映画「わが教え子、ヒトラー」 平成20年9月6日公開 ★★★★☆

読んで♪観て♪

1944年12月、連合軍の進攻によりナチス・ドイツは劣勢に陥っていた。
そんな中、宣伝大臣ゲッペルスは、新年に行われるヒトラーの演説を成功させ、
国民の戦意を高揚させようと試みる。
しかしヒトラーは心身共に衰弱し、自信喪失状態。
そこでゲッペルスは、かつてヒトラーにスピーチ指導をしていた
ユダヤ人俳優グリュンバウムを収容所から呼び寄せる。
戸惑う彼だったが、他に道はない。
敵を教える苦悩の中、事態は意外な方向へ…。   (GOO映画)


畏れ多くも、ヒトラーをコメディーにしてしまうのは
チャップリンにしかできないと思っていました。
これは立派なコメディーです。
役職の多さ、手続きの煩雑さ、大げさな敬礼とか、
いちいちクスッと笑わせてくれます。
なんだか、動く風刺画をみているようです。

自信喪失で演説もできずに、グダグダのヒトラー。
こんなの映画にしていいんでしょうか?

ここのところ、何かと健康状態が報じられている
かの国の「さるお方」も今こんななのかな?
なんて想像したりしてしまいました。

あわれな大総統を立ち直らすために
指南役として、収容所から連れてこられるのが
ユダヤ人俳優のグリュンバウム教授。
5日間で1939年の状態に戻すために
ジャージに着替え、基礎訓練。呼吸法からはじめていきます。
あえてユダヤ人を選んだのは、ヒトラーが忌み嫌うことで
逆に力がでる、というゲッペルスの判断。
果たして彼の思惑通り、日に日に力がみなぎってくるヒトラー。
一方で、幼いころの父親のトラウマとか、人間の弱さも露呈し、
グリュンバウムがいなくては
ひとりで何もできなくなってしまいます。

一瞬とはいえ、あのヒトラーの命が
一介のユダヤ人にゆだねられていたなんでことが
ほんとにあったのでしょうか??
直前に「ワルキューレ」の予告編をみたばかりだったので、
なおさらそう感じました。

エヴァ・ブラウンが鉄棒する映像はみたことがあるので本物でしょうが、
この話、どこまでが真実なのか・・・
歴史に見識のない日本人には、ちょっと難しいです。

・・・と思ったら、エンドロールで、ヒトラーについて
インタビューする映像が流れるのですが、
若い世代のドイツ人は、ヒトラーのことを知らない人が多くて、
ビックリしました!
日本はいろんなところから圧力がかかって(?)
60年以上前の日本の「侵略行為」を学校で教えるようになっています。
ただ、「ベンジャミンバトン」にも「オーストラリア」にも
フツーにでてきた「真珠湾攻撃」。
若い世代に街頭で「パールハーバーって知ってます?」と聞いたら
どのくらいの人がきちんと答えられるか・・・
ちょっと心配になってきました。

この作品は、ドイツの名優ウルリッヒ・ミューエの遺作です。
「善き人・・」ではドイツ人の国家保安省の大尉役で、
ここではユダヤ人を演じましたが、
こういう人を「名優」というのですね。
2本見ただけで忘れられなくなりました。
ドイツ映画はほとんど観ないのですが、彼の出演作だけでも
見ていこうと思います。         合掌。