2016年1月の読書メーター | 本との出会いは、師との出会い。

本との出会いは、師との出会い。

智慧は、先生から指導されて身につけるものではなく、自ら学ぶものです。ですから、先生が本であっても、生徒の意欲が高ければ、学習の成果が期待できます。書店には、素晴らしい先生方が、時代を超えて、いつでも待っています。

2016年1月の読書メーター
読んだ本の数:9冊
読んだページ数:3011ページ
ナイス数:1843ナイス

地下鉄に乗って (講談社文庫)地下鉄に乗って (講談社文庫)感想
物語をじっくり味わいたいという気持ちと、早く結末を知りたいという衝動を、常に闘わせながら読まなければならなかった。優れた作品は、読んで楽しいだけではなく、読者に人生を問いかけてきたり、示唆を与えてくれたりするところがある。この『地下鉄に乗って』は、まるで「あなたにとって人生とは、家族とは何ですか」と訊いてきているようだった。主人公である真次の人生は波乱に満ちており、多くの読者の人生とは隔たりがあると思うが、読了後は、自分の過ぎ去った人生と父、母、妻との関係とをメトロに乗って確かめに行きたくなることだろう。
読了日:1月29日 著者:浅田次郎
魔球 (講談社文庫)魔球 (講談社文庫)感想
’88年に刊行された『魔球』は、’85年に『放課後』で江戸川乱歩賞を受賞してデビューした東野圭吾さんが30歳の時の作品である。私が読んだ中では、’86年に刊行された『卒業(加賀恭一郎シリーズ)』に次いで古い作品である『魔球』には、近年の作品のように序盤から読者を物語の中に引きずり込んでいくような力強さはなく、まるでスタンドから観戦しているような疎外感を感じさせる。しかし、後半になると並行する二つの筋の中で、素性があいまいだった登場人物たちの関係が徐々に紐解かれ、紛れもない東野作品であることが判明するのだ。
読了日:1月26日 著者:東野圭吾
ソロモンの犬 (文春文庫)ソロモンの犬 (文春文庫)感想
解説によると青春の謳歌だそうです。そう言えば、確かに!大学生にしては、ウブな主人公と大学生らしく雑な感じの仲間との絡みが若々しい。一方、各章の最後にインサートされる喫茶店のシーンは重く戸惑う。比較的早い段階で物語が動き、甘口の話ではない事が告げられらる。更に不穏な展開が待っていて、驚かされた。トリックがチープな所は、全体的を明るくするための光になっていた。機会があったら他の作品を読んでみたい。
読了日:1月22日 著者:道尾秀介
ビブリア古書堂の事件手帖 (6) ~栞子さんと巡るさだめ~ (メディアワークス文庫)ビブリア古書堂の事件手帖 (6) ~栞子さんと巡るさだめ~ (メディアワークス文庫)感想
5巻までは面白かったので6巻も手に取ったのだが、文学と呼べる作品には縁がなく、太宰の作品も読んだことが無い私にとっては、相性の良くない作品だった。終盤、五浦君が犯人に追いつめられるシーンまでは、既に他界した人物たちが残した謎の解読に終始するのだが、稀覯本を奪い合う人物たちに感情移入することができず退屈だった。やはり、万人受けするミステリーは、読者が今そこで起こっていることをリアリティを感じながら体験できる物語であり、登場人物が自らの欲望と正義感の間で葛藤する姿に入り込んでいけるドラマなのではないかと思う。
読了日:1月20日 著者:三上延
祈りの幕が下りる時祈りの幕が下りる時感想
私は、加賀恭一郎シリーズの続編というよりも、東野圭吾さんご自身の「容疑者Xの献身」や「白夜行~幻夜」、宮部みゆきさんの「火車」のように暗く、救いのない話だと感じた。良く練られた構成でミスリードを誘いながらも、ぐいぐい読ませるところはさすがだが、無理やりつじつまをあわせるところが無いわけではない。教養が乏しく人生を転落して行く者、それに巻き込まれて選択肢を失う者。人生とは、かくも過酷なものなのか?次の作品にには、もう少し希望の光が見える、勇気が湧いてく物語を期待したいと思うのは、私だけではないだろう。
読了日:1月15日 著者:東野圭吾
(001)○に近い△を生きる 「正論」や「正解」にだまされるな (ポプラ新書)(001)○に近い△を生きる 「正論」や「正解」にだまされるな (ポプラ新書)感想
時間があると東日本大震災をの被災地に通う生活を続ける中、ポプラ社の坂井社長に説得されて書き下ろされた本書には、人気ノンフィクション作家である石井光太さんとの対談が収録されているのだが、その中には活字にも関わらず、目を覆いたくなるような世界の惨状も描かれている。しかし、そこで生きる人たちの中には決して諦めることなく、想像を絶するような方法で脱出を図る少女もいる。報道を観ているだけでは決して知ることのできない絶望的な現実をあえて書くことによって、私たちに〇でも×でも得られない△という別解があることを説く。
読了日:1月11日 著者:鎌田實
夢をかなえるゾウ2 文庫版 ~ガネーシャと貧乏神~夢をかなえるゾウ2 文庫版 ~ガネーシャと貧乏神~感想
この物語の主役は、会社を辞め芸人を目指す西野勤である。前作同様、ガネーシャが登場する辺りからハチャメチャな展開で、真面目に筋を追う気持ちになれず、勤が貧乏神:金無幸子と同棲?を始めたという部分を見落としたまま、終盤まで読み進めてしまった…この本は自己啓発書や成功哲学などを、自ら進んでは絶対に読まない人向けに書かれたものなのかもしれないが、実は私のような自己啓発書マニアに読まれているのではないだろうか?何冊読んでも成功できないマニアたちは、成功哲学の源流を再確認するために、ガネーシャにすがるのである(^^;
読了日:1月10日 著者:水野敬也
下町ロケット2 ガウディ計画下町ロケット2 ガウディ計画感想
医学・経編・知財について、専門家からアドバイスを受けるだけではなくスピリットを学んで執筆されたという物語は、先進医療が抱える問題についてリアリティのある舞台が設けられ、行政の仕組みを利用して私欲を追及する者と、制約に行く手を遮られながらも、あるべき姿を追及する人々との緊張感のある闘いが繰り広げられる。池井戸潤さんは、池上彰さんとの対談で「目標は面白いものを書くだけ」と言っているが、社会的な問題に立ち向かい、そこで奮闘する人を描いた物語は、もはや単なるエンターテイメントとは言えないレベルに仕上がっている。
読了日:1月9日 著者:池井戸潤
詩的私的ジャック (講談社ノベルス)詩的私的ジャック (講談社ノベルス)感想
すべてがFになる、冷たい密室と博士たち、笑わない数学者、誌的私的ジャックと読み進めてきましたが、約20年前に発行された作品であることを差し引いても、説明的でスケールが小さく、次第に平凡になっていくように感じるのは私だけでしょうか?何となく読者の期待に合わせて間口を広げ敷居を下げた結果として、奥の深さが感じられる所が、登場人物が時折つぶやく哲学的な問いだけになってしまっている所が、森博嗣さんらしくないと思います。そういう意味では満足したとは言えませんが、それでも続編を読みたいと思わせるところは流石ですね。
読了日:1月4日 著者:森博嗣

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