映画 「ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋」 平成24年11月3日公開 ★★★☆☆



読んで♪観て♪

1998年、ウォリー(アビー・コーニッシュ)は著名な分析医の夫(リチャード・コイル)と結婚し、

ニューヨークで何不自由ない生活を送っていた。

だが、多忙な夫はなかなか家に寄り付かず、子どもを欲しがる彼女との溝は深まるばかりだった。

ある日、ウォリーは以前務めていた職場で開かれる

ウィンザー公爵夫妻の遺品オークションに足を運ぶ。 (シネマ・トゥデイ)



それにしても、

シンプソン夫人のファーストネームがウォリスだったとは知りませんでした。

思わず

読んで♪観て♪  ← 「ウォレスとグルミット」

とか


読んで♪観て♪  ←「ウォーリー」


を連想してしまって、困ったもんだ・・・・


まあそれはともかく、

エドワード8世に王位を捨てさせた女性ウォリス。

そして彼女にあこがれる祖母と母から

同じ名前をつけられた現代に生きる女性ウォリー。

1930年代と1990年代をリンクさせながら

二つのドラマが進みます。


「英国王のスピーチ 」は、王位を放棄しちゃった兄のおかげで

国王にならざるを得なかった弟のジョージ六世が吃音を克服するドラマでしたが、

ガイ・ピアースが演じた兄の役もちらっと登場していました。

「王冠をかけた恋」の兄ではなく弟夫婦にスポットをあてたことで

この作品は昨年のオスカーを主要賞を独占しましたが、

本作はエドワード8世ではなく、悪女として非難を浴びたアメリカ人の人妻の立場から

描いたということが、画期的ってわけでしょうか?


ただ、30年代のパートは、史実として伝えられてることから部外者でも想像できる範囲で、

「秘話」的なものはあんまりなかったような。

ナチスとの関係をとりざたされたり、弟の嫁に断固拒否されてたこととか、有名ですよね。


劇中、「テルマ」という名前が何度もでてきたのですが、

これはエドワードの第一の交際相手を自称する若い美人なんですが、

なんと彼女も人妻だから、当然「お妃候補」とはなりえないわけで、

王位継承者がこんな交友関係でいいものなのか、ちょっと驚きました。


ウォリスはテルマのかげに隠れて、王子とは親しいながらも

それほど目立っていなかったのですが、

美人じゃないけれどセンスと着こなしの良さ、細かい心遣いなどで

次第にエドワードの意中の人となってくわけです。


ごくごく親しい人だけがエドワードのことを「デイヴィッド」という洗礼名で呼ぶんですが、

身内以外で呼んでいいのは自分だけ、と思っていたテルマのまえで、

ある日、うっかりウォリスがそう呼んでしまったときのテルマの反応とか

そういうちっちゃいやりとりは結構面白かったんですが、

胸にささるような大きな感動は残念ながら無し。


ただ、ウォリスを演じたアンドレア・ライズブローという女優さんはイメージぴったりで

30年代の豪華なセットは見ごたえありました。

音楽やダンス、奇抜なファッションも。


もう一つの、現代パートのウォーリーですが、

彼女は高名な精神分析医と結婚したセレブな若奥様。

ザザビーズの職員(?)をやめて家にいるのに、なかなか子宝に恵まれず、

不妊を悩んでいる28歳の女性です。


異なった時代に生きる、名前の似た二人の女性が時空を超えてリンクする・・・

というと「ジュリー&ジュリア 」を思い出しましたが、

ここでも、行き詰ったウォリーを見守るウォリスの姿があったり、

パーチャルなシーンもあったりしましたけど、それほど新鮮味はありません。


排卵誘発剤のアンプルを打ちまくって、妊娠を望んでいるのに

夫は仕事中毒で、怪しい外泊にも不信感。

セクシーな下着にも無頓着で、もう子どもはいらないと。


現代パートのウォリーの苦悩はわからないでもないけれど、

設定がセレブ夫婦ですからね。

専業主婦のイメージゼロの生活感のなさが、まったく共感につながらず、

納得いかない設定でした。

監督がマドンナだったら仕方ないか・・・・・


彼女はあこがれのウォリスとエドワードの遺品の展覧会に毎日通い、

閉館時間まで粘っているうちに、警備員のエフゲニーと知り合い、

彼のストーカーまがいの強烈プッシュで、しまいに愛し合うようになって、

もうひとつの「W&E」(ウォーリー&エフゲニー)が完成。


まさか、これが「オチ」とは思いたくないけれど、

結局最後まで、(現代パートは)

愛を扱っていながら、うっとりしたりズタズタになったりも

こちら側には伝わって来ず、かなり萎えてしまったです。


黒い下着にこだわっていたのはなんの意味だったのか?

(現代だったらともかく、ウォリスの最初の結婚の1920年くらいに

普通の女性がこんな下着つけますかね?)

ウォリーがもし(博物館の)学芸員だったら、

興味をもった対象にはもうちょっと学術的なアプローチをしてほしいし、

オークションの関係者だったら、骨董品の扱いにはもっと注意を払ってほしい。

ラストで、ウォリスの残した手紙(本物)を特別に読ませてもらうシーンがあるんですが、

そんな貴重なものをあかあかと燃える暖炉のそばに置くか?って

気になってしかたありませんでした。


そして、一番気になったのが、それらの手紙の所有者「アルファイド氏」

彼って、もしかして、故ダイアナの交際相手の人じゃないかと。

これに関しては説明なしでしたけど。


夫がいながら王位継承者に愛されてしまったウォリスの苦悩と

子作りに積極的じゃない夫に不満のウォリーのストレスは

私の中ではリンクしなかったけれど、

むしろウィリスの肩越しにずっと見え隠れしていた人物、

それは「カミラ夫人」です。

彼女もまた人妻でありながら、王位継承者に愛され、

ブスで年増だから、国民からバッシングされがちですけど、

きっと懐の大きい大人の女性なんだろうなぁ~


生前から「アンチダイアナ妃」の私としましては、

この映画はカミラ夫人(正確にはウェールズ大公妃だそうです)に

ささげてほしいと。

そうであれば、観てよかった映画かもしれません。



「隙をみせたら、負けて傷つくわ」


「愛の定義はすべてを捨てること」


「過去を振りかえらず、新しい人生を抱きしめるの」



印象的だったウォリスのことば、

カミラ夫人のことばとして胸に刻んでおきます。