死刑にいたる病 | p・rhyth・m~映画を語る~

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監督:白石和彌
キャスト:阿部サダヲ/岡田健史/岩田剛典
配給:クロックワークス
公開:2022年5月
時間:129分




デンマークの哲学者で思想家セーレン・キェルケゴールの著した1849年の哲学書『死に至る病』には「死に至る病とは絶望である」とある。ここでいう「絶望」とは「自己を見失った状態」の意味で,絶望したままでいると「精神の死」が訪れてしまうので,それを治すために信仰(キリスト教)が必要であると説かれている。

今夜紹介するのは,この哲学書をリスペクトし,発表当初から“イヤミス”の傑作としてラスト10ページの展開が大きな話題を呼んだ櫛木理宇の長編サスペンス小説『死刑にいたる病』を原作としたサイコ・スリラー作品。監督は『孤狼の血』シリーズや『凪待ち』の白石和彌。

理想とは程遠いランクの大学で鬱屈した大学生活を送る筧井雅也(岡田健史)。ある日,そんな彼のもとに1通の手紙が届く。それは世間を震撼させた稀代の連続殺人事件の犯人・榛村大和(阿部サダヲ)からのものだった。24件の殺人容疑で逮捕され,そのうちの9件で立件・起訴,死刑判決を受けた榛村は,犯行当時,雅也の地元でベーカリーを営んでおり,中学生だった雅也はよくそこに通っていたのだ。

刑務所に面会に来た雅也に,榛村は「自分の罪は認めるが,最後の事件だけは冤罪だ」と告白する。そして,他に真犯人がいることを証明してほしいと依頼したのだ。担当弁護士の佐村(赤ペン瀧川)から事件に関する調書を見せてもらった雅也は,明らかに他の被害者と最後の被害者に違いがあることに気づき,独自に調べ始めるのだったが…。

榛村のスーパーサイコっぷりを,迫真の演技で表現した阿部サダヲ。接する者の誰もを操っていく榛村は,見ている者さえ取り込んでしまう。そこに,白石監督お得意の強烈なバイオレンスがリアリティと恐怖を増幅させる。爪を剝がすシーンなんて,カメラのパンはないからね! 心臓の弱い人は注意して。

過去と現在で絡む人間関係が,ストーリーを原作よりさらに不穏にさせる。雅也の母・衿子役の中山美穂,チョット見では判らない金山役の岩田剛典など,色んな意味で見どころ満載の秀作だ。


映画クタ評:★★★★


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