映画「ONCE ダブリンの街角で」 平成19年11月3日公開  ★★★★☆



読んで♪観て♪
 

アイルランド、ダブリン。

多くの人が行き交うグラフトン・ストリートでオンボロのギターをかき鳴らし自作の歌を唄う男がいる。

そこに一人の女がやってきた。

10セントのチップを出し、あれやこれやと男に質問する。

挙句、掃除機の修理の約束をさせられてしまう。

翌日、壊れた掃除機を持って女が現れた。

途中、ピアノを弾かせてもらえるという楽器店に立ち寄った。

彼女の腕前に感心した彼は、一緒に演奏することを提案するのだった。  (GOO映画)



この二人の男女には名前すらありません。

年老いた父と暮らすストリートミュージシャン。

母と娘と暮らすチェコ移民の若いシングルマザー。


二人ともかなり貧しいことは間違いなさそうなのですが、

二人の体には音楽があふれ、希望があり、未来があります。

二人の言動にはけっして必然性なく、

画面からいろいろ情報を読み取ろうとする人には

ちょっとストレスたまる映画ですが、

その代わりと言っては何ですが、

二人とも現役ミュージシャンだから

歌にも演奏にも身を預けて心底楽しめます。

俳優がちょっと特訓して演奏し、

手のアップだけ吹替え・・・なんてことはないです。


演奏だけでなく、実際に曲も詞も書いているから、

ホントに心からあふれ出るものがあります。

それこそがドラマです。

自作の曲にのせて「男」の別れた彼女のビデオが映されるのですが

これって、もしかして本物のプライベートビデオでは?

と思ってしまうほど。

「君がもう少しゆっくり変わってくれたら

君の嘘にも気づいたのに・・・」

のところでは、切なさがマックスになりました~


この映画は、たぶんかなりの低予算で、

脚本もけっして「練り上げた」ものでもないんですが、

本物の楽曲がストレートに心にひびきます。

歌詞だって、中学生程度の英語で

けっして難しい事をいっているんじゃないのに。


主役のグレン・ハンサードはアイルランドの有名なミュージシャンということですが、

相手役のマルケタイルグロヴァも新進のシンガーソングライター。

この時まだ17歳だったそうです。

チェコ移民のシングルマザーのキャスティングでは女優としてはありえないし、

実際学生っぽい雰囲気はいたしかたなかったですが、

そうまでしても「音楽優先」で撮ったのが、

結果的に大成功だったように思います。


「Falling Slowly」は、アカデミー章主題歌賞をとっているのですよね。


ディスニーの商業音楽満載の「魔法にかけられて 」と

あまりに酷い吹替えでワーストにあげさせてもらった「奇跡のシンフォニー 」に

勝ったんですね~!

いまさらですが、ちょっと気持ちよくなりました。