ソナチネ | p・rhyth・m~映画を語る~

p・rhyth・m~映画を語る~

メインブログ【くた★むび】



英題:Sonatine
監督:北野武
キャスト:ビートたけし/渡辺哲/勝村政信
配給:松竹
公開:1993年6月
時間:93分




先月21日に66歳で急逝した大杉漣を偲んで,予定を変更し,彼の転機ともなった『ソナチネ』を紹介。40歳代に入り,ステップアップを図ろうと受けたこの映画のオーディションだが,勘違いして1時間も遅刻。会場についた時には,すでにオーディションは終わっていたが,後日まさかの合格連絡があったという。とは言っても,当初与えられたのはヤクザ事務所の電話番という,台詞のない端役。ところが「全部アドリブでやって」という指示に対し,大杉漣が演じたヤミ金の取り立ての演技を見た監督が,その上手さに感心。脚本を書き換えて役を大きくしたという。この作品での演技が転機となり,大杉漣は映画界において演技派の一人として知名度を得ていくこととなり,北野作品の常連ともなった。

ポスターにもある,槍に刺さったナポレオンフィッシュが衝撃的なオープニング。北野監督作品としては4作目。初期北野作品の集大成としての要素を持つ純正のバイオレンス映画として,多くの北野ファンから高く支持されている1本でもある。

北島組幹部・村川(ビートたけし)は,組長の北島(逗子とんぼ)から,沖縄の友好団体・中松組が敵対する阿南組と抗争しているので助けてほしいとの命令を受ける。村川の存在が疎ましい幹部の高橋(矢島健一)の差し金だったが,結局村川は弟分の片桐(大杉漣)やケン(寺島進)らを連れて沖縄へ行く。

沖縄では中松組幹部の上地(渡辺哲)や弟分の良二(勝村政信)たちが出迎えてくれるが,村川らが来たことでかえって相手を刺激してしまい,抗争はますます激化。事務所の爆破や銃撃で多数の組員を失う。生き残った村川,片桐,ケン,上地,良二の5人は海の近くの隠れ家に身を隠す。やるべきことが見つからないまま,暇を持て余した村川たちは,東京に連絡を入れても高橋がつかまらずイラつく片桐をよそ目に,偶然に知り合った女・幸(国舞亜矢)を加え,まるで子供に戻ったかのように日々遊んで過ごすのだったが…。

全編に漂う,もの静かで,どこか狂気的なムードが,“死”の持つ無意味と突然性,無表情とその内に秘められた衝動を,徹底的に浮き彫りにしてゆく。人は死に際に“無”になれるのか? それさえ考えぬままに息絶えるのか?…と,儚さと美しさを背景に,見る者に問うてくる。

ヨーロッパを中心に評価が高く,前世紀末にはイギリスBBCの選ぶ“21世紀に残したい映画100本”に小津安二郎監督作品や,黒澤明監督作品と共に選ばれた1本。久石譲の手掛けた音楽も作品に深みを加え,第17回日本アカデミー賞では最優秀音楽賞を受賞している。


映画クタ評:★★★★


右矢印北野武作品まとめ

右矢印津田寛治作品まとめ

右矢印寺島進作品まとめ

右矢印大杉漣作品まとめ

右矢印矢島健一作品まとめ

右矢印勝村政信作品まとめ

右矢印日本アカデミー賞受賞作品まとめ