【春よ来るな】春の訪れが憂鬱な貴方に贈る、陰鬱な映画セレクション【帰れ帰れ】 | 湿った火薬庫

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基本的に1日1本お勧め映画の保管庫。たまに駄文交じり

梶原です。

 皆さんいきなりですが春って好きですか? 美しい桜が舞い、温かな陽気と陽の光を浴びて新入生や新社会人の健やかで賑やかな新生活が始まる素敵な時期とかうるせ〜〜〜! 知らね〜〜〜!! どうせ今年も代わり映えしない歯車の様なモダン・タイムスライフだよこの野郎! ……となっている

 

これを読んでいる貴方

 

 

 

 

 そう、そこの貴方に向けて今回この記事を送ります。自分で書いていて凄い恥ずかしいからそろそろこのノリもやめますが……後ネタにしてすみませんレトさんつまりこういう時期って春の新生活応援として普通、夢見る社会人や学生な背中を押す、明るい前向きな映画を紹介するのが定番な気がするんです。

  けどまあ、世の中そう陽の、陽の当たる人ばかりじゃないし僕はだいぶ前から人の心を無くしてしまっているので逆に、逆に僕みたいな人に向けて春の季節とは真逆な気分の、どうしようもない、にっちもさっちもいかない、生き地獄みたいな状況に追い込まれている人達が出てくる映画を独断と浅見でずらっとご紹介したいなと思います。


 これらを見て人間ってやっぱり愚か……! 愉悦……! と後ろ暗く悦に浸るもよし、または自分はまだ代わり映えしない歯車みたいな日常でもマシだったんだな……と安堵するもよし。好きにご活用ください。     

 またこの手の記事だととほほ、紹介されてるの結局ミストとかファニーゲームか……。みたいな、味のしないガム噛まされるんじゃないかと不安な方もご安心ください。

 無駄に映画だけは割と見てる暇人なので、今回紹介する7本は最新作、近年公開されている作品に絞れています。煽る様な事書いたけどミ、ミストもファニーゲームもネットで擦られる様な作品は故に名作ですからね……!(無意味なフォロー)

 
 また各作品には作品の紹介と私的にここが見どころなワンポイント、配信やソフト化、映画館で公開中かの情報を付記しております。ここら辺知りたいなと思っても書いてないとちょっぴりイラっとしますしね。長々と書きましたがもうそろそろ本題に移りましょう。皆さんが春の陽気さに負けないくらい鬱々します様に……。

 

注意書き

・これから紹介する作品には陰鬱な展開や過度に残酷・凄惨な描写が多く含まれています。精神的、または肉体的に調子が悪い時は鑑賞を控えてください。
・個人に寄りますが鬱々としている時には無理に映画なんて見ず好きな趣味や温かい風呂やご飯を摂取して自分に優しくしてください。映画はいつでも見れるけど不健康は中々治りません。
・ここまで書いといて言い訳がましいけどこの記事はあくまでジョークです。ジョークアベニューです。

 

・空白

 

あらすじ:とある地方のスーパーで、万引きの疑惑を掛けられた女子中学生が道路に飛び出した瞬間、車に轢かれ死亡する事件が起きる。衝撃的な事件に湧く世間で、その少女の父である充はどうしても娘の事故死、並びに万引きしたという情報が信じられず、個人のプライバシーの領域を超えて娘を捕まえた店長の青柳に迫る……。

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見所:兎に角全てが嫌になる、ある意味完璧な映画。事件の内容の陰鬱さもさる事ながら、万引き犯を捕まえた青柳の清廉潔癖……とは言い切れない後ろ暗さや、周囲の人の意見や制止も聞かずに暴走し続ける充のヤバい親父っぷり、青柳にご執心なパートのおばさんや自分の学校の生徒が死んだのになぁなぁで済まそうとする学校関係者と、嫌な意味でリアリティに富むサブキャラも秀逸。しかし最も嫌なのはまさにその事件の真相が二転三転するあやふやさ、決定的な瞬間が空白故に拗れている物語かもしれない。ひと先ず手っ取り早く陰鬱になりたい人に強く勧めたい。

 

・ライトハウス

 

あらすじ:高波と変わりやすい気象が襲う孤島。そこにポツンと佇む灯台を管理するために二人の男が着任する。片や独善的で傲慢なベテランの男、片やド新人の寡黙で不愛想な青年、初っ端から相性の悪い二人の最悪な職場に、自然現象による脅威も加わり……。

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見所:孤島、閉鎖的な灯台、仲が超絶悪い男同士、何も起きない筈がなく……と良くないネットミームを使ってしまったけど、本当にそういう話。モノクロの色調に環境的にどこにもいけない閉塞感と次第に精神に異常を来し出す登場人物が相まって、ずっと居心地の悪いまま、とんでもない場所へと放り投げられる映画体験が出来る。今回紹介する中でも特に陰鬱なので見る時は体調を考慮すべし。

 

・屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ

 

あらすじ:1970年代にドイツに実在した連続殺人鬼、フリッツ・ホンカの凶行と破滅までを丁寧に再現する地獄の人間ドラマ。挙動や性的志向、意外に社会に馴染む姿まで、最悪の殺人鬼として描きつつ一人の人間としてのフリッツ・ホンカの内面に迫る。

