渇水 | p・rhyth・m~映画を語る~

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監督:高橋正弥
キャスト:生田斗真/門脇麦/磯村勇斗
配給:KADOKAWA
公開:2023年6月
時間:100分




立川市役所に勤務しながら創作活動を行い,自身の水道業務の経験をもとに書いた『渇水』で文學界新人賞。芥川賞候補にもなった河林満。57歳で早逝した彼が遺した2冊の単行本から,短編である『渇水』を実写化した作品を今夜は紹介。

企画プロデュースは『孤狼の血』シリーズや『死刑にいたる病』の白石和彌。監督は,岩井俊二監督作や宮藤官九郎監督作で助監督を務めてきた高橋正弥。

梅雨が明けてから1ヶ月,日照りが続きとうとう給水制限の発令された前橋市。水道局に勤める岩切俊作(生田斗真)の仕事は,同僚の木田拓次(磯村勇斗)と共に水道料金滞納世帯を訪れ,水道を止めて回る“停水執行”という業務で,当然のように利用者から恨まれることも多い。精神的にも過酷な仕事ながら,規則に従っているだけと割り切って淡々とこなしていく岩切。

県内全域で給水制限が発令される中,1週間前に猶予を与えた小出宅へと向かう岩切。家には,父が蒸発し,母・有希(門脇麦)も帰らなくなり,恵子(山崎七海)と久美子(柚穂)の幼い姉妹が2人きりで家に取り残されていた。困窮家庭にとって最後のライフラインである水を停めるのか? 岩切は葛藤を抱えながらも規則に従い停水を執り行うのだったが…。

前半は淡々とした展開。繰り返される“停水執行”という業務を通して,そこに関わる様々な人物の“人生”を浮き彫りにする,とても丁寧な作り。給水制限や停水によって湧き上がる人々の身体と心の“渇き”,さらに岩切自身も心の“渇き”に直面している。作品全体に“水を渇望する”世界観が渦巻いていく。

水の公共性や貧困格差,ネグレクトなど現代社会が抱える問題を背景に,原作とは異なる穏やかなエンディングが沁みる秀作だ。

共演は他に,尾野真千子,宮藤官九郎,田中要次 など。


映画クタ評:★★★★


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