ぴろきちの日記

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プロローグ


何もとりえのない小学生の浩行はお母さんのお料理の手伝いをするのが大好きな男の子でした。
餃子を巻いたり、カレーを作ったり、台所に入るのが好きな、珍しい小学生。

家庭科の授業でも女子を差し置いて、お料理の実習を仕切ってしまう始末。

浩行の父が飲食店を3店舗経営していたこともあり、
高校生になると浩行は父のお店を手伝うようになりました。
料理漬けの日々。

高校生の浩行にとって、店で働く年上のお兄さん、お姉さんはすごく大人に見えました。
浩行はとても充実した時間を過ごていました。

しかし17歳の時、浩行の父が体を壊します。
日頃の疲れがたたったのです。

やむなく、1店舗閉め、2店舗閉め、最後の3店舗目のお店も閉店することになりました。
楽しく働いていたスタッフもいなくなり、最後に残ったのは父と浩行の2人だけ。

2人で最後のお店の片づけをしているとき、浩行に1の目標ができます。

「父のお店を再建する」と。

そのお店の名前は「みや」






「出し切る」


高校卒業後、浩行は都内の日本料理店に修行に入り、朝から晩まで働きます。
元々仕事が好きな浩行にとって、仕事をすることは全く苦にならず、むしろ楽しみな時間でありました。
しかしそのころ、浩行は一つの悩みがありました。

それは同僚のA君のこと。
A君は浩行より遅い時間に仕事に来て、浩行より早く帰ります。
しかも、誰が見てもA君の仕事は浩行よりも遅い。
浩行はA君の仕事まで片づけてから帰らなくてはなりません。
しかし、給料はA君と一緒。

浩行はそのことを父に相談をしたことがあります。

浩行の父はこのように教えてくれました。

父:「いいかい、浩行。例えば10の力を持っている人と、5の力しか持っていない人がいるとするよね。
仮に10の力を持っている人が6の力を使ったとしよう。
5の力を持っている人は、全力を出し切って5の力を使ったとしよう。
どっちの方が力があると思うかい?」

浩行:「それは10の力を持っていて、6の力を出した人の方だよね。」

父:「そうだよね。その通り。でもね、大切なのは力を出し切るということなんだ。5の力を持っている人は5の力を出し切る。
するとそれが6・7・8・・・と力が大きくなる。

逆に10の力を持っているのに、6の力しか出していない人は段々と力が弱ってくる。
6・5・4・・とね。筋肉と一緒だよね。
だから他人は関係ない、喜んでA君の仕事を手伝ってあげるといいよ。すると浩行にどんどん力がついてくる。そしてね、そういう人がリーダーになって行くんだよ」


それから浩行は、A君の仕事も嫌な顔せずに黙々とこなして行きました。

「力を出し切る」
この言葉を信じ、浩行は仕事に励みました。

つかの間の休憩に見上げる空はいつも青く、浩行を応援してくれているように感じました。







「無の修行」

浩行は徐々に先輩たちに一目置かれる存在になって行きました。
同僚のA君にも仕事を教える立場になり、A君からも感謝をされるようになりました。

しかし、給与は変わらず、
浩行の給与は安くて、どんなに節約しても、1か月に数万円の貯金しかできません。
このままでは、10年経っても20年経っても、目標である、「みや」を再建するという夢は叶いっこありません。
周りに聞いても、「そんな夢みたいなことあきらめな」
と言われるばかりです。

浩行は父に相談をしました。

浩行:「父さんあのさ、僕の給与って父さん知っているよね?今のまま、貯金しても年間で数十万円しかたまらないんだ。10年経ってもたかが知れている。こんなんじゃいつまでたってもお店なんてできっこないよ。かと言って、腕も無いし、経験もないし、そしてお金もないし・・
どうしたらいいのかな?」

父:「そうか‐。それは今とても良い修行をしているね。今、浩行は無の修行をしているんだよ。」

浩行:「無の修行?」

父:「そう無の修行。又はね、無から有を生む修行と言うんだ。」

浩行:「無から有を生む?」

父:「そう、無から有を生む修行。それは、お金をかけなくてもできることをする、という修行なんだ。素晴らしい修行。
腕も、経験も、お金も、信用も、信頼もない中、まさに無の中から有を作り上げていく修行。