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見所:今回紹介する中で唯一の史実物、ながらこんなに厭な話が現実にあるのかと見ながら驚愕する事必死。今の世の中あまり外見を揶揄するのも良くないのだが、それでも一目であっ……となるホンカの外見や立ち振る舞い、初めて殺人を犯す時の衝動的な雑さにどうしようもない人間ってこうなんだな……と身に包まされる。ホンカが立ち寄るバーの面々のネジの外れ方に加え、ホンカが携わる人々の善性が最悪の形で空回りする様まで最初から最後までしっかり厭な気分になれる地獄のトッポ。一度食べてみてほしい、臭いけど。

 

 

・アンカットダイヤモンド

 

あらすじ:イケイケオラオラで順調にのし上がってきた宝石商のハワードはヤクザや芸能人と渡り合いながらもギリギリ成功を収めていた。しかしとあるトラブルにより予期せぬ借金を背負う羽目に。ハワードの鬼気迫る一世一代の勝負が幕を開ける。

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見所:人生が一番うまくいっている、有頂天な時にこそ魔が差すとはよく言われるがこれはそれの完璧な映画化。紹介している中では比較的、本当比較的に主演のアダム・サンドラーの神がかったテンパリ芸のお陰で明るい作品だが、それでもにっちもさっちもいかなくなり前後不覚になりながらも、一度始めた事をやめられないし後もない人の辿る運命の怖さは随一。何とは勿論言えないがえっ!??っとなるラストも必見。

 

・アオラレ

 

あらすじ:自動車に乗る人ならもしかしたら一度は出くわしているかもしれない煽り運転。主人公のレイチェルはちょっとしたイラつきで注意代わりのクラクションをとある車に強く鳴らす。その車の運転手が頭も体力も殺人術も常軌を逸した殺人鬼だと知らずに……。

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見所:変な運転してる奴を注意したら、中から出てきたのは目が血走ってるラッセル・クロウだった……。という出オチみたいな映画に思えるが言葉が通じるのに全く話が通じない人間がよりにもよって粘着質な殺人鬼だったという、最悪の満漢全席みたいな作品。あまりにもラッセル(劇中に名前が出てこないという小粋な設定 が無敵すぎるという突飛さが笑えてくるが、この設定自体は無茶でも仮に自分がこういう状況に陥ったら……と考えると底冷えしてくる。上映時間的にも気軽に見れるのでお勧め。

 

・悪なき殺人

 

あらすじ:フランスの雪深い山中で一人の女性の失踪事件が起きる。時間軸を交錯させながらこの女性に纏わる歪んだ人間関係、とある人物は不貞を働き、とある人物は犯罪に走り……と各登場人物の業と罪を描きながら、なぜ女性が姿を消したのかの真相が観客にだけ明かされる。

視聴可能サイト:アマゾンプライム(内の配信チャンネル、スターチャンネルにて独占配信中

見所:個人的に(配信関係のアレさやレンタルがないっていう一番見にくい作品なのがアレですが……)一番勧めたいし見てほしい作品。主要人物達の欲望の下世話さ、まともな面をしてるが内実おぞましくドロドロなのが次第に明らかになる作りの意地悪さに黒い笑いが溢れる、し、何よりそんな作りながら皆愛や金とかに飢えてて必死、という切実さにどうしようもない話なのに不思議と胸がすく、本当不思議な映画。しばらく頭に残る。

 

・ナイトメアアリー

 

あらすじ:田舎より上京し、いかがわしいカーニバルで雇われた男、スタンはとあるきっかけで読唇術をマスターする。意中の女性と結ばれはるばる都会で出世を目論むスタンの前に謎めいた女性が現れ……。

現在絶賛上映中

見所:皆大好きパシフィック・リムやヘルボーイなどのファンタジックな名作で知られるギレルモ・デル・トロだが、そんな彼のダークサイド、人間の浅ましさや驕りが招く最悪の事態を描く方面(デビルズ・バックボーンやパンズ・ラビリンスとか)を新たに更新した一本。誰しも出世欲や金銭欲には少なからずドキッとしてしまうが、スタンの成り上がろうとする姿とそれが気づけばもっと強大な力に絡めとられていく様は足元が竦む。凄いタイミングで急に出てくるグロ描写のインパクトも凄い。

 

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 という訳で忙しなく書いてみましたがいかがでしたでしょうか。一つでも皆さんが気になった、見てみたいなと思える作品が見つかりましたらとても幸いです。個人的ならばまあ、本当気軽に見れないのがアレなんですが悪なき殺人が特にお勧めなんですよね。凄い悪人らしい悪人は出てこないけど、登場人物皆それぞれ生々しい悪意や軽薄さがあって、それが結果的に人を死に追いやるリアルさが本当居心地悪くて。

 他に正に陰鬱らしい陰鬱さなライトハウスやじっくりねっとりと嫌な気になる空白もいいし、逆にアッパーに最悪なはちゃめちゃが押し寄せるアンカットダイヤモンドも……まあ全部いいので体調と精神と要相談しつつ気になった物があれば是非。正直、正直に言えば陰鬱で陰惨な気分になりたいなら今の社会情勢やニュースを見れば嫌でもそうなるんですが……創作物だからこそ逆に、暗い作品特有の後ろ向きなエネルギーとかもあるので、自分はそういうのが好きでこの手の作品を見ている節もあります。皆さんもこれら以外の、自分の中のそんなエネルギーが貰える作品を見つけるきっかけにこの記事が少しでも役立てれば嬉しいです。それでは梶原一郎でした。ブログ、書きたい事がこれで大体尽きたのでまたしばらく冬眠します。また来年までお元気で……さようなら。