映画 「アントキノイノチ」 平成23年11月19日公開予定  ★★☆☆☆

原作本 「アントキノイノチ」 さだまさし  幻冬舎 ★★★★☆→アントキノイノチ②



読んで♪観て♪


高校時代、とある事件がきっかけで心を閉ざしてしまった永島杏平(岡田将生)は、

遺品整理業を父親に紹介してもらい働き始める。

そこで出会った久保田ゆき(榮倉奈々)や仕事仲間と共に過ごすうちに、

杏平は少しずつ心を開き始める。

そんなある日、ゆきは衝撃的な過去を杏平に告白し、彼の前から姿を消してしまう。

                                    (シネマ・トゥデイ)


「アントキノイノチ」は、もちろんあの「プロレスの人」にこじつけたオヤジギャグです。

あの「お笑いの人」の方は関係ないと思うんだけど・・・


これも原作本未読です。

シネコンでやってるメジャー映画、とか

図書館ですぐ借りられそうな原作本、とか

ついつい後回しにしてしまう傾向あるので、気をつけなければ・・・



来月公開の映画なんですが、今回は試写会でずいぶん早くに観る事ができました。


ここに登場する職業は「遺品整理業」

孤独死などひっそり亡くなった人の部屋の片づけをし

遺族が心にくぎりを付けるのを手伝う仕事です。

中には死後長時間経過している場合もあり、

多量の虫や悪臭と格闘する過酷な仕事でもあります。


・ 76歳 男 心筋梗塞 1ヶ月後に発見

・ 58歳 元板前 男 肝臓を患い突然死

・ 64歳 女 36歳のとき子どもを置いて家出 入院中に死亡


「仕事現場」には亡くなった人の歴史と

その人が消えた後の自然の摂理があからさまに残っていて

オカルトな現象を考えに入れなくても、かなりタフな精神が求められます。



主人公も望んでこの現場にきたわけではなかったのですが、

毎日人の死と向き合う事で、自分の生について考えるようになり

(原作者は意識してないかもしれませんが)

映像にしてみると、「もうひとつのおくりびと」っていう風に見えてしまいます。


「クーパーズ」というこの会社、

作業員はどんなに酷いことになっている部屋でも

「汚い」「臭い」なんてことは一言もいわずに

まずは合掌して、もくもくと仕事を始めます。


「きれいに掃除して良いものだけを残して

亡くなった人のメンツを守ってあげるのがオレらの仕事」

というリーダーの佐相(原田泰造)。


死者の持ち物を

「ご供養」(残すもの)

「ご不用」(捨てるもの)

と、てきぱき分けていくのですが、

こういうことまでビジネスとして人の手を借りる時代になってきたのですね~


先日「老前整理」の本を読んだ時にここいらへんのことは

将来の自分のこととして考えてたのですが、

私の大切なものは、他人の目からみたら多分

「ご不用」に分類されそうなので、これはちゃんとわかるようにしておかないとね!


