清水義範「清水義範のイッキによめる!日本史人物伝 古代編」 | 世界文学登攀行

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世界文学の最高峰を登攀したいという気概でこんなブログのタイトルにしましたが、最近、本当の壁ものぼるようになりました。


ヤマトタケル、卑弥呼、聖徳太子、中大兄皇子、大海人皇子を取り上げた歴史人物伝。
清水義範の作家としての一つの顔である、お勉強本。
絵は、西原理恵子。


本の内容自体は、おそらく小学生高学年向けに書かれたものなんだけど、西原のふざけた絵があったりして、本当は誰に向けて書いてあるのかよくわからない印象があった。
内容も小学生が読むには少し難しい気がするんだけど、清水氏自体、小学生向けの作文教室の先生をやっていた時期もあったりするので(今もやってるかどうかはわからないけど)、子どもの理解力は僕らが考えているよりも高いんですよ、ということを知っているからかもしれなくて、それならば難しすぎるわけではないのかも。
そんなにこの時代に対して知識のない大人の僕が読んで、非常にわかりやすくて面白かった。


古代史、というものについては、以下の著者の一文にすべてが込められていると言ってもよいので引用する。
「おぼろげな神話や、伝説にすぎないことを、これが歴史ですと小学生に語っていいんだろうか、という話ですね。あのですね、私はそれでいいと思うんです。古代のことなんて、ほんの少しの資料があるだけで、それは確実にほんとうのことか、疑ったらなにも言えなくなっちゃうんだから。だから古代史は、少しの資料をもとに、あれこれ想像するしかないんです。そういう想像が、私たちが知っている歴史だとして、楽しめばいいんです。歴史を楽しむというのは、空想を楽しむということなんです」(P66)


この本は、俗説のようなものをやんわりととりあげて否定しながら、史実にもとづいた物語を綴っている。
それは著者の斬新な思いつきではなくて、ある程度の研究成果を踏まえたもののようで、安心して読める。
そして、これは資料に基づいておそらくそうだろうと思うけど、ここからは資料がないから、わたしの空想ね。でも、こういう根拠があるからね。
というようなあたりがちゃんと書いてあるから、教科書的でもあり、物語的な面白さもある。


このシリーズは「平安時代&武士の誕生編」「戦国時代~幕末激動編」と続くようである。
この辺になると、まあ知ってますよ、という気もするけれど、読んでみたいなあという気もする。



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