これは誰も避けて通れない修行なんだ。

どんな人でもゼロからのスタートだろ?
世の中の成功者はみんな無の修行を積んだ人なんだよ。」

浩行には何を言っているか、さっぱりわかりませんでした。

「ところで浩行、お金をかけないで、何か仕事に生かせることは思いつくかい?」

浩行:「お金をかけないで、仕事が・・・?
ん‐・・・そうだなー・・
笑顔でいるとか?そういうこと?」

父:「そうそう、笑顔は大切だよね、他にあるかな?」

浩行:「あとは、礼儀正しくするとか、気持ちの良い返事をするとか・・
一生懸命働くとか・・」

父:「あとは?」

浩行:「相手を思いやるとか・・・
あとは・・
ピッカピカに掃除をするとかかな?」

父:「そうだね。その通りだね。お金さえあればなんとかなる。という人もいるが、そういう人はお金を持っていても、結局何もできない。
実はお金をかけなくてもできることをしてから、初めてお金が生かされるんだ。」

浩行はキョトンとしていました。


例えばさ、内装が豪華で、外見がお城のようにゴージャスな飲食店があったとする。

でもさ、そこで働くスタッフに笑顔がなくて、なんか不機嫌そうで、掃除が行き届かなくて、不衛生で、お料理が美味しくなかったら、お客様はその店に行くかな?」

浩行:「そうだな‐。初めは物珍しいから行くと思うけど、1度行ったら2度と行かないと思うね。」

父:「そうだよね。そういうお店は残念ながら潰れてしまうんだ。
無の修行をもう一度やり直しなってことさ。だから、お金が無い、腕も信頼もない今が、浩行にとってチャンスの時。
無の修行を学ぶチャンスなんだよ。最初から、全てが出来きる必要はない。
むしろ、出来る人はいない。
無の修行をしているうちに少しづつチャンスが回ってくる。そしてお金もついてくる。」

浩行は大きくうなずきました。
(無の修行かぁ‐・・)

浩行はより一層仕事に励みました。
周りにも認められはじめ、調理人としての腕前も上がって行きました。

ただ、その頃、浩行には気がかりなことがありました。
それは、いまだに、体の治らない父の事。
浩行の父は、お店を閉めてから数年間。入退院を繰り返していました。






良いことしか起こらない



浩行:「あのさ、父さんさ、ちょっと聴きたいことがあるんだけど。いいかな?」

父:「なんだい?」

浩行:「えっとさ、言い辛いんだけどさ。父さんはさ、体を壊して入退院を繰り返しているわけじゃない?
例えばさ、僕も一生懸命頑張ってもさ、父さんみたいに体を壊してしまう可能性もあるわけだよね?そうなったら、今僕が頑張っている意味はないよね?
それについて、父さんはどう思うかな?」

父は少し、黙ったあと、静かに答えました。

父:「そうだね、浩行の言う通りだね。父さんは体を壊した。それは、神様からのメッセージだと受け取っている。今はとても感謝をしている。
父さんは、人生は良いことしか起こらないと思っている。」

浩行は困惑しました。
なぜなら浩行の父は体を壊して店を閉めたことを、「良いことしか起こらない」
と言い切ったことに矛盾を感じたからです。

浩行:「父さん、ちょっと全然意味がわかならいよ。良いことしか起こらない?
何を言っているんだ。実際に、父さんは体を壊して、店を閉めているわけだろ?
家族にも迷惑かけているし、それが良いことしか起こらない? 言っている意味が分からないよ。僕は全く父さんを理解できないよ」

と・・そこまで言って、浩行は我に返りました。

「ごめん。ちょっと言い過ぎた。」

父:「そうだよね。家族のみんなには迷惑をかけていると思っている。
本当に申し訳ない。でもさ、その縁で浩行も料理の仕事をしているだろ?そうだな、良いことしか起こらないというより、重要なことしか起こらないと言った方がいいかな。」

浩行の父は姿勢を乗り出して話始めました。

父:「人生には様々な困難がある。これは誰でも一緒。生老病死という言葉を知っているかい?
人間は生まれてくることも、死ぬことも病気になることも、何一つコントロールできない。それはわかるよね?」

