こういう書き方をすると、お仕事小説かーーと思った方も多いでしょう。
確かに、お仕事小説の側面はあります。
私自身、途中までは「頑張れ速水!」と応援しながら読んでいました。
きっと、ラストは爽快さを伴う感動に包まれるに違いないーーと。
しかしーー。
本作は、読者のそうした期待を、いい意味で裏切るのです。
予想を超える展開に、しばし呆然としてしまいました。
しかし、ヒントは実に身近なところにあったのです。
タイトルは「騙し絵の牙」なのですよ。
このタイトルを使っていて、爽快なお仕事小説なわけがない!!
いやはや騙されました……。
「罪の声」もそうですが、塩田武士先生は、タイトルのセンスが素晴らしい!!
そして、カバーを見て頂ければ分かると思いますが、本作の主人公の速水は、大泉洋さんをモデルに書かれたものだそうです。
小説で実在する俳優を当て書きするまでは、これまでもあったと思いますが、実際にその俳優さんがカバーを飾るなんて前代未聞です。
実に面白いアイデアですね!!
そして、来年には本作は映画公開されます。
もちろん、主演は大泉洋さんです。
ここで、違うキャスティングをしてら、逆に凄いですよね(笑)
当て書きされた作品の映像化を、どう演じるのか??
みちゃくちゃ興味深いですね。
というわけで、興味のある方は是非!!