工藤重矩「源氏物語の結婚 平安朝の婚姻制度と恋愛譚」 | 世界文学登攀行

世界文学登攀行

世界文学の最高峰を登攀したいという気概でこんなブログのタイトルにしましたが、最近、本当の壁ものぼるようになりました。


源氏物語を読んでいる時に、当時の婚姻制度がよくわからない部分があったので資料用に買った本。
読了前は開きもしなかったが、一応、確認のため、手に取ってみる。


当時は、「一夫多妻制」のように誤解されているが、実際は「一夫一妻制」、詳しく言えば「一夫一妻多妾制」であった、ということを、律令関係書からひもといていく。


源氏物語を正確に読み込んで行くならば、正妻、というものがいかに大きな力を持っているかということがわかる。
その意味では、自分の源氏物語の結婚制度の理解が、大きく外れているわけではないのだな、ということがわかり、安心した。


この本は、前半に、制度としての結婚を詳述した後に、源氏物語に沿って、ここはこういう意味があったんだよ、こういう物語なんだよ、という風に展開していく。
ぼんやりした理解が、くっきりとしていく部分はあった。


それよりも、源氏物語の基本的な物語の筋書きを語り、結婚制度、という観点から、その筋書きを破綻させないために、ここでのこの人はこういう性格にしなければいけなかった、とか、ここでこの人を退場させざるをえなかったとか、言ってることはわかるし、筋も通っているんだけど、うるさいなあという気分にはなった。
そういうのを解明する目的の新書だし、物語論として、物語の骨格を分析する本としては、その用を果たしているとは思うんだけど。


源氏物語の内容にかなり踏み込んでいるので、予習にはまったく向かない。
ただ、この本を読んでから、もう一度源氏物語を読めば、より深く読めるのは間違いないなと思った。
10年後の源氏再読に向けて、読んでおいてよかったと思う本。



源氏物語の結婚 - 平安朝の婚姻制度と恋愛譚 (中公新書)/中央公論新社
¥886
Amazon.co.jp