父は話を続けました。

「そんな中で、どのような態度で人生にのぞんで行くか?ということだけは選択出来るんだ。病気になってからといって落ち込むという選択も出来るが、乗り越えるという選択も出来る。

そして困難を乗り越えていくうちに、後々になって、その自分の歩みを静かに振りかえると、不思議なほど人生には良いことしか起こらないという感慨の心が生まれてくるんだ。
たぶんねー・・・
今の浩行にはわからないかもしれないな。
そのうち、浩行もそうなってみるとわかると思うよ。」

浩行はなんとなく、理解しました。
しかし、全てを理解した訳ではありません。

人生で起こることは全て良いこと。
重要なことしか起こらない。

父さんの言う通り信じてやっていこう。
浩行は胸に誓いました。







大阪転勤


浩行は仕事で大阪勤務が決まりました。

浩行の勤めている会社が大阪にお店を出店することが決まったのです。
それに伴うオープニングを担当します。
副調理長。
いわばNO2。
大抜擢です。

気がかりなのは、病気がちな父の存在。
父を置いていくのはどうかと思いましたが、
これは浩行にとって又とないチャンス。

早速大阪に引っ越し、大阪の生活が始まりました。
大阪は浩行の好奇心をそそりました。

見るものすべてが新鮮な光景。
楽しい毎日でした。

ある日、仕事を終えて仲間とお酒を飲んでいるとき、
浩行は自分の目標を仲間に語りました。

みやという自分の店を出すこと。父お店を再建すること。
満足げに話しをしたのでした。

しかし、その時周りにいた仲間が容赦なく、浩行に言葉を浴びせました。

「店を持つ、そんなことは無理な話」
「そうやって、夢語っている人のほとんどの人の夢は叶わない」
「実際に、自分で店を持つなんてことは奇跡的に近い」

浩行はショックでした。

仲間に自分の目標を語って、賛同してくれるのかと思ったら、逆だったのです。
浩行はモヤモヤしていました。
今すぐにでも父に相談したい気落ちで一杯でした。

浩行は夏休みの間、東京に帰って来て、早速父に相談をしました。

そのころ、浩行の父の病気は悪化し、入院をしていました。





浩行:「父さん、僕は父さんの教えの通りに、料理の勉強もしているし、本も沢山読んでいる。経営の勉強もしているし、父さんの言う通り、力を出し切っているし無の修行だって頑張っている。

でも僕の周りはお店なんて出来っこないという人がほとんどだ。

事実・・・僕はまだ、お金もないし、信頼もない。
このままだと、周りが言うように、将来お店を持つなんてことは夢の又夢だよ。
父さん、僕はどうしたらいいのか、もうわからなくなってきたよ。」

浩行は頭を抱えていました。

父:「おやおや、今日も相変わらず質問が多いね。
浩行ごめん、今ちょっと調子が悪いんだ。気分が良くなったら、話すよ。
ちょっと休ませてくれ。」

どうやら、具合が悪いのです。

浩行は答えを聞けずにやもなく大阪へ帰りました。

大阪へ戻ってから、何か心にもやもやした物を抱えながら、浩行は過ごしていました。

(やはり、周りが言うように、僕の言っていることはただの夢なのかぁ・・)

浩行はなんとなく仕事にも力が入りません。

2週間後、突然、母から連絡がありました。

浩行の父が危篤になったということです。

(そうだ、たしかあの時、父さんは具合が悪そうだった!)