「クーパーズ」というのは、「キーパーズ」という実在の会社がモデルだそうです。

きちんと監修してもらっているようで、納得の仕事ぶりでした。


「孤独死や殺人現場の部屋のおかたづけ」というのは今に始まった仕事ではなく、

日本だけ、というわけでもなく、

例えは映画「サンシャイン・クリーニング 」でヒロインのローズがはじめたのもこれ。

ただ単に「(汚い分)お金がかせげる」というだけなので、

クーパーズみたいな仕事ぶりではありませんでしたね。

「おくりびと」の納棺師といい、遺品整理業といい、これは世界に誇れる

「日本の職業」といえそうですね。


さて、主人公の杏平は吃音のためにいじめを受けていた高校時代、

また山岳部でのある事件がトラウマになって、重いうつ病になってしまいます。


クーパーズの社員やアルバイトたちはそんな杏平を

「病気でたいへんだったナガシマくん」として優しく接してくれます。


そんな同僚のひとり、ゆき(榮倉奈々)もまた辛い過去を背負った女性。

亡くなった人がながめた景色をデジカメに納めながら

自分の生きている意味を自問する日々。



二人の出あう前半のシーンは、車や雑踏なとの環境音がとても大きく

台詞がほとんど聞こえないので、かなりもどかしく感じます。


二人が少しずつ心を開くようになり、愛とか恋とかともちがう、

この人がいる世界なら自分は生きていけると確信できるようになるころには

雑音は消え、会話に集中できるようになりました。

それってなにか技法なんでしょうが、個人的には

「聞き取れない台詞」というのは商業映画としてはアウトだとおもうんだけどな。


二人きりのシーン、とても多いのですが、

この若い二人が芝居が格段に上手くなっていて、ちょっとびっくりしました。


たまたま直前にみた「東京公園」には縈倉奈々もでていたのですが、

音楽を入れたり演出で盛り上げてくれていた「東京公園」に対して

こちらは、基本「ほったらかし」

勝手に台詞をよろしくって感じです。


高校時代、杏平が学校の廊下で、ナイフを持ってもみ合うシーンがあるのですが

何十人もいるクラスメートたちは遠巻きでじっと観てるだけ。

「下手に手を出すと自分までとばっちりを受けるから」

ということみたいなんですが、手を出さないまでも、女子生徒が「キャー!」と叫んだり

先生を呼びにいったりしないんですかね?


「それって何か映画製作的になんか新しい試みなんですかね?」

って観客に思わせるのは、もっとアート系の映画でやってほしいものです。


音楽とか心象風景をあらわす効果音が入ったり
(演技上の)なんのアシストもないまま、大芝居をする岡田クンはホントにお疲れ様でした

「お前たち、見てるだけなのかよ」みたいな台詞があるのですが、

そっくりそのまま監督にお返ししたいです。

岡田クンに無茶ブリしてるようにしか思えなかったんだけど・・・・


登山部でのあの事件についても、つっこみどころありすぎで

いちいち書くのもめんどくさい。


あと、普通クロースアップするところを引きで撮るのは構わないんですが、

エキストラの生徒たちはほんとに皆さん「ジ・エキストラ」で、心ここにあらず状態。

カメラが回っている以上、一応芝居をしてください、といいたいです。



人が生きていくには誰かと繋がっていたいと思う。

一人の人生には始まりも終わりもそれぞれ一度きりだし、

生まれるのも死ぬのも一人きりだけれど、

その命、アントキノイノチは、必ずどこかにつながって

消える命のかわりに救われる命があるってこと。


「アントキノイノチ」はただのダジャレではありますが、

(原作読んでないのでわかりませんが)この「さだまさし的オチのもってきかた」が

映画になって、「元気ですか~!?」までやられちゃうと、

観客はどういう反応していいのか困ってしまいます。


「さだ監督」で撮ったらどうなったのかな?

そっちでも観てみたいです。




ところでこの映画、モントリオール世界映画祭に出品されて

「イノベーション・アワード」を受賞したとか。

もしかして「おくりびと効果?」って思っちゃったのですが、そんなこといったら失礼ですね。

ここで違う映画を褒めるというのもアレですが、

一緒に「審査員特別グランプリ」を受賞した「わが母の記」の映画のこと。

(前にも書いたように)

これは、半年前にスニーク試写で観て、「レビュー禁止」といわれて放置してたら

もうほとんど忘れてしまったんですが、

とにかく「傑作!」だったのですよ!それだけは覚えています。

10年に一度、とはいわないまでも、順当に公開されていたら

作品賞と主演女優賞は間違いない作品でした。


この受賞を契機にちょっとずつ画像や詳細が公開されているようなので、

そろそろブログを書いても怒られないかな?

ただ、観て半年たっているので、樹木希林の大熱演くらいしか覚えていないのがトホホですが

このままでは観たことすら忘れてしまいそうなので、近々アップしたいと思います。



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