首 | p・rhyth・m~映画を語る~

p・rhyth・m~映画を語る~

メインブログ【くた★むび】



英題:Kubi
監督:北野武
キャスト:ビートたけし/西島秀俊/加瀬亮
配給:東宝/KADOKAWA
公開:2023年11月
時間:131分




今夜紹介するのは『アウトレイジ 最終章』以来6年ぶりとなる北野武監督作品『首』。初期の代表作『ソナチネ』と同時期に芽生えたアイデアを,構想30年にして映像化したというこの作品。豪華キャストに15億円の製作費,カンヌ国際映画祭の“カンヌ・プレミア部門”に,日本人監督として初めて出品されるなど話題も満載だった。

描かれるのは,これまで幾度となく映像化されてきた歴史の転換点“本能寺の変”。織田信長を頂点に繰り広げられた権謀術数渦巻く武将たちの権力闘争の行方が,北野流解釈で描き出されていく。4年前に発表された原作はもちろん,脚本・編集・監督・主演のクレジットは全て北野武(主演クレジットは「ビートたけし」)となっている。

天下統一を目指していた織田信長(加瀬亮)だったが,毛利,武田,上杉,京都の寺社勢力らと激しい戦いを続けていた。その最中,信長の家臣・荒木村重(遠藤憲一)が反乱を起こす。しかし,村重の頼りにする毛利の援軍は送られることなく,立て籠る有岡城は落城。信長は制裁として村重の家臣や親族を女も子供も全員斬殺すると,自分の跡目相続を餌に,羽柴秀吉(ビートたけし),明智光秀(西島秀俊)ら家臣に逃げた村重の捜索を命じる。

ある日,千利休(岸部一徳)の茶会に招かれた光秀はそこで,抜け忍の曽呂利新左衛門(木村祐一)が捕らえた村重と再会。光秀は村重を亀山城へと連れ帰ると,信長に報告せず彼を匿う。曽呂利からその情報を得た秀吉は,曽呂利を召し抱える代わりに遂行不可能と思える命令を下す。道中で,侍大将に成り上がることを夢見る農民・難波茂助(中村獅童)を仲間に加え,信長が信忠(中島広稀)に送った密書を買い取るという任務のため,甲賀へと向かう曽呂利だったが…。

冒頭から,川辺に倒れたいくつもの死体。首を獲られた兵士の首周りを蠢く沢蟹。次に登場する信長は,これまでに見たどんな信長より粗野で,名古屋弁全開で家臣たちを罵倒しまくる。こうして観る者に“監督・北野武の復活”を鮮烈に灼き付ける。

『首』の舞台に“戦国時代”を選んだ理由について聞かれ,「キレイに描かれる時代劇の嘘臭さ」と語っていた北野監督。登場人物が皆,手柄と領地を求めて殺し合いを繰り返す,業と欲とバイオレンスと男色までも織り混ぜ,映像化されたこの1本。地上波なんかで流せない,いや,映画でも稀なシーンの数々に驚愕させられる。しかし,それだけでなく,ユーモアやウイット,そして先達たちへのリスペクトまでをも凝縮した,北野監督作品の集大成を感じさせる秀作だ。


映画クタ評:★★★★


右矢印北野武作品まとめ

右矢印浅野忠信作品まとめ

右矢印大森南朋作品まとめ

右矢印津田寛治作品まとめ

右矢印寺島進作品まとめ

右矢印矢島健一作品まとめ

右矢印中村獅童作品まとめ

右矢印六平直政作品まとめ

右矢印荒川良々作品まとめ

右矢印遠藤憲一作品まとめ

右矢印加瀬亮作品まとめ

右矢印桐谷健太作品まとめ

右矢印岸部一徳作品まとめ

右矢印西島秀俊作品まとめ

右矢印勝村政信作品まとめ

右矢印堀部圭亮作品まとめ

右矢印小林薫作品まとめ

右矢印寛一郎作品まとめ