映画 「英国王のスピーチ」 平成23年2月26日公開  ★★★★★



読んで♪観て♪


幼いころから、ずっと吃音(きつおん)に悩んできたジョージ6世(コリン・ファース)。

そのため内気な性格だったが、厳格な英国王ジョージ5世(マイケル・ガンボン)は

そんな息子を許さず、さまざまな式典でスピーチを命じる。

ジョージの妻エリザベス(ヘレナ・ボナム=カーター)は、

スピーチ矯正の専門家ライオネル(ジェフリー・ラッシュ)のもとへ夫を連れていくが……。

                                      (シネマ・トゥデイ)


きょう、2月27日(日本時間28日)はアカデミー賞最優秀賞発表の日。

ぜひともその前に観ておきたくて、ぎりぎり間に合いました~


英国王ジョージ六世と

吃音矯正士のライオネル・ローグの「歴史秘話」と聞けば

2年くらい前の「わが教え子、ヒトラー 」みたいなの?

と思ってしまいますが、

私でも知ってるような英国王室の面々がたくさん登場し、

事実に基づいたシンパシーあふれたエピソード満載で、

これで面白くないわけがない!

とにかく、「このネタ使ったら反則でしょ!」

って思っちゃいました。


ジョージ六世といえば、現女王、エリザベス二世の父君で

王妃は2002年に101歳で亡くなったエリザベス皇太后。

名君といわれたジョージ五世の次男でヨーク公アルバート王子だったのが

兄のエドワード八世がウォリス・シンプソン夫人と結婚するために

王位を退いてしまったため、急に国王になってしまった人物です。


この兄のエピソード、

「王冠を賭けた恋」と美化してドラマになることはあっても、

「人妻好きなナンパな兄貴」として扱っちゃうのにはビックリ!!

まあ、当事者は全員亡くなってはいるものの、

現に今も「人妻好きの王位継承権1位」の誰かさんがいるし、

この生々しさはなに?って思いますよね。


はるか雲の上の王室を題材にとっているのに

そこで生きている人の悩みや葛藤は

程度の差こそあれ、私たち庶民にも共感できるもので

吃音に限らず、弱みや欠点に悩む私たちの心のお荷物を

軽くするきっかけを与えてくれるような作品でした。


ローグは、医師免許もないあやしげな療法士で、

こんなところにお忍びで王位継承者が治療に通うとも思えないのですが、

ともかく実在のこのオーストラリア人は

・生まれつきの吃音はいない

・運動や療法より、心の叫びに耳をかたむけることが大事

といって、まずはファーストネームで呼び合い、

「平等な信頼関係を築く」ことから始めようとします。

アルバート王子を「バーティ」と呼び、玉座には座っちゃうし、

不敬罪でつかまっちゃいそうなローグのやり口には、はらはらしてしまいます。


このローグの厚かましさに腹をたてつつも、

だんだん心を開いていくアルバート王子。

左利きやX脚を矯正するために厳しくしつけられたこと、

乳母に虐待をうけていたことなどが次第に明らかになります。

そして末弟のジョンがてんかんで幼くして亡くなったことが

世間からかくされていることを悲しく思っていることなど・・・

かれの涙に

けっして自分から口にすることのない

やんごとない身分の人たちの苦しみがあふれてきました。


日本の天皇陛下も、

「幼いころ両親と離されて乳母に育てられたのがさびしかったので

自分の子どもたちは手元で育てることにした」

とおっしゃっていたことを思い出しました。

日本の皇室が映画の題材になる事はまず無いと思いますが

解禁になったとしたら、すごいドラマになりそうですね・・・


ところでコリン・ファースのどもりっぷりはさすがに素晴らしく

こちらまで息苦しくなるほどです。

ジェフリー・ラッシュといい、名優は、お粗末なスピーチや

シェイクスピア劇の大根役者をやらせても

思い切りへたくそに出来ちゃうのですね。


最近はぶっ飛んだ役ばかりのヘレン・ボナム・カーターの

愛情深い妃も素晴らしい。

「王室は堅苦しくて

あまり来たくなかったんだけれど、

素敵な吃音!幸せになれそう!って思ったの」

こういうひとことが夫の苦悩を優しく溶かしていくのですね。


ただひとつ意外だったのは、

使われてる音楽がモーツァルトやベートーベンだったこと。

クライマックスでのベートーベンのシンフォニーは効果的でしたが

これからドイツと闘うってのに、敵国の音楽をかけていいんでしょうか?

じゃあ、ヘンリー・パーセルやエルガーだったらいいのかといったら

「?」ですが。

ただ、これでアカデミー賞作曲賞にノミネートというのは

「なんで?」って思いました。


衣装やセットに莫大な製作費をかけていそうもなくて

群衆もCGぽかったし、

個人的に豪華絢爛で「どや!」っていうのは好きでないので

これは気に入ってたのですが、

衣装も美術も賞をとってるんですよね。

へんなの!


とはいえ、

もの凄く面白いのはたしかです。

今年のオスカーは「ソーシャル・ネットワーク」を応援してたのですが、

どっちが獲っても嬉しいです。