浩行は慌てて、東京に戻り、病院へ駆けつけました。

しかし、父は浩行が病室につくなり、浩行の到着を待ったかのように、穏やかな顔で眠りにつきました。

浩行が病室についてからわずか15分後のことでした。


「父さん、また一緒にお店をやるって約束したじゃないか!」

「最後の質問に答えてないじゃないか!」

「父さんもっと、もっと教えてほしかったよ!!!!!」












病室を片づけていると、父の枕元に1通の手紙がありました。

浩行にあてたものでした。


最後の手紙



浩行へ。

最後の質問、まだ答えていなかったね。
たしか、浩行は沢山勉強をしているけど、お店を出すのは難しいって話だったね。

浩行は本当によく勉強をしているよね。
父さんもびっくりしているよ。

たぶん・・
浩行が読んだ本にはこう書いてあったと思うよ。

「自分の為に目標を持て」
「自分の夢を持って、努力しろ。」
「自分が頑張れば夢が叶う」

父さんはそれを間違ってはいるとは思わない。
確かに目標を持って努力することは大切だと思う。

でもね。自分の為だけに頑張るのではなく・・

目の前の人に優しくしてごらん。
身近な人のお役に立ってごらん。
周りの人に気遣いをしてごらん。
困っている人を助けてごらん。
人の喜ぶことをしてごらん。

そしたらね。周りの人が、浩行に協力してくれる。

この世の中にはね。
「鏡の法則」というものがあって、自分がやったことが、巡り巡って自分に帰ってくるという不思議な法則があるんだよ。

実は父さんもこの法則を実践したんだ。
だから周りの人の協力もあってお店をやらせてもらえたんだよ。

是非、実践して下さいね。


そしてね。最後に「奇跡のおこしかた」を教えるね。

奇跡のおこしかた・・

それはね。

今、浩行が生きていること自体、「奇跡だ」と信じることなんだ。

それが奇跡を起こす始まり。

人が生まれる確率は1400兆分の1と言われているんだ。
奇跡的な数字だろ?

奇跡って、滅多に起きないから奇跡と言うんだ。

自分は奇跡にふさわしい人なんだと思わない限り、奇跡は起きることはない。
実は人は誰でも奇跡にふさわしい人なんだ。
みんなそれを忘れているだけ。

自分が生きていることが奇跡だと信じ、周りに感謝して、目の前の人に優しく生きて下さい。

すると必ず奇跡が起こります。

大丈夫。
浩行ならできると思うよ。

一緒に「みや」をやろうって言った約束。
守れなくてごめんね。

でもね
父さんは浩行のことずっと見ています。

浩行の成長を心から楽しみにしています。

又会おう

浩行へ
父さんより。



浩行からの手紙

父さんと一緒に「みや」を再建するという夢。
叶わなかったけど、僕は父さんの教えを今でもしっかり守っています。

「みや」は順調に13年目を迎えています。

お陰様で、僕の周りには本当に良い人ばかりです。
僕は恵まれています。
ありがたいです。

父さんに会ったら、沢山話がしたいです。
父さんに僕の話を沢山聞いて欲しいです。
そして、父さんにもっと、もっと教えてほしいです。

でもさ、まだ、そっちに行くのはちょっと早い。
それまで、もう少しこちらで楽しんでみますね。

最後に僕が死ぬ時に言う言葉はずーと前から決めています。

「父さんありがとう。父さんのお陰でとても楽しい人生だったよ」

もう少し待っていてください。
父さんとお会い出来る日を楽しみにしています。

父さんへ。

浩行






エピローグ


長い文章をお読み頂きましてありがとうございます。

この小説は3年前、お店が10周年の時、僕がスタッフ宛に書いている給与レターで紹介したものです。

ブログで読みやすくするため、かなり少なめの文字でまとめましたが、原文はもう少しボリュームがあります。

事実のこともありますし、かなり着色しているところもあります。
その辺は皆様のご想像におまかせいたします(^^)

さて
おかげさまで「みや」は本日10月10日をもって、13年目を迎えることとなりました。
本当にありがたいことです。

沢山のお客様から、「素敵なお店ですね」「スタッフの感じがとても良いですね」
など、お褒めの言葉を頂きます。
本当にありがとうございます。

「自分たちが作るお料理を喜んでくれる人がいる」ことが何より嬉しいですし、幸せを感じます。

もちろん、温かいお叱りのお言葉、期待を込めて言って下さるご指導のお言葉も沢山頂きます。

皆様今後ともご指導のほど、どうぞよろしくお願いします。

そして、これまで、長い間支えてくれたスタッフの皆様本当にありがとうございます。
これからもどしどし厳しいご意見を僕に下さい。
皆様のお陰で、この店は成り立っています。
これからも僕が一番努力することを約束します。

まだまだ夢の途中ですが、日々精進して行きたいと思います。
13年の奇跡に感謝します。

夢のようなレストランを目指して

(株)みやコーポレーション代表取締役 宮本浩樹








スタッフブログ






みや


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