鉄道員(ぽっぽや) | 本との出会いは、師との出会い。

本との出会いは、師との出会い。

智慧は、先生から指導されて身につけるものではなく、自ら学ぶものです。ですから、先生が本であっても、生徒の意欲が高ければ、学習の成果が期待できます。書店には、素晴らしい先生方が、時代を超えて、いつでも待っています。

鉄道員(ぽっぽや) (集英社文庫)/集英社
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 この物語を自分のことのように味わえるのは、昭和20~30年代に生まれ、経済成長の中で、両親が、そして自分自身が、揉みくちゃにされながら生きて来た人たちではないだろうか?

 楽ではなかったが、希望があり、勇気を持って生きられる時代だった。そして今、その頃に比べれば、着るものにも、食べるものにも、寝る場所にも、何も不自由がなく暮らせる時代になった。しかし私たちは、何かが足らないと走り回っているような気がする。あの頃を振り返り、自分に与えられた人生を全うすることの素晴らしさを噛み締められるようになりたいものだ。

 浅田さんの作品は4作目だが、いつも思うことは、大人のための小説だ!ということ、昭和20~30年代生まれの人なら、登場人物の生きざまと自分の経験が重なる部分が多いはずだ?誰もが懸命に生きていて、自分の人生と人の人生を比べて羨んだり、卑屈になったりする暇すらなかった時代だったような気がする。現代に生きる日本人は、幸福感が少ないと言われているようだが、それは、物質的に豊かになって、失ったものが多いからかもしれない。

 良い短編を読むと「この長さだから、この纏まりであり、ここで終わるから余韻が味わえ、読者それぞれが登場人物の行く末を想像することを楽しめる。」ということは解っているのだが「長編で読みたかった。登場人物のその後を知りたい。」と思ってしまう。私は、生きる勇気と希望は「自分が愛している人たちの行く末を見届けたい。」という気持ちから湧いてくると思っているのだが、これは、登場人物の行く末を見届けたいと思う作品であった。

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